アメリカの軍事費分担要求

軍事費分担問題に戻りますと、トランプ氏の要求は選挙用に単純化して基地維持費の負担増を主張しているだけであって、問題は日本駐留の軍事基地コスト分担だけの問題ではありません。
仮に沖縄からグアムに移転しても南シナ海等のシーレーンを守って欲しいならば、シーレーン防衛分担金を払う必要がある点は変わりません。
(ソマリア沖の海賊対策に、日本も既に自衛隊を出しています)
自分のムラでの犯罪ではなくとも隣村の捜査に協力するように、世界の安全は相互作用で成り立っています。
日常経費である基地維持費の分担金比率上げの外に、有事の出動費はその地域で全額持てと言う時代が来るのでしょう。
西太平洋全域の防衛能力をグアムが持つようになると、当然グアム島だけを守るのに必要な防衛力の何十倍もの軍事力になります。
警察署は自分の建物に対する泥棒除け以上の防衛力を持っているので警察署への強盗がはいらないのと同じです。
沖縄基地が、周辺海域全部の防衛を兼ねている以上は、沖縄(あるいは日本列島全域)防衛に必要以上の軍事力ですから沖縄を攻撃するのには、周辺海域全部と戦う以上の攻撃力が必要になります。
沖縄を狙う勢力にとっては沖縄駐留米軍を一日も早くグアムへ移転させたいのは当然です。
ある家に強盗に入ろうとする場合,隣近所にある警察署がなくなる方が便利です。
米軍がグアムへ行ってもイザとなれば応援に来れれば同じことですが、その場にいるのとワザワザ遠くから出て来るには相応の決断がいるので、実戦的には大きな違いです。
国や地域全体では守備隊がいた方が安心ですが、基地や警察を狙うテロが頻発すると近くに基地があると逆に危険感が増しますし、テロ被害がなくともジェット機の発達で騒音被害などが生じます。
このように経費負担しても良いから来て欲しい・・警察署や軍事基地が近い方が良いのか遠い方が良いのかは、国民の価値観によりますし、時代状況にもよるでしょう。
アメリカは世界の警察官役(軍事的睨み)をやっている結果,(日本など基地所在国に相応の分担をさせて)自国防衛に必要以上の巨大軍事力を維持出来ている・・世界先端兵器の開発や維持が出来ているのですから、世界の警察官(軍事解決)役を単純放棄すると、自国だけの防衛能力維持すらも怪しくなって行きます。
ですから、トランプ氏が大統領になっても誰がなってもアメリカ自身の国際競争力の低下→経済力縮小に応じて徐々に軍事力削減して行く方向は変わらないと思われますが、強大な軍事力を背景とするいろんな利権(軍需産業だけではなく派生する波及効果)と結びついているので軍事力削減は単純ではありません。
そこで守って欲しいならば、分担金を払えと行って、よその国の経費で一定の軍事力維持を図っていく方向になります。
アメリカは日本や独逸に物造りでは負け始めて久しいですが、今残っているアメリカの強みはユダヤ系の得意な金融の外、知財関係ですが知財は高度な軍需産業の存在と密接に関連しています。
軍需産業を縮小すると知財の足腰が弱ってきます。
経済活動の大方が物造りに関連しているので、金融や軍需産業とその関連で派生する知財産業の優位性だけでアメリカの巨大な人口を養うには無理がありますし、多くの人に職場提供することも出来ませんので知財や金融に特化すればするほど大きな人口は無駄=マイナス要因になります。
世上人口ボーナス、オーナス論が盛んで(私はこれに基本的反対であることはあちこちに書いてきました)これにそってアメリカもEUも移民を増やして来ました。
移民の大多数は底辺労働者=平均賃金以下ですから、アメリカや欧州が移民を入れれば入れるほど金融・知財収入で養う人口が増える・・負担が増える一方になります。
知財(アップルの大成功で労働者が増えたのは低賃金工場のある中国であってアメリカでは殆ど雇用に役立っていません)や金融に頼る社会は、一握りの億万長者と無職失業・低賃金労働者の2極分化社会ですから、当然格差社会化が進みます。
イギリスはアメリカよりも1世代以上早く製造業で負けてしまい金融に特化して来たので、格差が顕著になって来た・・これがEU離脱を勢いづかせている基礎的経済背景です。
EU離脱論は憂さ晴らし的に難民流入が行けないと言うスローガンに飛びついていますが、社会構造が中間層不要・・未熟練動労働者=非正規・移民で充分の状態が背景にあります。
マスコミは、「移民反対と言うけれどもこの地域の農業は移民が過酷な労働に耐えているから成り立っている現実がある」と言うイギリス農業の紹介が時々出ます。
工場の低賃金労働も移民が働いているから成り立っている現実→これがまた移民が職を奪うと言う主張と重なっていますが・・・。
アメリカの工賃が中国に負けないくらいに下がっていることをアメリカが豪語し国内製造業回帰を宣伝出来るのは、低賃金労働を厭わない移民増加の御陰でしょうが、裏から言えばその分低賃金層増加・格差拡大に繋がっています。
アメリカの移民排斥を主張するトランプ氏の本音は格差拡大の不満を移民排斥論にすり替えている点ではイギリスのEU離脱論と同じでしょう。
格差拡大反対だとスケープゴートを仕立て上げ難い・精々金融機関が儲け過ぎと言う程度ですが、移民反対の方が標的を作り上げ易い・・大衆をあおり易いからです。

