南シナ海封鎖リスク1

南沙諸島が中国支配に入って・・海上輸送ルートが中国に押さえられて日本が困ろうとも、中国がアメリカと友好関係を約束するならアメリカにとって死活的重要性がありません。
ロシアのウクライナ介入やクリミヤ占領に対しても同じこと・・アメリカ国防に何の関係もない地域紛争に血を流すほどの関与したくない・・日本からグアムへの後退作戦も日本の(対中)戦争にアメリカが巻き込まれたくない・・守る気持ちがない意思表示です。
・・沖縄にいながら防衛協力しないわけにはいかないでしょうが、沖縄にいなければ「その内応援に行きます」と言う程度で済みます。
アメリカの年間軍事予算が日本の約13年分=13倍であることを昨日引用で紹介しましたが、アメリカの経済力が日本の13倍もないのですから、その差額分だけ国内政治に無理(長年の蓄積は大変な額です)が来ています。
大統領選の争点はアメリカ自身が世界に展開している巨大な軍事費に耐えられなくなっているのでしょう。
日本駐留経費が全軍事予算1%以下しかないと言うのですから、日本の防衛分担金を1割上げても全予算から見れば0、1%の財政改善効果しかありませんから、アメリカ得意のスケープゴート的アッピールしているだけです。
軍事費削減がテーマならば、99%を占める欧州・中東方面の軍事費を削減する議論をする方が先であるべきでしょう。
全軍事予算の1%足らずしかない軍事費を槍玉に挙げて大統領選のテーマになるコト自体、アジア軽視を態度で示していることになります。
アジア軽視と言うより、太平洋が広過ぎる・グアム・・これも遠過ぎるならば、将来ハワイを外郭拠点として守れば充分でないかと言う戦略的要素も無視出来ません。
中国が古来から西域の広大な砂漠の先まで拠点を常設する必要を感じていなかったのと同じ発想です。
アメリカの経済力に見合った長期戦略を合理的に考えて行けば、太平洋二分論・・当面グアムでの線引きは(中国が言い出したと言うよりは、)かなり前からアメリカ自身が決めていた基本戦略であったとみるべきですし、これを中国が再確認しているだけ・・だから明白に否定出来ないのだと思われます。
「否定も肯定もしないなら、態度を見てやるからどうするの?」と南シナ海で埋め立て強行してアメリカの出方を見ているのですが、やはりアメリカの態度は煮え切りません。
それどころかアジアでの現地政府の負担率アップの主張=アメリカ自身の軍事費削減まで大統領選のテーマにのぼっているのです。
ここまで来れば、アメリカは太平洋二分論を事実上認めている・・言わなくとも分るでしょう「行動・態度で理解して下さい」と言う段階です。
次に日中紛争が起きた場合、・・自然に起きるのではなく、中国がアメリカが手を出さないと見極めて・・タイミングを見計らって仕掛けて来た場合のことです・・。
前回のレアア−ス禁輸のような緩いやり方とは違い、今度は中国が軍事基地を設けて実効支配してしまった南シナ海の有効利用が当面の焦点になります。
「南沙諸島海域が中国の領海であるから、日本向けの船舶を通さない」と来れば大事件ですが、すぐに航行禁止しないで「領海通過許可申請をしろ」と来るのが第一段階です。
日本はこれ(中国領海)を認めるとその後全面通行禁止されても、異議を言えなくなるので、応じられないと言う政府の立場になるでしょうが、そうすると中国進出企業・・伊藤忠の日本国内向け船舶が中国の許可を取らないで南シナ海を航行すると喩えば、伊藤忠商事が中国で不法入国した企業として処罰や賠償金をとられてしまいます。
かなりの企業が中国に進出しているので、中国の要求に従ってしまうのではないでしょうか?
この辺の対策研究がどうなっているのか知りませんが、重要なことです。
南シナ海での埋め立て軍事基地工事は、フィリッピンやベトナムを相手にした行動ではなく、日本攻撃を主目的にしていることが明らかですから、安倍総理が必死に非難しているし、中国は「関係ない外野は黙ってろ」と無礼な発言を日本の外相にする訳です。
フィリッピンなどは漁船が行けない程度ですから、バナナその他の禁輸との天秤に掛ける程度で、フィリッピン大統領があまり問題にしていませんが、日本も尖閣付近の漁業損害程度ならば大した問題ではありませんが、船舶が通れないとなると大被害になります・・中国は尖閣諸島を直接軍事占領するのは国際的に難しい上に日米に反撃されると勝てそうもないリスクがありますので攻め口を変えて、無人の南沙諸島で埋め立てを始めたのです。
南シナ海は日米の領海でもないところですから、中国が一方的埋め立てを始めても、直接被害当事国を応援することが出来ても、当事国の応援要請がない限り軍事反撃する名分がないので直接打つ手がなく、せいぜい「公海で違法なことスルな」と言う非難をする程度しかありません。
中国は国際ルールでは勝ち目がないので次期政権抱き込み作戦に集中していて、筋金入り親中のドウテルテ大統領が今春就任したのは大成果・・作戦勝ちでした。
新大統領はは折角前政権が勝ち取ったフィリッピン有利な国際司法裁判所判決を一顧だにしない方針変更は、(アメリカ・・オバマが人権その他余計なことを言って中国寄りに追い込んでしまった失敗です)日本にとって死活的マイナス環境になったし、中国にとっては大逆転勝利と言えるでしょう。
インドネシアでも日本の新幹線採用がほぼ本決まりとして進んでいたのに、新大統領になるとイキナリ中国の新幹線に変更してしまいました。
権謀術数の凄まじさと言うべきか?道理も何もない・・抱き込めば勝ちと言う・・古代からのやり方を世界中で実行しているのが中国政治です。
日本にとっては南シナ海での通行遮断リスクは死活問題ですから、実は南シナ海の中国軍基地建設を巡る攻防は日中紛争の最前線なのですが、自国領海が侵害されていないので、直截打つ手がないのが最大の弱点ですので、フィリッピンの応援と言う形をとっていたのですが、トップの交代があり・・アメリカが人権問題で非難したり刺激して中国寄りに追いやってしまったのが大誤算です。
個別の人権も重要ですが、国家の違法行為放置の方がより大きな・・質的に違う人権侵害ですから、主権のある外国の内政に口出しするよりは国家の力で外国に対して違法行為をしている場合、こちらを先に解決すべき・・優先順位が違います。
このためにフィリピンと協力すべきときに内政干渉して敵方に追いやってしまったのは愚策です。
大義のためには戦死者が出る・小義を犠牲にすることすら厭わない・・兵士の戦死も人権侵害ですが、個々の人権より大きな大義があるからです。
オバマはこの優先順序を間違ってドウテルテ大統領を非難してしまったことになります。

