中韓政府・組織は誰のため?3

中国的独裁・・強制国家や韓国的半民主主義国では、民意反映・市場淘汰が不完全ですから国民の意向を重視しなくとも政府の都合で需要のないものを大量に作ってもやって行けます。
制度だけ民主主義と言っても成熟度にはいろんな段階がありますが、経済面から見るとその実質が分りよいことになります。
すなわち、主要企業が国有企業や財閥寡占状態で国民がより良いサービスを選べない・市場機能不完全比率が高い場合には、経済活動の不自由・消費者の声が反映され難い社会=市民生活の不自由度が高いのですから、不自由度に比例して不完全な民主主義社会と言えます。
国民不満があれば、反乱暴動が起きてもこの不満を宥めるよりは、政権維持可能なギリギリまで福祉予算・あめ玉をやるか、同じ額を鎮圧用の公安予算で使って反乱さえ鎮圧出来れば同じではないかという思考形式になり勝ちです。
中国では同額の資金を使うならば、福祉予算に使うよりは、軍事・公安予算に使った方が良いと言う方向性が顕著ですし、・・・韓国では自殺したい人は自殺してもらった方が効率的・・国外脱出したければ出て行ってくれても構わないと言う体制です。
中国のような強権体質国家では、自分から出て行ってくれた方が追放する手間が省ける・・不満分子はいない方が良いと言う判断でしょうし、公安関係を肥大させた方が幹部は巨大権限を持てるので、大きな政府の方が気持ちよいのでしょう。
数年前から、公安予算の方が巨大軍事費よりも大きいとの一般的報道(これは公表されている国家予算による上に、この種予算は多めに発表しないのが普通ですから客観性があります)ですから恐るべき恐怖国家になっています。
今回の天津大爆発では辺り一面千人単位の死体がゴロゴロしていたと報道関係者からは漏れてきますが、自由な報道が禁止されて映像は没収されているので、政府発表では、原爆爆心地のように何もない(大規模なクレーターは隠し切れなかったらしく残っていますが、)綺麗になった跡地ばかりです。
工場跡地が木っ端みじんになって何も残らない後の写真を公開されるとその付近に居た多人たちは人の形がないほどこまく吹き飛んだろうと容易に想像がつきます。
これが死者10人程度の当初発表で徐々に膨らましていき、今は110人程度ですから独裁国家とはこういうものだと言う典型です。
経済合理的に考えれば一〇何億の国民に10万円づつ配っても犯罪がなくなる保障がないが、暴発する不満分子が1万人に何人いるかいないかならば、暴発した時点で公安警察が検挙して残酷な刑罰で懲らしめた方が安上がりと言う計算でしょう。
中韓人それぞれの論文を紹介しましたが、中韓では庶民のための政治ではなく、権力者のための政府であることが所得分配率の流れから見ても分りますから、国民のための政府であり、従業員のための会社である日本と発想が逆転して国や社会を経営しているところが救われない感じです。
低成長の穴埋めのために日本と同じ財政赤字が生じているとしても、中国の場合・・国民救済目的よりは、政権維持に必要な幹部関連企業救済や軍事費や公安警察費に使って来た・・あるいは需要のない無駄な投資に使って来たところが大違いです。
高度成長期には経済体質無視の借金や資金導入が可能であったものが、中韓共に高度成長が終わりになると、本当の財務諸表が重要になってきます。
中国の政府統計が当てにならないので、政府発表の何割まで外貨準備(自己資金)があるのか、貿易黒字はどこまでが本当か・・赤字穴埋め資金がいつまで続くかの視点が重要です。
貿易黒字に基づかない外貨準備部分は先進国からの資本進出によるものですから、(長期資本中心でも)資本逃避が始まると脆い・・ドンドンなくなって行きます。
この穴埋めのために、国民を餓死させて穀物輸出していたスターリンのように国民犠牲の出血輸出による外貨獲得をやめられないのかも知れませんが・・・。
出血輸出は一定期間で限界に来る筈と繰り返し書いてきましたが、8月21日日経朝刊第一面によると、出血輸出に励んでいた鉄鋼製品の中国国内粗鉱生産が減少に転じている様子が出ています。
(今年1〜6月の粗鉱生産量は、前年同期間比マイナス1、3%)
実際に中国の鉄鉱石等資源輸入がもっと前から極端に減っている・・貿易黒字が進んでいる・・国際資源相場が昨年から急落しているのですからこんな少ない減産程度はない筈ですが、・・当然です。
上記発表の減産程度では追いつかない勢いで需要が減少しているので、(減産してみると需要が更に減少して行くと追いかけっこになります)まだまだ出血輸出が続くことは間違いがないでしょう・・。

