中国購買力持続性3

個人であれ、国家であれ、収入以上の消費を煽ると・・いつか支払い不能が来ます。
アメリカは基軸通貨国ですから双子の赤字を繰り返しても払えなくなればドルの切り下げ・低金利とドル大量発行で「短期的には」どうにでもなります。
中国は人民元が暴落すればドル建て債務の支払額が比例してアップするので、苦しいときに支払額が増えるのではデフォルトになってしまいます。
中国政府が外貨準備の急激な減少(・・自慢の外貨準備が急減少しているのですからこれほど国威毀損の象徴的なことがありませんが・・)に目をつぶってでも、必死になって人民元相場維持を図っている所以です。
中国企業債務膨張の勢いの激しさが昨年来注目されていますが、債務膨張すればするほどいくら借金しても良いように、一刻も早く人民元を基軸通貨にしたいでしょうが、邪念がある・・債務を膨らませておいて踏み倒す目的が見え見えでは、相手国が怖くて人民元建て取引に応じたくなりません。
輸入代金を人民元決済でないと買わないと言われたら売る方は仕方がないから応じるとしてもリスク回避のために先物市場で直ぐにドルに替えてしまいますので、人民元下落を防げません。
売る方にとっては、ドル取引で買ってくれる企業に売った方がリスクが少ないので、人民元決裁にこだわる中国企業は割高な物を買わされるしかなくなります。
中国企業にとっても人民元決裁輸出すると代金を受け取るときに相場下落していると大損です。
5月11日日経朝刊1面「中国と世界」欄には、人民元取引世界シェアーが、昨年8月に日本を抜いて2、79%だったのが、今年3月には1、88%に後退し、日本の円取引が4位に上がり、人民元が5位に下がったと紹介されています。
この結果を見ると、人民元のシェアーが急激に低下している・・海外脱出用の人民元取引が増えているでしょうが、結果的に総取引数が減っている証拠です。
ここまで国際取引に於ける中国のシェアーが低下している状態でなお、中国の札ビラ外交維持目的で内需比率・国民の購買力アップを本当に出来るのでしょうか?
資源等の爆買いが出来なくなったので、観光客絞り込みによる威力誇示と言うケチな手段に移っているようですが、これもいつまで続くかでしょう。
昨年から日本に中国人が殺到しているのはデモで騒いだ香港や、親中派の国民党が選挙で負けたことの意趣返しに香港、台湾への旅行客を4〜5割も縮小した分の振替先になっているだけのようです。
中国は表向き威張っているが本音は何とか日本と修復したい意思表示で旅行者を送って(やって)いるが、日本がこの気持ちを酌まないでいつまでも反中ならば香港・台湾のように蛇口をいつでも占めることが出来るぞ!と言う露骨な態度です。
これが2週間ほど前に岸田外相が訪中したときに中国の序列何百位まで行かないまでもかなり下位の「外相?」が、「反中行動するな」と言う自分は何様か?と言うべき高飛車な「4つの要求」がマスコミを賑わしました。
