中国経済対策の成否(アメリカ金融政策と中国国内事情)3

中国が外貨準備が3兆ドル割れに危機感を抱いているのは、対外債務1兆ドルあるのでこれ以上外貨準備が減ると対外債務1兆ドルの支払がどうなる?と言う論調が普通です。
この結果・・これ以上外貨準備を減らせないと言われていて昨年末から急遽外貨両替の規制が厳しくするなどなりふり構わない姿勢に転じたのですが、この流れ自体が不思議ではないでしょうか?
昨日紹介したように公表数字では差引対外純債権が192兆円もあるならば、(例えば2千兆円の対外債権と1808兆円の債務で差額約192兆円のプラスとすれば(1兆ドル=約110兆円あまりの債務全部の支払時期が同時に来る訳でもないので、)2千兆円の対外債権や株式の一部を売却すれば足りる筈・・・・何故1兆ドルの支払の心配が一般化しているのか分りません。
対外資産は直ぐには売れないからと言う説明ですが、同じことは中国の対外債務にも言えるので、例えばトヨタ日産などの対中投資企業がイキナリ全資本引き揚げを出来る訳ではありません。
純債権国かどうかの議論と3兆ドルの外貨準備割れを危機ラインとする一般的意見・・中国もそれを事実上認めて必至の対応中であることを組み合わせると、本当は1兆ドルの純債務国ではないか・・それを大手メデイアは言えないでそれとなく矛盾をほのめかしているのかも知れません。
今朝の日経新聞朝刊1面では、中国政府がこれまでの外為管理の手法を改めて前日の終値を参考にしないと言う発表が出ています。
重大過ぎるからでしょうが、第一面に出てます。
元々中国の資本出入りは、ホットマネーの流入を許さないなどの規制がある上に、通貨相場も市場で100%決まるのではなく政府が毎日基準値を決めて上下2%内での変動を認めると言うものですから、相場変動幅は1日4%だけ→言わば96%管理相場です。
96%の管理相場でも、前日終わり値を「参考に」(するだけでそのとおりにするのではないのですが・・)翌日の、基準値を決める制度運用でしたが、今朝の報道では、前日終値を「参考にすらしない?」と言う発表をしたと言う衝撃です。
中国はいくら法治国家ではないと言っても何らかの基準がないと引き現場は混乱しますが、新たな基準値産出方法は市場参加者に通知が始まっているらしいですが、日経新聞の記事では米国の次の利上げが目前に迫って来た(6月利上げ説が一般的です)→このときに人民元急落(暴落・収拾がつかなくなるの)を防ぐための布石ではないかと言う解説です。
96%の管理相場とは言え、前日終値が下限に張り付いた場合、それを参考にして翌日基準値を下げると分っている・・急落の連鎖になるのが怖いからでしょう。
為替相場や株式相場の大幅変動に対する規制は、突発的なパニック的誤った急落や急上昇が起きたときに沈静化を図るために認められていることですが、(この名目で中国は上下2%しか変動を認めないと言う制度採用をしていた筈です)が、今朝の報道は一時的下落ではない・・連続的下落・・本来の実力にあわせた下落が迫っていることを自白したようなものです。
ところで市場そのもの規制強化策は、15年夏の上海株式市場急落時の取引規制・・「これでは株式市場とは言えないのではないか」と言う一般的評価でしたがこれと同じことを先手を打って始めたことになります。
中国の場合にはドル金利が上がるのを放置しているともっと人民元が急落するの怖い・・対外債務支払に困難を来たすので防衛上金利を追随して上げるしかありません。
下がる前に早めに$を手当てしておけば良いと言うのが普通の行動→余計にドル両替需要が増える・・外貨準備が減る一方になり、政府がこれに耐えられなくなってこの動きに待ったを掛けて来たのが昨年末までの次々の規制強化策でした。
今年始めまでに資本流出強化が完成してこれ以上の規制強化が出来なくなったので、年末から金利上げ金融引き締めに入るしかなくなったのですが、アメリカの金利上げに備えて中国政府が通貨防衛・為替市場介入に必死なのは、際限ない追随金利上げを続けるには国内景気上無理がある・・・体力的について行けないので一種の資本鎖国政策に逆戻りを始めるしかなくなったことを表しています。