世界の警察官から軍事同盟へ(太平洋二分論の基礎)2

トランプ氏に至っては、「相応の防衛費を分担していない」と今から日本に難癖つけているのですから、非武装憲法を押し付けた歴史を無視(または無知?)し、「日本防衛義務を果たしたくない」と選挙戦で公言しているようなものです。
ただし、その後の勉強の成果かどうか不明ですが対日批判をあまりしなくなったようですが,アメリカはこれまでのような負担をし切れないと言う点はどの候補者が大統領になっても変わらないでしょう。
アメリカ(トランプ氏)の戦略は、日本だけ標的と言うのではなく、「ニクソンショック以降のアメリカは中長期的目標としては自国に必要な範囲・・当面東太平洋さえ確保すれば良い→世界の警察官をやれない」と言う基本認識の一環としての話で、これが内々の話ではなく表に出さざる得なくなるほど経済的に切羽詰まって来たことによります。
以下は仮定の話ですが、戦後直後に圧倒的国力差を背景に世界各地の米軍駐屯地で必要経費の9割を負担していて、その後各地の経済復興を反映して現地政府負担率を引き上げてアメリカの負担率を減らして行き、今では半分を切っているとした場合、これが更に減って3割〜1割〜5%と下がっていくと、この負担率減に比例して地域安保に与えるアメリカの影響力が下がって行くのは避けられません。
北朝鮮問題も自国だけでは決められない・6カ国協議・・中国の出方次第になっている所以です。
ちなみに今の在日米軍経費については、日本が既に約半分以上を負担しています。
http://rick08.hatenablog.com/entry/2016/05/06/070000からの引用です。
ウオールストリートジャーナルで公表されたものらしいです。
「武器弾薬なんかの装備のお金に加えて、米軍関係者が約9万6,800人、さらに、日本人2万5,500人が事務員、消防士、医師などとして働いているそうです。これらの人件費と、基地の使用コスト、近隣の騒音対策費用などなどで合計年間102億ドルほどかかります。ざっくり1兆1千億円ほど。うち、米国が負担しているのが55億ドル、日本が負担しているのが57億ドルです。更に、日本は、グアム移転費用など、ときどき追加コストも負担しています。」
「アメリカの軍事費の総額は5,830億ドルだそうです(2017会計年度)。なんと日本円換算で64兆円!日本の軍事費の13年分!!これを毎年使ってるとか、勝てる気がしない。
 そのうち、在日米軍の年間費用は55億ドルは軍事費全体の0.94%にあたります。」
日本駐留経費の半分以上を日本が負担していますが、沖縄基地はベトナム戦争時の出撃基地だったことからも分るように、今でも中東までのアジア全域をカバーする基地ですから、日本安保のためだけの基地ではありません。
しょっ中米韓合同演習をしていますが、日本に基地がなければ大変・・遠くから出て行けば莫大な時間コストがかかるので演習する回数・規模が縮小します。
アジア全域にわたり(米軍の都合に合わせた)ヘゲモニー維持のための軍事費の半分以上を、日本が負担して(させられて)いることになります。
この少ない予算でもケチりたくて・・もっと日本に負担させたくてトランプ氏が大げさに騒いでいるし、米軍基地の沖縄からグアムへの移転計画も着々と進んでいます。
沖縄基地反対闘争を利用して移転費用を日本に負担させる形式ですが、自国防衛に必要なことしかしたくない・・戦線縮小計画・・長期戦略の一環でしょう。
