格差・国内格差と国家間格差

中国の場合、対米巨額貿易黒字をどうするかの問題は、実質的輸出国がそれぞれの利害があって応援してくれるとしても、その外に5月27日まで書いて来たようにアメリカの金利上げの攻勢も凌がねばなりません。
日本の場合、世界一金利が安くても北朝鮮情勢が緊迫すると「有事の円」で円が上がる仕組みです。
他国の追随を許さない・・日本経済は世界最強ですので、アメリカが金利を上げてその差額分日本の円が下がっても何の心配もありません。
円が下がれば交易上有利になるだけです。
超低金利政策は為替操作ではないと言い訳していますが、結果的に「円」と言う貿易商品の値下げになって円の輸出・・貿易黒字なのにその割に円高を防ぎ貿易を有利にしていることになります。
これは経済原理によるのですから日本が何か不正をしている訳はありません。
日本が金利を上げるとどうなるか・・世界中が追随して金利を上げるしかなくなって高金利で窒息してしまうでしょう。
日本企業が海外投資する場合、日本の最低金利で資金調達出来ます(その代わり両替コストがかかります)が、競合の海外勢は自国の高金利調達ですから日本企業は競り合い上有利になっている原理を書いたことがあります。
こうして日本企業の海外投資がドンドン進んでいく・・対外純資産国の地位が固まる一方の下地を作っていることになります。
こうして見ると国際収支のパフォーマンスの良い国を一時的に腕力でへこませても合法的に攻める方法はない・・民度レベルの高い方が結果的に勝利するのは当然の原理であると分ります。
ただし、これが進み過ぎると日本の一方的な蓄積・・他方は利息や収益送金するばかりで貧しくなるのはおかしい・・徳政令みたいな国際合意が出来る・対外資産に頼り過ぎるのはリスクがあると言う意見を書いて来た所以です。
今はまだ、アメリカその他国内の格差がテーマで「国別格差があるのは当然」と言う風潮ですが、これはアメリカが世界からマネーを巻き上げながら国内格差があるからこれで済んでいるに過ぎません。
アメリカが世界からマネーを巻き上げる力をなくし日本一人勝ちになると国内の格差反対論が格上げされて「どこかおかしい」日本一人勝ちは不正だとと言う声が国際的に高まります。
何事も勝ち過ぎるのは良くない・・日本は矢面に立つ1番手をアメリカかどこかに任せておいて2番手で良いのであって、目立たない・矢面に立たないようにするのが国を守る大もとです。
今のところ日本は1番手をアメリカンにお願いしてその楯の御陰で、逆風を凌げていますが、これがいつまで続くかです。
日本を平和的に攻撃する方法が世界中にない・・、中韓にとっては口惜しいが手詰まりになっているので、ありもしない慰安婦・売春婦攻撃をしてきましたが、これも失敗に終わると武力制圧の脅しくらいしかないのが現状です。
日本は再軍備禁止で軍事力がないので、アメリカに頼るしかないのですが、アメリかもメルケルドイツ首相の発言にあるように実は当てにならなくなって来たので、自分である程度守るしかなくなりつつあることは確かです・・・そこで対中防衛力整備が日本にとって急務になります。
p.reuters.com/article/merkel-speech-trump-idJPKBN18Q01X
2017年 05月 31日 18:18 JST
メルケル氏は28日、先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)後にミュンヘンで演説し、「他国に完全に頼ることができる時代はある程度終わった。私はこの数日でそれを経験した。われわれ欧州人は自らの運命を自分たちの手に握らねばならない。欧州人として、自らの運命のために闘う必要があると知るべきだ」などと語った。
同氏は29日にも、前日の発言における多くの要点部分を繰り返し、こうした見解を意図的に発信したことが明らかになった。」
5月26日にサーチナの記事で紹介したとおり中国は2兆ドルも純債権を有しているとしながら、所得収支が赤字になっています。
中国の場合、この数年外貨準備の急激な減少と言う実態・・中国の場合発表数字が当てにならないと言われていますが、その真偽は統計に現れない経済の実態を肌で知っている中国人自身の行動を見れば分ります。
実態を知る人民が中国から資金を逃がすのに必死になっている様子・・これこそが統計とは違う実際の姿が見えます。
この数年では、円とユーロの下落による外貨評価減が外貨準備減少分の約半分とも言わ(言い訳?)れていますが、(ユーロ保有内容が不明のママです)残り半分を占める資本収支赤字・資金流出の原因分析(外国企業買収もあり資本逃避分もあるなど)が必要です。
沈没しそうな泥船から我先に逃げ出したい心理状態のように言われていますが、汚職摘発を逃れるために海外資金逃避する人を含めた金融に敏感な人だけの話であって、普通の人は海外旅行後にちゃんと国に帰って行きますから、クニから逃げ出したい人ばかりではなさそうです。
裸官のように目立つ逃げ方をしているのは中くらいの知恵者であって、本当の知恵者は逃げなくとも政府の政策をくぐり抜けられる・したたかに生き残る智恵のある人・・自信のある人が一杯いるでしょう。
貿易黒字の統計も実は怪しいものです。
造船事業が大変な状態になっていることを17年3月22日に紹介しましたが、中国の苦境は人件費が上がったことによるのではなく、元々中国の生産性が上がっていなかったことによるのですから、世界景気収縮による不況の影響はいろんな業種に及んでいます。
中国の人件費がアメリカと同じくらいかもしかしたら高くなっているとか日本の人件費よりも高いと言う意味は、絶対額が高いと言う意味ではなく、生産性比で見たら割高と言う意味らしいです。
例えば中国人の時給が仮に5〜600円で日本が1000円とした場合、日本人の人件費が割安・・働きの(悪い?)中国人に5〜600円払う方が高く付くと言う意味ですから大変です。
人件費の安さにあぐらをかいて生産性向上に努力しなかったからです。
今になって、日本の工作機械・ロボット導入に必死・・ロボット需要大国になっているようですが、一人当たり生産性を上げるには機械化するしかないことに気が付いた・そうなると低賃金労働者の供給源である巨大人口が重荷になって来ます。
19〜20世紀型巨大人口が勝敗を分けるという発想の間違いが出てきたのです。
ここで、話題をMay 21, 2017「アメリカの傲慢と中国の適応力2」で書き始めていた中国の内需転換に戻します。
中国の場合地域格差はあるものの切れ目なく最低賃金を引き上げるなど製造業従事者に対する所得分配がある程度うまく行っていた可能性・・現状を見ると韓国に比べて中間層がそれなりに(人口の1%でも1400万人です)分厚く育っているように一見見えます。
ところが、これは中韓の高成長開始の時間差だけの現象・・中国も省力化が進むと折角育ちかけている中間層が崩壊する可能性があります。