中国人旅行者の爆買いその内収まるのは自然の流れですからそれが嫌がらせによって粋り縮小するか程度の違いでしかありませんから、「レアア−ス同様にやれるならやったら良いでしょう」と言うのが日本の態度です。
日本は民主党政権時代に衝突を繰り返した中国の乱暴な行為を非公開にしていたことがありますが、今の政権は英国のように中国政府の「無礼な発言」を隠すのではなく、そのままマスコミ公開しています。
外国旅行に必要な証明書の発行を特定国向けを故意に遅くしたり事実上絞り込む結果、台湾香港へ行くのがイキナリ4〜5割も減ったりする・・嫌がらせ力の誇示をしているようです。
12日の日経朝刊には欧州でも中国人客が激減していてブランド品の売れ行きが急減している様子も出ていますので、全体として購買力が落ち込んでいることを隠すために減ってしまった旅行客を日本向けに絞って香港・台湾へのイヤガラセをしているフリ?他方で日本へ恩を着せていつでも他所へ振り向けるぞ!と威嚇に使えるように戦略的に?利用しているだけのように見えます。
日本人から見ればこんなこと見え透いたことをすると却って嫌われるのですが、中国の場合、どうだ!と威張ることに誇りを見いだす国民性?・・例のレアアース禁輸のような繰り返しをまだ期待しているのでしょうか?
旅行客・買い物も国力・購買力減退に比例して減って行くのは当然ですから、これを政権の都合で戦略的に?特定国に絞って脅し・スカしに使ってもどうなるものではありません。
輸入買い物は外貨準備の範囲しか輸入出来ない現実があるので、スターリンが国民から穀物を取り上げて何千万人も餓死させてまで穀物輸出をしていたように国民窮乏化による貿易黒字政策しかないかも知れません。
いわゆる出血赤字の輸出政策は国民窮乏化政策と同じです。
すなわちある製品を100トン生産するのに原材料を5億円で輸入してその他コストを加えて5億円かけて7億円で赤字販売・輸出すると、貿易収支としては2億円の黒字ですが、国内コスト・・電気や人件費・運賃その他5億円の内、2億円しか国内関係者が払ってもらえない・・100トン輸出するたびに国民は3億円損させられる関係になります。
これがスターリンがやっていた貿易黒字の内実で、スターリンの場合生死に直結する穀物だったので何千万国民が餓死することになったカラクリです。
中国の場合穀物を取り上げでないので直接餓死には結びつかないでしょうが、その分下請け代金削減や未払い続出等で弱者を苦しめて回り回って国民が窮乏化して行きます。
これでは貿易黒字さえあれば、内需拡大出来ることにはなりません。
出血輸出による貿易黒字は内需拡大どころか内需縮小に直結して輸入が減るので諸外国に取っては買ってくれることによる恩恵がなくなり、一方でダンピング輸出によって諸外国の産業も被害を受ける・・不況の輸出ですから、迷惑行為でしかありません。
大量に買ってくれていた中国が買わなくなって逆にダンピング輸出で迷惑をかけるようになると今まで仕方なしに我慢していた国が中国の無茶な要求をそのまま聞く訳がないので、発言力が低下する一方になります。

