国政政党の役割3

以上、小池旋風や総選挙について感想を書いてきましたが、専門家のわかり良い分析が出ているのに気がついたので長文のために部分的抜粋ですが、以下2日に分けて引用して紹介しておきます。
これによると小池氏は敵を巧みに作りあげる手法でメデイアとの合体でブームを起こしてきたが、都議選後敵がなくなって困っていたところで、解散があったので国政へ逃れて一時的に息を吹き返したという見たてのようで、これまで書いてきた私の個人的印象が裏付けられます。
いつも書くことですが、面倒な内部の利害調整・政治を怠り外敵を求める安易な手法に頼ると次から次へと外敵が必要でいつかは壁にぶち当たります。
以下に紹介する論文は読売のオピニオンに掲載されているのですが、政治家として何をするかの内容のない・スケープゴートを作り上げるだけの小池旋風を煽ってきたメデイア界がどう責任を取るのか?という私の関心・・問いも(遠慮がちに)発せられています。
下記引用の通り、2足のわらじで都政を放り出していることに対する厳しい批判を受けていたので已む無く14日には希望の党の代表を降りたようですが、往生際が悪かった点がどう作用するかについては、以下の引用記事には出ていません。
小池氏が今更パファーマンス政治をやめて都政に真面目に取り組むといっても、もともと利害調整の経験が乏しい小池氏に調整能力があるのかの疑問がある上に、都庁役人や都議会・都民が「都政を踏み台に利用」しようとした点がバレバレになった今となっては、真面目に協力できるか?ということです。
http://www.yomiuri.co.jp/adv/chuo/opinion/20171109.html

衆院総選挙、このあと小池都政はどうなる?
佐々木 信夫/中央大学経済学部教授
専門分野 行政学、地方自治論
飽くなき“権力亡者”にいつまでつき合う
昨年7月31日の都知事選で291万票を得て当選したのが小池百合子氏。今年7月2日の都議選で自ら立ち上げた地域政党「都民ファーストの会」を大勝(55議席)に導き、都議会自民を大敗(23議席)させた。都議会ドンとか都庁を伏魔殿と呼ぶなど敵視戦略で2つの選挙を制してきた。都議選に大勝利した瞬間が小池百合子主演の「小池劇場」(都政版)がピークを迎えた時だった。筆者は、その後の都政は敵を失い自らの仕掛けが敵になる、との見方からこの瞬間で「小池劇場は終焉した!」と本欄に書いた(17年8月31日付)。
ところが第2幕があった。もう1つの国政進出がそれ。安倍首相の突然の衆院解散、10月22日総選挙と慌ただしい動きが始まると、この時とばかり、“私一人で立ち上げます!”と国政新党「希望の党」を立ち上げた。(国政版)「小池劇場」の幕が開いた瞬間だ。マスコミなど世の中はテンヤワンヤの大騒ぎ。“希望のスター現れる”との囃し立てぶり。“初の女性総理誕生”とまで書く新聞もあった。
・・小池氏はあたかも首相の座に手が届きそうな絶頂の表情でテレビに出まくった。
民進党を丸のみして政権を取ろうとした希望の党、それをめぐるゴタゴタ。その主犯は小池氏だろう。中身のない看板だけの民進党の面々も同罪だが、都政を置き去りにし、都政の実績もなく問題提起だけで1年を過ごしてきた小池氏が“私が日本を変える大政治家”とばかりに振舞った罪は重い。そのことを見抜けないで馳せ参じた民進系議員、スターのように囃し立てたメディア、評論家の罪も重い。危うい世論の空気も。日本政治の空白の1ヶ月だった。
・・・その小池氏。大敗に驚き潔く身を引くかと思いきや、「深く反省し、お詫びしたい」と反省の弁を語ったが、それは口先だけ。都知事は辞めないし、依然として希望の党代表を続けるという。そうまでして権力の座に恋々とする、“飽くなき権力亡者”に都民はいつまでつき合うのか。
・・・今回の総選挙で希望の党が過大評価されたのは「メディアの責任が大きい。
マスコミの支持、世論を追い風にしてきた小池都政の推進力はこの先、確実に落ちる。
・・・小池氏は、問題の指摘は上手だが“課題を収拾できない人”と皆が見抜いてしまったからだ。
・・・・本人は「都政に邁進する」と嘯く。「都政を踏み台に首相へ駆け上がる」、その野望を全面に出しての国政勝負に大失敗し“劇場2幕”の幕が下りたにも拘わらず、この先も政党代表と都知事の2足わらじを履き続けるという。
・・・・常識では考えられない。果たしてこの先、都民の支持、都庁官僚の支持、都議会の支持、国民の支持は得られるのか。頼るのはマスコミの支持か。都知事の途中辞任が続く“混乱都政”の収拾を期待されての登板だったはず。だが、やっていることは、それに輪を掛けそれを上回る混乱、専横ぶりではないか。都知事ってそんなものか、都政ってそんな片手間の仕事なのか。都政をないがしろにし、自己ファーストで権力の座にしがみつく、そうした小池氏の姿に怒りと失望を感ずるのは、筆者だけだろうか。
この解散総選挙は何だったか、何に役だったか
現代はメディアの報道が選挙結果を大きく左右する時代だが、商業主義のメディアに翻弄され右往左往した有権者も多かろう。政権選択と嘯き「希望の党」にスポットを当てて小池百合子をスターのように扱ったメディアは今どう抗弁するのだろう。
選挙報道の新聞、テレビはどれも筆先は同じ、コメンターもみな同じ人。そこには小池氏を囃し立てるトーンはあっても有権者の目線に立った対論、争論、ディベートは殆どなかった。第4権力ともされるメディア、これが報ずる“過ち”を私達はどう見抜けばよいのか。」