ソ連が、レーガンの挑戦に応じた軍拡競争について行けずに崩壊してしまった例を参考にしているのでしょう。
軍拡の方は市場のように直ぐに効果が出ないのでまだ拡大中ですが、市場相場は直ぐに結果が出るのでそうはいきません・・そこで事実上市場機能を空洞化して行く方向に邁進するしかないのです。
中国のGDP発表が電力・輸送統計問わないと指摘されるとその統計発表をやめてしまう・時間をかけて政府発表に合うように統計を作り替えて行く・・新幹線が事故を起こすと現場で土に埋めてしまうなどの報道が世界を賑わしましたが、体温計に当たる市場規制強化をドンドン強めると中国経済の体温を不明にするメリット・・逆から言えば、政府に取っても本当の国力が不明になります・これがソ連崩壊の基礎的事情でした。
入院患者の毎日の検温や脈拍数などを誤摩化しているようなものです。
話題が変わりますが、自由な取引が出来ない通貨を国際通貨・・SDRに採用したIMFの政治的偏りが明らかで、中国が将来覇権国の地位を確立すれば中国の地位向上に貢献した功労者としてラガルド専務理事は評価されるでしょうが・中国がここで失速・・デフォルト気味になって世界が大混乱した場合、IMFはどう言う存在なのか?政治責任問題になって来るでしょう。
昨日紹介した中国の所得収支から見ると、「貰う利息より払う利息の方が多い」と言うことは結果だけ見れば、正常債権だけで収支を合わせれば中国が純債務国かもしれません。
他方日本の場合以下の通り、所得収支だけで18兆円も稼いでいます・・海外投資は相応の利潤を生んでいると言うことでしょう。
https://mainichi.jp/articles/20170511/k00/00e/020/308000c
毎日新聞2017年5月11日
財務省が11日発表した2016年度の国際収支速報によると、海外とのモノやサービス、投資の取引状況を示す経常収支は前年度比13.1%増の20兆1990億円の黒字となった。
・・・16年度の第1次所得収支の黒字は、18兆356億円と07年度当時を約1.5兆円上回っている。」
中国の利回りが悪過ぎるのは、ベネズエラ〜アフリカ等の破綻国家?に対する投資を対外債権に計上しているからではないでしょうか?
ところで、貿易黒字と同額のドルだけ買えばトントンの筈ですが、それ以上に(貿易に有利)人民元相場を下げたい+表面上の外貨準備を大きくし国威発揚・・アメリカに対する発言力保持のために多めにドル買いをする・・結果的にドル建て外貨準備が膨らみます。
中国の外貨準備は上記のような演出の結果、内容実質が過去の貿易黒字の累積と大きくかけ離れていたと思われます。
貿易黒字額も相手国の赤字額と合わないなど以前から信用性がないことが指摘されていました・・ホットマネー・資本規制をくぐるために、輸出取引仮装による(貿易黒字の実質仮装取引がかなり含まれていた)資金流入が噂されていました。
今この隠れたホットマネーが輸入代金仮装した逆張りでこの数年逃げ始めたことになります。
昨年1年間の人民元防衛相場によって、こうしたメッキが剥げて来た(中国の外貨準備は張り子の虎であった)のが中国外貨準備急減の顛末でしょう。

中国経済対策の成否(アメリカ金融政策と中国国内事情)2

中国国内事情からすれば金融緩和を続けたいところですが、アメリカが金利を上げれば中国が追随しないと資金流出リスク→人民元の下落・貿易黒字が更に増える・・これ以上の貿易黒字をトランプ政権が容認出来ません。
この3月以降の米国金利と中国の金利の流れは以下のとおりです。
http://jp.wsj.com/articles/SB10922328955711303277604581235571475256868
2017 年 5 月 9 日 15:27 JST 更新
 FRBは3月FOMCで政策金利の引き上げを決定。米経済が力強さを増す中、FRBが新たな政策局面に入りつつあることを示唆した。
http://jp.wsj.com/articles/SB10922328955711303277604581235571475256868
2017年3月16日 13:01 JST 更新日時 2017年3月16日 14:50 JST