中韓政府・組織は誰のため?2

ソモソモ中国は何のために野放図な軍備拡張をするのでしょうか?
日本の場合、中国と言う直接の軍事侵略を受ける脅威がありますが、中国の場合軍事費が少ないことによって、戦後今までどこの国も領土侵犯して来たことも威嚇したことがない・・元々中国が製造技術の遅れて最貧国の時代から日本やアメリカも中国を侵略しようとして来たことはありません。
まして今や中国の軍備は強大ですから、中国は自国防衛のためにさらなる巨大軍備を必要としていないのですから、国民福祉を犠牲にして何のために軍事費を膨張させているか合理的意味不明です。
中国の野放図な軍備拡張行為こそが、他国への威嚇や膨張支配のための軍備と言うべきでしょう。
現在アジアの緊張は中国の軍事膨張・露骨な威嚇によることは、誰もが否定出来ない現実です。
日本の集団自衛権構想が現実化して来たのも、中国による尖閣諸島侵犯行為の連続によるものです。
この辺、自称平和論者が中国の軍事膨張を一切批判しないのが不思議です。
左翼平和論者によれば、日本が集団自衛権を言うから中国の軍事費が膨張するようになったと逆の主張になるのでしょうか?
韓国の誰かの論文では、韓国では日本に比べて福祉水準が低いから財政赤字の心配が少ないと自慢する韓国人の論文を以前紹介した記憶がありますが、(どこか忘れました)同じ価値基準です。
確かに不要な福祉は削減して行くべき・・例えば年金支給開始年齢の引き揚げなどの絶えざる改正・改良・・まだ働ける人には働いて頂くなど必要ですが、中韓はその段階ではなくソモソモ年金制度の未発達を自慢していて財政赤字になる心配がないと言うのです。
韓国では結果的に高齢者の自殺が急増しているし、中国では数日前に紹介した論文によれば、医療や老後の不安に対する自衛のために貯蓄に励むしかない・・消費・内需低迷の原因になっている状態です。
財政赤字と国民福祉は関係がない・・単年度赤字でも対外資産(家計で言えば預金が)があるならば預金を取り崩しても医師に掛かるべきですし、対外資産(預金)がないならば、借金してまで増やす訳に行かない・家計収支と同じ考えが妥当します。
財政赤字の説明で書いたことがありますが、道路補修を放置して学校用地の買収や公園や図書館等を作らないようにすれば、市町村は黒字化しますが、それでは国民にとって良い政治かどうかは別問題であると書いたことがあります。
アメリカでは州政府予算が足りないと学校の授業時間が減る(夏休みが多くなったりする)ことがしょっちゅうあると報道されています。
韓国人や中国人に自分の国は国民のために税金を使わないから、政府の赤字が少ないと自慢する論文を日本語で発表していますが、国民のための政府・従業員のための企業と言う信念のある日本人から見れば滑稽と言うか、意味がないように思いますが・・・国民を大事にするかどうかの価値観の相違です。
中韓では政府のために国民があると言う逆立ちした思考様式が専制君主時代以降全然変わっていにように見えます。
民主主義国も本音は民など無視する社会である点は中韓と同じでが、市場淘汰によって是正される仕組みになっているので結果的に健全性を維持出来るのですが、中韓では、エセ市場主義、エセ民主主義なので民の声・立場が届き難い社会になっているので欠点がそのまま出て来る・・動乱による社会変革しか期待出来ない社会です。
動乱する程の力がない朝鮮族の場合、国外脱出程度が抵抗する唯一の手段になります。
企業で言えば労働者がストでもしない限り、給与を出来るだけ安くしてROEの高い方が賞讃される仕組みです。
日本の場合、企業に始まって総べての組織は構成員・従業員第一ですし、財政赤字をおしてでも財政出動してその資金を国民への所得再配分に使って来ました。
財政赤字強調論者は、アメリカ式自由主義・資本主義と言うか、従業員や構成員と資本家との対立概念で考えているように見えます。
この対立項では労働分配率や福祉予算等は必要悪ですから、少なければ少ないほど合理的です。
民主主義国家・自由市場主義社会では、このバランスの善し悪しが市場淘汰を受ける関係で自然にブラック企業が排除されて行きます。
日本の例で言えばブラック企業の噂が立つとすぐに市場淘汰されます。

