フリーランサー社会2(韓国5)

日本で言えば、卒業時就職未定が33%もいると大変な騒ぎですが、韓国の場合には16年8月から17年2月までの卒業生で17年年末が来ても・・・卒業生の33%もどこにもまだ決まっていない、しかも就職者67%の内約10%が健康保険に加入していないということは、就職者の10%は日雇い程度の仕事しかないのでしょうか?
ただし、文政権の週52時間労働制度導入による取り締まる強化を逃れるために正規雇用をどんどん解雇して、フリーランサー・・・外注化が進み今やフリーランサー需要がうなぎ登りと紹介されています。
一級建築士がフリーター的に特定工事現場のプロジェクト(トンネルや橋梁等の劣化チェック限定で契約している人の事件を受任したことをApril 15, 2019,に紹介したことがありますが、日本でも専門職のフリーター化(フリーランサーというかな?)が進んでいます。
企業が外注の方を選ぶのは、・・検査要員として資格さえあれば良い?
単純作業は外注の方が割安だからで、同じ一級建築士であれば大手企業社内で資格者よりトータル年収ではもともと低い前提です。
(臨時の場合時間単価が一見高そうでも、社員の場合退職金・年金や保険の負担/業務量が減ってもすぐに解雇できないなど比較にならないほどの格差があるでしょう)
オファーに応じないで半年間海外旅行するのも自由ですが、半年遊んで半年働いてそれで十分な生活(疾病等や老後資金の蓄積を含め)ができればいいのですが、いまでは一級建築士という程度のスキルではそんな贅沢はできませんので、仕事があればゴールデンウィークの仕事でもすぐ応募(受注)するのが普通です。
デイズニー等の登録者も同じです。
ことわる自由があるといっても、あんちょこに断れば次のオファーがなくなるか発注順位が下がるリスクがあるので、オファーがあれば喜んで受けるのが普通です。
この結果、普通のひと(正社員)が嫌がる場所や(休みたい)日や時間帯の仕事を喜んで受けるしかないのが現実でしょう?
大手企業社員は公休日や有給病欠等の基準が決まっているので、それ以外の日には企業のルールに縛られる代わりに、公休日や有給休暇を取れれば仕事しない完全な自由が保証されています。
このルーを守るのが煩わしい・集団生活に必要なルールを守る能力が低い・・長期休暇取得には事前の業務引き継ぎなど根回し必要ですがそのノウハウが低い場合、ルール社会から逸脱したい人も一定率いるでしょう。
気配り社会からの脱出・・居場所を無くせば野良犬同様に飼い主がいないので、主人や上司にペコペコする必要がない代わりに餌をくれるひとがいれば、誰彼なしに擦り寄るしかなくなります。
特定の飼い主と仲良くするかわりにその他一般に気を配ったり警戒の必要がない・飼い主や会社が守ってくれるのと、フリーになれば特定の庇護者がいないので人間関係維持のためのルールを守る必要がないかわりに、猫で言えばまわり全部が敵・いつ蹴飛ばされるかわからないので、周囲全部に寸分の隙なく気を配るかの選択です。
いつ蹴飛ばされるか警戒しながら目を皿にして餌を探し回っていて、ちょっとでも食べられそうなものが見つかれば仲間より早く飛び出して餌に食らいつく野良猫のような生活をしながら、主人がいないといつでも昼寝できると飼い猫をバカにしてるのと似ています。
ただし、先進国では医療に始まりフードスタンプなど最低生活保障が充実してきたので、生命維持面のリスクが大幅軽減されている点が大きな違いになっています。
野良猫でさえも有志が餌をやり、他方で避妊手術をする取り組みが進んできましたので、近隣の野良猫は餌を争う必要もなく、蹴飛ばされる心配もなく・・・原則として安心して寝そべっています。
人間の場合、時々路上生活者が少年に襲われる事件が報道されますが・・減る一方でしょう。
こうなると「飢える自由」蹴飛ばされる心配がないので、社会のセーフテイネットにただ乗りしたい人が増えるのでしょうか。
猫の場合は避妊と引き換えですが・・・。
日雇い労働・職業不定・非正規〜フリーター〜フリーランスと次々名前を「おしゃれ」に?変えても、恒産(今で言えば安定収入)があって余暇で公益活動をするとか、自己の価値観に従って注文を選べてこそ、本来の自由業というべきです。
http://manapedia.jp/text/3870

