国際政治力学の流動化9(IMFのSDR採用)

経済政策を抜きにしてみると、日本孤立化政策の締めくくりとも言うべき最後仕上げであったTPPに日本を招き入れることになったのは,過去約30年来の対日包囲網をやめる意思表示ですから、大方針転換・・従来アメリカの御先棒担ぎをして来た国々にとっては大変な事態です。
アメリカの悪質な反日デマを守るために「戦後秩序改変を許さない」と新撰組みたいに頑張って来た韓国の立場はどうにもならなくなってきました。
幕府・徳川慶喜は大政奉還・自分だけ恭順の意を表して、新撰組切り捨て→鳥羽伏見の役になったのと同じ構図です。
アメリカは今なお強い立場ですから方針さえ変えれば、自分の本陣・連邦議会へ安倍総理を迎え入れて拍手喝采をし、「方針を変えました」と言って,その証しとしてTPP参加を認める・・広島訪問程度でことが済みますが、世界戦略のお先棒を担いで来たサウジやイスラエル、アジアでは韓国・中国が2階に上がってはしごを外された状態で戸惑っているのは当然です。
アメリカの対イラン制裁解除にサウジは怒って原油増産→相場下落攻勢でアメリカのシェールオイル生産の妨害をしていますが,この我慢比べの結果、サウジ自身の外貨準備が急速に枯渇し始めているとも言われています。
韓国は怒ってもアメリカに挑戦する力がない・・暴発して単独で日本を攻める力もないので、米中のハザマで漂流するしかない状態です。
今更スワップ協定お願いや?TPPの仲間に入れて下さいと日本に頼むみたくとも格好がつかない状態です。
西欧諸国は、アメリカにやられっぱなしの点で肚に含むところがありますので、従来からアメリカの意に反する親中路線をとってきました。
今回(5月26〜27)の伊勢志摩サミットを見れば分るように7カ国サミットなのに、会合人数9人で西欧人が(英仏独伊+EU委員長と議長?)6人を占めています。
このように多くの国際会議(理事数)では、伝統の力と言うべきか人数的に西欧諸国は圧倒的多数を占める仕組みになっています。
IMF(結局は西欧諸国多数の理事会になっています)は、中国の発展を囃して日米の反対を圧して強引に昨年末に国際通貨として人民元をSDRに採用してしまいました。
英国財務大臣は、これからは中国の時代として親中政策採用に熱心な動きをして来た等々を見ると、西欧諸国は中国経済に関する客観情報を敢えて無視して中国贔屓を来たように見えます。 
http://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20151214-OYT8T50024.html
015年12月14日 14時28分みずほ総合研究所 長谷川 克之
IMFが11月30日に人民元をSDR構成通貨として採用することを正式に決定すると、中国国営新華社は即座に速報を打ち、「歴史的な一歩」と歓迎した。李克強首相も中国の改革・開放の成果を国際社会が認めたものとして高く評価した。

