豪華クルーズ船対応批判3

船内検査を選択したから膨大な感染拡大が生じたというのが岩田氏の立論のようですが、彼の論理によっても厚労省統計を見ると現時点でも、クルーズ船感染者数が712名に過ぎず、かつ予定されていた横浜市内病院で一箇所で全員収容できている様子で行く先がないというトラブルが報道されていません。
以下厚労省発表データです。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11879.html

新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年6月15日版)
3月15日、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客のうち、船内で14日間の健康観察期間が終了し2月19日から23日にかけて順次下船した計1,011人の方への健康フォローアップが終了しました。
【6月14日24時時点の状況について】

表の引用できませんが、PCR検査陽性は712名となっています。

※1 那覇港出港時点の人数。うち日本国籍の者1,341人
※2 船会社の医療スタッフとして途中乗船し、PCR陽性となった1名は含めず、チャーター便で帰国した40名を含む。国内事例同様入院後に有症状となった者は無症状病原体保有者数から除いている。
※3 退院等している者655名のうち有症状360名、無症状295名。チャーター便で帰国した者を除く。

陽性判明次第即時入院させていたし、当初人数が大したことがなかったので医療施設不足で下船させなかったのではありません。
もっとも感染の有無を問わず3700人全員を一まずホテルに収容するのは武漢からのチャーター機のように少数者をホテルに収容するの違って、大量受け入れ可能な民間施設がないので無理だったでしょうが、岩田氏は医療施設に限定しています。
医療施設であれば、発症者から順に受け入れれば少数で済むことです。
岩田氏は、問題にならなかったことを問題であったかのように主張し、(そこから船内対処の方が完璧にできるかのような主張で押し切った勢力(厚労省官僚)があったかのようにイメージさせた上で、船内検査の方が良いという以上は)完璧であるべきという結論を導いているようです。
上記を見ると当時問題であったのは、感染していてもコロナの症状が出ない(潜伏期間が約2週間と言われていた)状況で、潜伏期間中の人や未感染者などの分類作業をするために必要な一定期間の待機場所・ホテル等の手配可能性と乗客の内どれだけが検査やステイに応じるかの問題だった可能性が高いでしょう。
岩田氏は、感染症対応医療機関のキャパシテイ不足を主張しながら流石に問題があると思ったのか周到に「最初のジレンマ」と言っていて、本来のジレンマがあった逃げ場も用意しながらそれを伏せたまま議論を自己の主張の正当性化に進めていくようです。
本来のジレンマでないことを論争点に持ち出して、その議論の結果船内検査に決めたならば乗客のためにより良い医療サービスを目指すものだという前提を読む者にイメージさせます。
「その判断が間違っていたのかどうかわからないが」と言いながら「そういう選択をしたのであれば、船の中の感染対策は完璧にする必要があった。」と言い切ってその後の論理を進めています。
下船させて検査するか船内検査かのキャパシテイの優劣を競うだけならば上記のように、発症者優先で近隣指定病院搬送したりできる範囲で分散入院させたり、船内に一部残したりする手間暇を惜しむかどうかの違いに過ぎません。
一律外出禁止令でなく自粛要請の場合、個々人や業界ごとの工夫次第で3蜜を防ぐ工夫が生まれるるのと同じで、物事は現場工夫力が重要です。
彼は米国留学によって、米国式感染症対策を学んできたのが「売り」でしょうから、欧米式に個人工夫を禁止し、社会的にはロックダウン・・個々人の事情や工夫余地のない上からの一律強制とそれを指揮する米国CDCのような司令塔が存在しない日本の厚労省指導体制がバカくさく見えたのでしょうか?
古代から現場力重視・ボトムアップ社会の日本社会では、強力な司令塔を設置して個々人努力を積極禁止するロックダウン政策は国民性に合いません。
岩田氏のいう「最初のジレンマ」とは「ジレンマ=両立できない相克」ではなく、素人の私が数秒読んだだけでもすぐに思いつくように、発症程度等による優先検査順位や分散処理する手間さえかければ良いのでないか?