孟子曰、
「無恒産而有恒心者、惟士為能。
若民則無恒産、因無恒心。
苟無恒心、放辟邪侈、無不為已。
「恒産無くして恒心有る者は、惟(た)だ士のみ能(よ)くするを為(な)す。
民のごときは則ち恒産無ければ、因(よ)りて恒心無し。
苟(いや)しくも恒心無ければ、放辟(ほうへき)邪侈(じゃし)、為さざる無きのみ。

孟子によれば恒産なくとも 恒心を貫けるのは、「士」のみであり、一般人・民にそれを求めるのは無理であるという教えです。
これが伝統的に小売店その他の日雇い作業員や各種自営と医師・弁護士を分けて自由業と一般に言い習わしてきた違いでしょう。
生活費を稼ぐのに必死の人が多数を占める職種・・個々人の志に頼るだけの場合には、その業種を自由業とはいえないとすれば、弁護士大量増員以降の弁護士は経済保障面で自由業としての足元が崩れ始めている・恒産をなくしていっても本当に「士」としての正義を貫ける者がどれだけいるかの試練を突きつけられているといえます。
謡曲「鉢の木」が古典になっているのは「痩せても枯れても武士は武士」という美談が必要な段階になったからでしょう。
イギリスでも乞食王子とトムだったかで、似たような逸話が入っています。
フリーになれば「好き勝手に受注をしない自由がある」というのは、日曜日でも深夜でもオファーがあれば即時対応が要求される最も弱い立場・・実は絵に書いた餅です。
企業の方は危険な仕事その他汚れ役をやらせる要員として(何かあっても保証しなくて良い)「便利」(トータル安上がり)だから利用しているのが普通です。
戦場等危険な取材の多くはフリージャーナリストの仕事であり、正社員の派遣を聞いたことがありません・ISに捕まれば自己責任の大合唱です。
正社員が現場で生涯寝たきりなるような事故にあえば労災給付だけですまず、企業として全面保障するのが普通でしょうが・・下請けの下請けのそのまた契約社員であれば、お見舞いにも行く必要がない・・現場労災程度であとは放置でしょうか?

フリーランサー社会1(韓国4)

日本のフリーランサーの多くが一定の職業経験を活かした副業型や弁護士のような独立自営のイメージですが、大卒と同時のフリーでは何ができるのか?モラトリアム人間・失業との境がはっきりしません。
フリーランスとは何か?ですが、語源由来からしても特定雇用主を持たないフリーの専門職・外形上できる職務がはっきりしているだけではなく、専門職と言える程度のレベルが予定されるべきでしょう。
フリーという点だけ着目の名称つけは、いつも書く名称のインフレ現象の一つでしょう。
誰でもできるビルの清掃夫・工事現場付近に配置される警備員まで言い出したら、単なるフリーターと変わりません。
韓国では就業人口の3割、米国でも25%と言われるようになると、専門職とは普通の労働者以上んスキルを持っている人のことでしょうから、3割もいたら特別な能力とは言わないでしょう。
正規社員になれない落ちこぼれ階層の表現にインフレが起きているのではないかの疑いがあります。
韓国の場合、大卒同時の就職が少ないのでやむなく、フリーランサーの多くがこれといったスキルもなく自営化している・・・失業周辺のおしゃれな呼称と見れば18年末就業者の6、4%のフリーランサーを未就業者の分類に入れる方が実態に合っているでしょう。
そうすると大卒の実に4割もの多くが年末が来ても不安定な状態であることになります。
韓国では人口の3割がフリーランサーと言われますが、その実態は?

韓国のフリーランス・副業者の実態。新しい考え方と国内労働力の3割に達する副業者フリーランス

2017.07.28
韓国のフリーランス・副業者の実態。新しい考え方と国内労働力の3割に達する副業者フリーランス
お隣の国「韓国」では現在フリーランスの数が国内労働力の3割にものぼると言われています。この状況を盛り上げているのは、ここ数年突如として現れた「YOLO族」、そして新しい考え方を持つ若者世代です。彼らは超就職難といわれるこの時代をどう生き抜こうとしているのか、模索しながらもパワフルに生きる、韓国フリーランスの現状を韓国で7年間在住しフリーランスとして活動しているライターが紹介します。
LA中央日報が2017年6月19日に載せた記事によると、韓国のフリーランス人口は今や国内労働力の約30%に達しているといいます。2016年韓国の人口は5,125万人、外国人労働者は約2.1%で54万人というところもあり、韓国の総労働人口とフリーランス人口を比較するといかに韓国内でフリーランス人口が多いことが分かります。