IMFは昨年11月30日にSDR採用を認めたのですが、今年に入ると世界の銀行の集まりである国際金融協会(金融プロの集まり)が以下のとおりの発表をしています。
http://ameblo.jp/katsumatahisayoshi/day-20160509.html勝又氏の経済時評5月9日の一部から引用です。
『ロイター』(4月25日付)は、次のように報じた。
①「国際金融協会(IIF)は4月25日、中国から今年流出する資本額は5380億ドルになると見通した。昨年の資本流出額は6740億ドルだったため、流出ペースは鈍化する。IIFは最新の報告で『人民元の急激な下落が、中国との貿易関係が密接な国々など、他の新興国市場国も、競争的(通貨)引き下げを行う事態につながる恐れもある』と警告する」。
②「中国の外貨準備にも懸念が広がる。外貨準備がどの水準を下回れば、中国当局が懸念を持つようになるのかが分かっていない。外貨準備は、2014年6月の約4兆ドルから今年2月の3兆2000億ドル前後に減少した。大半の国と比べると、なお高水準だ。一方、国際通貨基金(IMF)が開発した別の算出方法を用いると、実際の準備高と必要となる可能性がある水準の間に存在する、緩衝の厚さは約2年前の50%から15%に縮小している。IIFは、『この観点でいえば、多額の資本が流出する事態が続く場合、資本規制を厳しく強化しなければ、国の公的準備が不十分とみなされる水準にまで縮小する恐れもある』と指摘した」。
「公的準備の不十分」な通貨とは言わば、ちょっとしたことで通貨危機に陥る通貨と言う意味です。
緩衝保有額・・ゆとりが15%しかないと(平均的決済必要額が85%)・・家計で言えば100万円の預金があるが、毎月85万円の収支で均衡していると言うのでは、ホンの1〜2割の臨時支出があると余裕ゼロ・・ちょっとした誤差でデフォルトになってしまう水準です。
サラリーマンの場合月収が安定してい上に病気や失業に備えた各種保険・災害保険制度がありますが、それでも多くの人が年収程度の預貯金をしているのが普通です。
40歳以上の家庭持ちで年収の1〜1、5割しか預貯金のない人の方が少ないでしょう。
収支の安定しない商売人であればすごくリスキーな資金繰り経営です。
商人の場合には銀行との当座貸越契約で一定枠の補填が予約されているので、目一杯現金制預金を持っていなくとも良いし、国の場合にはスワップ協定制度があります。
中国の場合どことスワップ協定をしているかですが,反日騒動に関連して韓国とスワップ協定をしましたが、国力規模が違い過ぎて中国が1000億ドル単位で資金不足に見舞われた場合とてもその補填能力はありません。
国の場合ギリギリ間に合えば良いのではなく、ギリギリとなれば通貨や株の狼狽売りが起きるし、そうでなくともジョージソロスのようなプロによる先物売りが膨らみ売りが売りを呼んで大暴落・・支払不能になってしまいます。
上記ロイターによればIMF基準によれば中国外貨準備は危機的状況に陥るすれすれの範囲に入っていますが、このようなリスキーな通貨を危機時のアンカー通貨の1つとしてSDRに採用した(日米以外の)IMF理事達は、自己の設定した価値基準を無視していた疑いが生じます。
IMF理事会が自己の決めた基準では、通貨危機が間近に迫っている国の通貨を安定通貨としてSDRに何故採用したかの疑問です。
中国寄りになってからの西欧諸国は従来の価値基準を棄てて、人権侵害に目をつむる、独裁運用する予定のAIIBに参加するなど従来の価値基準に反する行動が続いていました。
人民元のSDR採用決定には裏でかなり不純な政治動機が働いた可能性が否定出来ません。