米中親和性(米中取引の可能性)

アメリカのご都合主義的ルール改変に戻りますと、アメリカは自分の作ったルールに適応しては台頭して来る日本に負けが続くと次々とルールを変えて行く繰り返しでした。
日本はアメリカのルール変更に絶えず適応して来たのですが、実力で負けているのを誤摩化すためのルール変更ですから、このやり方はどこまで行ってもイタチごっこでアメリカに取っては無理があります。
正義・経済原理ではどうにもならないので根拠なくスーパー301条で高額関税で脅すしかなくなっている・・現在の高関税をかけると言うトランプ氏の主張はまさにこの本音の再現です。
日米戦争も自分たちは植民地支配しながら、日本の中国進出だけを許せないと言う勝手なルール変更でした。
以下はアメリカの門戸開放宣言に関する引用です。
自分がフィリッピンを植民地支配を足場に中国に進出したかったのに先発の日本が邪魔になっただけの話です。
http://www.y-history.net/appendix/wh1401-132.html
世界史の窓
1899年と1900年の二度にわたり、アメリカ国務長官ジョン=ヘイの名で発表した、中国に関する門戸開放・機会均等の原則を求めた宣言。
アメリカは1860年代の南北戦争のため、中国大陸への進出が遅れたが、1898年に米西戦争の勝利によってフィリピンを獲得、そこを足場に中国に進出しようとした。しかし、すでに1898年、イギリス・フランス・ドイツ・ロシアが相次いで租借地を設けるなど、中国分割が進んでいた。そこで1899年、アメリカは国務長官ジョン=ヘイが声明を発表し、清国において通商権・関税・鉄道料金・入港税などを平等とし、各国に同等に開放されるべきであると主張した。この門戸開放と機会均等の2原則に加え、さらに翌1900年、ヘイは清国の領土保全の原則を宣言した。この三原則を「ヘイの三原則」といい、さらにアメリカ合衆国の中国に対する外交原則を門戸開放政策 Open Door Policy という。門戸開放政策は以後アメリカのアジア対外政策の原則的な要求となり、ロシア・日本の中国大陸への進出に対してもこの原則を掲げて反対した。」
上記のとおり、アメリは自分がスペインから手に入れたフィリッピン等の植民地の市場開放しないまま、「中国でだけ自分より先発している国は門戸開放せよ」と言うのですから自分勝手な主張でした。
腕力次第でどんな無理難題でも押し付けられると言うのがアメリカの姿勢で、この本質を見抜いた北朝鮮が「正義」よりも先ずは抵抗力が必要と覚悟を決めたのが核開発固執政策です。
露骨な腕力・・・報復合戦で貿易が止まると、黒字国の方が損する関係ですから、日本は対抗してアメリカに45%の関税をかける力はありませんし中国も同じですから睨まれたらおしまいと言う脅しに応じるしかない点は中国の強引な世界戦略と同じです。
黒字国は「不正」・・不正に対抗するためには次々とルールを変えても良いと言うのがアメリカの伝統的主張でこれがスーパー301条問うに結実している論理であり、トランプ氏の結果主義もこの伝統を継承していて単に乱暴な表現をしているだけです。
世界が1対1で成り立っている場合相互主義も一見合理的ですが、多角貿易でなりたっている多角面で考えるとアメリカの主張は幼児的レベルにあることが分るでしょう。
言わば貨幣経済がない物々交換の場合、結果的に5分5分の交換しか成り立ちませんが、貨幣が介在するようになるとAB間ではBがあるものを買うばかりで、CB間ではCが買うばかりCD〜XY・・と無限の循環を経て行き結果的に公平になることを可能にしたものです。
日本で言えばアメリカで黒字を稼いで他方で原油・鉄鉱石その他資源を一方的に買う関係ですし、原油売った国はその代金でアメリ悪化rへ気や食糧その他を買い、フランス、イタリアから衣料品を買うなどで世界が回っているのです。
芸術家や労働者は作品や労働の対価を得る代わりにその他の場面では消費支出するばかりです。
八百屋やスーパーに行って、作家が自分の作品を毎日買ってくれないから不公平だと言うと八百屋もスーパーも困るでしょう。
その上で最終的に黒字になった人がお金持ちと言う訳で、自分の労力投入を生活に必要な範囲にととどめて余力は趣味や社会貢献に向ければ良いことですが、(老後の生活費等の蓄積も必要ですし子育て資金もいるでしょうからどの程度の貯蓄が程々かは一概に言えません)その差額を際限なく蓄積するのは守銭奴と言うことになりますが、それはその人の生き方の問題であり絵描きが必要以上に絵を描き、ベストセラー作家が億万長者になるのが不公正と言うものではありません。