上記によればいいことづくめ!・綺麗事を言えばそう言えないことはないでしょうが・・。
以下引用続きです。
一応動機が就職難に始まっていることを書いていますが・・。

働きやすさに夢がある、「YOLO族」と呼ばれる生き方
韓国のフリーランス人口は、これほどまでに増加の一途を辿ってきたのでしょうか。それはここ数年、韓国社会で問題となっていた「学歴重視社会」や「勉強ばかりを強いられる学生時代」に反発する若者たちが「社会にでても再び就職難という壁にぶち当たるだけ」という、現実を見て「フリーランス」という働き方を選択し始めたからです。
現在韓国にはYOLO族(=You Only Live Once)という、人生は一度切りだから好きなように生きようという考え方が注目され始めています。「YOLO族」たちは貯金をせず、将来のこともあまり考えないというのがモットーで、今あるお金を自由に使いながら生きようとする生き方を選択しています。

韓国の親世代ではまだフリーランスという働き方に対し「収入が不安定」「年金等、国の制度に加入できない」などネガティブな印象を持つ人がたくさんいます。
しかし、フリーランスで成功すれば「働きやすさに夢がある」「好きなことをしながら生きることができる」と、若者たちや「YOLO」という考えを持つ人たちに夢を与えている環境もあります。
第4次産業革命に突入した韓国社会で台頭し始めるIT企業
民泊として人気のAirbnbなどのプラットフォーム企業が勢力を増す韓国の市場では今、ほとんどの企業が内製する業務を削減しており、その多くは戦略や企画のような業務は各企業の正社員が受け持ちますが、プログラムを改修したり、資料を作成するといった事務的な業務はフリーランスに業務委託されるようになってきているのです。
この影響により、韓国のフリーランスの人たちにとっては大きなチャンスを迎えており、「一部業務のアウトソーシング化」というスタイルでフリーランスの需要は年々増加の一途を辿っています
「YOLO」と英語にい変えれば格好いいということでしょうが、内職の発展か内職への転落か?不明ですが・何年努力してもまともな就職先がないから開きなおって、今を刹那的に楽しく生きようとなっただけのように見えますが・・。
成功すれば・・・と書いていますが、就職で挫折した人が一攫千金を目指しても奇跡的にうまくいく人は万に一人というところでしょう。
「好きなことをしながら生きることができる」っていうけど、何のスキルもなくそう思っただけでそんなことが実際に出来れば苦労がありません。
就職難で苦し紛れの言い換えか?という勘ぐりをする人が多いでしょう。
失業者がシリコンバレー発展の原動力になったこともあり、結果的に人口の3割のフリーランサーから0、01%でもアップルのジョブズ氏のような人がでないとも限りませんので、国家的実験としての意味があるとは思いますが、貧困層に取り残される残り99、99%の人たちのストレスは大変です。
アメリカンドリームと同様の社会を理想としているのでしょうが、この種の原始的自由競争社って、成功者が出ないと国を挙げての貧困社会ですし、仮に0、0何%の成功者が巨万の富を得ても、途方も無い格差社会化になるしかない政策です。
今や人と人の格差だけではなく、アップルとその他製造業の時価総額の巨大な差を見ればわかるように企業間格差の巨大化が始待っています。
世界的にストレス蔓延の原因が、まさに、一攫千金的成功者の出現とその他大勢の超貧困社会の出現にあり、その解決こそがいま世界的テーマになっているのではないでしょうか?
反グローバル化の声が高いですが、要は格差拡大反対ということであってグローバル化=格差という短絡的思考がおかしいという人が増えるでしょう。
日本で言えば、卒業時就職未定が33%もいると大変ですが、韓国の場合、16年8月から17年2月までの卒業生で17年年末が来ても・・・卒業生の33%がどこにも決まっていない、しかも就職者67%の内約10%が健康保険に加入していないということは、就職者の10%は日雇い程度の仕事しかないのでしょうか?