TPP漂流2とアメリカの凋落

Jun 19, 2016「国際政治力学の流動化8(TPP漂流1)」以来TPPの漂流化を書いている内に話題が飛んでしまいましたが、元に戻ります。
戦後凋落を続けた西欧同様に19〜20世紀型モデルしかないアメリカは今後沈んで行く国の入口に立っています。
中国の解放以降低賃金攻勢に対して、欧米は移民導入で自国賃金の低賃金化を図ってきました。
他方で日本に対しては、上級品の競争に負け始めたので円高誘導と個別FTA包囲網で孤立させることによる輸入規制で対抗して来たことを書いてきましたが、今から見ればいずれも後ろ向き対策でした。
だめになった商店街で、地元民が地元業者以外から買わない・・地元優先政策をとったり、個別商店・・料理店が腕の良い職人を招いてもっと良い物を作る方向に行かずに、腕の良い職人をやめさせて、2流の職人やホール係に入れ替えて単価を下げているのでは却って客が来なくなります。
底辺労働力移民流入策による低賃金化→値下げ競争に励みながら、EU結成による障壁とFTAで競争阻害をするのは、商店街が新規出店を拒む規制を政治家に働きかけているのと同じ発想です。
アメリカも資源その他大量生産にいつまでもこだわり高級部品を作れない限り、移民をいくら入れてもいつかは負けることは同じです。
低賃金→一般的には未熟練労働者の移民を増やせば増やすほど国民平均レベルが下がって行きます。
今後高級化・・研究職などの比率を上げて行く必要があるときに底辺層を増やす移民政策は時代逆向になるでしょう。
高級品を作れる職人の日当が高い(高度人材移民の場合には賃金低下効果はないでしょう)のはあたり前で、汎用品しか作れない工員の低賃金化が進むのは当然です。
最低労働目的の移民を入れて行くと平均賃金が下がる一方で、結果的に国民不満が高まる一方です。
自分の能力以上の生活は出来ない現実を見ないようにするために移民で誤摩化しても,回り回っていつかは国民全般の低賃金化になって戻ってきます。
移民を入れながら、この原理を覆そうとすること自体に無理があります。
貿易障壁や円高誘導・移民受入れなどで欧米が現実逃避・・誤摩化しを続けている間に、こつこつと生産技術の向上に努めて来た日本との間で、85年のプラザ合意頃に比べて却って競争力の差が開いてしまったように見えます。
この状態下で日本参加のTPPが発効するとどうなるでしょうか?
アメリカの日本に対する貿易障壁が取り払われるので、裸の自由貿易を貫徹して行くことになります。
言わばアメリカが自由貿易主義をタテに(酷い搾取・支配を)して来たラテンアメリカ諸国同様の地位にアメリカ自身が落ちてしまいそうです。
そこでトランプ氏もヒラリー氏・同氏の親中国体質は良く知られていますが・・(日本外し目的が不発に終わった以上は中国だけ閉め出す結果にしかならない)TPPを発効させる意味がないばかりか、アメリカにとって有害であると言うことで一致して反対論をぶっているのはむべなるかな!と言うところです。
日本のマスコミはTPPが成立すると中国が困ると書いていますが、元々日本外し目的で始めたのですから、日本がTPPにはいってしまった以上は、当初目的から言って存在意義がなくなっているのがアメリカの本心です。
(元々中国はそのラインに達していないので問題にしていなかったことを6月20日に書きました・・中国を困らせる目的ではなかったのです)
アメリカにとって国際政治力学上日本との関係修復が必要と判断して仲間に入らないかと誘いをかけるしかなくなったとしても、貿易関係の利害対立をどうするかはまだ決めかねている状態・・こう言う複雑矛盾関係の何次元方程式を解く能力は単純思考のアメリカにはありません。
Aに対する嫌がらせのためにAにだけ知らせずにみんなで飲み会に行く準備をしていたのに、Aが参加することになると何のための飲み会か分らなくなります。
取りあえず日本排除をやめるためにTPP参加を認めただけであって、今後日米経済関係をどうするかまでは決めていない・・TPPの批准をしないで漂流させておけば良いだろうと言うのが現段階におけるアメリカの本音的選択肢でしょう。
日本としては、日本排除目的のTPPが成立さえしなければ良いのですから、後はアメリカがどう動くか・・本気で仲間に受入れる気があるかどうかを見ていれば良いでしょう。
あるいは、批准した国だけで順次発効して行くのも1方法ですが、これにはアメリカが猛反発するでしょうから慎重にやるべきですから、先ずはアメリカ以外の国の批准を進めて圧力をかけて行く方法が合理的です。
アメリカは国際政治上当面日本と仲良くするしかないが、かと言って貿易でやられっぱなしになるのも困ると言う矛盾を抱えています。
国際政治に色気を出さなければ、(指導力を持とうとしなければ、無理して格好つける必要がない・・中国のようにエゴ剥き出しでごり押ししてればいい・都合が悪くなれば引き蘢ればいい)アチコチのご機嫌を取る必要もない一種のモンロー主義がトランプ氏の主張です。
とは言え世界中に軍を展開しその関係の人脈・利権その他が複雑に出来上がっているので、簡単に存在を縮小すれば余計アメリカのダメ−ジが大きくなりますので、政権につけばアチコチの利害集団の意見を無視出来ず簡単には行きません。
中国がもう少し大人しくさえしてくれれば、また「伝統的中米蜜月に戻れる」と言うのが、アメリカ人の多くが考えている期待・構図でしょう。

占領統治の難しさ(日本奴隷化作戦の変更)

何回も書いているように欧米は、日本を叩き潰した後には単純被植民地、被奴隷国の限度で生存させる・・一切の工業生産を許さない方針でした。
アメリカ政府のインデイアンに対する協定破り・相手が武装解除・降伏すれば、降伏時に約束した協定など全く守らない前提の国です。
降伏したインデアンに対する非人道的政策は良く知られていますが一例を挙げれば以下のとおりです。
どこの誰か?根拠があって書いているか知りませんが,私が何かで読んだ記憶に大方あっているので一応引用しておきます。
http://goodorbadamerica.blogspot.jp/2013/01/blog-post_17.html

