米中対決と周辺国への影響2

今日は昨日から書いてきた論文紹介です。
最初はグラフだけ紹介しようと思ったのですが、前提条件ど知りたい方がいるかもしれないので、検討した前提条件等を抜粋して紹介することにしました。
私の要約では微妙に間違うといけないのでそのままの抜粋ですが、そのために今日は引用が長くなってしまいました。
印象を書くと対決する米中が損をし「揉め事を起こしていると喧嘩している双方が体力を消耗し周囲が得する」ということでしょう。
第一次、第二次世界大戦の当事者になった欧州が力を落とし、第一次世界大戦や朝鮮戦争特需の恩恵を受けた日本を見ればわかります。
https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/as181226a.pdf

2018年12月26日
   みずほ総合研究所調査本部 アジア調査部
米中貿易摩擦のアジアへの影響
中国以外のアジアはネットでプラスの影響を享受
○米中貿易摩擦のアジアへの影響について、サプライチェーンを通じたマイナスの影響だけでなく、生産代替を通じたプラスの影響についても、国別かつ業種別に試算
○各国別では、いずれもネットでプラスの影響を受けると試算される、その規模は最大のメリットを受けるベトナムで0.5%程度。ただし、当面はマイナスの影響が先行する可能性
○産業別では、多くの国でPC関連と一般機械にプラスの影響が集中するなかで、ベトナムとカンボジアに関してはカバン・帽子・自転車といった低付加価値産業での生産代替が多くなる可能性
1.米中貿易摩擦によるアジアへの波及は、
マイナスとプラスの二つの経路
・・・・
以上のマイナスとプラスの影響の波及経路について、一定の前提を設定し、アジアの各国・各産業への影響を試算することが本稿の狙いである。
2.現状レベルの貿易摩擦を前提し、アジアの国・産業別に影響を試算
(1)前提条件
a.試算の全体に関する前提
・・・中国の対米輸出については2500億ドル相当、
米国の対中輸出については1100億ドル相当が制裁を受ける対象となっており、この部分について分析する(図表2)。
b.サプライチェーンを通じたマイナスの影響試算に関する前提
・・・・現実には、関税率が上昇しても、通貨の下落や製造・流通業者の利益圧縮によって販売価格への転嫁が抑制されたり、たとえ価格に転嫁されても、最終需要者が価格上昇を甘受して購買を続けたりするケースがありうる。試算を単純化するために「価格弾性値=1」としたが、マイナスの影響を大きくする厳格な前提といえる。
c.生産代替を通じたプラスの影響試算に関する前提
第一に、生産代替を通じたプラスの影響試算に関する前提貿易量の減少と同規模だけ、生産代替が行なわれる(完全代替)と前提する。つまり、米国による追加関税で、中国の対米輸出数量が25%減少する場合、それと同規模の生産が米国の追加関税を回避するために中国から第三国(ないし米国)へ代替されると前提する。
なお、代替率は0~100%の間の値を取りうるため、100%の「完全代替」はプラスの効果を最大にする楽観的な前提である。
第二に、生産代替の行先としては、世界の輸出市場における国・地域別のシェアに応じたものになると前提する。
・・・・この前提は、ADBの先行研究と同じであり・・・・世界シェアが
高い国・地域ほど中国を代替するポテンシャルが大きいと思われる。
(2)試算の手法と範囲、データベース
サプライチェーンを通じたマイナスの影響試算については、OECDの国際産業連関表(ICIO)の最新版(2011年)を用いる・・・・・・・の範囲は1次波及までとし、米中および各国・地域の輸出減少や不安心理などが内需を押し下げる二次的な波及効果は対象としない。
3.アジア各国・地域の各産業とも、ネットでプラスの影響を受ける試算結果
(1)国・地域別の影響


(2)産業別の影響
産業別にみると、サプライチェーンを通じたマイナスの影響については、台湾、マレーシア、韓国、フィリピンといったアジア各国・地域のPC関連分野で目立つ試算結果となった(図表4の赤塗りの横棒)。これらの国・地域が、特に中国とのサプライチェーンにおいて、PC関連部品のサプライヤーとして組み込まれているためである。その他の産業については、各国・地域とも目立った影響はなさそうである。
生産代替を通じたプラスの影響については、多くのアジア各国・地域でPC関連および一般機械に集中する(図表4の青塗りの横棒)。例外としては、ベトナムではPC関連と一般機械に集中するのでなく、繊維にもプラスの影響が分散する。
4.ただし、当面はマイナスの影響が先行する可能性に留意