執筆者はメデイア界で活躍しているからか、「私達はどう見抜けばよいのか。」とメデイアの影響力を過大評価していますが、いくらメデイアが煽っても彼女の政治が何をもたらすかを素早く見抜いた国民がいる・・すぐに彼女を支持しなくなった健全な結果を重視すべきです。
小池旋風がほんの短期間しか効果がなかったのは、メデイアの虚像(いわゆるフェイクニュースの走りです)拡散による誘導効果・メッキも一緒に見抜かれている点をこの論者はあえて過小評価していると思われます。

国政政党の役割2

ここでは政党全体の能力競争・・レストランのメニューにあたる選挙に必要な公約の内容を書いています。
実際に作れないメニュウ表記はフェイク・おとり広告になるのと同じで、メニーに掲げる以上は具体的準備が必要でしょう。
例えば、政治資金規正法関連や政務調査費の使途チェックばかりに特化するのは、政党ではなくオンブズマン程度の組織のやることでしょうし、汚職や不正経理チェックも警察や監査専門家が第一次的にやることです。
弱者目線で言えば福祉水準は手厚い方が良いし医療費は安い方が良いし子供も大事にした方が良いに決まっています。
しかし商人でいえば売り上げ金全部〜8割を生活費に使うと次の商品仕入れができないし、店舗や設備をリニューアルし優秀な人材を雇って行かないと競争に負けます。
結局は使途バランスをどうするかの問題です。
政治家・国の経営者になろうとするものは、いかにして収入(国の活力アップ)を増やすかの方向性を示してから、その配分を考えるのが普通です。
総収入があってこそ、使い道の考えも出てくるものです。
生活保護も手厚い方がいいものの、元気に働くものの生活水準とのバランスがあります。
希望の党の公約では不要不急のインフラ整備をやめて財政再建する・・消費税増税凍結と言うのですが、不要不急のインフラ工事をやめるといっても何を不要不急と断定して中止するかの意見がありません。
国家運営には、国民全般の生活条件の底上げ・の収入増をはかることが重要・その上での分配論ですが、収入面で言えば、どの産業分野を今後伸ばしていくべきかを言うべきであって、単に「産業の活力アップを目指します」と言うのでは空疎すぎます。
産業の活力アップ反対の政党はないでしょうから、どうやって活力アップするかの提案こそを公約すべきです。
例えば電線地中化自体は徐々に行われていて誰も反対はないのですから、この公約は従来は年に5キロのペースで進んでいたが、今後10キロのペースにするなどの速度アップのアッピールと思われますが、資金面の優先配分だけでは無理で、後記の通り逼迫している建設関連労働力をこの分野に優先的配分しない限りスピードアップできません。
電線地中化工事を早めるために、オフイスビルやホテルあるいは駅舎等々の新改築、オリンピック関連工事その他の前向き需要に応じた建設工事(新鋭工場や物流施設や、都心部の最新ショッピング施設新設工事などなど)を遅れさせることが経済活性化にどのように結びつくのでしょうか?
優先順位の決定がないまま・・不要不急のインフラ整備をやめるというだけでは、なにを止めるのかも不明で希望の党には何の政策もない・やりたいこともないのに権力欲だけで結党したと自白しているようなものです。
築地移転で言えば、1年間以上も空転させてまで土壌汚染を騒ぐ必要があったのかと言う・まさに時間の優先順位の判断ミスの疑問です。