不満社会?11(韓国3)

韓国自営業の場合は大企業失業者の吸収装置であったことが、以下の論文でわかります。
https://www.surugadai.ac.jp/sogo/media/bulletin/Hougaku26-02/Hougaku.26-2.77.pdf
韓国の自営業労働市場に関する一考察朴昌明

・・・一方,自営業部門はリストラされた労働者の「雇用吸収弁」の役割を行った。1998 年の非賃金労働者の割合は38.3 %と1997年(36.8%)より1.5ポイント増加した(図表1)。図表1を見ると,1999 年から雇用員がいない自営業者数が,2000 年から雇用員がいる自営業者数が,それぞれ増加していることがわかる。
IMF経済危機以降,失職者,特に男性が生計維持を目的とする創業が大幅に増加した(イ・ビョンヒ,2012 ,p.1 93) 。従来韓国では自営業が農民やブルーカラーからの移動先であったが,IMF経済危機以降,中壮年ホワイトカラーが自営業に参入するようになった(李莎梨,2009)。経済危機直後に急上昇した失業率は急速に低下し2002 年には3.1 %にまで回復したが(韓国労働研究院,2012 ,p.1 6) ,その要因の一つとして自営業部門の高い雇用吸収力が考えられる(有田,2007 ,p.2 5 駿河台法学 第26巻第2号(2013)

解雇の受け皿・・生計維持のための開業が多い前提の場合、昨日紹介した通り自営業の危機が続く現況では、狭き門を突破してせっかく就職できたサラリーマンは肩叩きにあっても必死にしがみつくしかないでしょう。
メデイアでは自営業の苦境ばかり大々的に報道していますが、自営業へ雪崩込めないで大企業で肩叩きに耐えている人たちの鬱屈は半端でないはずです。
リーマンショック以降の韓国の成長率は急減ですし、少子化率の進行率も半端ではありません。
https://www.recordchina.co.jp/b681232-s0-c20-d0058.html

韓国の経済成長率がここ6年で最低に、原因は「投資の萎縮と輸出の不振」=韓国ネットから不安の声
2019年1月23日、韓国・ソウル新聞は、昨年の韓国の経済成長率が過去6年で最低となる2.7%を記録したことについて「内需を支える投資の急激な萎縮と、経済を支えていた輸出の不振が成長の足を引っ張った結果だ」と伝えた。
https://ecodb.net/country/KR/imf_growth.html

成長率だけ見れば日本より良いのですが、完全雇用状態の日本が成長率をこれ以上げられない・ゴムが伸びきっている状態と違い、韓国の場合、若者の25〜30%前後の失業・・公式統計と違い実際安定就職のない状態・大卒で就職できないでバイトしても失業にカウントとしない)では成長がない(日本のようにほぼ現状維持)・低成長に陥ると、職にあぶれたママの人がそのままジリジリと高齢化していく社会になります。
https://japanese.joins.com/article/580/248580.html

韓国の大卒3人に1人は未就業者…2011年以降最悪
2018年12月28日09時27分[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
韓国の大学・大学院卒業生3人に1人は未就業者であることが分かった。特に、しばらくの間上昇傾向にあった就職率が文在寅(ムン・ジェイン)政府発足以降、再び減少傾向に転じた。若者が体験している最悪の雇用難が政府の公式統計で確認された。
教育部と韓国教育開発院は27日、このような内容が盛り込まれた「2017年高等教育機関卒業者の就職統計調査」の結果を発表した。この調査は2016年8月~2017年2月、全国の大学・大学院を卒業した57万4009人を対象に2017年12月31日現在の就職状況を把握した。国民健康保険公団や国税庁、雇用労働部など公共データベース(DB)を活用して全数調査した。
2011年以降就職率が67%以下に落ちたのは今回が初めてだ。特に、2014年(67%)から2015年67.5%など上昇傾向にあった就職率が今回再び減少傾向に転じた。就業者の中で健康保険の職場加入者の割合は前年(91.1%)より低い90.3%である一方、フリーランサーは前年(5.8%)より上がった6.4%となった。

3人に一人・・・33%が17年12月末で就職できていない・・卒業時(韓国では2月が卒業で3月が入学です)でなく、年末時点でもこんなに大量に未就職だとその後彼らはどうなるのか?
就業者のうち6、4%がフリーランサーになっている点も韓国の特徴でしょうか?