本試算の枠組みでは、マイナスとプラスの影響がいつ現れるのかという時間の概念を示すことはできない。
以下略

米中対決と世界経済への影1

昨日見た貿易比重でみれば、日本に関してはありがたいことに他国に比べて対中比重の上昇率が低いようですが、世界全体で見れば対中貿易の方が米国を上回っているように見えます。
米中対決すると中国への輸出が減り(世界で対中輸出が対米より大きいので)世界経済が大変なことになるという変な議論がメデイアで流布していますので今日はこれに対する私の素人的反論です。
中国の巨大な輸入は、対米貿易黒字によってファイナンスされている・対米貿易黒字がなくなる・・対米輸出が減ると中国が加工生産→対米輸出するための資源や部品輸入がなくなる・・中国の世界経済への影響力がその分縮小すると思うのが素人的道理です。
中国の輸出→輸入が減れば世界中が困るかのようなメデイアの論調ですが、それを手をこまねいて見ている企業はありえない・・・ベトナムその他東南アジア諸国に生産工場を移転してそこから対米輸出に切り替える・・米国の対中高関税を回避するように動くのは当然です。
米国の消費が減らない限り、消費に必要な分を米国内で生産するか、中国輸出分の肩代わりする国が出てくる(中国工場の米国向け輸出分の生産縮小して東南アジア等の生産を増やすので)結果的に世界生産量は変わらないはずです。
その生産地移転コストとタイムラグが問題になるだけのことであって、中長期的世界経済あるいは日本経済に対する負担にはなり得ない・・むしろ高関税回避のために生産基地の移転恩恵を受ける最貧国カンボジア等の生活水準が上がり世界が平準化してトータル消費が増えるはずです。
部品も同じで中国製部品を使うと高関税になるならば、競合する他国製部品に切り替えるようになるので切り替え能力のない企業,生産地移転できる産業構造でない国だけが中国と心中するしかないにすぎないというべきです。
どうにもならないのは欧米制裁で中国の資源輸入に頼るロシアやベネズエラやイラン等限定された国のことでしょう。
中国の輸出産業が打撃を受ければ、輸出製品生産用の資源,動力消費も激減します。
対中締め上げは、米国発の経済制裁の効力を高める狙いがあるようです。
逃げ場のない最たる国・企業が震源地の中国であり中国企業です。
中国企業がベトナム等に工場移転→ベトナム製として対米輸出できるかというと中国国有企業関連は、それだけで米国から忌避されるので工場移転も無理があります。
そのほかに中国資本企業の場合の網もかかります。
米国へ輸出目的による中国内での生産ではなく中国国内消費拡大を当て込んで先行投資したおむつ工場や店舗進出などの場合、中国経済減速による消費減退はもともと中国内需向けだった以上は、東南アジア諸国へ工場移転する余地がなく消費拡大予想が見込違いになったことになります。
中国国内自動車販売が減少に転じていることが外資が関与していて統計をごまかせないので信用性が高いですが、その他分野の生産や売り上げも車にほぼ比例して減っていると見るべきです。

https://www.msn.com/ja-jp/news/other/

12月中国貿易統計、輸出入ともに予想外の減少-世界経済リスク高まる
[北京 14日 ロイター] – 中国税関総署が発表した12月の貿易統計では、輸出が2年ぶりの大幅な落ち込みを記録し、輸入も減少した。ともに予想外のマイナスで、中国経済が2019年に一段と減速し、世界的な需要が低下する可能性を示す内容となった
12月の輸出は前年同月比4.4%減。主要市場のほとんどで需要が鈍化した。