中韓政府・組織は誰のため?1

中国の財政赤字が2010年には公式発表上3%に留まっていたとしても、昨日紹介論文のとおり雇用者報酬比率が13%も低下し続けているなかで比率の減った報酬から、政府が労働者から吸い上げる方が多い状態では、国民が可哀相・・国民のための政府ではない実態が明らかです。
リーマンショック後に50兆円ほどの財政投入があり、その後の成長停滞の穴埋め目的の財政出動(客のいない鉄道投資・オリンピックなど次々です)もあってその後かなりの財政赤字拡大になっている筈です。
国外からの借金・資本導入が限界に来ているならば、国威発揚・近隣国威嚇用の軍事費等を削減してでも国民福祉への分配を増やすべきでしょう。
上記論文のように国内消費を拡大し国民に豊かな生活をさせるべきで、このために中国政府は賃上げ政策をして来たのでしょうが、これが中進国の罠に引っかかって苦しんでいる状況です。
総収入を一定にして所得分配率修正をすることが必要だったのですが、幹部や国が巨額資金・・上前をはねる状態そのままで賃金だけ上げようとすると総コストアップですから、国際競争力に影響します。
国際競争力がなくなって経営が苦しくなって来たので、企業防衛のために却って(幹部の取り分そのままの場合)雇用者分配率を下げ続けるしかなかった→国民不満の限界が始まったのが昨今の混乱・動乱の始まり?ではないでしょうか?
(数年前から暴動が年間20万件と言われていましたが、昨年あたりからあまりにも増えて来たらしく発表さえやめてしまいました・・政府に都合の悪い一般報道は天津の大爆発・山東省爆発事故でも分るように直ぐ削除されます。)
長年の国民無視の体質の咎めが出て来たのですが、国民福祉方向へ舵を切り切れない点が中韓政府の苦しいところです。
中国は旧満州地域やモンゴル地域で、韓国は全国で日本支配下で万民平等・国民を大切にする政治経験が重荷になっていることが重要です。
この恩恵を受けた旧被支配者に対する元エリート層の反発が沈潜していたところで、庶民にまで教育したりする日本支配がなくなって旧支配層の被害意識が息を吹き返した点が台湾や東南アジアとの大きな違いです。
日本統治下で平等意識を持ってしまった人民に対する必要以上の抑圧が必要になって、日本支配を極端に(ねつ造してまで)悪く言うしかない政治状況がこうして生まれたのですが、日本ではねつ造批判ばかり気になって腹を立てていますが、根っこにあるのは旧支配体制(ヤンパンとその他の2項対立図式)の復活強化願望です。
(韓国では旧支配層・中国では共産党幹部の特権確保)
このやり方(支配x被支配の貫徹→格差拡大)が戦後70年も政権維持手段として続いて来たのですが、8月20日以降紹介しているようにあまりにも国民の貧困化が進んで来たので、韓国では過去に何回か借金帳消しにする徳政令が発布されてきましたが、(ある程度民主主義国家ですから)現朴大統領就任前から財閥批判=庶民無視の政策批判が厳しくなっていました。
朴大統領は選挙では財閥批判していましたが、政権をとって見ると支持基盤である財閥を切れないし、180度転換をするのは難しいので、大きな政策変更が出来ないままむしろその弊害が拡大する一方です。
この辺は中国共産党も政権基盤の弱さ(国民支持の正統性がないので)高成長の限界が見え始めたころから、(江沢民政権から)韓国の経験に習って日本批判を始めました。
しかし、成長率低下が一時的で終わり再び10数%台に戻る訳がなく、単純に下がって行く一方ですから、韓国同様に成長率がガクンと下がる都度日本批判のトーンを上げるしかない繰り返しに陥りました。
対外威嚇・国威発揚行為も、前政権よりも派手にやるしかないことの繰り返しになって、この結果国際的に孤立化が進んでいますし、対日批判では遂には暴動を演出したり、史実になかったことまででっち上げて映画を作るしかなくなったのが現状です。
対外非難・・敵を作ることで国内矛盾を誤摩化す方法は際限のないエスカレートしかないので、(ねずみ講みたいで)いつか限界が来ることの証明です。
これが中国の軍事力がアメリカを越えていれば世界征服まで行き着くでしょうが、今のところアメリカに挑戦出来ないので、アメリカが出て来ると限界に打ち当たって困っている状態です。
領海侵犯したり、あるいは全くなかった噓まででっち上げて言い出したのでは、日本が我慢出来なくなって反撃を始めたので、中韓両政府は(後ろ盾のアメリカに反撃することが出来ずに)これにどう対応して良いか分らずに国内外で立場がなくなって来た状態です。
国内矛盾の目をそらすために対外軍事遠征をして、逆に負けて帰って来たような状態が今の中韓両政府の現状です。 
具体的戦争して負けた訳ではありませんが、国際的に孤立してしまった上に経済的にも苦しくなる一方なので、(上海株暴落は国民に知らせない訳には行きません・・)国威発揚どころではなく、八方ふさがり・完敗の状態でしょう。

