企業本社があれば、全世界の収益の集中したものが税として国や自治体に入りますが、宗教団体の場合、上納金や拝観料は税にはならず、(古都税だったか大論争がありました)周辺の飲食店や切符きり等で働く人の個人所得を基準にした住民税しか入りませんが、個々人が学生アルバイト・非正規雇用中心の場合彼らからの税・・社会保険負担はあまり期待出来ません。
12月21日の日経夕刊には三菱商事の中核事業である4割の売上を占める金属事業部門を別会社にして、その本社をシンガポールに設立すると書いてあったことを、22日のコラムで紹介しました。
本社部門約400人らしいですが、法人税や400人分の所得税等が日本に追々入らなくなるだけではなく、400人の高額雇用が失われる・これを目当てにする間接雇用も大きく損なわれる大事件です。
12月21日に中国高官の裸官などを書きましたが、個人と違い経済的利益を目的とする企業が立地上有利な国の国籍を選ぶのを非難出来ません。
これまで本社・本部の取り合いは都道府県間の競争でしかなく、東京1極集中の弊害は地方交付税・地方優先の公共工事などの形で再分配が行われていました。
国際間になると再分配が期待出来ないので、本社の奪い合いは壮絶な国際競争・・辺境の離島や国境地域の領土分取り合戦以上に重要な現在の戦争です。
戦時でいえば、精鋭部隊一個連隊が敵軍に引き抜かれた(敵に寝返った)ような打撃がありますが、これに対する政治の反応はあまり報じられていません。
国境付近は概して僻地で何もない所・・経済価値の乏しいところが殆どですから、足で歩く時代の安全保障には1kmでも2kmでも国境が遠いに越したことがありませんでしたが、ミサイルや航空機中心の時代にはそれほどの意味がありません。
尖閣諸島周辺に資源があると言っても、日本からは遠過ぎて採算が取れないからどこの企業も及び腰になっていたのですから、その資源で何人の労務者等を養える(コスト上マイナスでは意味がありません)かという冷静な計算が必要です。
右翼がいきり立っているのは、4〜500年前の古い陣取り合戦の郷愁によるものです。
ちなみに、足で歩く日本の戦国時代でも支配領域境界から本拠地までの距離は援軍が来るまでの時間稼ぎ・・・・あるいは本拠地や準本拠地が奇襲攻撃を受けないようにする一種の情報伝達基地・捨てコマでしかありませんでした。
本軍自体に大きな戦力差があるときには、武田家の滅亡時や後北条氏の滅亡あるいは明治維新時の会津鶴ヶ城の落城を見れば分るように、領域境に援軍を送ることも出来ず、本拠地に迫る敵の大軍(織田徳川連合軍の攻撃や豊臣・徳川勢の小田原攻め自体は早くから武田側や北条側に伝わっていたし、戊辰戦争での官軍の攻撃も前から分っていました)を数時間や1日〜数日単位で引き延ばすだけの意味しかありませんでした。
戦力差が大きい場合、途中の小さな拠点など無視して進んでも背後を脅かされる心配がないので、順番に攻略する必要すらなく、時間稼ぎにもなりません。
今では国際紛争激化が数年前から進んで来た上での実力行使ですから、その前から報道その他であらかた戦端が開かれる予定が分る上に、戦闘開始直前・・国交断絶後でも敵の動きは人工衛星その他で予め十分に分ります。
奇襲攻撃があるとしても、今はロケット・ミサイル・航空機中心ですから、国境線から順に・・例えば尖閣諸島から順に占領して沖縄に攻め寄せて来る訳ではありません。
国際紛争に勝つには、国力を維持し高めることが先決であって国境地帯を寸土も譲れないと息巻いていても、イザというときには何の役にも立ちません。
むしろ遠隔地に小さな防衛拠点(数十人規模)を作るとイザというときに敵の大規模攻撃を受けるとその守備隊(程度では守り切れないので)の全滅を予定することになり、被害が甚大になるリスクがあります。
緊急時には全滅を避けて敵の攻撃前に引き上げることになると、何のために平常時から経費を掛けて守備隊をおいて来たのか?お笑いとなり兼ねません。
平常時から長期的施設を作って常駐するとなれば、維持経費として無駄な出費が長期的に垂れ流しとなり国力が消耗するマイナスの方が大きいでしょう。