このように幼児的論理を恥ずかしげもなく主張して腕力にまかせて強引に押しきる(さすがに恥ずかしい主張と知っているらしく従来はスーパー301条で日本を脅しただけで実際に適用した事例がない・・ヤクザが脅すだけ実際に滅多に暴力を振るわないの同じと思いますが・・日本は拒否してまた武力侵攻されると困るので仕方なしに応じて来ました)のがアメリカの伝統的主張・・レベルが低過ぎて話にならない相手と言い切ればそれまでですが・・。
ヤクザが暴れているので落ち着くまで放置して見守るしかないのに似ています・・これが150年間(英米一体の無茶苦茶時代とすればもっと長い)も続いて来たのが世界を不幸にしています。
今回のイタリアサミットでは、トランプ氏は、持論の高率関税の正統性をそのまま言い張ったようですが、互いに報復関税競争に入ると第二次世界大戦突入前の大恐慌の繰り返しになります。
このときもアメリカが先に高関税で保護貿易に入ったので、欧州側が直ちに報復関税をかけて泥沼に陥ったものでした。
今回のサミット解説では、日本は自動車などゼロ関税が多いので、相互に高関税をかけあっても日本には損はない・・アメリカは日本にはこれの要求を出来ないだろうと言う楽観論が出ていました。
しかし第二次世界大戦前も米欧の高関税報復合戦に日本は参加しなかったのに、回り回って・・経済圏の囲い込み・ブロック経済化進行→植民地を持たない日独伊が弾き飛ばされ→資源と市場を求めるいわゆる帝国主義戦争・・アメリカによる中国市場の門戸開放要求もその一環でした。
欧米既得権には手を着けず日本が比較的早く進出していた中国市場だけの門戸開放を要求したことになります。
結果的に日本が欧米列強の標的にされてしまった歴史です。
今回も中国の改革開放後日本が地の利もあって実は中国への市場浸透率がトップになっている筈です。
日米の対中投資残高で検索してもなかなか出て来ませんが、中国自身が公表していないので、国別に過去に発表している年度別投資額の累積からの推論するしかないらしいですが、進出しても失敗して資産が目減りしている分もあれば、成功して現地資産が増えている企業もあるなど複雑です。不採算で引き上げた分もあるので過去の投資単純合計でもなく複雑らしいです。
その上単年度投資だけ見ても、たとえば15年度だけで見ると日本財務省発表では1兆円以上の対中投資なのに中国発表では僅かに32億ドルあまりしかないなどの大幅な食い違いがあります。
日本では、中国での収益の本国未送金分(29日アメリカの海外滞留金の説明を書きましたが日本も結構あるようです)だけで1兆円以上あるとの解説です・・を中国国内再投資としてカウントしているに対して、中国は純粋にその年にお金が入った分だけ日本からの投資として計上するなどの大きな違いらしいです。
中国としてメンツを守るために先進国から受けている投資を低く見せたいのでしょう。
このように単年度でもそれぞれ統計の取り方が違う上に、長期の累積残高となるとIMF方式と国連方式とでは、2倍近くの数字の開きがあると解説されています。
結果的に投資残高の推計は難しいので国別比較表を正確には出来ないようです。
以下に漸く日本の13年の対中投資残が出て来ました(どこからどうやって出したのか不明ですが・・)。
https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/research/r150301asia.pdfみずほ総合研究所 アジア調査部上席主任研究員酒向浩二
中国向けは製造業・非製造業共に減速続く
・・・日本の対中投資残高に目を転じると、
2008年末時点の4.4兆円から2013年末時点には約2.5倍増の11.4兆円となり、アジア域内での突出ぶりが顕著である。
2014年11月10日に、北京で開催中のアジア太平洋経済協力会議(APEC)の場で、安倍首相と習近平国家主席の首脳会談が約3年ぶりに実現した。そのため、今後、日中関係は徐々に正常化し、日本の対中投資も回復することが期待されているが・・・」
とあって、データが古いですが、2013年で11、4兆円となっています。
他方米国の対中直接投資残高は30日に紹介したとおり「2010年末で604億5200万ドル」となっています・・時期が4年もずれているのが残念ですが、10年が2008年と13年の中間点とすれば、10年当時日本の方が僅かに残高が上回っていると言うことでしょうか?
今回は日本が独占的地位を占めている訳ではないので、アメリカが日本より多く投資したければドンドンすれば良いだけですので、門戸開放の戦争にはならないでしょうが・・。