不満社会?10(韓国2)

旧ソ連はスパイ網を利用してロケットや軍事技術を模倣できても、民生品を窃取するにはコスト的に合わないので乗用車ひとつまともに作れないままであったことを紹介しタコとがあります。
韓国が日韓条約以降日本に吸い着いて民生技術を移転する戦略で成功してきました。
大手企業の大規模製造技術であれば日本の技術者数十名を高給で招いても、それによって何十億単位の生産が軌道に乗れば採算が取れましたが、町工場レベルの小規模部品製造技術(金型その他すり合わせ技術・最先端技術・新幹線の先頭部のラインは手作業の叩き出し・板金?技術で叩き出されるとどこかで読んだ記憶です)は窃取するにはコストが合わなかったし、そもそも当時手作業の熟練工の技術をデータ化する技術がなかったので窃取・技術移転対象にならなかったのです。
千葉で時々表彰される中小企業の表彰内容を見ると、技術工程に工夫を凝らしたなどの内容です。
日本の旧来型中小企業は単なる大手の下請けではなく工場生産に馴染みにくい人手の必要な部分で生き残ってきたのですが、韓国の工業化は外国技術導入の可能な大量生産・様式化された部分から始まっているので親の代から受け継いだファジーな技術を持っている零細企業が皆無に近い点がおお違いです。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ojjams/29/2/29_325/_pdfで日本の自営業が失業の受け皿になっているかの検討をしていますので、このブログのテーマに関係ある限度で一部引用しておきます。
日本の自営業に関しての上記論文意見はこのシリーズのテーマと関心方向が違うので、論文からの引用は、論者の思考する意見方向とずれているかもしれないのでその点はご容赦ください。

(受稿 2013年12月25日/掲載決定 2014年9月10日)

   仲 修平(日本学術振興会・関西学院大学)前田 豊(立教大学)

要旨
・・・分析の結果,失業率の上昇と自営ブルーカラーへの参入には関連が見られない一方で,失業率の上昇が自営ホワイトカラーへの参入を抑制する傾向が確認された.さらに,中小企業における就業経験は,自営業への参入を促進させると先行研究で指摘されてきたが,今回の分析結果では失業率が上昇すると中小企業からの移動が抑制される傾向が示された
(325p)2014, Vol.29, No.2:325-344

最終結論部分では以下の通りです。

第一に,日本における失業率の変動は,自営業への参入を促進しなかった.ただし,失業率は,自営業の職種によって異なる影響の仕方であることがわかった.具体的には,失業率は自営Bへの移動に対しては有意な影響が見られない一方で,自営Wへの移動に対してのみ有意な負の影響が明らかとなった.・・・日本では,他国におけるインフォーマルセクターが想定しているような参入障壁が低く,誰でも容易に参入できる類いの自営業ではないことが考えられる.その結果,たとえ失業率が上昇したとしても,自営業への参入が促進されないのだろう.(337p)

・・・韓国や台湾では自営業や家族従業者の比率が日本に比べて高く,日本の自営業とは逆にあまり熟練を必要としない自営業が多い(竹ノ下2011).加えて,韓国や台湾ではパートやアルバイトの規模が依然として小さいことを鑑みれば,自営業や家族従業者がインフォーマルセクターとしての役割を担っていると考えられる(太郎丸2013).一方,日本の労働市場では自営業は減少しているのに対して,制度の変更に伴ってパートやアルバイトなどの非正規雇用が急激に増加している.この現象はインフォーマルセクターの規模がますます小さくなっているとも読み取れる.つまり,日本の自営業が失業層を救う役割を果たさない理由は,他国が想定するような自営業ではないという根本的な理由に加えて,昨今の日本の労働市場では,「参入障壁が低く,参入しやすい就業先」は,インフォーマルセクターとしての自営業ではなく,非正規雇用がその役割を担っていると考えられる(339p)

