現在の中国政府は地方政府への資金注入に手一杯でその他に財政出動する余力が乏しいので、輸出減で国内企業が困っているからと言ってリーマンショック時のようにもう一度巨額財政出動する余力がないように見えます。
その結果6月8日のコラムで紹介したとおり中国は0.25%の金利下げに踏み切りました。
しかし、金利下げ・・政府がお金を全く使わないで国民の所得移転による政策だけでは・・日本の例によるまでもなく、不景気・成長率鈍化が長引くのが避けられません。
(まして中国ではまだまだ蓄積出来るようになってからの期間が短いので、所得移転すべき国民個々人の金融資産は貧弱ですから大したことにはならないでしょう)
金利下げくらいしか出来ない12年度予算では、内需拡大が出来ない・・景気後退が長引くことを前提に、国民の不満を抑え込むために(開き直って?)12年度予算では公安・軍事関連予算を増やしたと読むべきではないでしょうか?
今年3月の公式発表では12年度の成長目標を8%以下に落としながら、12年度予算として国防予算が11、2%増、公安関係予算が11、5%増となっています。
(中国の場合国防予算外の項目で軍事費を支出しているのでアメリカ国防総省の推定では、それぞれの1、9倍・すなわちそれぞれが約2割増になるそうです)
8%の成長目標自体が実際に怪しいことを書いてきましたが、それを信ずるとしても軍事・公安予算の場合、公式発表とおり(実際はそれ以上に)支出するのでしょうから、国内経済の伸び率から突出し過ぎです。
体制の危機が深刻な状況になっている・・これを軍事力・公安力で押さえ込むしかないという幹部の認識があることになります。
中国の成長率の実態はこれまで書いているようにもっと深刻・・実際にはマイナス成長の可能性すらあるですから、国内不満を抑えるためには、内需拡大用の財政支出を成長率よりも増加させ、それでも落ちこぼれる人のための社会保障政策を拡大する・・その分国防予算関係費を成長率よりも削るのが筋です。
ちなみに韓国の5月の貿易収支発表がありましたが、欧州向けが振るわない外に中国向け輸出が10、6%も減少しています。
このように中国の生産量が8%増どころか大幅減少局面にあることは、日本や韓国の輸出動向(主に生産に必要な中間材の中国向け輸出の減少)からもほぼ客観的に推定されています。
予算規模が成長率と連動している場合、国防・治安予算を成長率よりも増やせば、内需・あるいは社会保障関係予算を成長率よりもさらに減らすしかありません。
仮に、予算規模が成長率と連動しているとした場合、(完全連動型予算はどこの国でも例外でしょう)軍・治安関連に多めに資金を使ってしまうと国内景気縮小を加速させる政策ですから、(軍人を増やせば失業救済にはなるかも知れませんが・・)経済不安から暴動が頻発しても仕方がない・・その代わり公安予算を2割も増やしたという開き直り予算になっている印象が報道されています。
(ただし、上記のとおり経済成長率通りの予算とは限りませんので予算内容の実態把握が先決です・・・増税または国債発行して予算規模全体を2割拡大すればバランスが取れていることになります・・・。)
中国の予算制度がどうなっているか今のところ知りませんので、その内勉強したいと思いますが、私は弁護士業の傍ら趣味で書いているだけですので、中国の予算書自体の入手をするにはマスコミやネットデータに頼るしかありません。
今のところマスコミやネット上では客観的な予算書自体が出ないで、誰かが理解した予算の要点(つまみ食い)しか出て来ていません。
上記私の意見も他人の意見(マスコミの誘導)を基礎に意見を書いていることとなっています。
予算総額が2割以上増えたのかどうかを報道しないで、治安と軍関係の増額だけマスコミが報じても片手落ちで意味不明の報道・・もしも2割以上の増額予算であった場合、日本人の正確な判断を狂わさせアンフェアーな報道だったことになります。