国民を犠牲にする社会3(中国人の論文から)

中国では、下記論文の記載では、政府赤字は3%程度しかないとなっているものの、労働者からの税による吸い上げよりも労働者への給付分の方が少ない・・言わば所得再分配の逆をやって来たことこそ大問題です。
昨日紹介した韓国の家計部門赤字拡大政策と方向性が同じです。
韓国の中国へのすり寄りに関心が集まっていますが、基礎的な政府対国民の関係の基礎・・国民犠牲の上に、不満を対外野心でそらせる政策方向の酷似性に注目すべきでしょう。
この辺は5月24日紹介した唐成氏の論文に(24日はこの部分は関係なかったので引用していません)データで紹介されていますので、一部をここに再引用しておきます。
グラフ等いくつもあり詳細・膨大ですので、関心のある方は以下に直接アクセスして下さい
https://www.andrew.ac.jp/soken/pdf_3-1/sokenk186-2.pdf

* 小論は2010年度アジア政経学会西日本大会(京都大学)の共通論題『世界経済不況下のアジア経済の 躍動 その経済構造と政府の役割』の報告内容を修正したものである。
1.は じ め に
・・・(4兆元投資による回復・下支え効果を書いている部分が先行しています・・イナガキ注)・・・・・しかし,中国はもうこの「100年に一度」と称される世界金融危機(リーマンショック・・稲垣注)から抜け出したのであろうか。その答えを探るためには必然的にこの間の景気悪化は「金融」危機による影響であったかどうかという問いにたどり着く。その答えは否である。中国経済に世界金融危機と 呼ぶべき事態が到来したというよりも,輸出低迷という外需の急激な減少によって経済環境 が悪化したのである。それは中国経済の外需依存型,労働集約型モデルを反映した結果に他ならない。したがってこの原因を本質的に解消しなければ,中国経済の危機は去ったことにならないのであろう。
では,世界経済危機は中国経済にいったい何をもたらしたのであろうか。それはグローバル経済化が進む中で輸出依存型の成長モデルは高いリスクを持っていることを証明したのである。言い換えると,これまでの経済成長方式を転換していく必要性の警鐘を鳴らしてくれたのである。
以下省略
2.中国経済の成長パターン
2・1省略
2.2 GDP 成長率への寄与度が低くなった消費項目
ここでは,需要サイド(支出面)からみた1978年以降の GDP 成長はどのような特徴を 持っているかを明らかにしてみる。需要サイド(支出面)からみた GDP は次の(1)式のよ うに示される。すなわち,
GDP=最終消費支出 (家計最終消費支出+政府最終消費支出)+総固定資本形成 (民間投資+政府資本形成+在庫投資)+純輸出 (輸出-輸入)
    ( 1 )
(1)式をもとに作成した表1からは,最終消費支出の平均成長率は一貫して低下し続けて いるという大きな特徴が得られる。より具体的に言えば,最終消費支出の比率は1978~1991 年の5.9%から1992~2001年の5.7%へと低下し,2002~2007年には4.2%へとさらに大きく低下したのである。
・・・2000年以降,中国経済の牽引役は消費から投資へと次第に変わっていくので ある。他方,貿易による経済への貢献も2000年代以降顕著に表れている。このような特徴は 表2の高度成長期における日本と中国の経済パフォーマンスの比較からも明白である。それによれば,日本は1956~1970年の平均 GDP 成長率は9.6%のうち,内需による寄与率は9.9 %であるのに対して,外需は-0.2%にとどまっている。他方の中国は1992~2007年の平均 成長率は10.5%であり,そのうち,内需は9.7%,外需は0.8%である。・・2000年以降の中国は,日本の高度成長期よりも貿易拡大を通じて,経済成長に大きく貢献していることがわかる。