その場合どういう問題が生じるかの事前予測と準備の問題ではないでしょうか?
そんな程度のことはジレンマとして議論にもならないし、現場におろしていけば司々で普通に処理していく普通の準備行為ではないでしょうか?
そんなことを準備会議で大げさに主張しても、議長は「そうだね現場からの相談には丁寧に応じる必要がある」程度で応じて「丁寧にやってください」程度の指示を事務方にして、議長は次の重要なテーマに移っていくのが普通です。
・・岩田氏はちょっと工夫すれば良いことを工夫の余地がないジレンマと理解し二択しかないと思い込んでいたのでしょうか?
昨日紹介した岩田氏の主張を読むと岩田氏は米国留学で得た知識を前提に米国ではCDCという強力な司令塔があるのに、日本にはなく指揮命令系統が「ぐちゃぐちゃ」だという批判精神が先立っている印象を受けます。
専門家でない厚労省官僚が仕切っていることに対する批判が結論として重視されているような表現になっている印象です。
岩田氏が考えるように、キャパの比較が重要テーマであったとすれば、(彼はそれを「最初のジレンマ」と称して議論のテーマが他にあったことを示唆しながら他のテーマを紹介しないまま、キャパの優劣論だけを議論の正統性の根拠に持ってきた議論を展開しています)の主張通り下船→陸上での受け入れより船内検査の方がより良いものである必要が論理上出てきそうです。
ただし「陸上病院以上であるべき」という主張が限界で「完璧」を要求するのは論理飛躍があるでしょう。
岩田氏のいう「最初のジレンマ」しかテーマが(2番目以下のテーマが)なかったにしても、世の中に完璧なシステムがあるのでしょうか?
いろんなシステムあるいは製品も研究も試作品→製品化→現場利用によるフィードバックによって日々改良されていくもので世に出る当初から完璧でなければならないというものはありません。
岩田氏の生きている医療分野でも医薬品に限らず、医療機器あるいは医師の技術そのものに至るまで、医師になった以上完璧であるべきと言えるでしょうか?
岩田氏自身医師資格を得てからあちこちで研鑽を積んで現在があるのであって、取得時から現在の能力を持っていたとはいえないでしょう。
クルーズ船内という特殊環境下で、しかも3750人近くにも及ぶ大量検査を初めてする以上、何が完璧かの定義自体が意味不明です。
その点は措くとして、そもそも船内検査選択したのは、下船後検査環境以上の検査設備・体制があるという理由で決めたのであれば、陸上受け入れよりも環境が良い前提になるべきですが、そもそもそういうことは議長が「わかりました下船の場合には事務方に指示しておきましょう」程度で次の議題に移れば良いレベルなので本来の議論対象・テーマではなかったのでないか?
違ったテーマで船内検査が決まったのにこれを意図的に隠して論点すり替えしてるのではないか?
善解すれば、先決重要論点を理解できなかったかの疑問です。
「最初のジレンマ」といいながら2番目以下のジレンマに触れないで「最初のジレンマ」だけを前提に批判するのが不思議です。
上記の通り、キャパ優劣問題であれば多様な解決策が可能であった=ジレンマでなく工夫レベルの問題であったので、仮にジレンマという二択のバーターになるべき選択テーマがあったとすれば、別次元のテーマがあったからではないかと私は思います。
すなわちその時のテーマは下船後外国人が検査拒否あるいは滞在拒否して国内観光に出てしまった場合どうするかが、重要テーマだったのではないでしょうか?
クルーズ船ダイヤモンドプリンセス号入港は2月3日で、直前1月29日に武漢からチャーター機で帰国した邦人が政府の用意したホテルでの滞在要請も検査要請も拒否して帰ってしまった例を6月11日に紹介しました。
このころの報道ではチャーター機救援に当たっては政府は、救援対象者として、帰国後の一定期間隔離(三日日ホテル全員収容)と、感染検査を受けることの承諾を得た人限定で帰国希望募集していたと報道されていました。
それに応じて承諾書に署名(多分署名をとっているでしょう)したのに?帰国できた途端に法の根拠がないことを理由に?検査協力を振り切って帰宅してしまった人が2名出たという報道でした。
このように見ると日本の官僚の用意周到さに驚くばかりです。

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