政治は全体のバランスを見て取捨選択→具体的になると大方の場合「あなたの希望は後回しです」と言うしかないので利害対立が出てきますが、利害調整をしないで具体的意見を言えないのでは、国家運営を担うべき政党と言えないでしょう。
国政進出の政党設立は、小池氏が総理になりたいという野心で始めたことは周知の通りであったにもかかわらず、党代表の自分が立候補するか否かさえもはっきり出来ないまま公示日直前を迎えてしまいました。
都知事1年で都政を混乱させただけで何もしないで逃げ出すのか?という批判に耐えられなかったことがまず第一で、次に結党直後のフィーバーがどの程度続くか見極めてから決めたいという態度が見え見えでした。
若狭氏が結党準備をしていたのに、或る日突然に私がやりますと宣言していきなり自ら代表についておきながら、風向き次第で選挙に出るか出ないかを決めるというのでは、実現したいことがあって旗揚げしたのではないという前代未聞の自己都合の結党だったイメージを焼き付けました。
選挙に出ないで負けた場合には都知事の椅子にしがみついていれば、もしかして残任期中に都政で挽回できれば捲土重来を期する道があると見たのでしょう。
無責任な煽りばかりで自分が出馬するかどうかもはっきりさせられない・・それでもメデイアの煽る方向へ単純に同調する国民がそんなに多いのか不思議だと思ったのは私だけかと見ていましたが、結果は10月10日公示〜10月22日の衆議院選挙結果で判明しました。
October 28, 2017「アメリカンファーストと都民ファーストの違い」以来アメリカンファーストのフレーズに関連して、都民ファーストのフレーズとを比較しているうちに希望の党の旗揚げがあったので、変な方向にテーマが流れてしまいました。
小池氏の手法は、現実政治に関係のないキャッチフレーズを次々繰り出すだけ・それもヒト様(トランプ氏やメデイアで出ている)の借用の言葉が踊っているだけという印象で終わったのではないでしょうか?
アメリカンファーストはオバマ以来の国際力学の変化であって(応分の負担をしてくれないと)「もはや世界の警察官をやってられない」というアメリカの厭戦気分を背景にしていますので、時代背景のあるフレーズですが、都民ファーストには何らの合理性もないと書いてきました。
日経新聞には、消費税の地方分配率で、東京都が取りすぎているので東京都の取り分を減るべきという動きが出ていて12月16日朝刊ではその方向で決着したと書いています。
都民ファーストどころか「都が多く取り過ぎている」という批判の方が多いのを無視し(何か言い分があるかもしれませんが、何も考えずに流行語に飛びついただけの印象を国民多くがうけたでしょう)て国政に打って出ようというのですから、何を考えているの?という疑問を持った人の方が多いでしょう。
今回(昨秋)の選挙の結果、メデイアと政治家がタッグを組んで虚像・イメージを繰り返せば一定のところまで行けるが、国民が賢いので根拠のないイメージ効果持続期間(人の噂も75日?)が短いことが分かった状態です。
メデイアの世論誘導力が選挙のたびに落ちてきたことが、メデイアが目の敵にしていたトランプ当選だけではなく今回も証明されたようです。

 

政党の役割1(不要不急のインフラとは?)

