2012/08/22「投資効率2(量から質へ)」から話題が横に行っていましたのでその続きになります。
英才が貧しくて進学出来ないときには、進学率を上げるのは投資効率が高いのですが、豊かな社会になって中学の授業にすらついて行けない子供を無理に高校進学させても(それに適した受け皿としての高校があちこちに生まれています)殆ど無駄な投資になっています。
経済学の初歩で習う効用逓減の法則の適用です。
こうした傾向・・投資効率が低くなり過ぎて来た結果、少子化どころか子供を産まないゼロ選択をする人・・結婚しない人が最近では急激に増えて来ています。
投資効率が下がれば投資する人が減り投資額が減り、最後は投資をゼロにする人も出ますが、これの出産への応用編です。
とは言え、文化関係は投資してもイキナリ効果が出るものではないので、高度な教育の効果は(一見無駄なように見えても)1世代に限らず数世代続けてみなければ分らない面があります。
江戸っ子あるいはパリジャンは3代目で本物と言われるように、文化というものは世代を通した蓄積が必要です。
世代間扶養説は現在社会では血族関係に限定してかろうじて成り立っているに過ぎません。
(今の60〜70歳代以降では殆どの人が自分の老後は子供をあてにしないという意識が普通でしょう)アカの他人間である同業従事者間(しかも労働者自身が同じ業種に一生籍を置くとは限りらないし・・その業種は50年後には殆どなくなっているかもしれないのに)の業種別年金基金で次世代に頼ったり、もっと広く同じ日本国民というだけで世代間扶養となって来ると話がおかし過ぎないかという意見を昨日まで書いてきました。
業種別組合の年金加入者にとっては自分が長期間掛けた年金を返してくれると思って加入している人が殆ど全員であって、3〜40年後の同業種に就職した後輩が年金を払ってくれるなどと思っている人は皆無に近いでしょう。
(タイル屋、左官屋、ペンキ屋ブリキの屋根葺きその他その業種自体が40年もすれば消滅しているのが普通です)
同じ日本国民というだけの世代間扶養を信じて自分で老後資金を全く準備しない人は、余程おめでたい人だけではないでしょうか?
以下、世上流布している世代間扶養説によって、次世代が割を食っていると言う説の批判・・・・2012/07/27/「世代対立を煽る愚3」の続きに戻ります。
投資効率の側面から受益と負担の関係を見ますと、小人数で大きな会議室を借りれば頭割り負担金が上がりますし、大部屋に泊まるのと個室に泊まるのでは一人当たり負担が違うのは当たり前です。
今の年金赤字問題・・次世代は少人数で多くの親世代の面倒を見るのが損だという意見ははホテルで会計するときになって大部屋で泊まったのと同じ料金しか払わないと威張っている人を持ち上げているようなものです。
昔の人は大部屋に泊まれて安かったのに、俺たちは個室ばかりで負担が大きいと文句言っているようなものでしょうか。
今の若者は少人数で大事にされて育ち、育つときも結婚資金、マイホーム資金も少子化の御陰でいつも親がかかりで良い思い・・多くの投資を受けているのですが、大人になるまでに受けた投資に対応する義務・・リターンを果たせない状態になっています。
・・一人で4人分払えないどころか1人前の額でさえ(非正規あるいは無業状態のために)充分な年金掛け金納付能力がないから、年金への税金投入の方向がテーマになっているに過ぎません。
その税をすら負担するのは主として中高年層であって、2〜30代の世代は(年金さえマトモに払えない人が多いので)殆ど税を負担していないでしょう。
少子化すれば年金負担能力が縮小するだろう・・産業を支える労働者も減る・・国力が衰退するというマスコミが紹介する論理が盛んです。
しかし企業が海外展開するのは労働者不足のためではないことは、海外展開の度に繰り返される説明・・「国内工場はそのままで国内雇用を守る」と言う報道がいつもセットになっているのを見れば分るように、企業は高賃金に耐えられないから海外に出るが国内雇用削減しませんという(嘘みたいな)説明が繰り返される(実際に雇用は縮小する一方です)こと自体労働者不足ではないことが明らかです。
労働者不足なら国内雇用を守ることを毎回宣伝する必要がないし、現に失業者が国内に大量にいることの説明がつきません。
中卒の子供4人育てるよりは2人でも大卒まで育てた方が、次世代としては効率が良いという親の意見の方が強いことは、少子化が進行している事実で証明されています。
底辺労働現場が縮小する一方になることはグローバル化開始以降誰の目にも明らかな変化の方向でしたから、中卒の子供4人育てて、子供がみんな最底辺で食うや食わずよりは、1〜2人でも少人数に集中投資して大卒・院卒まで仕上げたいと思うのは健全な常識です。
その方がリターンも大きいと期待するのが普通です。
この方向は大方において誤ってはいないのですが、過剰投資をしてもあるいは適性に反した教育投資をしても投資効率が下がります。
この辺は次回以降書いて行きます。