対米貿易黒字と実質利害

アメリカは植民地収奪による世界支配が終わりを告げそうになると排日を計画して来たように、近い将来・・アメリカの資本収益が減少して日本へ払う方が大きくなって来たときに資金環流に関する紛争になると言うのが私の大分前からの予想であり、日本はその備えが必要です。
直接投資残高で日本がアメリカに肉薄〜追い越すまでには今後数十年以上かかるとしても、その間にアメリカが自国・本拠地に逆進出されて面白かろう筈がないので、アメリカは何かと難癖を付けて来ることについて相応の覚悟をしておく必要があるでしょう。
4〜5日前の新聞にダイキンがアメリカで大規模工場建設の記事が出ていましたが、世界最大手と言っても空調の本場であるアメリカでシェアーを上げないとどうにもならないと言う意気込みが出ていました。
工場建設→雇用増に対してトランプ氏は選挙公約どおりの展開ですから、感謝するしかない・・文句の付けようがありませんが、自国が日系企業に支配されるのは堪え難いところがある筈です。
当面考えられるのは、知財料金や収益の本国送金の規制・・移転税制規制でしょう。
アメリカ子会社から日本本社への技術料支払いに不正がある・・高過ぎるなどと言う税務調査などが、割に簡単な嫌がらせです。
アメリカの気持ちは、ルールさえ同じならば自分より相手が強ければ、負けても良いのではなく「負けるのはイヤ」と言うだけが行動原理です。
自分が勝てるルールだけが守るべき正義であり、自分が負けるルールは正義ではない・・相手が何か狡いことをしてると言う主張です。
アメリカはルールを守るベシと言いますが、結果として競争相手に負けて欲しい・・結果重視ですから、自分の作って来た貿易ルールはどうであれ、結果としての「アメリカの大幅赤字が許せない」と宣言すれば日本も中国も青くなるしかないのが現実です。
ところで中国の方が日本よりも対米黒字が大きいから、中国が先ず矢面に立つので日本はそれほど心配しなくても良いと思う方が多いと思いますが、内実を見れば違って来ます。
中国の対米輸出の中身には米系企業の子会社が中国で生産・逆輸入している場合(子会社かどうかは別としてアップル)が多いのですが、日本の対米黒字の場合、100%日本企業による輸出ばかりで、日本進出の米系企業が日本で生産して逆輸出している事例など想像すら出来ないでしょう。
それどころか中国の輸出には、中国進出日系企業の輸出が多くを占めている・・日本製部品組み込み率あるいは東南アジア諸国の対米輸出にも実は日系企業の輸出が多くを占めているなど、実質的対米輸出依存度は中国よりも大きい可能性があります。
民族系企業の黒字額比較で言えば、日本の黒字の方が中国よりも多い可能性があるので輸出規制によるダメージ度では日本の方が中国よりも大きい可能性があります。
「中国の経済力は他国を利用して膨らませたに過ぎない張り子の虎である」と言う点が実質的ダメージ度を低下させる強みになります。
米中の基本的な親和性に対する警戒心の重要性をこのコラムではあちこちで書いて来ましたが、対米黒字の解決でも昨日書いたように経済関係の内実では日米よりも米中の方が一枚岩的関係になっている可能性がありますが、推測の域を出ません。
アメリカにとって対中投資は対外投資残高の3%前後しかないと言うことらしいですが、何故か12年頃の古いデータしか出て来ません。
この後の5年間で日本の投資が減って行き,アメリカが増えているのかも知れません。
http://www.japan-world-trends.com/ja/cat-1/post_1098.php012年10月11日
1.本年5月にジェトロが「米国企業のアジア展開事例とアジア企業の米国展開事例」という資料を発表した。これには、次の面白い数字がのっている(米国商務省統計等をもとにしている)。
(1) 米国の対中直接投資残高は2010年末で604億5200万ドル。2000年に比べて5.4倍(この期間、全海外に対しては3.0倍)に増えているも、全海外に対する直接投資残高の僅か1.5%(日本に対しては2.9%)に過ぎない(但し増加分の中での比重はもっと大きい)。欧州での残高は全体の55.9%(首位のオランダだけで13.3%を占める。持ち株会社設置に優遇措置を与えているからである)、中南米が18.5%、アジア全体で9.0%である。
(2) 米国企業の中国での売上高は2009年で2437億7200万ドルで、全海外の4.3%、純利益は287億4200万ドルで全海外の3.2%である。同年最大の売り上げは欧州におけるもので全海外の50.7%、アジア太平洋(中国を含む)は全海外の24.7%、中南米が11.8%を占める。
全海外での純利益で最大の比重を占めるのは欧州で58.1%、中南米が18.6%、アジア太平洋が13.7%である。
ここからうかがえるのは、米国企業はアジアでは薄利多売になっており、投資効率は欧州の方が上、ただし最近では新規投資先として中国が大いに伸びてきた、ということである。
2.日本の場合はどうか?
 ジェトロのホームページに出ている数字から計算すると、2011年末で日本の対外直接投資残高のうち、中国は8.6%を占めているのに対して、米国は28.6%、EUは22.3%、ASEANは11.5%になっている。