昨年総選挙での希望の党の公約・「正規雇用を増やす」公約の意味を書いているうちに総選挙から1年以上たってしまいましたが、希望の党の公約に戻ります。
November 20, 2017「希望の党の公約等3(内部留保課税3)」の続きになります。
(この夏約1ヶ月間サーバーの不具合でこのブログが停止してしまって以来、新規意見書き込み意欲がまだ戻っていないので、過去の原稿先送り分の在庫整理がまだ続いています。)
希望の党公約に対する批判意見は公約が発表された総選挙真っ最中に基礎的原稿を書いていたのですが、総選挙最中に一方の党の批判を書くのはどうかな?と迷って、総選挙後に公表を始めたのですが、現在では希望の党が解体・分党してしまい、政治的影響力がなくなっているので今更批判する意味がなさそうに見えますが、希望の党の公約に限らず各種野党・もしかしたら日弁連などの批判勢力(憲法の原理や近代法の法理に反する」という抽象論で運動しているように見える?)一般に共通する問題ですから、古い原稿ですが連載残り分をここで発表しておくことにします。
次に
「家計に希望を・・・」の中に「不要不急のインフラ整備を徹底的に見直す」とありますが、こんな公約は公約のうちに入りません。
政府が不要なインフラ整備しないのは当たり前すぎることで、どの政党も無駄な公共工事をするとは言わないはずです。
何が不要で何を優先的に設備する必要があるかを決めるのが政治ですから、公約では、どの分野のインフラを優先整備すべきかの順位意見表明すべきでしょう。
何を優先して整備し何を後回しにするかを決めるのが政治ですから、公約で言うべきは優先順位です。
これのない公約は公約とは言えないでしょう。
韓国では政治思惑優先・経済音痴の文政権下で経済失速が鮮明ですが、11月1日の施政方針演説では「共に良い暮らしをしよう』という方向を示しただけで終わっているようです。
どうやって「良い暮らし」に持っていくかを示すべきが政治家の仕事です。
民主党政権時代に「コンクリから人へ」のフレーズで失敗した事業仕訳の焼き直しでしょうか?
議員定数削減による消費税増税反対と言い、

「満員電車ゼロ」実現など生活改革を進め、労働生産性を高める▽日本企業の事業再編を促すため、事業再編税制を強化▽電柱の地中化により、災害対策を強化するとともに、景観を改善