内需拡大と所得再分配(非民主国と対外冒険主義)

貧しい国では、庶民にお金が行き渡らなくとも、先ずは国家規模の黒字を大きくしたい気持ちも必要性も理解出来ます。
その段階では威張るのは早過ぎるのですが、すぐに威張り散らしたくなるところが中韓両国民の底が浅いところなのか、あるいは成果が国民に行き渡らない不満が嵩じて来た結果も知れませんが、不満そらしに対外威嚇を始めたのではうまく行く訳がありません。
難しい対外交渉は本来「満を持して」行なうべきなのに、苦し紛れに言いがかり的に打って出るのでは、名分がない分だけでもマイナスから始まるので多くは失敗します。
昨日からネットニュースになっていて今朝の日経朝刊に出ていますが、昨年習近平の英国訪問についてエリザベス女王が「中国は無礼」だったと言う発言がカメラに拾われていたことが大ニュースになっています。
AIIBへのイギリス参加など英中蜜月演出のための訪問でしたが、イギリスの足下を見た習近平の横柄な態度にイギリスが内心怒っていることが表面化したものです。
札ビラに頼る外交は不満をその分高めている・・本当の敵を作っていることに気が付いていない・・札ビラ外交の場合、内心反感を持たれている関係で札ビラの威力がなくなるとすぐに力を失います。
中国の横暴な発言力・行動力の源泉が札ビラ・力ずくしかないから、中国の購買力持続性に関するテーマでこのシリーズを書いています。
我が国は戦後70年間道義に基づく外交をして来たので、日本をけなすことに存在価値を置いている中韓政府を除けば世界中が信頼してくれています。
信頼に基づいて発言を求められてから遠慮ガチにする発言と誰も聞きたくないのに、金や軍事力を背景に偉そうに言うのとでは、影響力がまるで違います。
中国は黒字蓄積・・大盤振る舞いによる強引な対外威嚇が効かなくなって来たので、今度は内需拡大による輸入拡大→発言力維持策に移行していますが、内需重視政策こそは民主政治化・・国民を大切にしないとうまく行かないので共産党独裁政治に対する試金石です。
内需拡大のためには国民を豊かに・・政府と国民、あるいは共産党幹部や財閥と国民間の所得分配公平化への改革が先決・・待ったなしになって来る筈です。
内需拡大→所得分配公平化のためには、既得権益層に切り込む必要があるのにそれが出来ない場合、国民に金を貸して誤摩化す道を選んで来たのが韓国ですしアメリカのサブプライムローンでした。
言わば先進国がアフリカなど最貧国相手にODAでお金を貸して(貸し主としての事実上の支配継続)製品輸出市場にして来たことを国内でやって来た状態です。
時々最貧国への債務免除がテーマになりますが、韓国でも過去に何回も徳政令が出されて来たと言われます。
韓国の場合大手企業の大半が欧米に買収されて支配されている・・経済植民地支配を受けている状態ですから、正に形を変えた経済支配を甘受している状態です。
中国の場合、資源等の爆買いをテコにした発言力誇示に無理が来たので、貧しくとも人口さえ増やせば人口比で消費が増える→発言力が上がるという倒錯した発想・・折角鄧小平の始めた人口抑制策緩和・人口増に先祖帰りして来たようです。
国民のための政府であれば、指導者の?発言力アップよりは国民の生活水準アップが先決でしょうが、そうはならないところが国民のための政権ではない共産党政権の本質を表しています。
トランプ氏の主張は、海外駐留軍経費を減らす・移民禁止など言い方が乱暴なために批判があるものの、為政者が外国で威張ったり国際会議等でチヤホヤ・よい待遇を受けるために国費を使うのに反対と言うもので、国民のための主張・・民主国家の本質に合っています。
中国政府も国外で威張っても意味がないことは分ってはいるが、経済実態が悪過ぎて、きれいごとを言ってられない・・仕方がないから対外成果を強調するしかない状態なのかも知れません。
ロシアだって経済がうまく行っていたら、ウクライナ侵攻・クリミヤ併合事件は起きなかったと思われます。
経済の苦しいときにシリアまで出て行って空爆する巨額経費を何のために掛けていたかです。
経済的には何のメリットもないどころか大損でしょう。
損をしてでも対外威力を示せば国民が喜ぶ?非合理な国民性があるからです。
そんな火遊びばかりでは国民が余計窮乏化して行きます。
ところで、経済が最悪であっても必ずしも対外冒険主義に走るとは限りません。
ソ連崩壊時・中国の改革開放時には今よりももっと酷い状態でしたが、酷い状態にした責任者がいれ変わっていたことが大きな違いです。
鄧小平にしろエリツイン→プーチンにしろ酷い状態は前時代の責任であって、「これからどん底から這い上がるぞ!」と国民に夢を持たせられたので我慢を強いられたのです。
現在のプーチンは自分の長期政権の結果ですから、責任転嫁出来ませんから対外冒険主義に出ていると解釈出来ます。
習近平の場合、彼の就任前から実体的には経済悪化が始まっていた・・リーマンショック後の約50兆円の財政資金投入による過剰投資・・その後始末に困った反日暴動も彼の就任前から始まっていたし・・本来彼個人責任の問題ではありません。
彼にはゴルパチョフのように過去の政体を破壊し、新体制を標榜するほどの勇気も力量もないので、(安心して選ばれたと思われます)ずるずると共産党政権延命のために前政権が始めた対外膨張活動の延長政策をしているに過ぎないように見えます。
円満退陣して行く仕組みがないと(独裁者失脚の末路は悲惨ですから)為政者が簡単に引き下がれない・・悪あがきするようになるようです。
こうして見ると政治家は(大規模天災や日本政府に責任のないリーマンショックや原油下落など外的要因によるとしても)結果が悪ければ円満退陣する仕組み(選挙)の必要性が分ります。