過大消費と消費者破綻(資金環流策)

ちょっと軍事費負担能力から話題がズレますが、軍事費も含めたアメリカの過大(収入以上の)消費について書いて行きます。
ニクソンショック以降のアメリカの消費力維持は国際収支黒字国に付け回す・・いわゆる資金環流によっていたことを連載したことがあります。
資金環流とは何か・・言い換えれば、借金で収入以上の生活を国家ぐるみでして来たことになります。
現在の世界経済における巨大不安の根源は、アメリカが自己資金・対応する労働収入以上の消費を何十年も続けて来た無理に対する不安です。
収入以上の消費をして来た結果,20世紀に入ってから長年の蓄積を食いつぶしてしまった結果の第一次破綻がリーマンショックであり、その余震が南欧諸国の経済危機ですが、アメリカ社会が過大消費を改めるどころか、異次元緩和によって消費の下支えをして来ました。
この点は中国がバブル崩壊ショックを緩めるために国内再投資拡大しているようなもの・・誰も中国に対するような批判していませんが、中国の破綻先送りと本質は同じです。 
アメリカはリーマンショックの教訓を忘れて?過大消費復活モードに入っている=貿易赤字拡大する→資金環流促進が必要だが、このまま低金利が続くと逆にアメリカへの資金環流が縮小するリスクがあるのでFRBは必死になって一刻も早い金利引き上げ時期・・消費抑制+資金環流促進を探っている状態です。
この利上げのタイミングがうまく行かないので、さしあたり対米貿易黒字国に対する円高要求等・・相手国為替が切り上がると輸入物価が上がる→消費抑制になるし赤字も減ると言う目論見・・金利上げと結果は同じ目論みに繋がって来た原因です。
そこが堅実消費社会・・金利の上下はそれほど消費に影響しない日本との違いです。
最近の根源的不安はアメリカの第二次破綻が迫って来ていて、その帳尻合わせに苦しみ出したことに根源があって、それのキッ掛けになろうとしているのが中国の破綻現実化局面です。
中国がリーマンショックによる消費減退の穴埋め役を担当して、環境も何も無視した無茶な消費をアメリカにおだてられるままにやってしまった・・約50兆円投入して無茶な内需拡大・・いわゆる中国の爆買いをした結果、今そのツケ・帳尻合わせが出来ずに苦しんでいる状態です。
例えば個人の懐ならば、1000万円の蓄積があるときに海外旅行などで贅沢して500万円使ってもまだ500万円残っているときに、今年から旅行をやめればどうってことない筈ですが、国家経済はそうは行きません。
個人の場合でも旅行や観劇消費と違って環境健康無視の「ドカ食い」の場合、健康被害や公害が残る・・後始末の費用が必要であるように消費の仕方にもよります。
中国の場合、50兆円消費するために新幹線や高速道路やビルを建てまくったので、製鐵、セメント会社などが設備投資して労働者を雇っているので、来年からゼロです・・これ以上作りませんと言う訳には行きません。
長野オリンピックの後で地元企業が苦しんだ大型判です。
中国は企業をバタバタと潰す訳に行かないので、需要がなくとも無駄な工事をイキナリゼロにしてやめる訳に行かない・・苦しいところです。
個人商店でも商売を辞めようとすれば、相応の後始末資金を残しておく必要・・大企業で言えば工場閉鎖やリストラなどをするには損失計上体力が必要です。
上記例で言えば、中国が50兆円使ってもまだ50兆円残っている段階で縮小に転じても、大混乱回避・・ゾンビ企業延命のために残りの資金供給が必要ですが、残りの金で足りるかどうか・・途中で足りなくなって破産するかどうかが注目の的になっている状態です。
個人の場合計算さえあっていれば良いのですが、国家の場合、市場の信用次第・・本来足りる筈なのに、(政府の信用度が低いと)信用不安でドンドン資金流出して行き、折角の外貨準備を崩して買い支える必要があるので、十分足りる予定だった資金が半分〜3分の1も使えないうちにデフォルトになる危険があります。
今中国はこの過程・・国際金融資本家〜小金持の資本の海外逃避とのせめぎ合いで、外貨準備が日々流出している状態です。
ちなみに5月の外貨準備減少額は以下のとおりです。
[北京 7日 ロイター] – 中国人民銀行(中央銀行)が発表した5月末時点の外貨準備高は3兆1900億ドルで、2011年12月以来の低水準だった。ドル高や散発的な市場介入が影響した。
ロイター調査による予想は3兆2000億ドル、4月末時点は3兆2200億ドルだった。
5月の減少幅は279億ドルで、月間の減少としては2月以来の高水準。