対米輸出基地としてあった中国での生産工場が新興国へ移れば、その分新興国の所得が上がり消費力が上がるので、中国で減った(おむつなどの)消費分が周辺諸国に拡散するので、世界全体での消費量は同じです。
中国企業の輸出向け生産が減り、その分原燃料輸入が減れば、(資源需要減少と言いますが)その分東南アジア諸国が生産に必要なので資源を買い、工場稼働アップによって電力等の必要性が増え燃料の輸入が増えます。
輸出入で見れば中国の対米黒字分が、周辺国の黒字に置き換わり周辺国の消費拡大に置き換わります。
早くから周辺国への進出準備をしていた・・用地取得・建屋まで完成していていつから操業しようかという企業にとっては追い風になるし、その予定がなかったか、予定していたが、これから数年かけて用地を探し、許認可交渉に入ろうとしていた企業にとっては遅れている分だけ競合他社の後塵を拝することになります。
http://www.tokyoーnp.co.jp/s/article/2019010501000986.html

事務機器大手リコーは5日、中国での複写機の生産をタイへ移管する準備を進めていると明らかにした。
中国の輸出環境が米国との貿易摩擦で悪化している影響を緩和する狙いだ。
現在、複写機を中国の上海や深センから米国へ輸出しており、生産の移管を決めれば、最速2カ月でタイから輸出できる体制を整えた。部品も中国以外で調達が可能だという。

この一般論をリコーの例を引いて10日ほど前に素人的に書いてきましたが、ついにプロの分析結果が見つかりましたので明日引用紹介します。
これによるとほとんどの国はマイナス影響よりプラス影響の方が大きいことがわかります。
ベトナムやマレーシアなどはマイナス分は殆どなく工場移転メリットをもろに受けるなど大幅なプラスになっています。
日本も若干のプラスです。
EUは日本、韓国台湾のように簡単に東南アジアに移転(する下地がない)できないので、大きなダメージを受けるように思っていましたが、以下のグラフによれば(私には原因不明ですが)かえって儲かるようです。
対中高関税をかけると米国が高い製品を買うしかなくて、米国自身が困るとメデイアが言いますが、米国自身も代替生産国から従来通りやすく買えるので、ほぼ中立になっています。
こうなると米中摩擦で困るのは、逃げ場のない中国だけのようです。
マスメデイアはなぜ困る困るというのでしょうか?

アメリカンファーストと国際協調4(崩壊?2)

EUの対中対米貿易比率はhttp://eumag.jp/questions/f0717によると以下の通りです。

EUの物品貿易相手先と規模(2016年)

特にアジア諸国では対中貿易の方が大きくなっています。
http://www.camri.or.jp/files/libs/1156/201810011524292185.pdfによると以下の通りです。
それぞれグラフ等が出ていますので、関心のある方は直接お入りください。

34 月刊資本市場 2018.9(No. 397)
対中貿易依存度が高い国々はどこか?
公益社団法人 日本経済研究センター 主任研究員 牛山 隆一
1.中国の貿易動向
2.対中輸出比率ランキング
3.対中輸入比率ランキング
4.米中間の貿易関係
・・・・・中国は2017年に日本の輸出先として1位米国(シェア19.3%)をやや下回る
2位(同19.0%)、輸入先としては2位米国(同11%)を大きく上回る1位(同24.5%)で、
引き続き重要な貿易相手となっている。
ただ、日本の対中輸出比率(19%)は世界27位であり、2007年(15%、16位)から比率は少し上昇したものの順位は大きく低下した。
また、対中輸入比率(24%)は世界14位で、やはり2007年(21%、8位)から比率は上がったが順位は下がっている。中国の貿易大国化が更に進み、世界の多くの国々が対中依存を急速に高める中、同比率で見た場合に日本の相対的な位置は低下している。
5.おわりに
本稿では対中輸出入比率を算出し、中国への貿易依存度が高い国々の動向を調べた。世界貿易に占める中国の比重が一段と高まるにつれ、対中輸出比率が20%以上に達する国・地域は2007年の11から2017年は26へ、対中輸入比率が20%以上の国・地域も同じ期間に10
から40へそれぞれ増加した。

韓国などは数年前から対中貿易の方が多くなっていることから、露骨にアメリカの気に入らないことを正面からするようになった・反抗し始めています。
https://docs.google.com/document/d/1B_k-2lcstvNhZWWRqkWpEo0Evf1mJlU7NLjlDEZOEak/edit#によると韓国の対中貿易額は以下の通りです。
登録:2018-04-05 06:15 修正:2018-04-05 17:30