中国購買力持続性2

中国としては巨大市場をてこに強引な主張を押し通すには、世界への輸出前提の生産力増によっていると世界での競争力次第になってしまうので、(まだローエンド製品しか作れない現実があって)無理があることが分りました。
かと言って威張り始めた行為を国内政治上やめられないとなれば、自分が最終消費者・内需拡大に走るしかない・・人民の購買力アップと人口増加政策に戻るしかない状況です。
この程度のことはアタマでは分っていたからか、1昨年あたりから最低賃金の連続引き揚げと一人っ子政策の修正が始まりました。
ローエンド製品しか作れない状態から技術力アップしたことによる最低賃金引き揚げならば合理的ですが、何らの技術力アップもないまま世界で威張るための賃金引き揚げでは、引き上げた分に比例して国際競争力が下がります。
反日暴動に驚いた日本の投資先変更と相俟ってベトナム,ラオス・バングラディッシュなどに工場移転が進んでしまいました。
中国資本の製鉄や造船、石化事業などの装置型産業は過剰生産(赤字生産)に喘ぎ、組み立て加工系はドンドン東南アジアに移転する・・工場閉鎖ラッシュの二重苦になっている・・加工工場が閉鎖されると、これに必要な原材料輸入も減って来たのが現在中国です。
韓国もGDP比貿易比率が高過ぎる・・内需の弱い国・個人債務率の高い国ですが・・共通項は、国民を貧しいままにして来たことです。
やるべきことは所得分配率を変えることですが共産党幹部の取り分を変えたくないから、幹部の取り分をそのままにして最低賃金だけ引き上げるからおかしなことになるのです。
共産党幹部は何百億と蓄財して海外に隠匿している状態のママ「国民が貧しいから・・」と進出した海外企業に賃金引き揚げを通告する・・市場経済国から見れば考えられない勝手過ぎる政策ですが,そんな無茶をしているから海外に資本が逃げ出したのです。
国民の手取りを増やすには、売り上げを増やして労使(中国の場合+共産党幹部の賄賂)で分け合うか幹部の賄賂を減らすしかありませんが、賃金だけ上げろとなれば、製品価格に跳ね返る・・ひいては国際競争力低下・売上減になるのは当然です。
アメリカでさえ、中国の製造業人件費と競争力があるようになったと豪語している状態です。
中国の裸官の酷さは有名ですが、従来からタックスヘイブン騒動の元になっているパナマ文書が全面公開されたと昨日の日経夕刊に報道されています。
これによると全21万社中、中国人が突出してなんと2、5万人・法人であると一面トップで報道されています。
次が香港1万5000、イギリス5000人の順らしく日本は桁違いの400人(社)だけです。
(昨日は第1報なので今後徐々に内容的に絞られて来るでしょう・・今朝の新聞では名簿重複があって、日本人は230人だけと絞られて来たようです・・この230人も今朝のmsnニュースによるとパナマ文書記載の住所に行くと、「中国人留学生がいる古びたアパートだった」など日本の住所・偽名取引しているらしい実態も出ています・・・・)
パナマ文書はタックスヘイブンの一部でしかありませんが、大方の傾向を示している・・中国の不公正所得者規模の一端があぶり出された印象です。
この利用者全員が、所得自体に不正があると言うのではなく節税の疑いがテーマですが、中国の場合公務員の給与が安い幹部の場合、大金を持っているか自体が不正所得の疑いが濃厚になります。
昨年夏と今年の年初に起きた上海株式市場の異変に対する対応の拙劣さ・・経済原理を無視した乱暴な政策が多過ぎるのをみると、これまで技術導入による単純経済運営・・一本調子の成長の陰に隠れていた中国の国家運営の実力・・地金が文字どおり出て来た感じです。
韓国の場合も貿易黒字獲得目標達成のために邁進して来た結果、財閥の取り分(中国の場合国有企業)が肥大し過ぎていて内需比率が低過ぎる点が今になると弱点と言われていますが、これを改めないまま内需振興策を取るとどうなるか、金融緩和の結果財閥系従業員以外の庶民が消費者金融に頼る弊害が表面化して来ています。
中韓共に国民の福利を無視して来た結果、社会保障制度はまだ始めたばかりでマトモな年金支給が出来ないので(先老不富)コクミンは不安で仕方がない・・少しお金が出来ても貯蓄するしかありませんし、どうせ苦しい人は借りる額を増やす一方の無責任社会になります。