「徹底した同化政策を進めるために、赤ちゃんは、強制的に白人家庭に養子に出されたり、5歳以上の子供たちは、全員親から引き離されて、寄宿学校に入れられちゃいます。
学校と言っても、牢獄に近かったらしいですよ。
無理やり、部族や親と隔離して、キリスト教に改宗させられて、英語を習わされて、白人の下働きをする、「良いインディアン」作りをするための学校だったんですね。
まさに、インディアンの文化そのものを根絶やしにするための同化政策ですね~。
たしか、インディアンの寄宿学校が廃止されたのは、1965年あたりだったはず。
と、いうことは、今でも、だいたい50才以上の人たちは、ほとんど、入れられた経験があることでしょうね。」

赤ちゃんのときからオヤから引き離し、インデアンが如何に劣った民族かの言う教育を徹底していたのですから、ジェノサイドの極致ではないでしょうか?
英語しか知らない状態で育ち、寄宿舎を追い出されるとその後インデアン部落に戻っても言葉も通じないし生活習慣もまるで違う・・生きて行けません。
白人社会に入っても何も出来ず、保護に頼って無為に過ごすしかない・・人間が腐って行くだけの生活が待っている・・民族消滅するように仕向けられたのが今のインデアンです。
何回かポツダム宣言を紹介していますが、もう一度紹介しますが、「奴隷化・・するものではない」と言う表現は、正にその予定にあったモノの日本が容易に降伏しないので仕方なしに表向きの方針を変えたに過ぎないことを言外に表明しています。
武器を取り上げて占領してしまえば、約束など守って守らなくとも勝者の勝手・・自由自在と言う思惑があったでしょう。
我々の意志は日本人を民族として奴隷化しまた日本国民を滅亡させようとするものではないが、日本における捕虜虐待を含む一切の戦争犯罪人は処罰されるべきである。日本政府は日本国国民における民主主義的傾向の復活を強化し、これを妨げるあらゆる障碍は排除するべきであり、言論、宗教及び思想の自由並びに基本的人権の尊重は確立されるべきである。

実際に占領後の実際を見ると、日本民主化の名分と占領後の日本の工業生産禁止はどう言う関係があるのか、米軍による軍政、検閲は?民主主義化の建前と全て矛盾です。
アメリは占領さえすればこっちのモノ・・後はインデアンに対するのと同じでやりたい放題・・元々ポツダム宣言を守る気持ちが始めっからなかったのです。
ソ連が満州侵入後日本軍をシベリアに連行し文字どおり奴隷支配したのは、アメリカから事前に聞いていたとおりに実行した(アメリカが腰砕けになっただけ)と言う立場だからでしょう。
アメリカはソ連と対立関係にあったのにソ連の蛮行に対して何の非難もしていませんし、だんまりのままだったのは、「自由に連行して奴隷化しても良い」と言う密約があったことが推測されす。
日本人奴隷化の基本方針からすれば、占領後天皇制廃止・・天皇の縛り首実行が既定路線だったでしょうが、これらを実行出来なかったのは、そこまでやると日本人の怒りが半端でなくなると言う教育?が功を奏したからです。
この進言をマッカーサーが聞くしかなかったのは、硫黄島や沖縄での日本軍の最後の踏ん張り・・これ以上追いつめたら何をされるか分らないと言う恐怖心が占領軍を自制させ、日本人を奴隷化する戦略を変更するしかなかった・・モノを言ったからです。
子供の頃に竹槍訓練や玉砕戦法をバカな戦いだったと、アメリカに都合の良い教育を受けて育ちましたが、今になって考えるとニッポン民族が奴隷化されないで済んだ結果にはすごく有効な捨て石・・戦略だったことが分ります。
関ヶ原で西軍の負けが決まった後に最後の突進で戦場を突き抜けた島津軍団の精強ぶりが、戦後処理で島津家が寸土も失わなかった結果になったのと対比出来るでしょう。
負けは負けでも、負け方が重要なことが分ります。
我々弁護士業務でも同じで、勝つ事件は誰がやってもそれほど大きな差がありません。
負けている事件・・有罪事件あるいは債務があることは間違いがない・・債務整理でも離婚でも(浮気したことは間違いがないなど)負ける方ではそのやり方で大きな差が出ます。
軍事でも戦闘に勝った後の追撃よりは負けて撤退する方こそが難しいのです。
越前の朝倉攻め中の信長が浅井の離反により、北陸路からの撤退に際して秀吉がしんがりを務めて成功したのと、本能寺の変での中国路からの撤退作戦・・これらを見事にやってのけたことが天下人になれた大きな要素です。