というのですが、これが「家計に希望を」の項目の中にごたごたとはいっていてゴチャゴチャです。
財政赤字対策・・・議員定数削減程度で巨大な財政赤字がどうなるものでもありません・民主党が政権を取る前にしきりに宣伝した埋蔵金論・・実際にはなくて事業仕分けに切り替えて目先をごまかしたことは周知の通りです・・の焼き直しです。
「ユリのミクス」による税収増を図ると言うのですが、肝心の百合ノミクスの内容がありません・希望・夢に委ねるという意味でしょうか?
こんなゆるい公約で実際の国家運営できるのでしょうか??
その他一々批判してもきりがないので紹介をこの辺で打ち切りますが、どうせ意味のあることを書けないが白紙提出というわけにいかないので、仕方なしに受験生が答案用紙に何か書いて出したような公約羅列の印象を受けますが、そもそも公約ってどこの政党でもそんな程度のものだったのでしょうか?
公約に関心を持ったきっかけは、」今回「排除の論理」がどうなっているのか気になって希望の党の公約をネット検索してみたのが初めてで、よその公約がどうなっているかまで見ていません。
抽象論ばかりで具体性がないと言う批判を意識したのか具体化するために?電線地中化・満員電車解消など書いていますが、こんな瑣末なことを書くのと具体化とは違います。
具体的に書く必要とは、数日前正規雇用化の意見で書いたように、企業が正規採用をいやがる法制度をどうするかの議論とセットで書くのが具体化です。
ユリノミクスで・・と意味不明な逃げ方をしないで、具体的な経済政策を書いてくださいというところです・・。
「希望」の党だから夢で良い・・具体性がなくて良いと言う開きなおりかもしれませんが、メデイアは小池フィーバーを煽るばかりで公約の矛盾・お粗末ぶりをなぜ批判しなかったのでしょうか?
党の公約などメデイアが報道しない限りほとんどの人が滅多に見ないのをいいことにしてメデイアはムードばかり煽っていたのですが、合流となると民進党員が党内多数になることが素人に直感できたことから、民進党の主張そのままの党になるのか?という素朴な疑問が湧き上がったところからその到達点で小池氏は「排除声明」を出さざるを得なくなった背景でしょう。
民進党や17年11月10〜11日に紹介した離党した都議の主張でも同じですが、透明性とか弱者への思いやりや女性の社会進出やlJGPT対応も必要ですが、分配中心の視点が目立つ・・国家をどうやって運営していくかという最も重要な主張(付け足し的に書いてありますが・・)がほとんどありません。
企業で言えば、新社長が従業員第一・経理の透明性というだけでは、新社長がどの分野で稼ごうとしているのか見えないのと同じです。
民主政治の前提として決定過程の透明化が必須ですし汚職をしないのも重要ですが、政党が政治過程を透明化し汚職摘発だけが主たる活動目的で本来の政治をどうするかの意見がないのでは困ります。
都民ファースト離党都議の主張を見ていて感じたのですが、都議の内一人二人くらいは都政トータルの議論には「私は当選したばかりでよくわかりませんので・・と言って一切関わらない代わりに、決定過程の透明性実現あるいは保育園問題だけに特化したり、電線地中化運動するのは一つの生き方ですが、党全体がそれしかないと言うのでは「政党」とは言えません。
電線地中化や保育所に特化して取り上げる個々の議員の発信は、一般に広く関心を持ってもらうための問題提起効果を狙う点で意味がありますが、政党として主張する以上は優先順位の主張であるべきです。
不良のいない社会や街路に花を絶やさないのも電線地中化も保育所が多くあるのも、高等教育無償化すべて結構なことですが、それらを全部実現するには、限られた予算や人材資源配分をどうするか・優先配分に行き着きます。
例えば、保育所問題は予算配分・資金ばかりではなく人材争奪・どこへ優先的に振り向けるべきかの優先順位の問題であることは明らかですが、電線地中化も資金の問題だけではなく新築ビル工事や道路工事などに振り向ける労働力が今逼迫していますが、これを電柱掘り起しなどに優先的に振りむけるのかなど多方面への目配りの結果の主張であるべきです。
一般常識からいえば、好景気でどんどん新規受注のある好況時には、保守点検部門の人材は維持管理に必要な程度にして利益に直結する前向き事業に人材をシフトする・・受注減の余力のあるときにこの種の保守的事業に人材をふり向けるのが合理的でしょう。今首都圏ではオリンピックに向けた諸工事が間に合わない建設労働者逼迫の緊急事態にあることは周知の通りです・・電線地中化に今人材を振り向けるには、この常識的セオリーをひっくり返すほどの合理性緊急性があるのかの説明が必須です。
4〜500人の代議士のうちで一人か二人の税理士出身者が都政がどうあるべきかよりも、会計のミスばかりに目を光らせるとか・・それでも良いのですが・・。
政治と役人の役割分業は、政治が基本方針を決めて役人はこれをミスなく実行することですが、細部の議論だけで基本方向を決められないのでは政治家はいりません。

