日本国債の危機だからと言っても、いくら愛国心の強い企業家でもせっかく軌道に乗った海外工場を売却してまで、国債を買い支えるとは考えられません。
ですから、必ずしも対外債券が国債危機時の買い支え資金にはなりません。
個人金融資産を基準に考える立場を前提にすれば、正味=債務を引くと1000兆円前後しかないとすれば、現在既に国債その他政府(地方政府を含める)債務が約1千兆円に上るようですから、今でも既にプラスマイナス零または直ぐにもデフォルト騒ぎになっている筈です。
ところが将来の危機という議論(将来に備えて増税したいというマスコミ論調)しかなく、市場でも目先の危機は全く問題にならず、むしろ世界経済の乱調に対する逃避場所として外国人の日本国際購入が増えている状態です。
マスコミや学者の宣伝にも拘らず経済の実務では、国債の危機は個人金融資産残高と関係ないとする意見が大勢である証拠でしょう。
日本には事業資金・・すなわち企業の手元資金だけでも余剰資金が多く、3月23日の日経朝刊社説によれば、上場企業だけで余剰の手元流動性が60兆円にのぼると書かれています。
また同日の夕刊第2面によれば、3月23日発表の日銀の資金循環統計速報からの引用として日本国債に対する海外勢保有額が最大になったとの大きな見出しです。
外国人の残高比率は過去2番目の8,5%、78兆円で 、国内金融仲介機関の保有残高は601兆円、比率は65、3%とのことです。
合計で約74%ですから、残りは個人または国内金融機関以外の企業・団体が保有しているのでしょうか?
新聞の書き方は一部1年以上の国債に限った数字であったり、総額であったり一貫しないので保有部門別トータル国債総残高をあえて分り難く書いたような印象です。
同じ記事では個人金融資産残高は1483兆円で1年前比0、4%減となっています。
これは欧州危機による株式相場下落(および円高による海外資産の評価減もあるでしょう)によるものとの意見で、国内現預金額は2、2%増の839兆円になっています。
と言うことは、現預金以外の金融資産(年金や生保・証券投資残高など)が約600兆円ということでしょうか。
(企業にいくら資金があってもその株主の多くが外国人の場合実質的には外国人の持ち物ですから・・結局個人金融資産しか頼れない可能性があることをJanuary 13, 2012「海外投資家比率(国民の利益)1」で書きました。)
企業資金の究極のオーナーは個人でしかないので、経済学者・マスコミが個人の資力にこだわるのは安全基準としては堅いとしても、危険水準を見極める基準にはなりません。