ハニトラ的取材で世間を騒がした大事件といえば昭和40年台中頃・毎日新聞の西山事件でした。
しかも西山事件(毎日新聞は個人プレーで知らなかったと逃げていたでしょうが・・)と異なり、今回のテレ朝日記者事件は個人プレーではなく、場所設定や費用などテレ朝日側で出していたとすれば(なぜか重要事実不明の記者会見ですが、給与所得の公務員が自腹で1対1の個室?飲食代を日常的に自腹で出していたとは考えにくいところです・この辺の質問を一切しない暗黙合意があったのでしょう)、悪質性が際立ってきます。
ハニトラ取材の悪習是正でいえば、責任を負うべきはこういう取材方式を常態化していたメデイア界自体でしょう。
記者会見の質疑では取材方法に対する国民の疑問に答えるための質問が一切ありませんが、メデイア界全体が触れたくないからでしょう。
メデイア業界が西山事件の教訓を得ていない点で今回のセクハラ疑惑は社会意識の変化に気が付かなかった次官の言語対応の問題とは本質が違い、しかもメデイア界は西山事件を経験しているので初犯ではなく、西山事件の時よりも組織化し常習化していたとすれば責任重大です。
沖縄密約に関する西山記者事件は、女性に対するハニトラ利用による国家の秘密情報取得が違法判断の決め手になった記憶です。
新聞記者は国家公務員ではないので公務員としての義務はない・・普通に取材して秘密情報をたまたま入手しても、取材方法が相当性の範囲であれば取材した方に国家公務員法違反の共犯にはならないのでないかという争点になったからです。
このような記憶を想起してみると、西山事件の教訓を学ばずメデイア界は約50年間の長きにわたって女性官僚には男性記者をむける・・女性官僚には男性記者を向けるなどハニトラ的違法収集をしてきたのか?の疑念が生じます。
世界的に見れば子かっ機密のスパイ行為は犯罪そのものですが、日本では「違法すれすれ行為」で終わっているのは、日本には秘密保護法がなかったからです。
国家公務員法違反だけですと公務員でない民間人には同法の適用が原則としてありえない・いわゆる身分犯ですから、情報を得た方にかなりの違法性がないと共犯にはなりません。
どのような男女関係か?一方的情報収集目的で近づいたのかという機微に触る情報・訴訟認定ができない限り、本当の恋愛関係や偽装結婚に持ち込めば、「夫婦会話でちょっと聞いて何が悪い」漏らした公務員であって聞いた方には違法性がないとなりますので、 スパイ防止法がない・・民間のスパイを処罰できない法制度の欠陥です。
西山事件では西山記者が情報入手後女性官僚との交際を露骨にあっさり切ってしまったので、女性公務員がこの関係を暴露したのではっきりしましたが、そうでない限り日本の法律ではスパイやり放題(外国女性スパイの場合本国に帰ってしまえば(例えばロシア中国のスパイの場合、ロシア等に引き渡し要請しても応じないでしょうから・・)おしまいです。
西山事件は大規模報道されていた・40年以上も前のことなのに私が記憶しているほどの大事件だったにも関わらずその後是正されることがなく、(当時は西山氏個人の行き過ぎとしてメデイアは責任を取らなかったと思われます)今回のテレビ朝日事件はもっと激しく企業組織的にハニトラ取材・嫌がる女性記者に無理に行かせるなど?が常態化していたことが明るみに出たように(情報をはっきりさせないので却って疑念を抱くという私の個人的憶測です・・念のため)見えますが、メデイ界ではその重大性に気がついていないようです。
西山事件に関する本日現在のウイキペデイアの記事です。