中国購買力持続性1

中国は改革解放当初・日米欧に大幅な遅れを取ったのは、人口が多過ぎるので国民レベルを挙げ切れない失敗と理解して、毛沢東の人口爆発政策が間違いだったことを前提として一人っ子政策に変更していました。
中国は解放以降数年前まで製鉄、造船,鉄道、石化事業その他生産力の巨大化こそが、国力の源泉・・19世紀型思考に染まって(市場原理の働かない国ですから)需要無視の生産力増強・・設備投資に走っていました。
需要無視の過大生産開始の過程でいわゆる資材・原料の爆買いを始めたところ、欧米メーカーやオーストラリアその他がこれが永久に続くと誤解して(多くのエコノミストは直線的に拡大して行く前提でもうすぐにアメリカを追い越すと言う予想が普通でした)中国の主張に何でもなびく傾向が出て来ました。
これに気を良くした中国がアメリカが勝手なルールを次々と打ち出しても世界が従うしかない原理・・強制出来る強みの源泉が巨大な市場・購買力にあることに気が付いたようです。
購買力に世界がなびくならば人口比で対アメリカで将来的に「中国の勝ち」と決めつけたのが、当面の太平洋2分論です。
反日暴動はこの手始め・・日本が巨大市場の中国に輸出・工場進出を続けたければ屈服するしかないと言う思惑・・・脅しで始めたものです。
日本に対するだけではなく世界中に向かって中国が同時に無茶・横柄な態度を示し始めたのは、アメリカのやり方を学んだ・・巨大市場を維持している限り無茶をやっても世界が従うしかない・・媚びて来るだろうと足下を読んだからですし、実際に西欧諸国や韓国は既に中国に明からさまになびき始めています。
フィリッピンが領海問題で抵抗すると早速バナナ輸入制限措置をされて慌ててしまい、あまり強く出られない状態です。
オーストラリアその他ASEAN諸国も不満があっても資源その他を買ってくれるのでなびくか、面と向かって中国の横暴に声をあげられない状態になっています。
特に西欧諸国にとっては南シナ海問題は直接の利害がない・・これと言った無茶を言われていないこともあって、ほとんど気になっていません。
日本の場合、尖閣諸島侵犯に絶対に退かないし反日暴動が起きると→ASEANへの新規投資振替・・逆懲罰に出ていますし、レアアース禁輸に対しても調達先開拓で逆襲に成功しています。
日本の動きによって、中国が大量生産国になったと言っても実は先進国(日本)からの部品供給による加工組み立てで成り立っているに過ぎない・・高度部品を買わないと自国産業が成り立たない先進国相手に禁輸や不買運動など出来る訳がないことを理解したようです。
購入品が最終消費ならば消費者の気分次第でボイコットも可能ですが、加工貿易の部材購入の場合自分勝手・気分次第とは行きません。
日本を敵視した穴埋めのために独仏に秋波を送り、独仏とも喜んで参入にいそしんでいる・・何かと中国の肩を持つようになっていますが、独仏と日本では植民地支配の様式を見ても分るように技術移転の心構えが違うのでうまく行ってないようです。
最終消費の場である商店の焼き討ちは出来ても、工場はオヤ会社から部品・半製品供給供給がないと最終組み立て加工生産が出来ません。
中国が資源購入国相手には一時的に爆買いを前提に大きな顔を出来て来たことは確かですが、生産輸出のための原材料輸入である以上購買力無視の生産は限界が来ました。
中国が原材料を爆買いして来たのは内需によるものではなく、過剰生産力→輸出を前提にするものですから、設備が出来上がって稼働を始めると過剰生産問題・・買い手がいない現実に直面します。
稼働を始めると(借り物技術ですから製品競争力がある訳ではなく、ローエンド製品を沢山作っただけが自慢では出血(赤字販売)輸出するしかない状態になって、世界経済の撹乱要因になっている状態です。
赤字輸出を垂れ流しをすると競合製品国は困りますが、出血輸出とは言い換えればその多くを占める原材料コストを回収出来ない状態ですから、仕入れを止めるか従来どおり高い値段で買えないので、仕入単価・・資源単価が下がるしかありません。
中国の需要無視の巨大な原材料輸入が昨年来激減して来たのが昨年来の原油その他資源・国際物流市況の急激な下落原因です。
こうなると中国の爆買いを原動力とする中国の強引・乱暴な政策は出ばなをくじかれた状態です。
5月8日の日経朝刊5pには建機最大手のコマツ社長のインタビュー記事が出ていますが、これによると2010年にはショベルの世界販売の50%が中国で販売されていたが15年には1割に下がっていると書いています。
5月9日日経新聞朝刊4pには、中国の輸入が(安値を利用して備蓄用原油の輸入拡大しているにも拘らず)18ヶ月連続減と出ています。
一定期間経過で在庫がなくなれば、赤字販売・輸出のために生産する必要がなくなる・・出血輸出で稼いでいる結果、上記のとおり輸入が18ヶ月連続減ってもなお黒字状態・貿易黒字微減と書いていますが・・そのうち微減では収まらなくなるでしょう。
上記に比例して発言力縮小が始まっている筈です。