アメリカ優位性喪失5(物量作戦の限界2)

第二次世界大戦終了後の東南アジアでの植民地独立戦争で英仏蘭が敗退していったこと(日本兵が現地に居残って指導していたことが知られています)やアメリカのベトナム戦争の失敗は、既に日本との戦いの経験で研究済みどおりの展開になっていたことが分ります。
アメリカ得意の物量作戦は広大な海戦や砂漠での戦いでは有効ですが、硫黄島戦終了時に大規模戦以外の戦闘形態・・ジャングルや都市ゲリラその他での限界が見えていたのに、ベトナム戦争や第二次イラク戦争・・占領行政までやったのは、これを学ばなかったことになります。
第一次イラク戦争(湾岸戦争)ではあっさり兵を引いたのは、占領後の統治困難をパパブッシュが知っていたからかも知れません。
2週間ほど前に、イギリス政府によるイラク戦争に関する調査報告書が出ましたが、これによると戦争開始に関する判断ミスの外に終結後・・占領後の展望についての戦略不足が現在のテロ社会化・・混迷の原因になっていることが書かれているようです。
ただし、ちょっと話題がそれますが、アラブ世界の大混乱を別の角度から見れば別の結果も見えてきます。
イラクに留まらずリビヤ〜エジプト〜シリアに連なる連続的政府転覆の結果は偶然ではありません。
敢えてアラブ民族内での無政府状態化・・内部対立激化・大混乱に陥らせて、アラブ民族のトータル弱体化を図ってイスラエルの安泰を図る裏の統一的目的があったとすれば、(裏の目的は政府調査報告書には出ません)がその作戦は大成功している見方も可能です。
アラブ諸国の無政府状態化の進行によってどこが得しているかの結果から見れば、イラク戦争以降長年中東の火薬庫であったイスラエルとアラブの対立問題が話題にもならなくなったことから明らかです。
イスラエルの陰謀(があったとすれば)に加担した西欧諸国(何故かリビアにはNATO軍が積極的に支援していましたし、シリア反政府軍応援にはフランスが積極的でした)は難民流入の報復を受けているのはその反作用として合理的です。
数日前にも南仏ニースで大規模テロが起きていますが、フランスでのテロが多いのは、アラブ混迷化にフランスがかなり貢献?している・・貢献度合いによるのではないでしょうか?
私は異民族と混在するのは良くないと書いていますが、移民がいればテロになるとは限りません。
フランスでのテロ頻発は、移民の多さだけではなくフランスのやり過ぎに対する反感が動機・モチベーションになっているのではないでしょうか? 
占領政治の難しさ・・原始的恐怖政治をしたのでは、支配地の経済力を活用出来ませんので巨額軍事費を使って占領しても却って損をするだけですからフランスもアルジェから、手を引いたのです。
民生を安定させながら占領統治をしようとすれば、占領後の統治の方が難しいのは当然です。
イラク戦争に際してイギリスの調査報告ではその研究不足のまま参戦してしまったと言うのですが、素直に報告している点が真新しいところでしょうか?
アメリカが日本占領後の統治をどうやって良いか分らずに苦慮したときに当然米英は協議していた筈なのに、(混乱させること自体が目的だったとする上記ユダヤの陰謀でない限り)この反省が充分にされていなかったことになります。
企業買収も金さえあれば買収までは可能ですが、その後成功するかの研究調査こそが重要です。
いみじくもブッシュだったかが「日本でうまく行ったから・・」と当時言い訳をしていたのは、日本占領前後の研究をしていたことが分りますが、この発言を聞いた当時ブッシュのバカさ加減に驚いた日本人が多かったと思います。
幼児に家事のお手伝いをさせて大方はオヤがしてやっても「良くやったね」とおだてるようなもので、超々高度な政治経験のない中東・アラブ民族には日本のようにうまくアメリカをおだてて泳がせてくれる能力などないことを知らない意見です。
日本の場合、硫黄島や沖縄での勇敢な戦いでアメリカ軍に対して衝撃を十分与えた後にビビっている占領軍をうまく手なずけて占領後日本人を奴隷化してしまう計画を変更さて、柔軟支配に持ち込んだ何千年単位で築いて来た高度な政治力によるものです。
(November 12, 2013「マッカーサーの功罪5(軍政の撤回3)」で直接統治の占領軍指令を結果的に発効させなかった経緯を書いたことがあります)
アメリカは最後の詰め・・終結の見通しに関する手詰まり打開のためにヤルタ会談(1945年2月4日~11日〜ポツダム宣言ポツダム宣言(1945年(昭和20年)7月26日)その他で頻りに降伏を迫っていましたが、日本が受入れる様子が見えないまま硫黄島作戦の大損害などがあって困ってしまいソ連を対日戦争に引き込み・原爆投下に踏み切るしかない状態に追い込まれていたことが分ります。
これがアメリカで主張されている原爆投下正当化論の背景根拠ですし、沖縄人が日本軍に無理矢理に死に追いやられたとするでっち上げ歴史教育を強制して来た原因です。
原爆投下正当論は言い換えれば、原爆投下しないと日本に大規模野外戦では勝てても、最終的に勝ち切るには大損害が予想されたという自白そのものです。