1972年、日本社会党の横路孝弘と楢崎弥之助は西山が提供した外務省極秘電文のコピーを手に国会で追及した。この事実は大きな反響を呼び、世論は日本政府を強く批判した。政府は外務省極秘電文コピーが本物であることを認めた上で密約を否定し、一方で情報源がどこかを内密に突き止めた[4]。首相佐藤榮作は西山と女性事務官の不倫関係を掴むと、「ガーンと一発やってやるか」(3月29日)と一転して強気に出た。西山と女性事務官は外務省の機密文書を漏らしたとして、4月4日に国家公務員法(守秘義務)違反の疑いで逮捕、起訴された。
毎日新聞はこの時点で両者の関係を把握していたが、表沙汰になることはないと判断し、引き続き政府批判を展開、当初は他紙も、西山を逮捕した日本政府を言論弾圧として非難し、西山を擁護していたが、佐藤は「そういうこと(言論の自由)でくるならオレは戦うよ」
参議院予算委員会で「国家の秘密はあるのであり、機密保護法制定はぜひ必要だ。この事件の関連でいうのではないが、かねての持論である」と主張した。『週刊新潮』によって不倫関係がスクープされ、時の東京地検特捜部検事佐藤道夫が書いた起訴状に2人の男女関係を暴露する「ひそかに情を通じ、これを利用して」という言葉が記載されて、状況が一変したといわれる。
『週刊新潮』が「“機密漏洩事件…美しい日本の美しくない日本人”」という新聞批判の大キャンペーンを張った他、女性誌、テレビのワイドショーなどが、西山と女性事務官が双方とも既婚者でありながら、西山は酒を飲ませて強引に肉体関係を結び、それを武器に情報を得ていたとして連日批判を展開し、世論は一転して西山と女性事務官を非難する論調一色になった。裁判においても、審理は男女関係の問題、機密資料の入手方法の問題に終始した。
西山が女性事務官に対して「君や外務省には絶対に迷惑をかけない」と言いながらそれを反故にしたことや、女性事務官に取材としての利用価値がなくなると態度を急変させ関係を消滅させたことを女性事務官が証言したことで[6]、西山の人間性が問題視された。
一審の東京地裁判決で西山は無罪となり、女性事務官は懲役6ヶ月執行猶予1年の刑を受けた。
最高裁判決
「当初から秘密文書を入手するための手段として利用する意図で女性の公務員と肉体関係を持ち、同女が右関係のため被告人の依頼を拒み難い心理状態に陥つたことに乗じて秘密文書を持ち出させたなど取材対象者の人格を著しく蹂躪した本件取材行為は、正当な取材活動の範囲を逸脱するものである」「報道機関といえども、取材に関し他人の権利・自由を不当に侵害することのできる特権を有するものでない」と判示し、秘密の正当性及び西山の取材活動について違法性と報道の自由が無制限ではないことを認めた[10]。なお、一審判決後、西山は毎日新聞を退社し、郷里で家業を継いだ。
西山記者が男性だから世間批判を受けましたが、記者が女性だと逆に被害者になるのかの疑問が起きてきます。
ハニトラに引っかかりやすいのは人情の基本ですから、(だからこそ国際的にスパイ行為の基本になっています)その被害に引っかかる官僚批判も必要かもしれませんが、ハニトラ攻勢を意図的に仕掛けるメデイア界の責任こそが政治テーマであるべきです。
今回の財務省次官のセクハラ発言問題は、その記者が「財務次官のセクハラ言動を嫌だ」と上司に訴えているのに上司に無視されて?あえてテレビ朝日が派遣したのは、これまでその女性記者が1対1の酒席に侍っての情報獲得に効果があったからでしょうか?
成績が悪ければ女性記者が「次官のセクハラ発言が嫌だ」と言わなくとも、役立たずとして別の人材に差し替えるのでないでしょうか。
近寄った方が女性であるというだけで、経緯周辺事情を明らかにしない被害発表(記者会見にお仲間しか入れない?ツッコミ質問を事実上制限)では、西山事件の逆バージョン・・男女入れ変わっただけではないのか?の疑念を膨らませる人が増えます。