上記データ紹介を見ると全軍事費の1%足らずしかアジアで使っていないし、戦力をグアムの内側へ下げ続けている現状を見れば、アメリカのアジア重視宣言は殆どジョークみたいなもの・・本気度が分かります。
アメリカが実際にやっていることは、当面グアムの線で守れば良いと言う・・マサに太平洋2分論の実践です。
これでは中国がグアムの外側では何をしても良いと言う態度・・アメリカをバカにしたような行動・・国際ルール無視の傍若無人の振る舞いをするようになったのは当然です。
比喩的に言えば、戦後直後には現地国同士の紛争があっても両国兵力合わせてもアメリカ駐留軍の1割しかないような場合、アメリカがどちらの味方するかの表明だけであっけなく勝負がついてしまうので、実際のアメリカ軍出動さえ必要がない状態でした。
「パックス◯◯」と言う状態は、圧倒的兵力差があってこそ成立するものです。
アジアでは、対中国関係で上記のような圧倒的兵力差がなくなっているどころか、そのうち中国に逆転(現在戦では兵器性能差が重要ですので、単に航空機や潜水艦等の数の差ではありませんが・・)されそうな気配です。
最早世界の警察官をやっていけないが同盟は維持したい・・アメリカの基本戦略からすれば、グアムの外側・・日本やフィリッピンがアメリカに従属してくれているのは有り難いがそれだけのことです。
日中,中台、中越の争いでどちらがその地域の覇者になろうとアメリカにとって死活的関係がない・・どうでも良い・どちらかに肩入れしてアメリカ人の血を流すメリットがないと言うのが、基本戦略と思われます。
と言うよりは圧倒的兵力差がなくなっているので、現地紛争に関わると自分も大きな損害を受けるリスクが高まっているからです。
せいぜい情報提供や兵器供給や訓練程度の協力をしても良い・もめ事が多くなって兵器の販路が広い方が良いと言うのが本音でしょう。
尖閣諸島や沖縄が中国支配になるより日本が支配している方がアメリカの安全にとってプラスと言うだけ、韓国でのサード配備も少し早めに中国の動きがつかめる程度のことです。
どちらかと言えば、韓国に対する「踏み絵」を迫った程度のことです。
沖縄基地や三沢基地から引き上げても、グアムや人工衛星でデータ収集するのと大差ない時代があっという間に来る・・それまでは日本に情報収拾させれば足りる・駐留コストを掛けたくないだけではなく・・近過ぎるリスクの方が大きいと言う意見ではないでしょうか?
実際に朝鮮半島で駐留米軍をドンドン減らしているのは、朝鮮戦争時には、数十km後方でも安全な後方基地だったでしょが、今の時代・・数百km単位の後方でもイザとなると前線基地とリスク・壊滅リスクがほとんど変わらないことによるようです。
南沙諸島が中国支配に入って・・海上輸送ルートが中国に押さえられて日本が困ろうとも、中国がアメリカと友好関係を約束するならアメリカにとって死活的重要性がありません。
ロシアのウクライナ介入やクリミヤ占領に対しても同じこと・・アメリカ国防に何の関係もない地域紛争に血を流すほどの関与したくない・・日本からグアムへの後退作戦も日本の(対中)戦争にアメリカが巻き込まれたくない意思表示・・沖縄にいながら防衛協力しないわけにはいかないでしょうが、沖縄にいなければその内応援に行きますと言う程度で済みます。
アメリカの長期戦略を・・合理的に考えて行けば、太平洋二分論・・グアムでの線引きは(中国が言い出したと言うよりは、)かなり前からのアメリカ自身の基本戦略であったコトを中国が確認しているだけ・・だから明白に否定出来ないのだと思われます。