人民元流出の主役はソロスなどのプロと言うよりは、中国を見限ったかその先が危ないと思う裸官その他の中国国内の小口資金保有者の国外資金逃避のために合法取引を装って両替申請する・・人民銀行はドル不足になって外貨を取り崩す繰り返しです。
中国2000年間専制王朝を崩壊させて来た農民の流民化と同じ現象が、資金逃避と言う形で始まっています。
ただ、中国の外貨準備が急減するとアメリカの過大消費をファイナンスしていた資金が流出→消滅する危険があります。
これをアメリカががどうやって穴埋め・ファイナンスするかの悩みです。
その穴埋めにパナマ文書等に始まる・・タックスヘイブン摘発がイキナリマスコミを賑わすようになった原因のように見えます。
アメリカ国内のデラウエア州にタックスヘイブンがあって、そこにはアメリカは手を入れない・・特殊扱いが知られています。
要はアメリカ国内に資金を持ち込むならば、目をつむると言うアナウンス・摘発方式です。
結果的に中国を筆頭にした逃避資金はドンドンアメリカ国内に非合法に集まって行きます。
アメリカは中国政府を資金流出で追い込みながら、自身は非合法資金を集めてでファイナンスされているので、当面金利を上げる必要がない・・消費抑制には上記のとおり円高などを要求すれば良い状態です。
非合法資金の摘発と称して世界中の非合法資金を脅して、非合法資金の摘発を受けない「安全地帯」アメリカ国内に集める政策をとっているのです・・もちろん根拠のない穿った見方です。