中国の場合貿易黒字が大きいと言っても、実は中国へ進出した外国企業の本国逆輸出が多い、中国自身それほど儲かっていない・場所貸し・名義貸し的立場に過ぎない面があります。
巨額黒字と言っても先進国から送付された部品を組み立てているだけではないか?とバカにされている分に比例して実質的意味・深刻な貿易摩擦の当事者にはならないメリットもあります。
対米輸出が出来なくなると中国で生産して対米輸出している日本企業・米系企業の方が、巨大投資してしまったダメージが大きくなります。
高関税をかけられるとなれば、具体的には品目別になるでしょうからそうなれば、米系企業も必死にトランプ政権にアプローチするでしょうが、日系企業よりも品目選別作業では有利です。
アメリカの対中赤字が巨額としても米系企業が中国で生産して逆輸入している輸出黒字の場合、国民にとっても自国企業の逆輸入による赤字には大目に見る・・日系企業の場合遠慮がいらない傾向があります。
米系企業・中国進出・逆輸入企業にとっては、米本国での政権アプローチが有効ですから、黒字パッシングに対する対応では日系企業とでは政治力で雲泥の差が出てきます。
中国が日本よりも対米黒字が大幅に多くても、その内実が米系企業や日系企業が多くを占めているとすれば、貿易摩擦の面でも米中結託になり易い・・日本は安閑としていられない弱点を持っています。
日米戦争は、中国でのアメリカの対中進出願望との対立・・米国に「門戸開放」を要求されていたことに原因があり、裏で蒋介石軍や中共軍応援があったことを日本は忘れることが出来ません。
戦後はニクソンの電撃的訪中などの経験もあり、トランプ政権で一見華々しい米中対立があっても、「日本の頭越しに米中裏取引が成立するのではないか?」と日本中が疑心暗鬼にならざるを得ないのは、過去の歴史を水に流すことは出来ても将来の教訓とする智恵を棄てることは出来ないからです。