世界の警察官から軍事同盟へ(太平洋二分論の基礎)

江沢民は1年間に4回もの訪問で相応の手応えを感じたので、これをはっきりさせておくためにだめ押しとして公衆の場で真珠湾演説を行なったと見るべきでしょう。
本当に信用出来る内諾があれば秘密にしておくのが普通ですから、アメリカが世界中が見ている場で否定出来ないと言う程度・・逆の押しつけをしたと見るべきかも知れません。
習近平がオバマとの初会談時だったかに強引に「太平洋二分論」を提案してオバマが否定出来なかったこともワザワザ公表されています。
(首脳会談は綿密な事前擦り合わせがありますが・・仮に唐突な提案であったとすれば・・)初会談では突然のことで想定していなかったのでどう対応すべきか決断出来なかった・優柔不断と言えないこともありませんが、今夏中国で開催されたG20でも太平洋二分論が習近平によって繰り返されたことが報道されていますが、オバマはやはり否定しませんでした。
いずれにせよ習近平の太平洋二分論に対してオバマだけではなく、江沢民の真珠湾演説時の日本敵視発言をブッシュも明確に否定しなかった点が重要です。
アメリカ歴代大統領の対応を見ると、中国が仮に日本を攻撃したり南シナ海が封鎖されても、アメリカが日本の自助努力がどうのと言って直ぐに参戦せずに、ぐずぐずしている事態が容易に推測されます。
南シナ海封鎖が実行された場合に封鎖されたままで「話し合い解決で・・」と悠長なことを言っていると、日本は日増しに不利になります。
中国の軍事基地が出来上がる前に実力で阻止しないで放置しておいて、出来上がってから実力で取り壊すにはイラクのクエート侵攻後の第一次イラク戦争のように圧倒的兵力差がないと無理があります。
「話し合い解決を期待する」と言うのは、一方が実力行使していない段階では合理的ですが、一方が実力行使しているのにこれを原状回復させないままで話し合い解決を求めるのは「実力行使を受入れろ」と言うに等しい無責任な態度です。
日本の非武装論者と同じで、相手が実力行使した場合どうするかの議論が抜けていて・・強い者がスキなように出来るルールです。
最近のアメリカのやり方はすべからく・・ウクライナ侵攻〜クリミヤ併合も・・実力行使を阻止しないで実力行使の結果をそのまま認める・・現状追認しかない最近の行動を見れば、・・内々その程度のゴーサインを出していた可能性の方が高いと見るべきでしょう。
これが今のオバマの優柔不断と批判されている裏事情です。
中国による南シナ海封鎖が実行された場合、日本が高額負担している日本駐留米軍が何か役に立つのでしょうか?
役に立つとすれば、今までの航行自由作戦のように時々行く程度でなく、アメリカ海軍がその海域に常駐して日本向け船舶を守ってくれるほどのことをしてくれないとどうにもなりません。
ただし、過去の同盟関係を見ても、(長篠の合戦でも信長の援軍が来るまで守り抜いたように日露戦争時の日英同盟も皆そうです)応援軍が来るまで一定期間自力で守り抜くのが現地軍(砦)の勤めでしたから、「ある程度自力で守って下さい」と言うアメリカの主張はあながち無茶な主張でありません。
実力行使阻止のためにアメリカ軍が介入するには時間がかかるので、その間くらいは自力で守る必要がある・・これが自衛軍の必要性論です。
このシステムがあると、空き巣狙いのような戦争開始の誘惑を阻止出来ますが、非武装論は短期間でも自衛の必要がないと言う意見になります。
初戦だけではなく、応援軍が到着してからでも応援を頼んだ軍が危険を顧みずに真っ先に戦う気持ち・・危ない戦闘を応援軍に頼りきりですと、応援部隊はイヤになってしまいます。
南シナ海封鎖の場合、アメリカに全面依頼するだけではなく当然日本海軍もアメリカ軍との共同作戦に従事する気構えが必要です。
ただしこれまでの自衛の定義では、船舶航路の妨害排除は含まれ難いような印象ですからこの辺・・自衛の範囲に関する法整備が必要です。
昨年制定したいわゆる安保法でもこの辺の出動要件がはっきりしない感じです。
全部を読んでいないので断定出来ませんが、「周辺事態」と言ってもこれまでの議論では米軍に対する援護論であって、自衛隊が先に出動する必要がある場合の要件が分りません。
アメリカが「世界の警察官をやれない」と言う意味は、アメリカが圧倒的経済力・軍事力を背景に現地常駐し,米軍が出ると周辺が従うしかなかったのでこれが普通のように期待していただけであって、これが出来なくなっただけです。
世界の警察官と軍事同盟の違い・・警察の場合、市民は丸ごと治安をお任せ・・丸腰ですが、軍事同盟の場合、同盟国間で力の強弱があるとしても、応援を頼まれてから駆けつける・・一定程度までは自力で守るのが原則です。
ニクソンショック以降アメリカの基礎体力が落ちる一方ですから、具体的な応援要請もないのに日常的に警察官役を果たすのは無理が出て来たことは確かです。
まして同盟国に自国軍を常駐させて日常的に守ってやるほどのコストを負担する関係ではありません。
アメリカでは◯◯違反と言っては、毎年のように欧州企業から何兆円規模の懲罰→和解金をとっていてこれが欧州の不満のタネになっていますが、(いま話題になっているのはドイツ銀行に対する懲罰金の巨大さです)これでは財政難に苦しんでいた徳川幕府が時々豪商を取りつぶしていたのと同じやり方です。
これを繰り返し発動するしかないこと自体に、アメリカのジリ貧・・資金不足・・政権(国際的発言力)末期到来を表しています。
この数年タクスヘイブンが大テーマになっているのも、全てアメリカの資金不足に由来しています。
上記のとおりアメリカは今後警察官役を無償で果たせないが、同盟関係(相互関係ならば)はまだやりますと言う段階です。
これが相互防衛条約=集団自衛権が必要になって来た我が国の事情です。
※ただし日本の場合「アメリカが非武装を強制してその代わりアメリカが守ると言う約束です」からこの辺が他国とは条件が違います・・念のため・・。
平和憲法の根幹は、市民と警察のような関係・・アメリカ軍が駐屯して日常的に平和を守ってくれることが前提・・「警察が犯罪を制圧する前提であって、国民が自力で警察官が来るまで強盗犯と渡り合う関係」ではありません。
アメリカが世界の「警察官役をやめて普通の軍事同盟関係に戻る」と言えても、日本に対しては、平和憲法を強制した以上・・あるいは核武装を禁止している以上は核の脅威から守る義務がありますから丁寧な擦り合わせが必要でしょう。
「核の脅威から守らない・・自力で守れ」と言いながら、核兵器所持を禁止・・核不拡散条約遵守を求めるのは矛盾してしまいます。