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中国人民銀、オペ金利とMLF利率引き上げ-米利上げ後
人民銀はこの日、7日物と14日物、28日物リバースレポの利率をそれぞれ10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)引き上げた。引き上げ後の利率は7日物が2.45%、14日物が2.6%、28日物が2.75%。2月上旬にも10bpの利率引き上げに踏み切っていた。
 また、人民銀はMLFを通じ期間6カ月と1年の流動性供給も行った。利率はそれぞれ3.05%、3.2%と前回から10bp引き上げられた。」
上記のとおりアメリカ金利政策に追随するしかない中国経済は、一方でマネーサプライを増やして何とか凌ごうとしていますが、それが一方で商品・不動産相場過熱などバブルを煽ることになっています。
一方で紙幣大量発行しても金利引き上げ引き締め政策は、GDP比280%と言われる過剰債務構造を直撃します。
早速中国政府スジからは「金融引き締めはしない・中立だ」と言う発言が4月下旬ころに出たようです。
・・この人が発言した翌日から行方不明と言われてますが・・発言が原因の失脚ではなく、権力争いの彼・・李克強系実務官僚に及んだと言う憶測です・・。
中国としては、バブル崩壊も困るし・・引き締めしないままで資金流出加速も困るし(外貨両替規制の強権だけで凌げるのかの悩み)・・と言う板挟みで揺れ動く金融政策担当者の悩みを表しているのでしょう。
にっちもさっちも行かない・・政治と言うモノは「あちら立てればコチラ立たず」の矛盾関係こそを裁くべきものです。
これが政治の苦しいところですが、ときに引き締めを緩めたり引き締めたり・その合間にマネーサプライを増やしたりの試行錯誤している半年〜1年くらいの間に中国経済がどうなるかです。
すでに今年も5月末になりましたが、5月21日冒頭に書いたように上海デズニーに毎月に100万人も押し掛けているようでは、政府が困っていても個々人末端の懐具合がそんなに悪くなっているようには見えません。
日本の財政赤字と同じで、中国人民は懐に一杯資金を持っているが政府だけが苦しいのかも知れません。
もともと人民にお金がなければ巨額賄賂を出す原資がありません・・政府は税をあまり取れない・官僚の給与も高くない代わりに賄賂で賄って来たことをMarch 30, 2017,「騙しあい社会3(賄賂の基礎2)前後に書きました。
清朝時代には版図が最大であったと言っても支配下に入ったと言う名目だけで、今のようにマトモに税を取れていなかったと言われます。
ちょっと前に税収弾性値のコラムで書いたように、改革開放頃にも前近代のママで超税率がもの凄く低かったのが改革開放後年々徴収率上がっていたのでGDP比税収弾性値が高かったが、この数年は徴収率を上げるのが限界・・今後は今までのよう徴収率を上げられない・だから最近のGDP比弾性値が下がっているとも言われています。
人民はしこたまお金を持っている・・だからこそ人民がお金を持って外国へ逃げたくなる(人民元の外貨両替が多い原因です)し、人民が外貨に変えて逃げないように人民に対して外貨両替規制を厳しくしているのです。
昨年末からの急激な両替規制によって、海外への資金逃げ場失った個々人の資金が国内に出回って・過剰流動性になって、不動産・商品相場バブルを一時引き起こしていると言われました。
日本のいわゆる失われた20年・・・需要不足を下支えするための財政投入・・財政赤字の場合には、その間も国際収支黒字が積み上がり対外純債権額も積み上がるばかりでしたから、エコノミストが騒ぐような赤字国債累積とデフォルトの関連性がない・・と言う私の意見をJanuary 19, 2011,「失われた20年??1」以下で連載しました。
バブルの螺旋状繰り返しがいつまで続くかですが、過剰流動性供給で無駄遣いを続けられるのも国際収支次第ですから、中国の場合も結局のところ国際収支の内実がその限界を分けるでしょう。
中国国際収支の実際はどうでしょうか?