世界ルールの必要性1

国内外で警察・・秩序維持が必要と言うことはネット空間利用のルールや知財剽窃やサイバーテロ行為等に関するルール造り・処罰の方法・裁判手続の合意が前提として必要となります。
その意味では中国外しかどうかは別にしてこれから必要な知財等紛争処理のルール(裁判手続まで)を決めたTPP合意成立は(批准出来るかどうかは別として)重要な一里塚になったでしょう。
高度な貿易・資本自由化や知財処理手続の合意では、中国にはレベルが高過ぎる(まだ完全自由化には無理がある)から中国には参加不可能→中国外しのシステム構築と言われています。
もっと自由に泥棒を続けたい者がその取締対策会議に参加してそれを守る約束をするのはイヤ・・意味がないのは当然です。
元々中国のレベルがまだ低過ぎてTPPレベルの規制は意味がないことは、承知の上でTPP交渉が始まっていました。
例えば東大の合格ラインを5点引き上げてもっと高度な大学を作ろうと言う場合、もともと4〜5流の私立大にも合格出来そうもない受験生には関係がないのと同じです。
TPPが成立すると、資本自由化の徹底その他知財等の高度なルールを守る気のない中国が除け者・・国際社会の落第生のイメージが明からさまになってメンツ丸つぶれになるので、TPPの成立をいやがっている中国を気にして韓国は不参加を表明していたのは当然と言えば当然です。
オバマの「世界の警察官をやれない」と言う意味は、国内だけルールがあれば良い、対外関係は弱肉強食で勝った方が相手を支配し奴隷化しても良いと言う西欧近代のやって来たルールに戻すべきと言うのでしょうか?
しかし、今やアメリカ企業も海外取り引きをしないで引きこもり・自国市場だけではやって行けません。
海外取引に際して相手のルール違反行為、あるいは海外からのサイバー攻撃で企業秘密を盗む勢力に対して国外の犯罪は関係ないと言い切れる時代ではありません。
モンロー主義時代のように太平洋や大西洋を隔てた遠くの大陸と言う特別な関係はありません。
結局は自国・アメリカ企業を守るためにも,1国主義は無理・・国際ルール造り・その裁定基盤(司法機関設置)が不可欠です。
国際ルールを作る以上は、これを守るようにする仕組みが欠かせません。
TPPが発効すると知財や資本規制関係の損害賠償事件はアメリカの裁判所に握られてしまうと言う反対論が多いですが、ルールを作る以上司法基盤のそろっているどこかで裁判して決着付けるしかない(・・今もいろんな国際司法決着はスイスやオランダなど欧州に集中しているのは基盤が充実しているからです)のは当然です。
この決着ルールがないから、アメリカが(国際合意手続を経ない)国内法を作って(・・最近では、対日関係では、不公正為替操作指定国認定の脅しが始まっています)イラクなど気に入らない国を指定して資金凍結したりするしかない・・乱暴なやり方になっている・・他方で中国の場合いくら違法行為をしていても相手が大き過ぎて全面資金凍結などの制裁を中国には出来ない・・中国がやりたい放題になっているのです。
TPP発効で個別案件ごとに賠償請求して行く・・これのやり方をデュープロセス・・国際合意に乗せるのは良いことです・・アメリカも独善的と言う国際批判に対する緩和材料になります。
警察官をやれないと言う意味は軍事力と切り離した警察力・司法機関不要までは意味しないし、警察や裁判制度維持資金を一人で出せないと言う程度の意味でしかありません。
アメリカは軍事力を背景にある程度強引なことをやって来たのですが、実はこう言うやり方は総合収支で見ると損をしているのが普通です。
だからこそ資金力のある期間(小さな同業組合の場合事務局を自企業の事務所で無償運営するなど)しか、昔からヘゲモニーを握れません。