目的と手段の取り違え社会(社会矛盾激化→反日の誘惑)2

9月30日に書きましたが、反日教育は数十年以上掛けて漸く効果が出る・・しかも始めると途中の政治家権力者がやめることが出来ない・麻薬的効果があるので、特定個人の権力維持政策とは関係がない・・江沢民の真珠湾演説の前に党を上げての永続的?反日で行く決定があったことが推測されます。
共産党政権の存続と反日は表裏の関係・・切り離せない関係にあると確認されたと思われます。
日本では11年の反日暴動ですべて終わったような印象操作がされていますが、中国としては日本が大震災で弱ったときでしかもアメリカとのすきま風が吹いている民主党政権時を狙って、イザと言うときのために実験・・小手調べをしただけでしょう。
中国の究極の目的は、この先必ず到来する成長ストップ(成長がストップしない国はありません)・・経済破綻による大混乱に際しての最後の切り札・・対日侵攻作戦を予定していたと見ておいた方が良いでしょう。
フィリピンやベオナムなど元々格下の国相手に戦争で勝っても、コクナイ危機時のストレス解消になりません・・古代から今まで勝ったことのない日本に勝つかヘコませることこそ最大の国威発揚・国民の目をそらせる手段になります。
先制攻撃である程度戦果を上げてから、ウクライナ危機のように、アメリカの介入による膠着状態に持ち込んだ方が民族意識鼓舞の持続性が高いと言う読みもあるかも知れません。
実は中国は前回のレアース禁輸のときと違って対日交渉では、絶対的な力を手に入れています。
南シナ海のど真ん中に軍事基地を設けた真の意味・・11年の反日暴動時と違って次は「日本向け船舶に限って南シナ海を通さない」と言い出したら日本は遠回りするしかない・・コスト的にお手上げです。
安倍政権は、これを前提にアメリカ産LNG輸入やロシアとの協商など輸入先の拡散に必死になっていますが、中東産原油の輸入比率を下げるだけであって、その他東南アジアとの交易に莫大な支障が生じます。
中国から日本(尖閣諸島など)先制攻撃は国際非難がきついでしょうが、これをしなくとも日本海軍が遠く離れた南シナ海に先に出動して船舶の護衛をしなくてはならない事態(補給その他ですごく不利)・・日本軍が先に領海を侵犯したと言う理由で中国は尖閣諸島や沖縄攻撃の名分を得る予定でしょう。
手段と目的の逆転社会の応用ですが、中国では経済破綻を防ぐ努力よりはアタマっから防げないと決めて・・破綻を小さくする努力をするよりも、危機対策・・危機乗り切り策の方に頭を使っているのではないでしょうか?
これまで書いているように権謀術数特化社会・・権力闘争・・権力維持策に優先的に関心が行く社会だからです。
今年に入って、中国の民間債務急膨張によって、中国の経済破綻(無駄な公共工事によるGDP底上げ努力や公的資金注入によってゾンビ企業の延命←投資に向かわない債務膨張によって明らか)先送りに必死ですが・・ネット評論だけではなくIMFでもハードランニングリスク論が表面に出始めました。
以下勝又壽良の経済時評2016-08-24 04:25:38によります。
中国、「慢性疾患!」過剰債務が招く経済急減速と元安リスク
8月12日に発表されたIMF(国際通貨基金)による、対中国経済審査では、「衰弱」を裏付ける幾つかの指摘が出ている。
(1)「国際通貨基金(IMF)は、中国のシャドーバンキング(影の銀行)関連の19兆元(約290兆円)に上る信用商品について、企業向け融資と比べハイリスクで、デフォルト(債務不履行)に陥れば流動性ショックにつながる可能性があるとの見方を示した。