「韓国、中国輸出の79%が中間財」…中国の対米輸出減少の“火の粉”降りかかるか

 

韓国の地域別輸出の比重(2017年)//ハンギョレ新聞社
チョ・ゲワン、チェ・ヒョンジュン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)

慰安婦合意の事実上破棄政策・徴用工賠償判決執行あるいは年末の攻撃用のレーザー照射事件など対日嫌がらせの連発もその延長上のことでしょう。 

 

アメリカンファーストと国際協調3(崩壊?)

狼やその他集団で狩りをし、あるいは、穀物収穫でさえも稲作のように集団行為がひつようですし、販路を求めるにも相応の供給組織(社会連携)が必須です。
今では三内丸山古墳で知られるように石器時代の黒曜石等の単品的交易にとどまらず縄文時代でもいろんな物品について広範な物品の交易をおこなっていたことが知られています。
工業生産になると(例えばある製品部品が100個あるとすれば、その数だけの関連サプライチェーンが必須となり、その部品(例えばタイヤ)を作るのにさらに50個の部品が必要であれば、その先に50倍のサプライチェーンが必須です。
芸術家のように、創造力・個性重視の職業でさえも、顔料その他材料収集と発表の場を求めたりその購買者に至る連鎖の輪に関係しないと自己ファアースとでは成り立ちません。
原始的に見ても馬や象や鳥や魚類のように集団で生活しているのは生命の危険を防ぐ知恵によることは明らかです。
地球最強になった人類は、今では人間による攻撃が最も怖いようになり、暗闇で一人歩くのは怖いという意味の集団行動が暗黙のうちに要請されるようになっています。
白昼公然の違法行為には、誰かの通報によってすぐに警察が来て検挙してくれますが、国家間の暴力(侵略)行為を防止する方法がないので、覇権国が「パックス〇〇」(パックスアメリカーナなど)の平和を脅かす行為に対して制裁することで秩序を保っていた(覇権国の権威を守ってきた)のがこれまでのやり方でした。
パックスアメリカーナと言われてきた所以です。
今年の正月元旦に1年の期間が古代と今では違っていたのではないかの意見?(個人想像)の例で、臥薪嘗胆や春秋時代の覇者になった文公(重耳)の例を書きましたが、覇者になるには武力だけではなく、相応の人望・が必須です。
覇権国とは相対的強者のことですから、人望がないと同調する与国がなくなり私戦禁止令の効力がなくなります。
ロシアが強盗のように公然とクリミヤを併呑しても制裁はせいぜい、自国の影響力の及ぶ範囲の経済制裁程度です。
ロシア制裁は欧米と日本その他の多くが従っていますが、イラン制裁再開に関しては意思統一がないままのトランプ氏にちゃぶ台返し・・独断専行ですので、日本や韓国中国、EU諸国は渋々・・アメリカ国内法違反企業としてアメリカ国内で活動するEUや日本企業が制裁されるのを恐れた仕方なしの同調に過ぎず同一価値観による同調ではありません。
イラン合意に参画した多くの国が「イラン制裁再開すべきと思っていない」以上その規制を守ろうという意識が低くなるのは仕方がないというべきで、ファーウエーが制裁違反行為をしていることを理由に副会長をカナダで逮捕したのは、(課徴金等で締め上げるのはまだしも)世界をびっくりさせました。
一方で覇権挑戦国の中国が公海の一部に埋め立てを始めて軍事基地を作る工事をしてもこれを禁止せずに、自由航行作戦といって軍艦をその付近に航行させる程度でお茶を濁し事実上の黙認です。
中国への弱腰批判に答えたつもりでしょうが、埋め立て工事に直接答えるべきで、こんな方角違いでは「政治プロの行為と言えない」というべきか米国は正面切って中国に何も言えないことを証明しています。
中国歴代王朝が崩壊した原因を見ると強敵が現れた場合は少なく、あちこちに農民暴動が頻発するようになり、鎮圧軍の抑えが効かなくなって最後は、軍閥に乗っ取られてしまう繰り返しの方が多いのです。
