2013年3月3日〜5日に見たように為替相場・・円下落は経済苦境打開の一助・ほっと一息つくゆとりを与えてくれる一助にはなるものの、大きく負けている業界にとっては直ちにはあまり意味がないことが分ります。
為替相場に頼って円安を喜んで安易に喝采を叫んでいる人は、言わば臨時の下駄を履かせてくれたのを喜んでいる状態ですから、こう言う人が多いと日本の将来が危険です。
そこで所謂アベノミクスがどのような効果があるのかについてこの際に見ておきましょう。
今回(2月22日)の安倍総理の訪米・首脳会談の結果、懸案のTPP参加交渉が前向きに進みそうです。
January 7, 2013前後のコラムで、TPPに参加しない限りアメリカ(オバマ)は尖閣諸島問題で良い顔をしないだろうと書いていましたが、さすがに安倍氏はここで決断したようです。
前回総理になったときに比べると、先送りしない決断を含めて今回の安倍氏の政治判断がなかなか大人になったと思いますし、交渉能力が格段に上達していて安心・安定感があります。
アベノミクスの内容がはっきりしませんが、(私が理解出来ないだけかも?)現在の円安はアベノミクスの結果でもアナウンスの結果でもなく、大震災以降の経済ファンダメンタルズ変化・・日本が本当に弱って来た効果が約2年経過で出るべくして出て来たものです。
負け組に入れば、為替相場が下がるのは理の当然(相撲でも負け越せば番付が下がり対戦相手も低レベルになって楽出来ますし、企業も負け越してくれば株価が下がります)で、何も目出たいことではありませんが、その代わりハンデイを貰える得な役回りもあります。
市場経済下では、商品値段も競争力低下に合わせて下げるしかないので下がって行くのが普通です。
しかし売値だけ他所より安くしないと売れなくなっても、仕入れ値が同じままでは企業がジリ貧になって最後に倒産します。
国家も円安=同じ製品が安くしないと売れなくなったということですが、仕入値は従来と同じどころか円が安くなった分高くなるので国際収支で見ると実は大変な結果が待っています。
これが1企業の収支に直結せずに約半年間程度のタイムラグで輸出企業が儲かって輸入企業が損する関係ですから分り難くなっているだけです。
仮に円が2割安になると輸出する鉄鋼製品が同じコストで、2割安くしても採算が取れるので競争力が増しますが、半年ほどすると輸入鉄鉱石や燃料代が2割上がって入って来るので、為替変動効果はトントンになります。
(人件費上昇はもっと遅れるのでその間の利益があるのと実際には2割そっくり上がらない分だけ得する・・労働分配率の引き下げによる効果があるだけですから、円安効果は人件費引き下げ効果を期待していること・・円高は人件費の実質増加になることについてもこれまで何回も書いてきました。)
輸入物価値上がりによる競争力低下によって、この半年の間に更に円が2割下がれ(このように円高や円安は一旦始まるとスパイラル的現象が起きることを既に書きました)ば、同じことの繰り返しになるので半年間だけのメリットではありません。
為替相場は経済現象の結果生じるものであって政治によるものではないので、経済危機が周辺から迫っているドイツを中心とする通貨安競争批判(モロに影響を受ける韓国更には中国は必死にロビー活動していたようですが・・)は実態に反しています。
年末からの円安トレンドは安倍政権の成果あるいはアナウンス効果でもないのに、支持者が政権交代直前から始まった円安の始まりを安倍政権の意欲の結果だと賛美し続けたし、政権幹部が不用意に口走るから、国益に反した世界世論が形成されるリスクが生じかけたのです。
G20ではうまく切り抜けましたが・・・麻生副総理の功績というよりは、国内向けに嘘を報じているからややこしくなりかけただけです。