岩田氏の論法を前提にすると上陸後の処遇・・厳選して陰性、陽性、不明の3分類をして隔離可能なことを前提にしているように見えますが、収容施設があったにしても検査前には、感染後潜伏期間中の人と未感染者の区別もわかりません。
その上、入国後検査のため外国人を拘束し、羊のように思うままに隔離収容し検査受検を強制できることを前提にしていることになります。
しかし、武漢チャーター機帰国者の検査拒否は1月末のことであり、クルーズ船入港は2月3日で、検査拒否・移動制限待機要請拒否問題はホットな時でした。
日本政府の骨折りでようやく帰国できた恩義を無視して、検査拒否する人が出るとは驚いたものですが、まして自分の費用で大金を払って旅行に来た外国人が、100%約束を守る保障がありません。
承諾を得て入国直後に検査拒否してどこかへ行こうとするのを、どうやって拘束できるかです。
これについて岩田氏がどういう論陣を張ったのか・・重要論点に対する自身の立場を明らかにしていません。
もう1度引用します
「感染リスクが高いクルーズ船の中に14日間とどめ置いて検疫をするという判断を日本はした。その判断が間違っていたのかどうかわからないが、そういう選択をしたのであれば、船の中の感染対策は完璧にする必要があった。」
「その判断が間違っていたのかどうかわからないが」と何故か逃げているものの本音はそれが不満だったのでしょう。
分からないのではなく、「木を見て森を見ない」というか、「米国で習ってきたセオリー通りに対策を取らないのは間違い・低レベル」というステレオタイプ的主張にこだわったのでしょうか?
米国の立派な隔離施設や指揮命令系統を実態を経験に基づいて説明して日本が参考にするのは良いことですが、そのままにしないと遅れているとの批判をするのが良いかは別次元です。
日本法制の特殊性・・国家権力が弱く原則として先ずは「国民の協力お願い」・現場応用力に頼るしかない国柄・社会意識を前提とすると、米国のように何かあると強力な司令塔を立てて、一糸乱れない統制下で断行すべきかは別問題です。
(米国映画で見た知識で恐縮ですが、事件現場では、現場指揮官の旗が立てられるといろんな救急部隊が集結してもその場の現場指揮命令は全て指揮官の命令に統一され軍事作戦現場のような運用でした)
米国ほど極端でないにしても西欧諸国では、何か事件が起きると日本のように自粛〜個々人の応用的自制に委ねるのではなく画一的な戒厳令や外出禁止令→刑事罰とセットの規制が行われ、警官や軍人が物々しく検問する・要するに軍事作戦形式が主流です。
要するに民主主義といっても一時的軍事支配に戻る仕組みと一体になっているのです。
西欧思想家がいきなり人権などと言い出した底の浅い歴史によるのではなく、古来からボトムアップ・衆議で決めてきた地についた個々人の考え方重視社会との違いです。
西欧の価値観を露骨に体現している米国では、コロナ対策を防疫「戦争」と表現するなど、大事件があると?何々戦争にしたがる社会です。
https://www.technologyreview.jp/s/201103/if-america-is-at-war-with-covid-19-its-doing-a-bad-job-of-fighting/by Mike Orcutt2020.05.18
・・・・ドナルド・トランプ大統領は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のアウトブレイクを「目に見えない敵」による「侵略」と呼び、自らを「戦時下の大統領」と何度も呼んできた。ホワイトハウスが広く伝えようとしているメッセージは明確だ。つまり、米国は新型コロナウイルス感染症と戦争中である、ということだ。
新型コロナウイルス感染症との戦いを戦争に喩えた政治家はトランプ大統領だけではない。3月17日、マサチューセッツ州のエドワード・マーキー上院議員はボストングローブ(Boston Globe)紙に署名入りの論説を共同執筆し、「マンハッタン計画型のアプローチ」(マンハッタン計画は第2次世界大戦中に米国が主導して実施した原子爆弾開発プロジェクト)を採って、人工呼吸器、防護マスク、検査キットといった不可欠な医療器具の全国的な不足に対処する必要があると呼びかけた。・・・・
トランプ大統領が新型コロナ対策に国防生産法を発動、マスクと人工呼吸器の増産を約束
トランプ大統領が新型コロナ対策に国防生産法を発動、マスクと人工呼吸器の増産を約束
2020年3月19日 by Darrell Etherington
国防生産法の発動は、あらゆるハードウェアを製造する米企業に広範囲な影響をもたらす可能性がある。国防生産法は、何であれ国防に必要な物資の生産を優先させるために大統領に非常に幅広い権限を与えるからだ。大統領は新型コロナウイルスとの戦いに有益であると認めれば企業にその生産の優先を命じることができる。当面、国防生産法に基づく命令は人工呼吸器とマスクの増産に絞られるようだ。しかしこの権限は臨時の病院、診療所、またそれらに必要を機器を含め、緊急医療施設を新設することにも拡大できる。
CDCを理想とする考え方は、この方式を防疫戦争→戦争→一元的司令塔の強力権限を期待するイメージです。
日本は強権で抑え込む社会でないし、米国流強権政治そのままを理想化されても困ります。
草木が自然環境の中で育っているのと同じで、個々の法はトータルの法制度・社会の価値観の中にあります。
戦争中の軍司令官のような権限を持つCDCの仕組みを作れば良いのではなく、社会全体の法意識との整合性が重要です。
岩田氏の影響か?コロナ禍初期には米国CDC体制が如何にすばらしいかの賞賛記事があふれ、日本には防疫専門組織がなく指令系統がない・・岩田氏の表現によればグチャグチャという批判が溢れていました。
その勢いを利用して安倍総理が果敢な政策を打ち出せない混迷・指導力不足(お願い・自粛ではどこまでして良いかわからないとか、ズルイという形)の批判が溢れていました。
岩田氏のツイッターや記者会見が安倍政権のコロナ対策批判勢力に対する格好の火付け役になって?安倍政権がお願いばかりなのは、政治責任回避のためというイメージが流布していました。