韓国や中国その他新興国では対内投資が多いのは、資本の蓄積がないにもかかわらず背伸びして投資して一刻も早く国内工場を立ち上げるために外資導入が必要だから起きている現象です。
資本導入・・外資からすれば資本進出の要望は明治維新前後から・・グローバル化前にもありましたが外資=他民族支配を恐れた各国が外資導入を厳しく規制して来たことから、それほど激しくなかっただけです。
ソ連崩壊以降、アメリカの主催する自由主義経済に参加しないことにはマトモな経済発展が出来ないことが明らかになりました。
世界中が雪崩を打ってWTO・・共産主義を標榜する中国でさえ、貿易自由化を迫るWTO条約加盟せざるを得なくなったことから見ても明らかでしょう。
ずっと以前からアメリカ主導のIMFを中心とする金融取引・資本自由化圧力は強く、OECD加盟国は先進国クラブとして、原則資本自由化・金融取引自由化に取り組んで来ました。
開発途上国もアメリカ金融資本の意向に逆らえずにこれに唯々諾々と応じて来たことから、(外資導入による産業近代化で経済発展で来たメリットもありましたが・・)東南アジア諸国や韓国が97〜98年のアジア通貨危機でひどい目にあいました。
今のギリシャ危機同様で、IMF(アメリカ金融資本に都合の良いような仕組みに制度設計させられ)の言いなりにさせられ、まさに債務奴隷のような状態になりました。
国民の痛みを強引に切り捨てて行く大改革の結果、今の韓国財閥の躍進に繋がっている面がありますが、その裏では、富の偏在(1%の人が所得の6分の1に達しているという記事が昨日あたりの日経新聞に出ていました。・・アメリカに拮抗する格差社会になっているとの報道です)国民の殆どが少しでも「資金が出来たら外国へ逃げ出したくて外国籍取得希望をしている」という歪んだ社会を作り出しています。
中国の場合も韓国同様の国民意識(外国籍取得希望が多い状態)ですが、金持ちから順に自分の国を捨てて外国へ移住したいと望んでいる国って、国民のための政府とは言えないでしょう。
こんなことになったのは、政権維持のために外敵を作り出すことがあって国民がこれに迎合している行動から如何にも愛国心が強そうですが、本来の意味の民族を愛する意識が育っていないところに・・それだからこそ外資導入に抵抗が少ないのでしょうが・・)企業まで外資に支配されていることから来る結果です。
資本・金融自由化に戻しますと、中国の場合日本の漸進的な資本・金融自由化の経験を研究して(改革開放に際しては日本が親身になって協力してきましたので・・日本研究者によるアドバイスも行われていました)慎重に進めていたので、アジア通貨危機のとき大きなダメージを免れています。
実際にはそのときには中国でもかなりの資金流出があったようですが、まだ長期投資熱の盛んなときで流入分の長期投資が多かったのでプラマイゼロというか、危機に至らなかったようです。
今回のギリシャ危機では中国への投資熱が下火になりつつあるときですので、流出の方が大きいらしく人民元がじり安になりつつあります。
欧米からの投資が急減し(むしろ引き上げが加速し)、今大規模投資を続けているのは日本くらいですから、今のところ中国は日本に対して威丈高の態度(ゲンキンな国です)を取らないようになっています。
韓国もウオン暴落気味で、日本からの金融支援が必要な状態です(ここ数日の報道では日本政府は韓国国債を一定額購入する方向で調整しているようです)ので今のところ低姿勢です。
ついでに書きますと、資本自由化と言っても短期資金と長期資金の区別があって工場設備資金など長期資金は、経済危機があっても逃げ足が速くなく安全資金になっているので、国際交渉では短期資金の規制が重要になっているようです。
韓国の場合IMF8条国にも移行していますので、為替が完全自由化しているほかOECD加盟国のために短期資金流出入に関しても規制が出来なくなっていると思われます。
リーマンショック以降外国人投資家は、韓国の株式を売却して債券投資にシフトするようになっているようです。
サムスンや現代財閥等の躍進が頻りに報道されますが、実際には巨額赤字受注で日本の受注を横取りしていることが多いと言われます。
(ブラジル新幹線受注競争ではあまりに無茶なブラジル側の要求に対して採算が合わないので日仏が撤退した後も韓国だけがブラジルの無茶な要求をのんで残ったにも拘らず、今度はブラジルが韓国の受注を拒んで取りやめになった例でも分るように、企業利益を度外視した赤字受注が多いので信用されなくなっていることが分ります。)
韓国の国内基準金利は当時5%以上を維持していましたので、2012-3-22「国債残高の危機水準とは?1」に書いたように、韓国中央銀行は逆ざやで苦しんでいたのですが、(08年ころには逆ざやで約6〜8兆ウオン程度の損を出していたようです・・)外国人投資家はこの逆張りで、日本やアメリカの低金利で調達した資金で高利(当時5、5%前後・・今でも3、25%前後)の韓国の国債を購入してサヤ抜きに転じています。
この結果資本収支は黒字(外国短期資本流入超過)でしたので外貨準備が増える一方となったので、前回のアジア危機と違って今回(ギリシャ危機前に)は外貨準備が2000億ドル以上あると豪語していました。
しかし、ギリシャ危機が現実化すると欧米からの資金引き上げに直面して直ぐに資金繰りが間に合わなくなって危機に陥って日本に頼んで昨年秋には日本からの融資協定で息を付けたのですが、これは外資導入による外貨準備に過ぎなかったことによるものです。
今朝の日経朝刊でも、チェンマイイニシアチブ(アジアでの金融危機時の融通協定資金)の倍額増資が報道されています。
韓国は、アジア通貨危機以降の貿易政策としてウオン安を人工的に作り出して対日貿易競争上の優位性を獲得して来ました。
中央銀行の方は外資流入によるドル資金を市中から吸収・・(しないとウオンが上がるのでウオン安政策上)ドルの買い支えするしかないのですが、そのドルを韓国内市中に放出するとウオンが上がってしまうのでアメリカでドルのまま利用するしありません。
外資が高利のウオンで運用するために持ち込んだドルを金利の安いアメリカで運用するのでは逆ざやです。
そこで、リスクの高い外貨運用に走ってリスクを大きく取ってしまったのが、(3月17日現在のウイキペデイアによれば外貨準備の10%を不動産担保証券運用しているとあります)韓国中央銀行です。
何しろ2008年当時の韓国の対外資産の約半分弱が外貨準備でした。
これがゼロ金利前後のアメリカ国債を買っていた・・逆ざや運用では溜まりません。
外国人投資家がアメリカの安い金利で借りて高利の韓国で運用して利息の差を稼ぎ、韓国中央銀行は流入した外資を1%のアメリカ国債で運用していたのですから、外資に良いように儲けられる一方だったことになります。
環太平洋戦略研究センター上席主任研究員 高安健一氏によると
(韓国の)「外貨準備は2008年6月末時点で2、581億ドルと、対外資産残高の45.1%を占めた。
これは2007年の名目GDPの26.6%に相当する。
ちなみに、1兆ドル程度の外貨準備を保有する日本の場合、対外資産残高に占め
る割合は18.1%(2007年末)である。」
と言うことらしいです。