中国の家計消費支出の低さは国際比較しても一目瞭然である。図3は,日本,中国,イン ド,タイ,インドネシアの諸国との比較を示している。それによると,日本はバブル経済崩 壊以降も家計最終消費支出の GDP に占める比率が緩やかに上昇していく傾向にあることが わかる。また,インドネシアとタイも消費支出の比率がきわめて顕著に動いており,2008年にそれぞれ順に57.8%,55.9%となっている。しかし,他方の中国の家計消費率は極端に低 く,2008年にわずか34%にとどまっており,諸外国の半分程度の比率となっている。2008年 中国の1人当たり GDP は3403ドルで,タイの3940ドルに及ばないものの,インドネシアの 2237より1000ドル以上も高いのである。このように,1人当たり GDP からみても,中国の家計消費率の低下は異常というほどである。
3.なぜ家計消費率が低下したのか
3.1 予備的貯蓄動機の強まり・・省略 (家計債務が増える一方の韓国とはこの辺が違います・・人民の強さです・イナガキ注)
3.2 労働分配率の低下
次に,労働分配率の側面から,家計消費率の低下要因を考察してみる。すでに(2)式でも わかるように,国民所得に占める家計部門の比率が低下すれば,家計消費率の低下をもたらすと考えられる・・・・・・・・・・・・・・・・
家計部門の第1次所得は主に雇用者報酬である。表5は分配面から見た GDP の各項目の 構成比の変化を示している。その構成比をみると,雇用者報酬は1997年の52.8%から2007年 の39.7%へと大きく低下した。名目 GDP に占める雇用者報酬の割合を労働分配率とすると, 10年前に比べて,その比率は13.1%も下がっている。その背景には,営業余剰が同時期の 18.0%から31.3%へと大きく上昇したことによるものである。また,純間接税もこの間に1.6 %を上昇している。
次に,国民所得の再分配から家計と政府部門の可処分所得の構成変化の原因を探ってみよ う。同じく表4によると,家計部門の可処分所得の比率は,1996年の69.3%が最も高いが, 2008年には57.1%にとどまっている。可処分所得と第1次所得の割合の推移をみると,1990 年代の可処分所得は,第1次所得よりも平均3%ほど高くなっており,家計部門が支払う税 金や社会保険料よりも政府部門から受け取る社会保険金,その他の移転所得の方が大きくな っていたといえる。しかし,可処分所得の第1次所得に対する比率は,1999年の103.3%から2000年には100.7%と大きく低下し,2000年代に入ると100%を割り込んでいることが多く なった。これは2000年代以降,政府部門からの移転所得よりも家計部門から政府部門への税 金や社会保険料の方が大きくなっていることを反映している。したがって政府による家計 部門への所得再分配は全く機能していないといえる。

4.お わ り に
以上の分析から明らかにしたように,リーマン・ショック以前の中国経済の成長方式は 1980年代の消費主導から1990年代以降次第に投資主導へと転じ,さらに2000年代以降は貿易 の拡大による輸出主導型が鮮明となっている。
・・・・・本論でも明らかにしたように,内需拡大のための重要な課題は家計消費の拡大である。家計消費率は,中国経済の高度成長と逆行するようにむしろ低下し続けている。その理由は,労働分配率の低下と家計の予備的貯蓄動機が強まったことによるものが大きい。
・・・・・・・重要なことは企業部門の営業利潤を引き下げて,雇用者に分配していく制度設計 が肝要である。この点については,中国政府は中央直轄国有企業に対する利潤の上納比率を 現行の5~10%からさらに引き上げることを決定している。しかしながら,その原資を政府部門に残さず,家計部門年金や医療などの社会保障へ資金投入を行うことが重要となる。