資金環流2とルール変更リスク1

今後日本の対米直接投資が進み他方でアメリカの対外直接投資が日本より少なくなって来ると、多分資本自由化に関するルール変更を仕掛けて来るでしょう。
そこまで行かなくとも・全世界ではアメリカの投資残の方がまだ大きくても、日米だけの所得収支・・日本の対米投資の方が大きくなって日本への収益送金の方が大きくなった場合に直ぐに問題化するでしょう。
トヨタなどが儲けてもその儲けを日本へ送金しないで更に新工場建設など再投資している限り問題化しませんが・・日本も苦しくなって本国送金が増えた場合の話です。
大分前に日本は今後物造り→貿易黒字で稼ぐのではなく、貿易赤字を所得収支で穴埋めする国になって行くとその頃にはルール変更リスクがあることを少し書いたことがあります。
今のところ、日本は貿易収支も黒字ですから、所得収支黒字分は再投資=資本収支が赤字になる仕組みですから、資本還流の方が多ければアメリカは不満がないでしょう。
この何年か国際的テーマになっているタクスヘブン騒動や、法人税減税競争はこのリスクの始まりを表しています。
進出されている国が現地企業利益の本社吸い上げを権力的に妨害をしていませんが、(中国が外貨準備減少に直面して日本企業への送金妨害していると言われていますが・・)アメリカが送金する側に回るとどうなるか分りません。
現在進出されている多くの国は新興国でもと被植民地国が多い・・ナセル中佐によるスエズ運河接収のような力を持っていないのですが、税制その他のソフト面の理由で結果的に現地進出先での儲けが現地滞留している・・本国送金障壁になっている点は同じです。
今後地産地消と言うかけ声・・「地元での儲けは地元で使おう・・還元しましょう」と言う声が高まりこそすれ、縮小することはないでしょう。
アメリカが折角海外で儲けた資金が進出先に滞留したままになっている点を、アメリカで問題にしていることが時おりニュースに出ています。
昨日アメリカの対外投資残が突出して大きいことを紹介しましたが、投資しっぱなしで儲けが送金されないままでは、絵に描いた餅です。
本国送金時に法人税がかかる・・結果、アメリカの世界企業が、儲けの本国送金を先送りする・・儲けを出先現地国で再投資を繰り返す運用になっているらしい報道です。
日本の租税条約や税制を見ても(私の能力では)そう言う条文を探し切れないので引用出来ませんが、(日本ではやっていないアメリカだけの税制かも知れません)もしも条約ではなくアメリカ国内法の問題であれば、不都合ならば勝手に法律改正すれば良いので国際問題化する必要がありません。
これをしないでアメリカが困っている理由が分りません。
ブッシュ政権のときだったかに、期間限定で(例えば200X年までに)国内送金すれば、この期間だけ免税または減税すると言う法律で還流を図って一時的にかなりの資金環流があったと言われています。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/09/eu-39.php
米アップルは、アイルランドから受けている税制優遇措置が欧州連合(EU)から違法とされ、追徴税の支払いを求められた。この問題の副次的影響の1つとして、米企業が海外に滞留させている利益を本国に戻す動きが促進されるならば、ドルにとっては一方的なプラス材料になるだろう。
米企業の海外留保利益は、推定で2兆1000億ドルに上る。そして大統領選を争う共和党候補ドナルド・トランプ氏とヒラリー・クリントン氏はいずれも、こうした利益の還流を促す措置を打ち出すと公約している。
2005年には当時のジョージ・ブッシュ政権が制定した本国投資法で資金還流への適用税率が大きく引き下げられたため、約3000億ドルの海外留保利益が米国に戻った。この間、資金還流がどの程度為替レートに影響したかについて議論はあるものの、ドルはユーロで10%程度、対円で15%それぞれ上昇した。」
アメリカの税制については、以下の解説が見つかりました。
アメリカの条文に直截当たる能力が私にはありませんので、一応名の知られたプロの解説ですから、正しいものとしてお読み下さい。
https://tax.tkfd.or.jp/?post_type=article&p=190
日付:2017/01/24
森信茂樹 東京財団上席研究員/税・社会保障調査会座長
「米国は、全世界所得課税方式をとっており、海外での税引き後利益を配当として米国に還流させると、米国税率との差額を追加的に米国で課税される。このため企業は、米国に還流せず海外の低税率国・タックスヘイブンに利益を留保するという行動に出る。
具体例を見てみよう。昨年末に大きな問題となったのは、アイルランドがアップルに対してほとんど税金を払わなくてよいスキームを用意していたことである。アップルの実質的な法人税税負担率は、2003年に1%、2014年には0.005%に低下しているという。
これに対しわが国を含む多くの先進国は、「国外所得免除方式」をとっており、子会社が海外で稼ぎその国で税を支払えば、配当としてわが国に還流させても非課税としている。 – See more at: https://tax.tkfd.or.jp/?post_type=article&p=190#sthash.Y1qfGmMd.dpuf」
以上によれば、アメリカだけが現地よりアメリカの法人税率が高い場合に、アメリカではその差額を払わせる仕組みになっていることが分ります。
抗すれば、法人税の安い国に逃がしても何にもならないだろう・・と言う小手先の智恵ですが、そうすると資本家は本国へ儲けを持ち帰れらなくなってしまったジレンマです。
この法制度のために資金環流が進まない・・1つには、法人税を下げればそう言う懸念がなくなるので、法人税減税論が解決すべき政治テーマになります。
ブッシュ政権のときの例によれば、法人税の差額を取るのをやめれば解決する・あるいは法人税を新興国同様に低くする競争に参加すれば済むことですが、それをしたくないから相手国への滞留を問題視していることが分ります。
資本や技術のない国は土地を安く提供したり固定資産税を一定期間免除するなど税制面で優遇することによって資本や技術を導入するのが普通ですが、進出企業が儲けた金を権力で没収出来ない代わりに同じく法人税下げで対抗する・・そうすれば先進国資本家は儲けを本国へ持ち帰らずその国での再投資資金に使ってくれます。
腕力で技術者を拉致したり武力で接収する必要のないソフトなやり方です。
法人税下げ競争は、アップル本社誘致のためにアイルランドが無茶安くしていた上記の例を見れば、貿易に関する為替引き下げ競争を資本争奪競争に応用したような・・変形版になります。
タクスヘイブンが何故成り立つかと言えば、どうせ何も来ない寒村よりは設立登記手続その他複雑な帳簿作成事務作業が増える(アップル本社の文書作成コストは半端ではない筈)だけでも、その土地では大きな収入になると言われています。
別にダンピングではない・・ただ見たいな田舎の土地でただみたいなコストであれば・・不当な競争とも言えません。
資金や技術はコストの少ない方に集まる原理をアメリカや先進国が腕力で変えようとするのは無理があります。
国際的法人税減税競争をここで書くつもりがありませんのでこの程度にします。