2017/04/30「中国やりくりの限界(税収弾性値1)3」の続きになります。
http://biz.searchina.net/id/1610739?page=1
日本は世界一の債権国!しかも25年連続、中国とは「資産の質が違う」中国メディアの騰訊は「日本の対外純資産残高が5年ぶりの減少となった」としながらも、日本国内の見方を引用し、外国人投資家が保有する日本の株式の価格上昇によって対外負債残高が増加したことが対外純資産残高が減少した理由と伝えた。
記事は、日本の対外資産残高は前年比0.7%増となり、7年連続で増加し、過去最高となったと伝え、日本企業の国外での買収や直接投資が増えたことが理由と紹介。
さらに、主要国の15年末における対外純資産は2位がドイツで、3位が中国だったとしながらも、中国は192兆3700億円と、日本の56%の水準にとどまっていることを伝えた。
中国は約2兆ドルもの対外純資産を有しているが、14年の経常収支における所得収支は298億ドルのマイナスだった。
これだけ巨額の対外純資産を持ちながら投資収益率がマイナスであることが「中国の資産管理における最大の問題」という見方もある。
日本の場合は対外純資産を通じて莫大な利益を獲得しており、中国と日本の対外純資産は「質」が大きく異なることが分かる。」
サーチナによれば上記のとおりですが、一般的に考えれば純債権国は利子・配当を受け取る方が多いの普通です。
例えば500万借りている人が800万投資している場合、受取利息配当の方が多いのが普通の資金運用と言うべきですが、中国の場合何故か収支マイナスと言うのですから不思議です。
借りるときは高い利息で貸すときは安い利息・・運用が下手と言わんかのような説明ですが、本当でしょうか?
最貧国等への投資の場合ハイリスクハイリターン・・利回りが高いのが原則です。
焦げ付き債権を損切りしないで持っているだけではないでしょうか?
元々中国の場合公表数字が当てにならないので、純債権国とは見せかけだけで純債権国の触れ込みが怪しいのですが、もしも数字が正しいとすれば、・・不良債権を消却しないで債権に含めているとすれば・・実質は純債務国かも知れません。

中国経済対策の成否(アメリカ金融政策と中国国内事情)1

話題が民族国家→民族文化の重要性にそれましたが、アメリカの金融政策の中国への波及効果に戻ります。
アメリカの金融政策から中国の受ける影響・・図体が大きくとも社会経済的には新興国の仲間である点は厳然たる事実ですから、アメリカの金利上げによって資金がアメリカに吸い寄せられる磁力に逆らえません。
・・日本は元々アメリカよりも金利が低い状態でここ20年あまりやって来ましたのでアメリカが少しくらい上げても日本には関係がありません。
逆に昨年1年間中国の対日資金「潜入」が増えていることを、「中国が米韓の国債を売って日本に資本投入するワケ」のテ−マで5月15日にに紹介しました。
中国は、これまで紹介して来たように長期にわたる構造改革中でその痛みに耐えるためには財政投資(内需拡大)や金融緩和を続ける必要がありますが、アメリカが金融引き締めに入ると中国独自に緩和を続けることが出来ない・アメリカの政策に追随せざるを得ない点は新興国同様です。
軍事力で周辺を威嚇していても、アメリカ軍が中国の領有主張している海域でアメリカが航行を開始すると追いかけて追い払う訳に行かない・・小さくなっているしかないのと同じで実は独立性がありません。
最近の北朝鮮有事・・米空母打撃群が2グループもやって来て日本海で大規模演習をしても中国は北朝鮮のために抗議1つ出来ないどころか、北朝鮮封じ込めに協力すると言わざるを得ない・・経済封鎖に加担実行開始するしかない状態です。
血盟を誇っていた北朝鮮を守れないどころかアメリカに従って北朝鮮包囲網に参加する意思表示に追い込まれているのですから、これほど頼りにならない同盟国・・屈辱的なことはないでしょう。
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO16534010X10C17A5EA1000
北朝鮮包囲網ほぼ完成か 米、ミサイル300発で圧力    
真相深層 2017/5/18付日本経済新聞 朝刊
北朝鮮の核・ミサイル開発をめぐる米朝の対立が膠着するなかで、米国は北朝鮮の軍事的な包囲網をほぼ整えた。朝鮮半島近海に米国の空母や原潜を展開。北朝鮮が「レッドライン(軍事行動を起こす基準となる行為)」を越えれば即応できるように、推定で300発の巡航ミサイルが北朝鮮の地下施設などに照準を合わせている。北朝鮮の譲歩を引き出す圧力は確実に高まっている。」