オバマが「世界の警察官をやってられない」ということは、王朝時代で言えば「野盗や暴動軍は好きにせよ!自分は首都に引きこもる」と宣言するのに等しいでしょう。
政府が治安責任を負わないと宣言する・・テロや暴動を鎮圧しないで放置するのであれば、全土の支配権放棄と同じです。
ただ、オバマの場合にはこれからの成長予定地であるアジア重視を示し、利害輻輳している中東からの関与縮小を明示していただけですが、トランプ氏の場合それすらもはっきりしません。
そもそも自国だけでのワンマン的世界切り盛りが無理になれば一足飛びに覇権放棄ではなく、有力支持者の協力を得ての覇権維持が普通の方向性です。
ところがトランプ氏は高関税対象を信頼関係のある同盟国にまで矛先をむけ始めたので、同盟と非同盟の意味がぐらついてしまいました。
自国の利益のために構想したTPP脱退を決めたのを手始めに文字通りの地盤である北米地域のNAFTAの改定・・喧嘩を始めたのには、世界中が驚きました。
続いて日本を含めた西側諸国にも高関税攻勢しながら過去の協定等の改定を強要する方向ですが、時間経過でトランプ氏のワンマンぶりには世界がある程度なれたとはいえ、慣れた度合いに応じて世界中のアメリカに対する信頼は同率で低下しているはずです。
同盟国がいつ梯子を外されるか不明では、アメリカに気持ちよく協力ばかりしていられない・中国にも保険をかけておく必要があるので、協力国の協力度合いが低下する一方でしょう。
経済制裁は圧倒的な制裁力があってこそ効力が強いのですが、いまは、世界のかなりの国で対中貿易と対米貿易量が拮抗している・対中貿易の方が多い国が増えています。
特にアジア諸国では対中貿易の方が大きくなっています。
韓国などは数年前から対中貿易の方が多くなっていることから、露骨にアメリカの気に入らないことを正面からするようになった・反抗し始めています。
慰安婦合意の事実上破棄政策・徴用工賠償判決執行あるいは年末の攻撃用のレーザー照射事件ど対日嫌がらせの連発もその延長上のことでしょう。
それでも経済制裁が相応の効果があるのは、(対中貿易が30%で対米貿易20%の場合でも)その他の日欧が米国の制裁に大方強調することで、世界貿易量では圧倒的多数を占める制裁を受けるから威力があるのです。
米国が世界貿易の過半を占めているときにはその威力が絶対でしたが、上記のように比重が下がってきた上に中国が対米対抗意識を燃やし始めると、ロシアのように中国が原油を買ってくれれば問題がないという国が出てきます。
ロシア原油その他ロシア製品全量買う国力が中国にあるとしても、中国に生命線を握られるのは怖いのでできれば避けたいでしょうが、緊急的でみればなんとかなる強みです。
もっと小国では、中国が「引き受けた」と言ってくれれば、中国の方が米国より怖くてもその場は助かるようになってきました。
今のイランの強気もそこにあります。
世界中で対米貿易の比率が下がっている以上は、経済制裁をしても協力国の数の多さがその決め手になるのですが、同盟国・・すぐに追随してくれる国の協力意欲を減退させる方向の政治ばかりではアメリカの威信は下がる一方です。
トランプ氏が力めば力むほどその威令・信用低下が進んでいる・/ひいては協力度合いが下がっていくのに気がつかないのでしょうか?
例えば秀吉が天下人になった以降に惣無事令で私戦禁止したのに反して、北条氏が(上野国の沼田)真田領を攻めたことで小田原攻めに発展したものです。
真田昌幸と幸村の父子が、この恩義・豊臣政権の威令が行き届いたことに感じた・恩義に報いないのは武士道に反するという美学によって、最後まで豊臣家のために奮闘したのです。
今日現在のウイキペデイアによると以下の通りです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%83%A3%E7%84%A1%E4%BA%8B%E4%BB%A4