アメリカ優位性喪失4(物量作戦の限界1)

特攻機でも、アッツ島玉砕でも硫黄島や沖縄の戦いでも日本兵は自分個人の命のためではなく背後の自国民族のために1分1秒でも本土侵略を受けるのを遅くさせるために戦いました。
自分の損得で参加している志願兵・傭兵のアメリカ・強制的に徴用される中国兵の場合、命を失うと意味がないので危険のない限度でしか戦わない→負け戦になると踏ん張る気力がない・・中国・朝鮮の陣立ての基本は古来から先頭の兵が逃げないように後方から見張る兵がいて先頭の兵が逃げたら真っ先にその兵を射殺する仕組みになっていると言われています。
損得勘定で参加し逃げると血祭りに上げられる恐怖によって戦う兵を前提にしているのが多くの国の兵士ですから、圧倒的兵力のときには何とかなりますが、勝つか負ける分らない状態になると味方の監視をかいくぐって如何に逃げるかばかり考えるので、しのぎを削る戦いには弱くなります。
日本の場合,命令に従わないと処罰される恐怖感によるのではなく、自分の命を棄てても犬死にならない限り子々孫々のために役立ちたい思いですから死んでも食らいついて離さない根性が諸外国の兵との違いです。

以下はhttp://www.iwojima.jp/data3.htmlのデータです。
1945年2月19日 – 1945年3月26日
硫黄島戦の両軍の損害

硫黄島戦の両軍の損害

     日本軍               米 軍
   戦死者(人)
   陸 軍 12,723        海兵隊 5,931
   海 軍 7,406         陸 軍 9
   島 民 (82)           海 軍 881
   小 計 20,129        小 計 6,821
 
   戦傷者(人) 陸 軍 726     海兵隊 19,920
   海 軍 294           陸 軍 1,917
   島 民 (21)           海 軍 28
   小 計 1,020         小 計 21,865

   合  計 21,149        28,686

以下は沖縄戦に関するウイキペデイアのデータです。
1945年3月26日 – 6月23日
沖縄での両軍及び民間人を合わせた地上戦中の戦没者は20万人とされる[5]。 その内訳は、沖縄県生活福祉部援護課の1976年3月発表によると、日本側の死者・行方不明者は188,136人で、沖縄県外出身の正規兵が65,908 人、沖縄出身者が122,228人、そのうち94,000人が民間人である。日本側の負傷者数は不明。アメリカ軍側の死者・行方不明者は14,006人、 イギリス軍の死者が82人で、アメリカ軍の負傷者72,012人であった[6](日本側被害の詳細は#住民犠牲についてを参照)。