いろんな同業組織の会長企業も、情報が早く入るなど少しは良い面もありますがトータルでは事務局負担など持ち出しが普通です。
ムラの有力者もお祭りで良い席に座れるものの、それ以上に多くの寄付をしたり会合場所を貸したりするのが普通です。
あるいは有力者が1つの方向を決めて組織を引っ張って行こうとする場合、先ず自ら(損な役回りを引き受けて)率先実行するしかないのが普通です。
日本で言えば、大平総理の急死の後を受けて鈴木善幸氏が総理になったとトキに、国鉄の赤字累積の解決が大騒ぎになっていて赤字の元凶である過疎地路線の切り離しが対症療法として俎上に登っていました。
鈴木善幸氏が自分の地盤である三陸鉄道だったか民営化・第三セクター化を率先して引き受けたことがあります。
蜥蜴のしっぽ切りでは間に合わないことから、次の中曽根総理のときに国鉄本体の民営化が断行されたのですが・・。
日本では世話役が先ず損な役割引き受けられるほどの度量と言うか力・(不利な役割を引き受けても地元が文句を言わない程度の信頼力)余裕を持っていないと前に進みません。
幕末会津藩も、幕末に京へ2000人規模の兵を進駐していたのですからもの凄い財政負担でしたが、それでも領民が一揆を起こさない信頼関係があったことが重要です。
佐倉藩堀田家は代々老中を出す家柄であった関係で田沼時代などに印旛沼干拓など幕府・公共事業を次々と引っ張り出すことに成功しています・・どれも洪水などで失敗に終わりましたが・・他方で佐倉宗吾郎の一揆事件が起きたのは、代々幕府役職に就くことによる自己負担が大き過ぎた割に・・領地替えがあったなどで地盤培養関係が弱かったことに遠因があります。
中国は自分がAIIBで主役を張りながら、自分の持ち出し以上に我田引水しようとするから無理があるのです。
トランプ氏の選挙スローガンは出すものを出さないで自分の言い分だけ通したいと言う子供のような主張・・こう言う主張は大衆受けし易いのは確かかも知れません。
資金分担が減って行けばそれに比例して発言力が下がりますから、それで良いかの覚悟がいるでしょう。
覚悟があろうとなかろうと金ドル交換停止のニクソンショック以降のアメリカは客観的に何でも気前よく自己資金を出せる状態でなくなっていることは確かです。
その意味では、トランプ氏が【現実を見よ!」と国民にその覚悟を問うているのかも知れません。
巨大な軍事力も、借金ではないけれども防衛してやると言う名目で?駐留先に一定の負担をさせて自国経済力で維持出来る以上の軍事力を維持出来て来た点では根本が同じです。
25年も前の湾岸戦争で日本が巨額出資を求められたように、アメリカは国際紛争解決のための資金(軍事力だけではなく警察・裁判システム維持)を自分だけで出し切れなくなって来ていることは確かです。
以下6月18日現在のウイキペデイアの「湾岸戦争」の記事からの引用です。
「湾岸戦争(わんがんせんそう、アラビア語: حرب الخليج الثانية‎)は、1990年8月2日にイラクのクウェート侵攻をきっかけに、国際連合が多国籍軍(連合軍)の派遣を決定し、1991年1月17日にイラクを空爆して始まった戦争である。
アメリカ合衆国議会の計算によると、アメリカ合衆国はこの戦争に611億ドルを費やした[42]。その内約520億ドルは他の諸国より支払われ、クウェート、サウジアラビアを含むペルシア湾岸諸国が360億ドル、日本が130億ドル(紛争周辺3か国に対する20億ドルの経済援助を含む)[43]、ドイツが70億ドルを支払った。サウジアラビアの出資のうち25%は、食糧や輸送といった軍へ用務という形で物納により支払われた[42] 。多国籍軍のうちアメリカ軍部隊はその74%を占め、包括的な出費はより大きくなされた。日本の戦費供出も、当時の自国防衛予算の約3割にあたる多額の支出が行われた。」