豊臣平和令のうち、大名間の私的な領土紛争を禁止するものが惣無事令とされる。つまり、領土紛争においては、全て豊臣政権がその最高処理機関として処理にあたり、これに違反する大名には厳しい処分を下すという法令である。また、秀吉は関白の立場を明確に示す形で、あくまでも天皇の命令(勅定)によって私闘禁止(天下静謐)を指令するという立場を掲げた。[2]
惣無事令は、1585年(天正13年10月)に九州地方、1587年(天正15年12月)に関東・奥羽地方に向けて制定された。惣無事令の発令は、九州征伐や小田原征伐の大義名分を与えた。特に真田氏を侵略した後北条氏は討伐され北条氏政の切腹に至り、また伊達政宗、南部信直、最上義光らを帰順させる事に繋がった(奥州仕置)とされる。この惣無事令によって、天正十六年の後陽成天皇の聚楽第御幸の際など、参集した全国の諸大名から関白である秀吉への絶対服従を確約する誓紙を納めさせ、その違背に対して軍を動員した包囲攻撃のみならず、一族皆殺しを含む死罪・所領没収ないし減封・転封といった厳罰を与えた。いわば、天下統一は惣無事令で成り立ち、豊臣政権の支配原理となったのである。[3]

アメリカンファーストと国際協調2

ちなみにPoliceの語源はギリシャ語のポリス(シティ)らしく、これは英語のポリテカル、ポリシーなどで知られるように、もともと日本語の「政治」を中核とする語源です。
オバマ発言の原文を知りませんが、仮に「ポリスをやれない」と言ったとしても日本語の警察官をやれないと翻訳するのは妥当かの疑問があります。
日本語の警察官は、政治思惑と無関係に(どころか政治的立場による一方に不公平な行動は許されていないでしょう)現状秩序維持機能にロボットのように特化した組織として教育され訓練された機関やその従事者を意味しています。
権力の犬と言って蔑む人もいますが、それは欧米の暗黒の歴史をなぞって言い募っているだけで実際に日本の歴史ではお巡りさんのイメージでわかるように身近な世話役です。
落し物を届けたり行先の道を聞いたり猿が出たと言っては追いかけますようなイメージではないでしょうか?
以上によればオバマが「世界のポリス」をやれないという意味は、政治目的実現のために軍を動かすことは出来ない・・「政治判断が間違っているといくら有能精強な軍を持っていても機能しないからやれない」というあたり前の原理を言ったに過ぎず、日本語の警察官役を果たせないという意味とはだいぶニュアンスが違うのではないでしょうか?
日本の警察は民事不介入といって、揉め事一方の肩を持てないし、要請されても中立行動・・「まあまあ実力行使はやめてください」と二人の間に入って暴力行為に発展しないように阻止する程度しか出来ません。
軍といっても災害出動のほか今ではいろんな機能があるので、一言で言えませんが世界の警察官と翻訳するのは国連平和維持軍程度の役割です。
アメリカがやってきたのは、米国益獲得のために一方当事者の肩を持つ軍事介入そのものですから、これをやめるというのを世界の警察官をやめると翻訳するのは誤訳でしょう。
ポリスをやれないという意味をもっと厳格定義して報道すべきように思えます。
常識的に言えば、他国間の紛争解決手段としての軍事力行使(による介入)は今後できないという程度の意味だった可能性があります。
以上は原文に当たっていないので私の憶測意見です。
我が国憲法でいうところの「国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」」はまさにこれをいうものでしょう。
政治力不足・正義に反している主張・マイナスの穴埋めの軍事力行使=不当攻撃には自衛する必要はあっても、自己の政治力.正義不足=不正義補完に使っても長い目で見れば意味がないということです。
「口論で負けているからと相手(妻)を殴っても本当の解決にならない」という意味であり、かといって殴られるのが怖いと不正義に従う義務もない(妻が夫の家庭内暴力に服従する義務はない・・違法攻撃には正当防衛権・・・自己防衛力がなければ警察の介入が必要ということです。