IMFでは、シャドーバンキングのデフォルトを懸念しているが、格付けAAAをとっている債券すら5割以上のデフォルト懸念である。中国経済が「信用危機」に陥る可能性は十分ある状況なのだ。見過ごしできないところまで追い込まれている。
(2)「IMFは、対中年次経済審査で次のように指摘した。景気刺激策の質を高めるためには、中国の政策当局者は国内総生産(GDP)伸び率目標の設定をやめるべきとの認識を明らかにした。
「インフラ投資を行ってGDPかさ上げの辻褄合わせをしてきたからだ。将来、投資資金も回収できないような無駄な投資を続けることが、中国経済をさらに追い込む。」
以上勝又氏の情報・意見を転載しました・・いろいろな情報がぱらぱらありますが、引用するには勝又氏上記経済時評の情報に多くを頼っています・・・考えも当然影響を受けているでしょう。
日本で考えている以上に、中共政権は民主化していない分に比例して危機管理に敏感な体制ですので、天安門事件に対する国際反応を受けて中国幹部の危機感が半端ではなかった筈です。
次の大混乱・・イザと言うときにどう対処するかについて真剣に対策を練って来たと思われます。
その一環として先ずはコクナイ体制の整備・・江沢民による法輪功弾圧に始まるコクナイ騒乱の核になりそうな集団排除や言論統制強化・党の支配体制確立=集団指導制から個人集中支配体制への移行など大きな流れが決まって来たと思われます。
江沢民のとききから国家主席と党のトップを兼任するようになったと言われてます。
そして今の習近平氏は言わば軍事を含めて全権掌握間近(これに反比例して不満の蓄積が大きくなっている点を強調する意見もあります)です。
国内衝撃の大きさに比例して耳目をそばだてるような大きな事件を引き起こす必要性・・経済ハードランニングが近づいている・・先送りすればするほど先送りに比例して衝撃が大きくなるのが明らか・・政権にとって最高度の危機間近ですから、対日関係で格段のエスカレートさせる必要性が高まって来ました。
この実現のためには、国際環境・・どの程度までの日本侵略をアメリカが事実上容認するかの擦り合わせ・・アメリカの同意またはどの時点で介入するかの読みが必須です。
始めから介入されて引き下がるのでは却って恥をかくので、大枠としては、太平洋二分論・・西太平洋で中国が何してもアメリカが介入しないのがベスト・・介入するにしても、ある程度戦果が出るまでぐずぐずしている内諾・・どこまで行くと介入するのか?この内諾またはニュアンスを求めて江沢民は1年間に4回もアメリカ訪問していたのです。
イラクのフセイン大統領はアメリカの内諾を得たと思ってクエート侵攻して大失敗しました。
それまでフセインはアメリカの手先として対イランの代理戦争を戦っていたのでまさか手のひら返しを受けるとは思っていなかったでしょう。
中国の場合大きいので、対イラクのように簡単な手のひら返しで陥れることは出来ません・ロシアのクリミヤ占領同様に既成事実を作ればこれをひっくり返してしまう力をアメリカは持っていません。
軍事基地がある限り軍事利用する・・その周辺が軍の都合でいつでも通行止めされる事態が予定されていますから、諸外国の航行の自由と相反する事態です。
中国が南シナ海のど真ん中にに軍事基地を作っているときに「航行自由」と言うばかりで、阻止しなかったアメリカが軍事基地が出来があった後でこれを破壊出来る訳がないのが常識です。
軍事基地を作るのを黙認しておいて「航行の自由」と主張するのは矛盾です・・から、「言うだけにとどめる」中国との暗黙の合意であったと思われます。