toyokeizai.net/articles/-/159314 5月21日
中国、北朝鮮からの石炭輸入を全面停止
輸入禁止措置は19日から今年いっぱい [上海/ワシントン 18日 ロイター] – 中国商務省は18日、北朝鮮からの石炭輸入を全面的に停止するとの通達をウェブサイト上で発表した。北朝鮮に対する国連安全保障理事会の制裁を強化する狙いがある。輸入禁止措置は19日から今年いっぱいとなる。北朝鮮は12日に弾道ミサイルの発射実験を行った。中国は昨年4月、国連の制裁を受けて北朝鮮からの石炭輸入を停止する方針を示したが、核やミサイル開発に関係せず人道上不可欠な場合は除くとしていた。」
5月22日の午前のMSNニュースです。
http://www.msn.com/ja-jp/news/world/北朝鮮対応「100日猶予を」
-中国・習主席、米に要求/ar-BBBm7Hq北朝鮮対応「100日猶予を」 中国・習主席、米に要求 朝日新聞デジタル のロゴ朝日新聞デジタル8 時間前
「 北朝鮮の核・ミサイル問題をめぐり、中国の習近平(シーチンピン)国家主席が4月初旬のトランプ米大統領との会談で、米国が北朝鮮に対して具体的な行動をとるまでの猶予期間として「100日間」を求めていたことがわかった。この会談で合意した両国の貿易不均衡是正についての100日計画と並行し、安全保障分野でも同じ期限を設定した格好。ただ北朝鮮は21日も弾道ミサイル発射を強行しており、どこまで効果が出ているか不透明だ。」
「関係筋によると、会談で両首脳は、北朝鮮による新たな核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を阻止することで一致。北朝鮮による「重大な挑発」があった場合、米中がそれぞれ独自の制裁を北朝鮮に科すことでも合意した。習氏は、中国国内の企業からの北朝鮮への送金規制や北朝鮮向けの石油の輸出規制などの独自制裁を検討していることも示唆したという。」
アメリカの金融緩和開始の憶測だけで16年中に中国から資金が逃げ続けて行き、4兆ドルに迫っていた外貨準備が1年間で3兆ドルを割るまでになりました。
中国の場合、新興国から逃げる一般的な資金逃避傾向と中国自身の内需拡大政策・・景気対策につぎ込むための資金浪費?懸念の両面から為替下落圧力がかかったことが、巨大な外貨流出を招いたことになります。
結果的に自慢の外貨準備も一時3兆ドルを割ってしまい、貿易量から見て安定的保有資産として必要な最低限・・危機的ラインに近づいて来ました。
そこで中国政府は昨年末から急激な外資流出制限を掛けているのですが、これで何とかなるかがこの半年〜1年の結果によります。
他の新興国と違い貿易黒字を維持したままですから、資金流出・・人民のパニック売りさえ防げれば、貿易決済に支障が出ることは本来ありません。
ここまで自腹(虎の子の外貨準備に手を付けても)を痛めても国民を失業させない(政権維持の自己目的とは言え)心意気は結果として大したものです。
ただ、対日資本流入が16年1年間では増えていることから考えると、イチガイにパニック売りばかりとは言えない・・投資価値の低いアメリから逃げて先進国企業買収による技術移転を狙った民間による合理的投資もかなりある筈です。
民間の方は、政府が資金不足になろうが、デフォルトしようが構わない・・自企業の利益のために行動しているとすればそれもあるような民族性です。
政府としては、外貨準備が減るのを惜しんで内乱になるともっと困るので、二者択一判断で外貨準備取り崩し・内需拡大策が結果を先送り出来るし、もしかして何とかなる可能性があるのでこれを選んだのでしょう。
昨年末まで頑張って来たものの外貨準備が3兆ドルを一旦割ってしまい、経済規模からしてギリギリになって来たのでこれ以上の買い支え=外貨準備取り崩しは出来ない状態です。
そこで昨年末頃から海外投資を規制したり短期金利を上げたりして打つべき手を打った挙げ句にFRBの金利上げですから、国内景気失速が心配などと言ってられなくなって・追随して金融引き締めに入りました。
・・FRBの金利上げが今後連続した場合、その都度追随して中国も金利を上げ・金融引き締めするしかなくなった場合には、国内景気に大きな影響を及ぼすのは必至です。
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO14873520U7A400C1FF2000中国、引き締め政策で金融市場が動揺 社債の発行停滞 2017/4/4 1:42
日本経済新聞 電子版