国民を犠牲にする社会2(韓国人の論文から)

以下は、私の推論や当てにならないネット報道ではなく、(10年近く前の論文で引用データが更に古いですが)専門家の論文を紹介しておきましょう。
今も同じ状態・・昨日紹介した記事は、07年に比較して更に限界近くまで家計債務が増え、自殺や国外脱出願望が増えていると言う記事でした。
今回紹介する論文は2006年発表でその前のデータを引用しての論文ですから、昨日の記事によれば、以下紹介する論文の前提事実よりももっと国民生活は悪化しているのですから、この間にこの論文を参考にして社会が変化したのではなく病態がそのまま悪化し続けて来たことが分ります。
この論文には、現在韓国の病弊の基礎的状態・・ひいては同じ方向に進んでいる中国の病根が良く出ています。
網羅的でしかも省略するには勿体ない明快な文章ですが、長くなり過ぎるので仕方なしに大幅に割愛しました。
関心のある方は引用先に入って全文をお読み下さるよう期待します。
なお、以下の引用文は2006年のものですが、その後指摘されている問題点が解決されることなく、更に拡大悪化していることは昨日のコラムで紹介したとおり周知のとおりです。

http://oohara.mt.tama.hosei.ac.jp/oz/571/571-02.pdf

【特集】韓国における賃金構造と貧困問題 大原社会問題研究所雑誌 No.571/2006.6

韓国の貧困問題
柳 貞 順/佐藤静香 訳
はじめに
2006年は韓国がOECDに加入して10年になる年である。韓国国民はこの機構への加入とともに先 進国入りの夢に胸をふくらませもした。過去10年間,韓国は外貨危機の衝撃と,続く新自由主義的 構造改革で,一人当たり国民所得16,500ドル達成の経済成長はしたが,成長の成果は市場強者におもに分配され,不平等が深化し貧困が量産されるにともなって両極化現象が深刻な社会問題として台頭している。
・・中略・・左派的であるという盧武鉉政府は・・・景気浮揚と市場雇用の創出に汲々として,均衡よりは効率,分配よりは成長に重きを置く政策を繰り広げた。政府は親財閥化,親既得権集団化保守化していき,その結果韓国労働者の半分以上が非正規職に転落し、労働市場賃金の両極化,財閥と中小企業の両極化、上下階層所得の両極化が急激に深化し貧民が量産された。
・・・・とくに失業と非正規職の広がりによって量産された労働貧困層は、労働能力を理由に基礎生活保障制度からほとんどが除外されているが、彼らの労働権と生存権の保障の問題が深刻に浮上している。福祉予算が少し増加したとはいうが,そのほんの少しの福祉予算(総予算の10.3%)で市場で 発生した不平等を埋めて貧困問題を解決することは‘ぞうの鼻にビスケット’に過ぎず、両極化に突っ走る社会的間隙を埋めるには途方もなく不足している。
・・・支持率が非常に下がるとあせった盧武鉉大統領は再び社会的両極化解消を国政の第1課題として設定し,雇用対策と社会安全網の構築に総力を尽くすと発表 し,必要な財源作りのために増税の意思を明らかにした。しかし,増税の意思を表明した大統領の 新年演説が終わるやいなや証券市場が暴落し,マスコミと野党は,むしろ減税が必要な時点であると逆攻勢に出た。その結果,法人税,所得税の引き上げおよび株式譲渡差額にたいする課税はほとんど不可能に見え,単に間接税をもう少し賦課し,所得控除範囲を狭めることに方向を変えると, 庶民の財布の底をはたくのは所得逆分配的であるという批判が沸いている。
本稿では貧困の原因を,労働市場の所得分配機能の不備と社会福祉制度の所得再分配効果機能の不備の2つの観点から考察した後、国際的標準と比較し,政府の政策を批判的に検討して対案を提示しようと思う。
I 韓国の貧困と不平等の現況
・・・外貨危機直後の貧困層は,所得(flow)は不足していても財産(stock)はある程度保有しており,1998年低所得層の家計数値黒字率は- 7.6%であった。しかし,2000年代初になって襲った家計 信用大乱を経験しながら、低所得層の家計数値黒字率は急激に悪化し,2004年には- 24.1%を記録 した(8)。低所得層の家計財政状況が破綻状況に至ると,1993年10.6人であった人口10万人あたりの自殺者数は2002年27.4人に跳ね上がり(9),1981年~1995年に4.1%であった経済問題による離婚率は, 2001年~2004年に12.1%に急激に上昇した(10)。
このように,外貨危機を起点に韓国社会は急激に不平等が深化し,貧困問題が深刻になっているが,支持基盤が低所得階層である進歩政府の統治の下で社会両極化が深刻な様相を見せているのが韓国の現実である。