日本が失業率増減と自営業増減の関連性が多くの国と違い、逆の関係性が多く見られるのは、「日本では,他国におけるインフォーマルセクターが想定しているような参入障壁が低く,誰でも容易に参入できる類いの自営業ではないことが考えられる.その結果,たとえ失業率が上昇したとしても,自営業への参入が促進されないのだろう」と説明されています。
技術伝承型自営業が多いので失業者があんちょこに開業できないということです。
これに加えて日本で非正規雇用・パートアルバイトが新たな受け皿になっている点を検討する必要があることが示唆されているのは、私にとっては新たな視点です。
韓国のいわゆる生活維持型自営業とは・・・日本でイメージする創業何代目の事業継承・・子供の頃から訓練された技術の裏付けもない元工場労働者やサラリーマンの中途退職者などが、一定のお金さえあれば簡単に参入できる飲食業などに参入する姿です。
このために誰かがメニュー等工夫しても、あっという間に真似されてしまうパターン・・あるいは価格競争による貧困競争が紹介されています。
フランチャイズシステムが発達してくると、本部が開業前訓練をしてくれるし本部の支給してくれる商品を棚に並べマニュアル通りに運営すれば済むので、以前よりも増して素人の新規参入・開業が容易になっていたようです。
アルバイトに最低賃金を払えないために家族が無給で働くようになっているので、結果的に自営業者の収入を時間給計算をすると最低賃金以下になっていると報道も出ています。
大手企業中途退職後の退職金元手に逃げ道としての自営開業ですから、自営業をやっていけなくなって廃業した場合その先の生活方法がありませんので、家族総出で最低賃金以下の収入を得るために店番をして食いつないでいるようです。
昨日紹介したように、年間の開業と廃業の度数では廃業率が89%に迫っていて、年間廃業が百万件というのですから、それでも年間約110万件の新規参入があるということです。
年間百万件の廃業と言えばその一家の収入源が、廃業後どうなっているか気になるところです。
失業保険がないので失業保険受給統計から漏れているのでしょうが、廃業前にすでに貯蓄を食いつぶしているでしょうから、生活費に苦しむ点では(10〜20年働いてリストラ失業の場合割増退職金ももらえるし、その間一定の貯蓄をしているのが普通です)者以上でしょう。
倒産・・仕入れ代金等は踏み倒せば終わり・・破産すれば債務の方は解決でしょうが、その後の収入をどうするかでしょう。
廃業目前の人も含めてこの苦しみ・・中高年リストラ後の自営開始が多いので廃業者の多くが中高年でしょう・・高齢者の自殺比率が半端でないし娘が売春婦等国外での稼ぎに出る原因になっているし、何か暴れても良いような不祥事をメデイアが煽ると枯葉に火のつくような大騒ぎになり易いのでしょう。

不満社会9(韓国1)

不満・ストレス社会化のテーマから余談に逸れましたが、製造業の自動化→非正規化の急進展、事務作業のIT化の進行によるホワイトカラーの早期切り捨てなどが日本より急速に進んでいるのが韓国です。
何ごともこれが良いとなれば、後先見ずに?ラデイカルに変えていく韓国社会ではこの変化に適応できない人のストレス蓄積が半端ではない・・いつでも発火点にありそうな雰囲気が伝わってきます。
いつも私が批判しているところですが、韓国では学歴エリート・秀才が国政を牛耳り過ぎている・・日本の政治家のように国民の草の根の声を聞く歴史経験がなく欧米の聞きかじり・観念論で政治をするからではないでしょうか。
4月6日日経新聞朝刊10pではサムスン電子の60%減益発表関連の記事・・・減益に関しては単なる一過性のものか将来的にダメになっていくかを論じるメデイアが多いのですが、日経もその一環で「機能偏重・コスト高・カリスマ不在」の副題・将来性も暗いと言いたいようです。
この中で、「韓国経済低迷で安定志向が高まり10年に7、8年だった平均勤続年数は18年に11、8年まで伸びた」と紹介されています。
最近リストラ年齢が切り上がってきた結果平均年齢が上がって来た=人件費の切り上がり・日本より大幅に安い人件費が競争力の源泉だったのに今ではトヨタよりも高くなっている・高コストになっている点が不安という解説です。
上記日経新聞記事によれば「30歳で肩たたき」という従来一般的だった評判・噂?は過去のものになっているようです。
肩たたきで退職してもその後の悲惨な状況(あんちょこな個人商店開業が多いようですが、多くはすぐに倒産する悲惨さが日本に伝わってくるほどですから)を学習しているので肩叩きに応じないで必死にしがみつく人が増えてきたようです。
30歳が34〜5歳に切り上がっても、その不安に耐えている人たちの不安ストレスは並大抵ではありません。
以下は2年ほど前の日経ネット記事です。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO15321100U7A410C1X17000/

韓国サムスン電子、勤続年数が6年連続増加 2017/4/17 6:30
「サムスン電子の平均勤続年数が伸びている。2016年は10.8年と6年連続で伸長。00年以降で最も短かった05年の6.0年に比べて1.8倍になった。
厳しい環境に耐えて長く働く社員が増える裏には、韓国で広がる経済格差と若者の安定志向がある。
最近は入社4~5年での退職が珍しくなかったサムスンにも変化がみられる。同社が公表した事業報告書によると、15年に平均勤続年数は10年を超え、16年も約半年伸びて10.8年になった。