圧倒的物量で始めた硫黄島占領作戦・・ヤマの形がなくなるほどの艦砲射撃や空爆の後に戦車を先頭に上陸して来る米兵に対して何十日も殆ど水しかのんでいない日本兵が大砲もなく素手に近い・・弾薬すらほとんどない鉄砲だけで戦ってこの結果でした。
続けて予定どおりに実施した沖縄戦でも、攻撃側の死傷者数が10万人近くになっています。
沖縄戦での死傷数が硫黄島の戦いと大して変わらないのは正規軍同士の戦いが多かったこと・・この場合物量に優る米軍の損害率が下がることによります。
この結果を見て日本本土上陸作戦遂行にはこの10倍〜100倍の被害が出る・占領後もゲリラ戦になればどのくらいの被害が出るか計り知れないと言う計算が立ちますし、兵の方も圧倒的安全な戦いでないと尻込みしたくなる兵が多くなります。
知覧にある特攻機出撃基地に行けば分りますが、みんな銃後の家族・民族のために散って行ったのです。
敗戦を数分、数秒遅らせれば良いと言うよりは、その後の占領支配に対する影響を考えて生命を賭してみんな頑張ったことが分ります。
特攻機攻撃の激化は、今の自爆テロの先行事例で占領完成後にも日本人の命知らずの襲撃・・長期的テロが続くことが当然想定されていたと思われます。
蒙古襲来を防いだのも地元武士による夜襲の連続によること・・このために蒙古軍は昼間の戦いで占領した橋頭堡を夜間維持出来なかった・・船に帰るしかなかったので台風被害になってしまったことを紹介したことがあります。
幕末での長州対四国連合艦隊の戦い後の戦後処理でも、連合艦隊側が占領した島の租借要求が高杉晋作にあっさり蹴っ飛ばされて引き下がったのも、全てこの恐怖によります。
アメリカは日本の歴史を研究していますので、硫黄島作戦では日本軍得意の夜襲を研究していてその想定での橋頭堡確保作戦をしていたようです。
膨大な死傷者を出したアメリカ軍の恐怖・・この恐怖心の現れが・・白兵戦に頼るしかない本土上陸作戦をためらうようになった要因です。
本土の場合島とは違い奥行きが深い・・海岸線の戦いでは艦砲射撃が届きますが内陸部には届きません・・海岸線だけの支配では夜襲その他ゲリラ襲撃に悩まされて維持出来ない点は蒙古襲来時と同じです。
制圧までの被害想定とその後の武力一辺倒の占領統治には無理がある・・原爆投下と言う歴史に残るマイナス行為に踏み切るしかなくなった・・・追いつめられた決断でした。
硫黄島〜沖縄作戦後アメリカ軍内に恐怖心が支配していて、アメリカは軍事的には手詰まり状態に陥っていたことが分ります。
第二次世界大戦終了後の東南アジアでの植民地独立戦争で英仏蘭が敗退していったこと(日本兵が現地に居残って指導していたことが知られています)やベトナム戦争の失敗は、既にこの日本との戦いの経験で(力攻めで最後までやった場合の占領後のリスク)研究済みどおりの展開になっていたことが分ります。
アメリカ得意の物量作戦は広大な海戦や砂漠での戦いでは有効ですが、硫黄島・沖縄戦終了時に大規模戦以外の戦闘形態・・ジャングルや都市ゲリラその他での限界が見えていたのに、ベトナム戦争やイラク戦争を起こしたのは、これを敢えて学ばなかったことになります。
第一次イラク戦争(湾岸戦争)ではあっさり兵を引いたのは、占領後の統治困難をパパブッシュが知っていたからかも知れません。
2週間ほど前に、イギリス政府による第二次イラク戦争に関する調査報告書が出ましたが、これによると戦争開始に関する判断ミスの外に終結後・・占領後の展望についての戦略不足が現在のテロ社会化・・混迷の原因になっていることが書かれているようです。

免責事項:

私は弁護士ですが、このコラムは帰宅後ちょっとした時間にニュース等に触発されて思いつくまま随想的に書いているだけで、「弁護士としての専門的見地からの意見」ではありません。

私がその時に知っている曖昧な知識を下に書いているだけで、それぞれのテーマについて裏付け的調査・判例や政省令〜規則ガイドライン等を調べる時間もないので、うろ覚えのまま書いていることがほとんどです。

引用データ等もネット検索で出たものを安易に引用することが多く、吟味検証されたものでないために一方の立場に偏っている場合もあり、記憶だけで書いたものはデータや指導的判例学説等と違っている場合もあります。

一言でいえば、ここで書いた意見は「仕事」として書いているのではありませんので、『責任』を持てません。

また、個別の法律相談の回答ではありませんので、具体的事件処理にあたってはこのコラムの意見がそのまま通用しませんので、必ず別の弁護士等に依頼してその弁護士の意見に従って処理されるようにしてください。

このコラムは法律家ではあるが私の主観的関心・印象をそのまま書いている程度・客観的裏付けに基づかない雑感に過ぎないレベルと理解してお読みください。