継続契約保障と社会変化4(離婚法制の変化・破綻主義へ)

継続的契約関係ではDecember 9, 2017の「継続契約保障と社会変化3(借地借家法立法3)」で書いた続きになります。継続関係解消で似たような事例では、偕老同穴の誓い・共白髪の末まで・・と契ったはずの夫婦関係も何かの事情変化でわかれる(離婚)しかない事態が起きます。
この場合も戦前の旧法では、法律上は相手に契約不履行・・不貞行為等の違反・落ち度がないと離婚を求める権利がありませんでしたが、戦後は破綻主義といって、破綻している以上無理にこれを維持させるのは意味がないし逆に害悪があるということで離婚できるようになりました。

民法旧規定
第二款 裁判上ノ離婚
第八百十三条 夫婦ノ一方ハ左ノ場合ニ限リ離婚ノ訴ヲ提起スルコトヲ得
一 配偶者カ重婚ヲ為シタルトキ
二 妻カ姦通ヲ為シタルトキ
三 夫カ姦通罪ニ因リテ刑ニ処セラレタルトキ
四 配偶者カ偽造、賄賂、猥褻、窃盗、強盗、詐欺取財、受寄財物費消、贓物ニ関スル罪若クハ刑法第百七十五条第二百六十条ニ掲ケタル罪ニ因リテ軽罪以上ノ刑ニ処セラレ又ハ其他ノ罪ニ因リテ重禁錮三年以上ノ刑ニ処セラレタルトキ
五 配偶者ヨリ同居ニ堪ヘサル虐待又ハ重大ナル侮辱ヲ受ケタルトキ
六 配偶者ヨリ悪意ヲ以テ遺棄セラレタルトキ
七 配偶者ノ直系尊属ヨリ虐待又ハ重大ナル侮辱ヲ受ケタルトキ
八 配偶者カ自己ノ直系尊属ニ対シテ虐待ヲ為シ又ハ之ニ重大ナル侮辱ヲ加ヘタルトキ
九 配偶者ノ生死カ三年以上分明ナラサルトキ
十 壻養子縁組ノ場合ニ於テ離縁アリタルトキ又ハ養子カ家女ト婚姻ヲ為シタル場合ニ於テ離縁若クハ縁組ノ取消アリタルトキ
第八百十四条 前条第一号乃至第四号ノ場合ニ於テ夫婦ノ一方カ他ノ一方ノ行為ニ同意シタルトキハ離婚ノ訴ヲ提起スルコトヲ得ス
2 前条第一号乃至第七号ノ場合ニ於テ夫婦ノ一方カ他ノ一方又ハ其直系尊属ノ行為ヲ宥恕シタルトキ亦同シ

上記の通り相手方になんらかの原因がないと離婚の訴えが認めれない仕組みでした。
民法現行規定

(裁判上の離婚)
第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
《改正》平16法147
2 裁判所は、前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

上記「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」がこれ(破綻主義採用)にあたるという解釈が定着しています。
第二項の「一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。」場合とは、離婚に至った事情を総合し、離婚請求される方の生活保障等のバランスを考慮することになっています。
破綻主義と言っても当初は有責配偶者(例えば浮気している方)から、自分の浮気や暴力が原因で「夫婦関係が破綻した」という理由の離婚請求を認めない・・いくら高額慰謝料・終身の生活保障をすると言っても)妻が「懲らしめや復讐のために?」拒否すると離婚が認められない解釈でした。
この間の研究については以下の論文がネットに出ています。
ただし、論文発表時期明示がないのですが、かなり古い時期の分しか引用されていないので、現在の参考にならないかも知れませんが、問題点が十分に掘り下げられていますので深く知りたい方は、以下を参照してください。
https://ci.nii.ac.jp/els/contentscinii_20181112095822.pdf?id=ART0001408704