トランプ旋風(アメリカのプレゼンス縮小)

国民のいらだちを利用して選挙に勝ってもモノゴトがそのとおり解決出来る訳ではありません。
例えばフィリッピンに駐留しベトナムに寄港して何のメリットがあるんだ!と国民を煽ってもコストに比例して中国が引っ込む義理がありません。
勿論中東地域のテロ組織もアメリカに対する義理で引っ込む訳がありません。
結果的に駐留・巡回経費を現地政府が何%まで負担するかの交渉しかないでしょう。
駐留軍と同じ規模の軍を維持出来ないから大国の応援を求めているのが小国ですから、全額自分で必要な軍事力を持てるならば応援が要らない理屈です。
ただ常備軍を維持するよりは必要なときだけピンチヒッターで来てもらう方がコストが安く済む非正規雇用的メリットがあります。
人質的にアメリカ軍がいると攻撃され難い利点もありますが・・・。
韓国に配備したにMDA(ミサイル防衛システム)は韓国防衛に役に立つのか?アメリカ防衛のためにあるのかの議論も出て来ますし、沖縄駐留軍は太平洋艦隊全部の後方・・基本基地ですから、日本の負担割合はどうあるべきかの議論も起きてきます。
ソモソモ日本防衛だけならばそんな大きな基地は要らないと言う議論もあり得ます。
現実的解決には、駐留経費負担増など・・複雑な交渉力が必要になり(交渉しているといつの間にか負けてしまうので)アメリカ国民のストレスが溜まる一方になります。
旧ソ連が保持していたベトナムのカムラン湾寄港権益をロシアが放棄?しているように維持経費が負担になればやめるしかないのが経済原理です。
トランプ氏であろうとなかろうとアメリカの国力低下に合わせて、無駄な費用負担出来ない・・結果的にアメリカのプレゼンスが下がる一方になって行くしかないでしょう。
トランプ氏の乱暴な主張が支持を受けるようになったのは、元々シリア情勢の複雑化・中国の挑戦・ロシアによるウクライナ問題に象徴されるアメリカ政府の国際的指導力不足・・アメリカ自身が主導して始めた来たTPPもいつの間にか日本に良いようにやられてしまった気分・・複雑な交渉に対応出来ないことに対する国民のいらだちが基礎にあります。
複雑交渉に達しない能力を国力でごり押しして来たのが(国力低下で)今まで通りに行かなくなっただけです。
第二次世界大戦も「欧州情勢は複雑怪奇」と日本の平沼総理が言ったように、アメリカも手に負えないので複雑な情勢から身を引いていたところにイギリスのたっての救援要請に応じて最後に腕力だけで介入したに過ぎません。
これまでアメリカがやれたのは問答無用の単純な腕力行使だけでした。
複雑な政治交渉が必要な戦後処理では結果的に良いようにスターリンにやられてしまったことは既に書いたとおりです。
世界支配力がジリ貧になって来た以上は、本来ならばもっと巧妙複雑な駆け引きが出来る指導者を選ぶべきと選挙戦では主張すべきところ、それに対応する国民レベルにないことを知っているから単純明快な二択的主張になっているのでしょう。 