国際政治力学の流動化8(TPP漂流1)

TPPは約30年かけて準備して来たアメリカの日本外しの完成・・究極の決め手になる予定であったとすると、日本がTPPに入ってしまうと、これまで営々と構築して来た対日FTA包囲網が意味をなくしてしまいます。
TPPの方が各種FTAよりも数段高度な関税緩和ですから、もしもTPPが発効するとそれまでアメリカと締結して来たFTA国でTPPに入っていない諸国はその差だけ不利になります。
TPP参加国は小国ばかりで主な国は日本だけですから、対米貿易上アメリカは世界主要国で日本だけ優遇する結果になります。
オセロゲームで白黒がひっくり返った状態です。
政治力学変化がそうさせたのですが、自由競争とは競争上優位の国が自由に売りたいからか主張する原理ですから、アメリカは昭和40年代初頭からの日米繊維交渉以来何かとイチャモンをつけて来た流れを見ると、日本との関係では自由競争を回避したいのが本音です。
日本をTPPに入れてしまい対米競争力のある日本と無関税で競争・・アメリカが標榜する自由競争関係になると却って損するので、TPPの発効はアメリカにとって競争的にはマイナスになっているでしょう。
TPPが発効すれば日本も無理してアメリカに工場進出する必要がなくなります。
既にアメリカとNFTAのあるメキシコで生産しても同じと言うことで、この10年ほど自動車産業が猛烈にメキシコへの工場進出ドライブを掛けている→アメリカの空洞化が起きています。
これをトランプ候補が怒ってメキシコを目の敵にしているのですが、これ以上日本まで関税優遇になると、どうして良いか分らなくなるほど苦しくなります・・。
アメリカは今後国際競争力が低下して行く一方ですから、自由貿易主義の堅持は百害あって一利無し・・TPPを批准するメリットがなくなっている判断は、アメリカにとって合理的選択でしょう。
とは言え自由貿易主義こそがアメリカ的正義の唯一の拠り所ですから、(ソ連との冷戦に勝ったのは自由主義の勝利と言います・・当時アメリカは世界最強だったからですが・・))この旗を簡単におろす訳には行きません。
オバマによる世界の警察官をやめる宣言は、次の大統領の時代になれば更に一歩進めて(トランプ風に言えば)エゴ剥き出しで、中国のように(ルール違反も気にせずに)目先の金儲けのためには大っぴらにやりたいと言う意思表示かも知れません。
マスコミ紹介するトランプ氏の風貌からしても、(偏った印象を与えるために歪んだ顔ばかり強調するので信用出来ませんが)アメリカの自由主義とはエゴ剥き出し・・力さえあれば何でも出来る裸の自由主義のような印象です。
アメリカが世界の警察官をやめる場合、西欧支配の18〜19世紀型場面ではロシアや中国の始めた領土紛争の再現・・やり放題ですが、これは従来型強盗殺人等の分野であって今でも一定量発生するのはふせげないので、世界中がすごい経費を掛けて国防軍を備え不足に備えて同盟関係を結んでいます。
戦争は悲惨とは言うもののある程度組み込まれた現実ですので、世界大戦にならない限り世界の発展に実際に大きな影響はありません。
実際に人類の発展に世界的影響を受ける・・現在から将来へ向けて重要な国際ルールを誰も守らなくなればどうなるでしょうか?
今後も生活水準を挙げて行くために新たなルール強化が必要な分野は、資金移動や知財剽窃やサイバーテロによる企業秘密の剽窃等の取締ですが、これについての取締には軍事力までいりません。
こう言う犯罪まで野放しにしろとなるといろんな分野で遵法精神がなくなって行き、世界中でルール違反が横行するようにならないか・・泥棒・人殺しのやり放題の社会になり兼ねません。
軍事力の維持には巨額資金がいるので、アメリカ1国では面倒見切れないと言う論理は分りますが、警察がいらないと言うことにはならないでしょう。
世界の警察官をやれないと言うのは比喩的表現であって、警察力と軍事力とは違います。
海上保安庁の出動と海上自衛隊の出動とでは意味が違うのと同じです。
トランプ氏の自慢する巨額自己資金自体が取引等のルールと警察力があってこそ保持出来て守られているのです。

国際政治力学の流動化7(FTA→TPPヘ2)