憲法
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

正当防衛・自衛力のない人のために警察の介入・110番で駆けつけた警察が、まず引き分けて暴力行為を停止させることから始めるのですが、これを国際紛争に応用しているのが国連平和維持軍ではないでしょうか?
自衛の範囲の議論をしていると横にそれて行くので、アメリカンファーストに戻ります。
自国に関係ないことには軍事介入しないと言っても、直接間接の区分け定義不明でどこまでが自国国益に直結するかの基準が不明です。
まして時間的限界・今後は介入しないというのか過去に約束して介入している分までいきなり撤退する・・約束を反故にして(遡及的に)やめるのかも不明です。
企業で言えば、今後この分野から事業縮小というのは勝手ですが、契約済で工事途中の現場まで放棄してしまうようになると契約違反です。
昨年12月19日トランプ氏がいきなりシリア撤兵を発表したので、マチス国防長官の辞職表明に発展しましたが、この発表で世界中の米同盟国ではトランプ氏に対する信用が一挙に冷めたものになりました。
1月8日頃のニュースではこの結果、(米国同盟国の動揺を受けて?)ボルトン大統領補佐官がトルコがクルド人を攻撃しない条件付きの撤退と言い始めたようですが・・当然トルコはこんな条件を受けられません。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190109/k10011771841000.html

米軍シリア撤退 “クルド人勢力の安全が条件”にトルコ反発
2019年1月9日 8時42分

米国にとって中東の勢力関係がどうなろうと巨大な国費や兵士の人身損傷を賄うメリットがないというのがトランプ氏の表向き(サウジ皇太子によるカショギ記者殺害事件収束に向けた裏取引という見方が一般的です)主張です。
中東戦略で協力関係にあったクルド族切り捨てに抗議辞任したマチス国防長官および旧来政治判断では、(同盟国をトルコへの生贄にして)置き去りして引き上げるのでは米国の信頼が地に堕ちるという批判が噴出しました。
(日本台湾なども米国は頼りになるのかの心配が吹き出します・悔しいけれども中国への保険もかけておく必要性のバランス論・・米国追従をほどほどに止める動きが加速します)
トランプ氏に言わせれば、今後国際関係関与を減らしていくと表明した以上は、同盟関係を縮小していくのは当たり前・・いつかは「2階に上がって梯子を外される」ことを覚悟すべきだということになるのでしょう。
だから一方で「米国ばかりに頼らずに自助努力せよ、自国防衛予算を増やすべき」だと言っているではないかということで一応一貫しています。
要は「世界の警察官も嫌、政治に関わるのも嫌、揉め事は自分たちで解決してくれ」というのですから分かり良いといえば分かり良い政治です。
「難しいことは分からないから・」と米国が他国と他国の国際紛争から手を引くのは高齢化したわれれ高齢者の身の引き方と同じで結構なことです。
当面自国利益を守るのに必要な限度で他国と関係するのが合理的だというのは一理あります。
ただ自国利益を守るためには、他国との協調が必須ですので、その塩梅をどうするかの基準が見えない点が不安視されているのです。
「泣いて馬謖を斬る」故事がありますが、組織リーダーには行動原理を部下に知らしめ自分が守ることが必須です。
このルールが見えない・・多くの人がトランプ氏の言動が行き当たりばったりで信用できないと思うようになるとアメリカの信用ががた落ちになり、結果的にアメリカの国益に反するようになります。

免責事項:

私は弁護士ですが、このコラムは帰宅後ちょっとした時間にニュース等に触発されて思いつくまま随想的に書いているだけで、「弁護士としての専門的見地からの意見」ではありません。

私がその時に知っている曖昧な知識を下に書いているだけで、それぞれのテーマについて裏付け的調査・判例や政省令〜規則ガイドライン等を調べる時間もないので、うろ覚えのまま書いていることがほとんどです。

引用データ等もネット検索で出たものを安易に引用することが多く、吟味検証されたものでないために一方の立場に偏っている場合もあり、記憶だけで書いたものはデータや指導的判例学説等と違っている場合もあります。

一言でいえば、ここで書いた意見は「仕事」として書いているのではありませんので、『責任』を持てません。

また、個別の法律相談の回答ではありませんので、具体的事件処理にあたってはこのコラムの意見がそのまま通用しませんので、必ず別の弁護士等に依頼してその弁護士の意見に従って処理されるようにしてください。

このコラムは法律家ではあるが私の主観的関心・印象をそのまま書いている程度・客観的裏付けに基づかない雑感に過ぎないレベルと理解してお読みください。