【上海=張勇祥】金融政策を引き締め気味に変更した中国で金融市場が動揺している。社債の発行延期、取りやめが相次いでいるほか、3月下旬には銀行間市場で債務不履行が生じたとの観測が浮上した。短期金利も乱高下している。金融政策の転換は不動産バブルや金融リスクの抑制が狙いだが、過度な引き締めは景気の失速を招きかねず、金融当局は難しいかじ取りを迫られている。」
http://tokua.wpblog.jp/2017/04/06/
【香港=粟井康夫】中国で金融引き締めへの警戒感が高まっている。日本経済新聞社と日経QUICKニュースが5日まとめた中国エコノミスト調査では、中国経済の先行きのリスクとして、金融当局による金融政策の引き締めをあげる回答が増えた。中国人民銀行(中央銀行)は資本の流出や不動産バブルを抑えるため短期金利を高めに誘導しているが、2017年下半期以降に中国景気の下押しに働くとの見方が強まっている。」
多くのエコノミストの見方は(貿易黒字を減らしますと言うトランプ習近平会談での対米約束)もあって、「金融引き締めするしかない」→そうすれば景気下押し圧力になると言う意見が多いことを上記記事は表しています。

民族文化の有無3(宗族血縁組織)

韓国の血族支配の財閥が勢威を振るっているのを近代的企業統治精神?を基準に批判する論調が普通ですが、血族・宗族発展のエネルギーを無視した意見では的外れな意見だと思われます。
韓国の財閥組織形態は戦前日本の財閥をモデルにしたものですが、日本の場合、三井,三菱、住友その他財閥見ても分るように直ぐに血族支配から脱皮していたのですが、韓国の場合いつまでたっても客観組織に変貌出来ないのは意識が遅れていると言うよりは、中韓では宗族血縁重視・地域社会・「公」の意識が育っていないと言うか元々存在しない・・価値観が違う・・民族国家その他の地域社会・共同体意識のない社会?であることを直視する必要があります。
周回遅れをバカにしていても良いですが、もしかしたらグローバル化に最も適しているのが宗族血縁意識民族かも知れません。
地域社会・・面としての固まりでないと生きて行けない組織体行動原理の場合、進出先で面としての地域支配権獲得が必須・・ですが、ツタやカヅラのような生き方ですと行く先の支配者が誰でも良い・・どこでも隙間があれば入り込みそこで根をはれます。
これが、華僑が世界中へ進出を容易にして来た生活習慣と言うか価値観です。
その内に最先頭の社会になる可能性もあります・・蔓草はミミズのように途中で断ち切られてもその先で根おろして更に発展して行ける・・テロによる交通切断などに強い組織です。
いわゆるグローバリズムの基礎ですが、つる草のようにお互い絡み合ってぐちゃぐちゃに棲息する社会が後1世紀もすると普遍化し、「民族国家?そんなもの昔あったな!」と言う時代になるかも知れません。
本国を必要としない点ではユダヤ系と似ていますが、華僑の場合宗族間の強固な互助組織・意識が特徴でその地の支配者になる必要がない(大きな樹木にならず地を這い樹木(権力)に絡み付くだけのツタの特性で)点で政敵を作り難い点が有利です。
世界が資源や量に頼る時代に終わりを告げようとしていると言う意見で書いていますが・・アメリカの動きを見ると中国のバイタリティーに比べると未だに量で勝負する・・移民受け入れ(人口量)や資源に頼る習慣が抜けないような印象を受けます。
欧米の影響を受けているメデイアも如何に多くの移民を受入れて労働力=人口を増やすかの宣伝ばかりで一人当たりの豊かさ追及にはとんと関心がない印象です。
アメリカの復権と言っても結局はシェールオイル等の資源産業の復活でしかないことを大分前に書きました。
中国が省力化投資に邁進してどこまで日本に肉薄出来るか、人口の1〜2割でも近代化に成功すれば日本の人口の1〜2倍ですから、組織体の競争・・国対国では日本より国力が上になるでしょうが、残り8割の底辺層を抱えたままである分が不利です。
人口の巨大さ、国土の広さが不利になる時代です。
とは言え、「よそ者がそんなことで国がどうなるの?」と心配してやる必要張りありません。
異民族支配が多かった関係で、中国人(と言うよりもこの地域の諸民族)の心底の意識は「国なんかでどうでも良い・・自分・一族だけ成功して世界につる草のように伸びて行けば良い」ということでしょうから、そんなことは気にしない・・一人でも多くの成功者を出す方が先決と言うことでしょう。
成功する順にドンドン国を出て行き「カス」だけ残る・これが中国地域になりそうです。
天の原フリサケミレバ・・と故国をしのんだ阿倍仲麻呂のように「何が何でも故国に帰りたい」と言う心情は稀ではないでしょうか?