目的と手段の取り違え社会(社会矛盾激化→反日の誘惑)1 

現在中国の対日感情の紹介でテーマが逸れてしまいましたが、大躍進政策に戻ります。
大躍進政策そのものが、9月28日紹介したとおり非合理極まるものでしたが、翌29日に紹介したとおり今の統計のデタラメぶりと同じことが行なわれていたこと・・中央の命令どおりにやるとうまく行かないことが分っても・・地方政府が失敗を報告出来ず、過大な成功報告していたことが悲劇を加速したことも分ります。
現在中国の需要無視の生産競争もそうですが、虚偽報告によって大成果が積み上がって行く・・統計が意味をなさなくなっている現在の悪弊が既に大躍進時代に始まっている・・今に始まった事ではないコト・・専制支配下で必然的に生じる現象であることが分ります。
ソ連最後の大統領・ゴルバチョフでさえ、国内生産がどうなっているのかさっぱり分らなかったと回想しているとおりです。
権力者に都合の悪いことを言うと粛清される社会では、下部組織が迎合するしかないことが大もとの原因ですが、この4〜5日書いているように中国では約2000年間にわたる専制支配の結果、手段と目的の逆転があるから全ての分野でこういうことになります。
統計や報告が実態を知るためにあるのではなく下部の官僚にとっては自己保身と出世のためにあり、トップにとっては内政成功の誇示・国威発揚のためにあります。
正しい事実を知るためではありません。
中国がGDP統計にこだわっていて民生向上に頭を使わないのも同様で何のための生産力増強か分っていないのです。
生産力も需要に裏打ちされてこそ意味があるのですが、生産力と言う数値にこだわる結果おかしなことになります。
需要無視の生産力増強が仮にうまく行ったとしても在庫のヤマで、生活必需品の鍋釜や農機具を供出して売れない鉄鋼製品の山を築いた場合、食糧不足のマイナス効果は国民に帰せられます。
大躍進政策では作った鉄の多くが粗悪品でしたが、解放後は日本からの技術導入で一応世界標準の製鐵や石化製品を作れるようになっています・しかし世界需要無視の大増産計画であることは変わりませんので、これが世界に溢れ出して世界中が困っている状態です。
大躍進政策の悲惨さを1昨日紹介しましたが、下が虚偽報告をするしかない中国の社会習慣を見ると、歴史は繰り返すと言うよりは民族の生き方は百年や千年では変わらないと言うことではないでしょうか?
時々千年〜500年前のご先祖も私と同じような考えや生き方歩き方・・笑い方をしていたのかと思うと何となく不思議な気がすることがあります。
中国人は昔からこんな風に上が下の意見を聞かない風土ですから、下は虚偽報告するしかない・・この繰り返しによって、全ての分野で目的と手段が入れ替わる社会になってしまったのでしょう。
大躍進政策強制に対する不満による暴動発生リスク・・あるいは毛沢東に対する怨嗟の声が満ち満ちていたでしょうから、文化大革命運動はこれに対する先制攻撃・・反革命運動を先手必勝の目的でやった粛清の大型判と評価すべきではないでしょうか?
国民のための政治をする能力がないが、こう言うこすからく狡い戦術にたけているのが、共産党政権の本質と言えるかも知れません。
共産党は国共合作中・・孫文の組織内共産党員も委員も参加していましたし、蒋介石の作った士官学校にもソ連の援助があったかの理由で共産党員も参加していました)に国民党内に浸透して行くのに成功します。
権謀術数の得意な中国の中でも更にこの分野に特化し,組織内で着々と勢力を広げ政敵を失脚させて行く能力・・そのために生まれて来た政党と言えるかも知れません。