第二次世界大戦同様に複雑な途中経過には(能力に余るので)関与しないで、最後に出て行けば良いと言う主張でしょうか? 
第一次大戦後ウイルソン大統領が提唱しておきながらアメリカが国際連盟に入らなかったり、今回もアメリカ主導で始めたTPPが思うようにならないのに業を煮やして?反対しているなど戦後はユネスコの運営が気に入らないと直ぐに費用負担を停止するなどやることなすことが単純な「ちゃぶ台返し」ばかりです。
トランプ氏の主張は、モンロー主義で知られるようにアメリカがこれまで繰り返して来たボイコット・・ちゃぶ台返しを繰り返してきたことの再現主張であって、別に目新しいことではありません。
第二次世界大戦での軍事貢献が大きかったので、おだてられて能力を超えて重要な役割を担い、口を出し過ぎていたことを反省しているのならば「分際」に気が付いた意味で合理的です。
ただ、過去にはまだ新参・青二才扱いであまり複雑なことにコミットしていませんでしたが、今はあまりにも世界中にコミットし過ぎていますので、イキナリボイコットするのは無理があります。
ボイコットするにも(やりかけた仕事を途中で投げ出すことは出来ないのが世のルールです)軟着陸の過程が必要ですが、その能力があるのでしょうか?
撤退縮小戦略ほど難しいことはないと言うのが私の持論ですが、これを無茶苦茶・例えば相手を脅して強引に妥協を引き出す・・トランプ氏はこれが得意なようですが・・イエスORノーの二択・乱暴なやり方で来ると・日本だけでなく世界中が混乱します。
いずれにせよ、アメリカのコミットを減らすべき方向性は実態に合っていることは確かですし、アメリカの腕力の恩恵を受けて来た国にとっては一大事です。

免責事項:

私は弁護士ですが、このコラムは帰宅後ちょっとした時間にニュース等に触発されて思いつくまま随想的に書いているだけで、「弁護士としての専門的見地からの意見」ではありません。

私がその時に知っている曖昧な知識を下に書いているだけで、それぞれのテーマについて裏付け的調査・判例や政省令〜規則ガイドライン等を調べる時間もないので、うろ覚えのまま書いていることがほとんどです。

引用データ等もネット検索で出たものを安易に引用することが多く、吟味検証されたものでないために一方の立場に偏っている場合もあり、記憶だけで書いたものはデータや指導的判例学説等と違っている場合もあります。

一言でいえば、ここで書いた意見は「仕事」として書いているのではありませんので、『責任』を持てません。

また、個別の法律相談の回答ではありませんので、具体的事件処理にあたってはこのコラムの意見がそのまま通用しませんので、必ず別の弁護士等に依頼してその弁護士の意見に従って処理されるようにしてください。

このコラムは法律家ではあるが私の主観的関心・印象をそのまま書いている程度・客観的裏付けに基づかない雑感に過ぎないレベルと理解してお読みください。