とは言えまだ民族?国家が幅を利かす時代ですから、国家として世界の指導的地位を得るのは重要です・・そのためには最後に重要なのは世界に通用する独自文化が生まれている民族かどうかに掛かるでしょう。
他所の文化のパクリや単に遅れてダサイ・粗暴なだけの独自性では相手にされません。
独自文化発進力もなく他所の名画や彫刻を金の力で買い集めるだけのロシアやアメリカに先があるの?と言う疑問です。
3〜4ヶ月ほど前にプライスコレクションで知られるプライス氏が日経新聞に「私の履歴書」を書いていましたが、彼は財力と鑑識眼によって若冲その他の日本絵画のコレクションしたのは個人の業績としては立派ですが、ここのテーマは、自民族の文化は?と言う疑問です。
大原美術館など見ると自己満足自慢のためではなく、洋行出来ない美術学徒が日本にいながら西欧の最新潮流に触れられるようにと言う心意気で出来たことが分ります。
ブリヂストン美術館に行ってみると、専門家ではなく「一般のサラリーマンが仕事帰りや休憩時間にちょっと立ち寄って芸術に触れられるようにしたい」と言うみんなのための美術館創設を目指したことも分ります。
日本人の多くは自己満足のためにあるいは自慢するためにコレクションしたのではありません。
古くは弘法大師その他の留学僧は唐の先進分物を持ち帰り、自国普及に努力しましたし、誰とも分らないほど多くの人の努力で漢文をそのまま日本語に読み下す技術が考案されてみんながそのまま漢文を読める社会にしてしまいました。
明治維新時にも洋行帰りが西洋知識を独占せずに直ぐに大量に翻訳して国民への西洋知識の普及に努めましたし、対応日本語のない場合多くの新造語も作りました。
プライス氏の集めた若冲のコレクションがアメリカ人の美術レベルに何ほどか影響を与えることがあったのでしょうか?
あるいは、幕末からアメリカのコレクターが、金に飽かして(両替の不正があったこともあります)日本美術品が多量に多数コレクトされて今は、メトロポリタン美術館に収蔵されていますが、アメリカ人の創造力に何か影響を与えたのか不明です。
23日まで、日経新聞最終ページにイギリス貴族の館・カントリーハウスの連載をしていましたが、エエカテリーナ2世同様に個人的蒐集・自慢の域を出ないレベルを表しています・・イギリスは世界の覇者になって経済力にあかして世界中から文物を集めても、先進文化を参考にして自国文化を発展させるほどの文化土壌がなかったからでしょう。
我が国は幕末から明治開国後「洋画」「洋楽」を学びましたが、遠近法や新しい絵の具などが入れば直ぐにこれを応用出来る下地があってのこと・・飽くまで日本画、日本音楽を棄てていません。
料理も西洋の良いところを取り入れても和食自体発展するばかりです。
和魂洋才・・こうした外国文化の受容方式は遣唐使の昔から変わりません。
東博(東京国立博物館)にある法隆寺館の仏像群や東洋館にある北魏時代等の仏教伝来初期の石像群を見ると、日頃我々が知っている仏像と表情がまるで違うのに驚きます。
漢詩が入っても万葉に代表される我が国古来からの「歌詠みの心」を基礎にしてこれを受容し取り入れて来たことが分りますし、政治制度的に律令制を受入れても直ぐにわが国風に変えて来ました。
洋画がいくら立派だと解説されても日本人が自己資金で買うのは殆ど日本画でしょう。
東山魁夷が洋画を志したときに親から洋画では食べて行けないから「日本画に」と言われたと言われますが、実業家の親は学校教育でいくら洋画を褒めようとも、国民の心は違う・・・需要者の気持ちを良く知っていたのです。
日本発で今や世界を風靡し始めたアニメも、他所からの借り物ではなく、鳥獣戯画の昔から動物を擬人化して遊ぶ日本古来からの風俗が源流です。
アメリカが大きな顔を出来たのは資源があるからダと言う意見・・最近ではJuly 2, 2016,「欧米と日本の対応1(EU→大規模化)」で書きました。
産業革命以降20世紀までは、資源の時代・・戦争も資源を巡るものであったと言えます。
世界の覇者になったアメリカも資源に基礎を置くので、独自文化らしきものがなく、ジーンズやハンバーガー、コーラくらいしか残せない印象です。
そこで現在アート創造に必死ですが、私のようなド素人から見ればどれも思いつき的域を出ない・・素人にはあまり魅力を感じないのが難点です。

ロシアの台頭と資源(民族文化の有無)2

資金力だけでも、美術品のまとめ買いやスパイを使って最先端軍事科学や技術を真似出来るし買えますが、自前の文化を一挙に育むには無理があります。