日本は農産物さえ守ればやって行ける国でないことが明白なのに、農産物保護を頑に主張して貿易自由化に何でも反対する政治家は内実は反日的・・「日本死ね!」と内心叫んでいた政治家だったのでしょうか・・。
最初ブルネイやニュージーランドなどの関税同盟が出来ても大したことがないと静観していた(農産物の関税撤廃は日本にとってマイナスが大きい割合に同国への工業製品の輸出量は大したことがないなど)ところまでの反対は合理的でした。
しかし、アメリカやカナダの外日本の主要輸出先の東南アジア諸国がドンドンドン参加して行くイキオイが出ているときに、、アメリカから日本も参加して新しい貿易秩序をを作って行かないか?と根回し・勧誘を受けても,農産物保護を主たる理由(そのたアメリカで裁判されるとか保険制度を守れとかいろんな理由は勿論ありますが・・)に参加反対を主張し続ける政治家は国家の存立にどう言う意見を持っていたのでしょうか?
民主党政権はアメリカの作る新秩序・知財等の保護強化策に逆らっても中国と仲良くさえしていれば何とかなると言う意見だったのでしょうか?
韓国は露骨にこれを事実上表明していました・・それでも対米FTAと言う保険をかけていたのですが、日本にはそれもありません。
日本が東南アジアとの海外進出先へ部品輸出が出来なくなると死活問題になりますが、これを悟られないようにアメリカが最後まで参加する本音を隠していたのか、この時点になっても民主党政権が大変なことになると言う現状認識がなかったのか?危機感があっても国民に言わなかったのかどちらでしょうか?
東電の原子炉炉心溶融公表遅れに関する調査報告書が数日前に出ましたが、これによると政府からの指示で公表を出来なかったと言う報告が出ています。
当時の政府=民主党管政権ですが、重要な危機事実を国民に伏せる体質が出ています。
TPP交渉では後発参入の場合、合理的根拠の有無にかかわらず既存メンバー全員の同意が必須=拒否権が設けられ、しかも後からの参加国はそれまで決まった内容に異議を言えない仕組みを設けておくなど、(無条件降伏的参加しかない)後からの日本参入を困難化する制度設計までしています。
参加表明が遅れれば遅れるほど日本ハム条件咲かし出来ない不利な状態になりますが、もしも日本不参加のままでまとまっていた場合(現在はまとまっていて各国の批准を待つだけです)、日本が東南アジア等進出先との貿易を遮断されるリスク..恐るべき結果を予定していたことがわかります。
日本は現地生産化しながらも貿易黒字を稼げているのは、日本からの基幹部品輸出出来ているからです。
日本は食糧(工業輸出を犠牲にして国内農業を守っていても輸入しなれば不足する点は変わりません)・原油その他原材料・生活必需品の輸入代金を賄うために輸出代金を得て成り立っています。
TPP成立によって100%(まではいかないまでも)部品まで現地生産するしかなくなると輸出代金激減し、食糧その他の輸入代金をどうするかの問題に直面します。
海外進出している企業の純利益だけで国民を養える訳がない・・仮に資本収益でやって行けるとしても、国内産業がなくなると長期的に見れば、海外進出企業もジリ貧でしょうし、もしも国内線生産が国内消費分だけになってしまい、今の国内生産量が激減して行くと国民の足腰が弱り、日本経済・勤勉性が衰亡し国家民族の破滅です。
国民が長年働かないでいるとどうなるかの例としてナウール共和国の例を紹介したことがあります。
部品輸出閉め出しを受けてしまう直前、首の皮1枚の際どいところでイキナリ日本参加可能になり、日本も参加意欲を示すようになったのは、日本の政権交代が大きな転換点だったように見えます。
アメリカが国際政治上欧州との関係が悪くなり、自由競争では相容れない点に目をつぶり、日本外しの方針を転換したことが重要ですが、これは自然になったのではなくアメリカがそうするしかないようにして行った日本人の長年の努力(アメリカ進出企業の現地同化努力)や外交努力によるところが大きいと思われます。
中国が海外進出すると威張るので嫌われますが、日本企業の場合現地人を大事にするのでそう言う争いは起きません。
アメリカで暴動が起きると真っ先に韓国人がターゲットになると言われています。
日本がTPPに入ると韓国が個別FTAで培って来た優位性が失われるので、今や韓国が焦る番になって参加方向へ方針転換して行く様子が報道されています。

免責事項:

私は弁護士ですが、このコラムは帰宅後ちょっとした時間にニュース等に触発されて思いつくまま随想的に書いているだけで、「弁護士としての専門的見地からの意見」ではありません。

私がその時に知っている曖昧な知識を下に書いているだけで、それぞれのテーマについて裏付け的調査・判例や政省令〜規則ガイドライン等を調べる時間もないので、うろ覚えのまま書いていることがほとんどです。

引用データ等もネット検索で出たものを安易に引用することが多く、吟味検証されたものでないために一方の立場に偏っている場合もあり、記憶だけで書いたものはデータや指導的判例学説等と違っている場合もあります。

一言でいえば、ここで書いた意見は「仕事」として書いているのではありませんので、『責任』を持てません。

また、個別の法律相談の回答ではありませんので、具体的事件処理にあたってはこのコラムの意見がそのまま通用しませんので、必ず別の弁護士等に依頼してその弁護士の意見に従って処理されるようにしてください。

このコラムは法律家ではあるが私の主観的関心・印象をそのまま書いている程度・客観的裏付けに基づかない雑感に過ぎないレベルと理解してお読みください。