戦前コミンテルンのルーズベルト政権への浸透ぶりはよく知られていますし、今でも北朝鮮の韓国政府内への浸透ぶりはよく知られています。
政治・経済時その他で比較すれば、来たと南とでは、競争にすらならない程の格差があるのに権力確保では共産党の方が格段に上位になっている逆転現象です。
日本の全学連で言えば学生の多くの支持を受けている訳ではないのに、自治会執行部を全面的に牛耳ってる過激派と同じです。
その内日弁連もそう言う評価を受ける時代が来るでしょう。
日本でも共産党との共闘を他の野党が嫌がるのは主義が大きく違うと言うのが表向きの理由ですが、選挙協力を続けると内部浸透されてしまう恐れが中心的関心と言うべきでしょう。
中韓が何かと反日心情を煽る理由に戻りますと、日清戦争で敗北したことによって、地域大国のメンツを潰された中国の心情・・これは今でも有効な切り札・・これを煽るのは支配者にとっては格好の材料になります。
ところで改革開放後日本サマサマだった中国がイキナリ反日に転じたので、日本人にとっては寝耳に水・江沢民個人を反日的というイメージ報道が多いですが、反日転換は共産党首脳の一致した長期方針だったと思われます。
鄧小平の韜晦戦術同様で、イザとなればいつでも実行出来るように反日教育から始めたものと思われます。
天安門事件によって国際孤立・・危機感を持った幹部間協議で、将来再び同様の事件が起きたら同じことが出来ない・・危機感・・政権が最高度の危機に瀕したときの最後の切り札として反日暴動あるいは対日戦開始で凌ごうと言う重要決定がされていたとみるべきです。
改革開放後日本の優れた技術がドンドン導入され技術指導を受けていると対日親近感が増す一方だったことから、これ自体が共産党専制支配にとって脅威だったでしょうから、言わば一石二鳥の政策決定です。
韓国が長年日本文化流入を禁止して来たことからも分るように、中国にとって日本文化浸透は由々しい問題です。
イキナリの反日攻撃は無理があるので、先ずは国際環境を整えることと、騒乱時に国内敵対勢力の核になる組織が育たないように整備すること、反日感情を徐々に育成する必要・・反日教育から始める数十年先の長期方針が決まったと思われます。
国内敵対勢力の芽を積む戦略・・王朝崩壊時にいつも騒乱・庶民凝集力の核になって来たのは いつも宗教組織(日本の一向一揆もそうですが命を棄てても戦うには向いています)ですから、江沢民が法輪功弾圧を直ちに始めたのは、当然の政策です。

免責事項:

私は弁護士ですが、このコラムは帰宅後ちょっとした時間にニュース等に触発されて思いつくまま随想的に書いているだけで、「弁護士としての専門的見地からの意見」ではありません。

私がその時に知っている曖昧な知識を下に書いているだけで、それぞれのテーマについて裏付け的調査・判例や政省令〜規則ガイドライン等を調べる時間もないので、うろ覚えのまま書いていることがほとんどです。

引用データ等もネット検索で出たものを安易に引用することが多く、吟味検証されたものでないために一方の立場に偏っている場合もあり、記憶だけで書いたものはデータや指導的判例学説等と違っている場合もあります。

一言でいえば、ここで書いた意見は「仕事」として書いているのではありませんので、『責任』を持てません。

また、個別の法律相談の回答ではありませんので、具体的事件処理にあたってはこのコラムの意見がそのまま通用しませんので、必ず別の弁護士等に依頼してその弁護士の意見に従って処理されるようにしてください。

このコラムは法律家ではあるが私の主観的関心・印象をそのまま書いている程度・客観的裏付けに基づかない雑感に過ぎないレベルと理解してお読みください。