似た水準にあれば勉強になりますが、全く素地のないところで他国文化財をまとめ買いして持ち帰って真似しても?焼き直しでしかなく、自国文化が生まれませんし、産業分野でも巨費を投じてスパイするほどのメリットのない民生分野ではスパイに馴染みません。
中国やロシアが宇宙にロケットを飛ばせてもマトモな電気釜やウオッシュレット・化粧品1つ作れない・・これが訪日中国人の爆買いの原因です。
中国は重工業あるいは代表的家電製造技術を充分学んだので最早日本に用がないと誤解して反日暴動を仕掛けたのですが、人民の生活水準が上がって来るともっと裾野の技術が必要と漸く分って来たようです。
そこで、もう一度日本へのすり寄りが始まったのですが、工場誘致して現場で学ばない限り作れないのを理解していることは、中国は工場誘致に必死になっているのを見れば分ります・・民生分野の底上げをするにはまさに民度レベルにかかっています。
軽工業から重工業へと言う産業進化を学校では習いましたが、スパイ国家では重工業や宇宙産業が先に開発され、民生用軽工業は後回しになります。
中国の場合、国がロケットなどの超高度技術をスパイが入手している関係で、民間も知財や産業秘密剽窃になんら罪の意識が育たないようになっている様子ですが、具体的現場技術は、民生用工場や環境保護用の工場誘致によって、実地で学ばない限り身に付きません・・そこで工場誘致に必死になって自国民がどの程度まで作れるようになるかの挑戦に今や必死です。
ところで、技術だけはある程度のものを作れても最後は文化発進力の有無が決め手になりますから、中国が現在的な独自文化発信国になれるかどうかが重要です。
その点はどうか疑問がありますが、中国はアメリカと違い正面から挑戦・努力する意欲があるだけマシでしょう。
22日の日経新聞朝刊3pで工作機械大手ヤマザキマザック社長のインタビューが記事になっていて、中国向け工作機械は省力化投資に躍起の状態で受注が伸びているが、アメリカではこの2年工作機械受注が低迷していると出ていましたし、今朝の日経朝刊15pでは、日本の工作機械の中国からの受注は今年4月には前年同月比2、4倍と言う猛烈拡大になっているようです。
両記事を読んでいると中国は省力化投資について行けず淘汰される旧式設備企業や人材が余ってもそれはそれとして、兎も角近代化出来る工場から近代化させたい・・深圳特区同様に「やれるところからやって行く」前向き姿勢・・意欲が高い印象を受けます。
人口が多いから成功する企業が少しでも出れば、長期的に社会全体のレベルを引き上げられると言う姿勢のようです。
つぶれたり、失業するのは自己責任・・そんなことにお構いなし・・気にしていると国際競争に負けてしまう・・勝てる産業を1つでも二つでも先ず育てるのが先決と言う姿勢が垣間見えます。
これが中国産業のバイタリティーでしょう。
この結果国が分裂して別の国になるかどうなるかには全く関心がない・・元々国家・社会・「公」・の意識が育っていない宗族・血族意識が基礎になっている中国人には元々関心のないことです。

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私は弁護士ですが、このコラムは帰宅後ちょっとした時間にニュース等に触発されて思いつくまま随想的に書いているだけで、「弁護士としての専門的見地からの意見」ではありません。

私がその時に知っている曖昧な知識を下に書いているだけで、それぞれのテーマについて裏付け的調査・判例や政省令〜規則ガイドライン等を調べる時間もないので、うろ覚えのまま書いていることがほとんどです。

引用データ等もネット検索で出たものを安易に引用することが多く、吟味検証されたものでないために一方の立場に偏っている場合もあり、記憶だけで書いたものはデータや指導的判例学説等と違っている場合もあります。

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また、個別の法律相談の回答ではありませんので、具体的事件処理にあたってはこのコラムの意見がそのまま通用しませんので、必ず別の弁護士等に依頼してその弁護士の意見に従って処理されるようにしてください。

このコラムは法律家ではあるが私の主観的関心・印象をそのまま書いている程度・客観的裏付けに基づかない雑感に過ぎないレベルと理解してお読みください。