対外資産の内容(日米比較)1

May 7, 2015,「主要国の金利差と国力差」に書きましたが、ある国の金利水準こそがその国の国際的地位を如実に表す指標です。
この低金利時代に中国が基準金利・4〜5%の高金利を維持せざるを得ないどころか更に金融引き締めるしかなくなったのは、(偉そうなことを言っていても)資金の海外流出が怖いからです。
高金利国はそれに比例した国力の弱さを表しています。
企業で言えば信用力に比例して有利な(低金利)資金調達が出来ますし、信用・・体力がないと他所よりも高金利でも借りるしかありません。
今のところアメリカの金利政策は日本を除く世界中に直接影響しますが、金あまりの日本には全く利きません。
アメリカ・トランプ氏はこれが口惜しい・・自分の方が金利を先に上げると経済論理的には日本は対米貿易黒字国なのに円がもっと安くなってしまっても平然としている→アメリカの貿易赤字が逆に膨らんでしまうのが口惜しいところです。
日本はアメリカ現地工場進出・投資を今後更に促進し黒字分を帳消しにすると言うのが戦略らしいですが、それではアメリカの雇用を守れても日本資本に支配されるばかりで本音では面白い筈がありません。
5月7日の日経新聞朝刊では、日系クルマメーカーのアメリカ国内生産台数が400万台に迫る勢いと出ています。
ところで、いろんなきれいごとを言っても外資に支配されていたい国はありません。
アメリカの本音は・・自分が勝ちたいと言う結果重視が基本です。
スポーツでも顕著でしたが・・日本が勝ち進むと次々とルールを変えることの繰り返しでしたが、挑戦者が日本だけではなくアジア全体のレベルが上がって来たのでこのやり方に無理が来て最近卒業しました。
国力差についてはまだ挑戦者が日本に限られていたので、自分が一強のときには自由競争を主張していましたが、競争に負け始めると何かと理由を付けてはスーパー301条のような法律を作っては日本に対して輸出自主規制を強制しました。
最近では挑戦者が日本だけではなくなって来たので、人種規制・・アラブ系入国禁止を主張したり何かと自分勝手な規制・保護主義に走ります。
今回のイタリアサミットでは、自由貿易の旗印を共同宣言出来ないほど・・アメリカの保護主義が露骨に主張されていました。
アメリカは、自分が資本進出するばかりのときには資本自由化を強調していましたが、今後日本企業に進出されるようになると面白かろう筈がありません。
ただし、今のところアメリカの方が対外債権・投資残が日本と比べて桁違いに大きいし収益構造も日本よりも桁違いに高率らしいです。
以下は、http://www.asyura2.com/11/hasan74/msg/602.htmの一部引用です。
「・・対外債権について。
米国: 2011兆円
イギリス: 945兆円
フランス: 884兆円
ドイツ: 625兆円
香港: 310兆円
中国: 265兆円
日本: 519兆円」
日本の対外資産は香港の1.6倍くらいであり、大雑把にえばイギリスの約半分、米国の4分の1である。日本は決して世界に冠たる対外資産国ではないのだ。」
ここで関心のある資本支配のテーマでは、対外資産内で直接投資残高が重要です。
日本の場合、民間部門の対外資産は、
・直接投資が、 → 『39兆円』
・株式投資が、 → 『38兆円』
・債券投資が、 → 『171兆円』
であり、・・アメリカの場合は、
・直接投資が、 → 『32900億ドル』
・株式投資が、 → 『25000億ドル』
・債券投資が、 → 『9000億ドル』
となっており債券投資が半分以上を占めている、日本とは異なり、アメリカの債券投資は、『1割未満』の水準になっている。
直接投資の比率が、日本では→『8.9%』に過ぎないのに対し、アメリカでは→『ほぼ3分の1』に達している。もちろん、株式投資の比率も投資先進国アメリカでは、『4割程度』を占めております。」
上記は出典を書いていないので、いつの統計か数字の正確性も不明ですが、参考までに上げると上記のとおりです。
債権投資・・米国財務省証券のように実際には売らせない・・イザとなればイラン禁輸のように対日・対中規制で凍結出来ますので、米国にとっては貰ったも同然の資金です。
イザとなれば、これは踏み倒せば終わりで簡単ですが、直接投資の方は、企業支配・・事実上自国民が支配企業の指導に従うしかない・・事実上の支配力を行使出来ます。