いわゆる制限づき破綻主義の判例法理について(その1)梅木茂
1聞題の所在
2 有 責配偶者の離 婚請求拒否法理 の背景
3.判例の動向 な らびに考察
「法 は かくの如き不徳義勝 手気儘 を許すもので は ない.道徳 を守 り,不 徳義 を許 さない ことが法の最重要 な職分である.総て法はこ の趣旨にお いて解 釈されな け れ ば な らない、・・・前記 民法の規定は相手方に有責行為のあることを要件とするもの でないことは認 め る け れ ど も,さりと て前記の様な不徳義 得手勝手の請求を許すものではない.(最高裁 昭和27.2.19判決最高民集6.2.110)

借地借家法成立前には、相場の数倍の立ち退き料支払いを申し出ても借地人が拒否すればどうしょうもなかったし・・労働契約解約のために契約上の退職金の数倍の上乗せ支払いを申し出ても労働者が応じなければそれまでだったのと「軌を一」にしていました。
その後(昭和62年)破綻後一定期間経過と子の養育や相手方の生活保障等のセットで有責配偶者からの請求でも離婚が認められる最高裁判例(いわゆる破綻主義)が出て、これが定着しています。
離婚を認めるかどうかは離婚後の相手方や子供の生活がどうなるかの問題であるという実態を直視してその面の判断が重視されるようになってきたのです。
こういう判例が出る前から庶民の世界・・現場労働系低所得階層・特に職を転々とする傾向のある男相手の場合には、相手が浮気でいなくなったのであろうと理由が何であろうと、慰謝料を1円も払わないからと離婚しないと頑張っていてもどうなるものでもありません。
こういう場合には早く離婚して母子手当て・母子優先のいろんな制度(公営住宅の優先入居その他)利用をして生活の安定を図り、場合によっては次の男と再婚した方が有利なので、どんどん別れていくのが私が弁護士を始めた昭和40年代でも普通でした。
仮に相手の居所がわかってもあちこちフラフラ職の定まらない(こういう場合生活費も入れない男が普通)男相手に「慰謝料を払わない」から「払え」と裁判しているよりは早く別れて社会保障手続きする方が簡明ですし、次の相手と再婚する方が手っ取り早いからです。
たまたま夫が行方不明で離婚届けを出せない場合に、(再婚前に次の子供ができると大変なことになるので)はやく離婚するために弁護士費用を払ってでも法的手続きするのが普通でした。
長々とした裁判になる事件の多くは、相手が高額収入・・安定職業に就いている場合で話の通じない・ほどほどのところで手を打つ能力のない・・同士の争いが普通でした。
最近家事事件が多くなっているのは、男も子育て参加の掛け声によって男性も子供に対する愛着が 強くなってきた結果、親権者や子供との面会にこだわる人が増えたことによります。

労働組合の実態

厚労省の統計です。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/roushi/kiso/16/dl/gaikyou.pdf

平成 29 年労働組合基礎調査の概況
結果の概要
1 労働組合及び労働組合員の状況
平成29 年 6 月 30 日現在における単一労働組合の労働組合数は 24,465組合、労働組合員数は998 万 1 千人で、前年に比べて労働組合数は217 組合 (0.9 %)の減、労働組合員数は 4 万 1 千人(0.4 %)の増となっている。また、推定組織率(雇用者数に占める労働組合員数の割合)は、17.1 %で、前年より 0.2 ポイント低下している。
女性の労働組合員数は326 万 8 千人で、前年に比べ7 万 6 千人(2.4 %)の増、推定組織率(女性雇用者数に占める女性の労働組合員数の割合)は、前年と同じで 12.5 %となっている。
(第1表、第1図、附表1)
5 主要団体への加盟状況
主要団体別に、産業別組織を通じて加盟している労働組合員数(単一労働組合)をみると、連合(日本労働組合総連合会)が679 万 9 千人 (前年に比べて4 万 6 千人増)、全労連(全国労働組合総連合)が54 万 2 千人 (同 8 千人減)、全労協(全国労働組合連絡協議会)が 9 万 9千人(同 3 千人減)、金属労協(全日本金属産業労働組合協議会)が 199 万 3 千人、インダストリオール・JAF(インダストリオール日本化学エネルギー労働組合協議会)が 42 万 2 千人、交運労協(全日本交通運輸産業労働組合協議会)が 62 万人、公務労協(公務公共サービス労働組合協議会)が114 万 6 千人となっている。また、都道府県単位の地方組織のみに加盟している、いわゆる地方直加盟の労働組合員数を合わせて集計した労働組合員数は、連合が692 万 9 千人(前年に比べて4 万 9 千人増)、全労連が77 万 1 千人 (同 5 千人減)、全労協が11 万人 (同 2 千人減)となっている。(第5表)
注:複数の主要団体に加盟している労働組合員は、それぞれ主要団体に重複して集計している。