II 先進国と比較した韓国の経済・社会指標
・・労働所得分配率は2002年58.2%で日本72.7%,アメリカ 71.4%,ドイツ72.9%などのOECD国家より10%以上低く,・・社会保障制度の未成熟などで社会福祉支出の規模が小さく,公的移転所得の所得再分配効果は韓国が1.5%(03年)であり,アメリカ10.9%(99年),イギリス26.4%(01~02年),日本15.7%(96年),ニュージーランド18.7%(96年),カナダ16.7%(01年)に比べ て非常に低い水準である(13)。
GDP対比福祉予算は,2000年までOECD加入30国中,韓国は29位で最下位をかろうじて免れた状態にあったが,2001年にメキシコが11.8%に改善したのに比べて韓国は8.7%で足踏み状態にあるため最下位の30位に墜落した。
2004年韓国の出産率は,1.16でOECD国家のみならず,世界最下位であるにもかかわらずいまだに子女養育手当て制度が導入されておらず,保育や教育は受益者負担の原則によって市場財とみなされているだけで,公保育と公教育の水準は劣悪なことこの上ない。
・・・社会指標が国際的標準に比べて途方もなく低いことは国民の暮らしの質低下につながり,人口10万人あたりの自殺者数はハンガリーとともに共同 1位を記録している。

III 貧民量産の原因
1 雇用の両極化
1997年以前の韓国の貧困問題はおもに労働無能力層の貧困問題に局限されていたが,外貨危機を起点に労働貧困層が新貧困層として既存の労働無能力貧困層に加わることによって、労働貧困層問題が台頭している・・後略

3 好循環構造の破壊
輸出額が史上最大であるにもかかわらず、貧困問題が深刻に台頭している重要な原因のうちの1つは,庶民家計の財政パターンによる内需消費の沈滞である。上位階層の所得と消費はあまり問題はないが,信用不良者が多い下位階層で所得を負債償還に割愛することによって赤字家計をやりくりしていくために購買力が顕著に低下したことが主たる原因である。
・・後略
おわりに
・・北朝鮮(原語「北韓」-訳者)が政治的人権問題が深刻な社会だとすれば,韓国(原語「南韓」-訳者)は経済的人権問題が深刻な社会である・・後略

(リュ・ジョンスン 韓国貧困問題研究所長)
(さとう・しずか 東北大学大学院経済学研究科研究生)

免責事項:

私は弁護士ですが、このコラムは帰宅後ちょっとした時間にニュース等に触発されて思いつくまま随想的に書いているだけで、「弁護士としての専門的見地からの意見」ではありません。

私がその時に知っている曖昧な知識を下に書いているだけで、それぞれのテーマについて裏付け的調査・判例や政省令〜規則ガイドライン等を調べる時間もないので、うろ覚えのまま書いていることがほとんどです。

引用データ等もネット検索で出たものを安易に引用することが多く、吟味検証されたものでないために一方の立場に偏っている場合もあり、記憶だけで書いたものはデータや指導的判例学説等と違っている場合もあります。

一言でいえば、ここで書いた意見は「仕事」として書いているのではありませんので、『責任』を持てません。

また、個別の法律相談の回答ではありませんので、具体的事件処理にあたってはこのコラムの意見がそのまま通用しませんので、必ず別の弁護士等に依頼してその弁護士の意見に従って処理されるようにしてください。

このコラムは法律家ではあるが私の主観的関心・印象をそのまま書いている程度・客観的裏付けに基づかない雑感に過ぎないレベルと理解してお読みください。