トランプ政権の副大統領ペンス氏はトヨタなど日系アメリカ工場所在地の元知事で親日家であることを期待する声が大きいですが、あまり直線的にうまく行くのはリスクがあります・・。
日本式経営・文化に現地人が同化して行く方向・・これが広がり過ぎると長期的には日系企業の集積していない地域では、反日気運が盛り上がらない保障はありません・・心すべきことです。
明治維新以降、外国資本支配を防ぐために必死になって民族企業を育成して来たのですが、中国の場合宗族優先で民族意識が元々ないので、アヘンでも何でも儲かりさえすればその手先になって売りさばく傾向がありました・・中国企業家を「買弁資本家」と歴史で習って来たところです。
これは5月24日まで書いたとおり、民族意識より宗族利益重視の性質がそうさせるのです
「買弁資本家」を検索すると意外に私の過去のコラムJanuary 13, 2012「海外投資家比率(国民の利益)1」その他が出て来ましたが、私の若い頃に仕入れた過去の知識がどのように変わっているかを他人の意見で見ておきましょう。
echon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20131129/319482/
中国社会の9階層(2)経済発展で消えた「買弁」
今月取り上げているのは『中国社会各階層分析』。中国社会を9階層に分け、それぞれについて解説した書籍である。
・・・本書で扱っている中産階級はこの記述よりもやや狭く、「資本家にはなれていないがまずまず豊かな層」程度の定義づけである。本書では、資本家は、1978年の改革開放政策の開始直後の、法や社会的ルールが未整備な状態で富を得た層の2代目という取り方をしている。それに比べ中産階級は比較的新しい階層で、自分の代で豊かになったものを指すのだという。
 それゆえ入れ替わりも激しく、中産階級層からは多くの破産者が出る一方で新しく中産階級層に入ってくるもの多い。また、他国の中産階級の人々は自分たちがこの後「資産家」になれる可能性は低いと考えているが、中国の中産階級はまだ今後自分たちも資産家になれると考えているそうである。」
しかし、この記述は1997年現在のものであるため、現在でもこのような分析が適当かどうかは再度考察すべきであろう。このように本書が最初に書かれた時点ではまだ中国社会も高度成長の初期であり(WTO加盟が2001年)、10数年後にGDP(国内総生産)で世界2位になるということを実感として予測していた人も少なかったのではないか。
・・・毛沢東の言う「買弁」は「外国人の手先となって国の利益を脅かすもの」という見方であったが、本書ではその見方は採らない。外国人の代理となって働く彼らがいたからこそ、外国資本などを受け入れ発展することができたと考えているからだ。」
・・・中国が計画経済から現在のような経済体制へと移行していく間にさまざまな業種などが消えていったが、買弁というのもそのような端境期の一種のあだ花であったのだろう」

免責事項:

私は弁護士ですが、このコラムは帰宅後ちょっとした時間にニュース等に触発されて思いつくまま随想的に書いているだけで、「弁護士としての専門的見地からの意見」ではありません。

私がその時に知っている曖昧な知識を下に書いているだけで、それぞれのテーマについて裏付け的調査・判例や政省令〜規則ガイドライン等を調べる時間もないので、うろ覚えのまま書いていることがほとんどです。

引用データ等もネット検索で出たものを安易に引用することが多く、吟味検証されたものでないために一方の立場に偏っている場合もあり、記憶だけで書いたものはデータや指導的判例学説等と違っている場合もあります。

一言でいえば、ここで書いた意見は「仕事」として書いているのではありませんので、『責任』を持てません。

また、個別の法律相談の回答ではありませんので、具体的事件処理にあたってはこのコラムの意見がそのまま通用しませんので、必ず別の弁護士等に依頼してその弁護士の意見に従って処理されるようにしてください。

このコラムは法律家ではあるが私の主観的関心・印象をそのまま書いている程度・客観的裏付けに基づかない雑感に過ぎないレベルと理解してお読みください。