ところで日本の就労者数は増え続けています。http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/index.htm

労働力調査(基本集計) 平成30年(2018年)9月分 (2018年10月30日公表)
(1) 就業者数,雇用者数
就業者数は6715万人。前年同月に比べ119万人の増加。69か月連続の増加
雇用者数は5966万人。前年同月に比べ100万人の増加。69か月連続の増加
(2) 完全失業者
完全失業者数は162万人。前年同月に比べ28万人の減少。100か月連続の減少
(3) 完全失業率
完全失業率(季節調整値)は2.3%。前月に比べ0.1ポイント低下

組合員(正社員?)の就労者に占める比率は今や約17%しかなく、比率が下がる一方ですから連合の内部構成も、元官公労系・その周辺系(電電御三家や道路公団ファミリー企業など・・電信や金融)旧式業界の比率が上がる一方ではないでしょうか?
市役所内でも非正規雇用(臨時職員)の人がいっぱい働いています。
韓国ほどではないにしても旧来型産業の既存労組が解雇規制を岩盤固守に精出していると企業は、仕方なしに定年までそのまま温存して、自然減を待つ・その分新規採用を抑える結果、新規採用は非正規中心となります。
非正規雇用を増やしては社内的にも身分階層を作り、自分たちの恵まれたエリート意識・・自己満足しているのではないでしょうか。
こんな非合理な社会制度の維持は限界になってきていると思います。
正規社員に対する実力以上の厚遇・高額賃金の保障を緩和することが、格差解消のためにも合理的ですが、格差反対を声高に主張するグループ・政党が、実は官公労系や大手企業中心の労組に依存しているのですから茶番です。
連合の支持政党については、紹介するまでもなく周知の通り「革新系」政党で格差反対を標榜しています。
革新系政党の主張は平和を守れとか、格差反対を言うだけで抽象的で実がないと書いてきましたが、正規職の優越性維持のために格差縮小を実現したくない本音があるからでしょうか?
武士になれば足軽と同じに身分にしろという要求を拒みたくなるでしょう。

免責事項:

私は弁護士ですが、このコラムは帰宅後ちょっとした時間にニュース等に触発されて思いつくまま随想的に書いているだけで、「弁護士としての専門的見地からの意見」ではありません。

私がその時に知っている曖昧な知識を下に書いているだけで、それぞれのテーマについて裏付け的調査・判例や政省令〜規則ガイドライン等を調べる時間もないので、うろ覚えのまま書いていることがほとんどです。

引用データ等もネット検索で出たものを安易に引用することが多く、吟味検証されたものでないために一方の立場に偏っている場合もあり、記憶だけで書いたものはデータや指導的判例学説等と違っている場合もあります。

一言でいえば、ここで書いた意見は「仕事」として書いているのではありませんので、『責任』を持てません。

また、個別の法律相談の回答ではありませんので、具体的事件処理にあたってはこのコラムの意見がそのまま通用しませんので、必ず別の弁護士等に依頼してその弁護士の意見に従って処理されるようにしてください。

このコラムは法律家ではあるが私の主観的関心・印象をそのまま書いている程度・客観的裏付けに基づかない雑感に過ぎないレベルと理解してお読みください。