船内検査実施と感染症専門家の役割

厚労省としては政治判断が終わりいざ船内実施となれば、具体手順段階ですので(とはいえ船の近ずく2日程度の短期間での国際交渉と妥結などの小刻みな進展ですので、どれについても数時間か半日単位で即決していくしかない超スピード対応でしょう)この段階で感染症専門家のご意見をもらおうと現地参加をお願いし、事後検討会などでの有益意見開陳を求めたかったのではないでしょうか?
現地見学会?参加要請に対し彼は法の重要性(現=入国後検査に応じない場合のリスクの議論を知らないか、軽く見ている結果)設備上無理のある船内検査に踏み切ったことに対する批判的立場で批判材料を仕入れるために見に行った可能性があります。
そもそも彼に関するウィキメデイアでの紹介によると18日午前乗船、夕刻には下船しているというのですから、現場作業応援に行ったにしては時間が短すぎます。
戦力になるには船内配置やスタッフ分担、現状説明を受けるなど事前説明が必須ですが、午前から夕刻まででは説明を聞いて巨大な船内見学して周ってほぼ終わりで検疫手続きに忙殺されている関係者にとっては、説明案内等に時間を取られるばかりです。
専門家に最先端実務勉強チャンスを与えるつもりの見学招待だったのではないでしょうか?
6月13日紹介の岩田氏意見(3月12日インタビュー)を再引用します。

「専門家は結局、少し入っただけだった。日本環境感染学会の専門家も入ったが、結局はすぐ撤退してしまった。
入れ替わり立ち替わり専門家が入っているが、専門家がリーダーシップをとった対策づくりができていなかった。」

厚労省が後学のための専門家招待であれば、実質半日行程で入れ替わり立ち代わり来るのは当然です。
岩田健太郎氏が上陸後の完備した体制で検査をすべきという前提でこのような意見を主張していたとすれば論理一貫性がありますが、日本の法制度では当時強制隔離できる法制度がなかった前提を無視した考え方では、現実無視の意見として誰にも相手にされなかった可能性があります。
岩田氏は検疫官が感染したことを批判論拠にしていますが、隔離その他設備の整った、感染症者を受け入れるために特化したトップクラスの病院でさえ医療従事者や院内感染を100%防げない現実があるのに、上陸後検査より船内の方が安全であるべきという次元の違う論理で非難しているように読めます。
成田空港であれ各地方港湾の入国審査手続き設備陣容は、出先の臨時的施設であって東京横浜等先進地域のトップクラス病院以上の感染症対策が整った入国審査設備があるはずがない・・岩田氏は感染症専門家らしいのでこの実情を知らぬはずがないでしょう。
「二次感染が起きた」ことが、岩田氏の正当化論証のようですが、その後の経過・・長期経過で十分な対応時間があった・厳重な防護服、手袋着用等のマニュアル定着後の一般病院でもあちこちで二次感染が普通化していてこのため医療従事者の家族が差別を受けるのが社会問題になっているほどです。
世界どこも経験のない世界初・3700人ものクルーズ船対応について、何人かの2次感染者が出てもそれが大失敗の証拠にならないでしょう。
コロナ患者受け入れ施設では相応の体制が整っているから指定病院になっているのですが、それでも日本に限らず、医療従事者の感染リスクの高さが世界的問題になっています。
治療施設でもないクルーズ船(文字通り3密環境です)で3750人近くもの大量人員の検査を行うしかないとなれば、完璧でなくとも放置できない一定のリスク覚悟で行うしかないのが原則です。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/05/9-40.php

医療従事者の新型コロナウイルス感染は世界で9万人超=国際看護師協会
2020年5月7日(木)09時56分

以上感染のプロでない私が3月12日付岩田氏のインタビュウ記事を見たところ、クルーズ船内見学後帰路にツイッター発信、その後約2週間経過後なのでその間に起きた米国内グランドプリンセス号の処理があった後で、それと対比しての意見があるか?より具体化した再批判かな?として読んでみると、物足りないように見えます。
彼は米国感染症実務留学経験を持ってCDC基準を金科玉条にして?日本の実情批判しているかのようですが、実務というものは現場状況に応じた限られた設備と準備時間で最善を尽くすべきです。
彼が米国CDC基準に依拠した批判をしているとしても、この後で紹介するように日本の約1ヶ月後(3月4日避難命令〜5日サンフランシスコ沖停泊・入港不許可〜10日頃接岸)に発生した米国クルーズ船では、検査官が乗船して船内検査していました。
要は、現場状況に合わせて柔軟運用すべき基準であり、状況無視して画一基準を踏み外してれば批判し、それを外国人特派員協会で記者会見してしまう神経がおかしいと思います。
4〜5年前に受任した事件で大手企業で働いたことのある労働者が、地元の小企業に再就職していて、元の会社はではこうやっていたのに・・という不満ばかりというか自慢ばかり(書式その他大手そのままのやり方で小企業がやれるわけがないから小企業なのです)で同僚から浮き上がっているという話がありました。
岩田氏のインタビュウ記事は、米国クルーズ船がニュースになった後の3月12日付ですが、米国での実践を踏まえた意見らしいものが見当たりません。
米国の高度医療センターではこうやっていると言う基準をクルーズ船と言う閉鎖空間に3700人もいる極限状況下でしかも時間が迫っている環境・・・完璧でなくとも、先ずは対応するしかない局面でどうすべきかのリアルな場面に当てはめた現実的議論が必要です。
現場状況下での変則対応が適切か、臨機応変の対応が適切だったかの具体的議論が専門家の意見であるべきでしょう。
実務に直結する学問は、米国の最高設備基準に合わない点を批判していれば済むものではありません。

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