この何年も肩叩きに耐えて(退職を1年でも2年でも先送りして)やめない社員が増えたのは、低迷する経済にあるようです。
https://japanese.joins.com/article/562/243562.html

韓経:韓国自営業者の「悲鳴」…今年は100万カ所廃業
2018年07月30日10時06分
[ⓒ韓国経済新聞/中央日報日本語版]
国家経済の毛細血管であり庶民経済の根幹である自営業が奈落に落ちている。無給家族従事者118万人を含めた関連従事者688万人で韓国の全就業者の25%を占める自営業がつまずき、所得主導成長を掲げた文在寅(ムン・ジェイン)政権になり雇用と所得分配はむしろ悪化の一途だ。
国税庁の国税統計と小商工人連合会などによると、今年廃業する自営業者は過去初めて100万人を超えると予想される。年間開業数比の廃業数で示す自営業廃業率は2016年の77.8%から昨年は87.9%に高まった。今年は90%に迫るだろうというのが業界の推定だ。自営業者10人が店を開く間に9人近くが店を閉めるという話だ。

https://japanese.joins.com/article/485/238485.html

韓国に自営業者が多い理由(1) 2018年02月09日15時29分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
韓国は自営業者が特に多い。2017年現在、韓国全体就業者2656万人のうち25%の675万人が自営業者や無給家族従事者である非賃金労働者だ。賃金労働者は全体就業者の75%だ。
無給家族従事者は18時間以上にわたり家族が経営する事業体で報酬を受けずに仕事をする人を指し、約110万人となっている。無給家族従事者は広義の自営業者と見ることができるため、自営業者の数は600万人を超えるとみてもよいだろう。
ギリシャ、トルコ、メキシコ、イタリア、ポルトガル、ポーランドなどが韓国とあわせて自営業者の比重が先進国平均の2倍ないしそれ以上の水準を示している。
・・・・自営業者はさまざまな理由と形態で存在するため、国別の自営業者比率の違いを一律に説明することはなかなか難しい。
にもかかわらず、既存の研究は▼産業化の程度が不十分▼労働市場が柔軟ではない▼個人所得税や社会保障分担金が多い▼失業給与水準が低い▼租税回避の可能性が高い--などの場合、自営業者の比率が高いと報告している。
・・・所得税を納める人の比率が少なく、所得税率と社会保険料率が高くない韓国に上記のような一般論の適用は難しそうだ。
・・・・韓国に最も適用可能な要因は、租税回避の可能性が高いということだ。あわせて低い失業給与水準も関連のあるほころびだらけの社会セーフティネットに伴う生計型自営業の起業だ。

私の関心は上記意見の関心とは違い、日本の中小零細企業との本質的違いに関心があります。
日本の場合、家内制手工業から工場生産へ以降していく順次経過の歴史があり、いわゆる大田区等下町に残る手工業的町工場に世界のバイヤーが群がるイメージ・・・すなわち日本の将来の芽が凝縮するプラスイメージです。
韓国の場合家内制手工業の経験がなく、いきなり財閥系への先進国技術導入で高度成長を図ったので、効率が良かったものの大手工場に納品すべき下請け町工場は存在しない・日本からの部品輸入に頼ってきました。
いわゆる圧縮経済の問題点です。

免責事項:

私は弁護士ですが、このコラムは帰宅後ちょっとした時間にニュース等に触発されて思いつくまま随想的に書いているだけで、「弁護士としての専門的見地からの意見」ではありません。

私がその時に知っている曖昧な知識を下に書いているだけで、それぞれのテーマについて裏付け的調査・判例や政省令〜規則ガイドライン等を調べる時間もないので、うろ覚えのまま書いていることがほとんどです。

引用データ等もネット検索で出たものを安易に引用することが多く、吟味検証されたものでないために一方の立場に偏っている場合もあり、記憶だけで書いたものはデータや指導的判例学説等と違っている場合もあります。

一言でいえば、ここで書いた意見は「仕事」として書いているのではありませんので、『責任』を持てません。

また、個別の法律相談の回答ではありませんので、具体的事件処理にあたってはこのコラムの意見がそのまま通用しませんので、必ず別の弁護士等に依頼してその弁護士の意見に従って処理されるようにしてください。

このコラムは法律家ではあるが私の主観的関心・印象をそのまま書いている程度・客観的裏付けに基づかない雑感に過ぎないレベルと理解してお読みください。