公務員と民間との違い1

任命と民間就職の違いに戻ります。
現在政治でも、大臣就任要請を断るのは、岸田氏のように禅譲期待を前面に出して現政権に協力するが、今は禅譲に備えて体力・党務に注力したいなど、特別事情をうまく説明して円満にお断りしない限り原則として総理の座を争う意図と見られるので石破氏のように反主流転落・干される覚悟で閣外に出るのが普通です。
産業革新機構では理事に総辞職されて次の理事補充が出来ない状態らしいですが・・辞任する人たちはもっとマシな仕事があるという意思表示でしょう。
政治闘争から離れた官僚の場合、民間との人材獲得競争・・競合・市場競争があるので、結局は、待遇比較・仕事のやりがい次第となります。
古代以来民間職場の未発達な時代には最高権力者が最も良い生活ができる・・ひいてはその周辺もこれに準ずる良い生活ができる・・権力トップに近い順位ピラミッド型の社会が形成されていたので企業で言えば、どうせ何かの職務提供を受けるならば大手企業に就職した方が良いのと同じ発想で、政府が任命してくれれば従前官位との比較次第で喜んでお受けするものだったでしょう。
だから任命制度でなんら痛痒を感じなかったからでしょう。
今後民間との人材獲得競争になってくるときちんと歴史を振り返り修正すべきは修正していく必要があるでしょう。
戦後官尊民卑思想が薄れて来たせいか?国民主権意識の浸透のせいか?待遇も国家の主人である民間に劣る傾向が出てきました。
こうなると、市場原理を無視できなくなりますし、任命しても人材が応じないリスクが生じるでしょう。
公務員試験が遅く民間の採用の方が早いと優秀人材が高給で先取り囲い込みされてしまう問題が平成に入った頃から我々法曹界では話題になっていました。
政府は労働基準法でいう使用者(事業者)ではなさそうですが国民の方は就職先の一つとしか考えていない人が増えてきました。
政府は使用者でないという違いは、臣と民間・対等者間の労働契約との違いの歴史に行き着きそうです。
ここまで素人の思いつきを書いてきましたが、以下紹介する論文はその違いを書いているようですので一応一部紹介して起きます。
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2009/04/pdf/042-049.pdf

特集 : その裏にある歴史
なぜ国家公務員には労働基準法の適用がないのか あるいは最大判平・17・1・26 民集 59 巻 1 号 128 頁の射程 渡辺 賢 (大阪市立大学教授)

ちょっと読んで見る限り(時間がないので全部読めませんが)では戦後法制の変化を追って説明しているだけで戦前からの民間雇用と政府雇用の違いの歴史・・過去の法制・・精神構造の変化に関する説明がないように見えるのが残念です。
戦前思想を断ち切った法にした以上は、現行法の解釈だけで済むということでしょうが、ものごとには歴史があります。
労使であれ夫婦(離婚騒動)であれ親子(意見相違)であれ兄弟(相続争い)であれ、上司と部下(パワハラ)であれ全て内部関係は対立をはらんでいます。
なぜ公務員に労働法規が不要か?別立てにする必要があるかの実質的説明が欲しいものです。
もともと労使の自由契約に委ねると強い方の企業・使用者有利に偏りすぎて労働者の健康すら守れないので、最適基準を基準を守らせるために労働法分野が発達して来たものです。
政府官僚になれれば最高という意識・・公務員の勤務条件が最高であり到達すべき模範の時代には、民間労働基準の底上げなどの到達目標で良かったでしょうが、国民の方もお役人さま並みの待遇が最高の待遇ですから、それで良かったのです。
役人には昔から恩給制度があり、があり高齢化しても心配ないし・・これの民間版が年金制度でした。
以前どこかで書きましたが世襲制の家禄に変わるもので家禄に比べれば一代限りで条件低下です・民間従業員には昔から世襲制がありませんでした。
今は到達目標ではなくなって来ました。
教職員も憧れの聖職でなくなって久しいものがあります。
こうなってくると教職員の勤務時間が長すぎないか、官僚が深夜まで翌日の国会答弁資料作りに追われているのはおかしいという議論になってきます。
国家公務員法にも個別に書き込んだりするのではなく公民と民間労働者統一法にして国家公務員や地方公務員等に特有の例外が必要な分野、・・例えば警察官や消防あるいは自衛隊法などで、その法律ごとに書き込んでいく特別法形式にした方がスッキリする印象です。
その前に官僚.教師を労働者というのか、政府を使用者というのかすら決まっていないので、これらの統合概念創作の必要があるでしょう。
大規模寺院で修行僧は早朝から草むしりや掃除等に明け暮れるのですが皆無償で修行と名がつけば時間制限なくて良いのか・医師はどうなるか、神主さま初詣客のために寝ないで頑張っているようですが?
〇〇法人に就職している若手弁護士の働きぶりをみると労働者に限りなく近づいているイメージですが、労働法の適用がいらないのか?
労働とは労して働くことでしょうが、官僚や医師、弁護士、教師は労働なのか?まして賃労働なのかとなると難しい問題です。
労の意味は第一義的には「いわゆる骨の折れる体の動き」を基本としてそこから発展したもので頭脳活動との対比で成り立つ言語です。
人間の働きには知恵を使うのと労力を使うのが対照的にあり、その他中間的には「気働き」というものもあります。
いつの頃からか?医師であろうと弁護士、教職員学習塾、予備校の先生であろうと漫画を描く人であろうと頭脳活動か肉体活動かに関わらず、雇用(これ自体一定の色付のある単語ですが・・)される人を労働法で保護しようとするために?知と労の2種類共通語として「知的」「労働」という対立概念をくっつけた単語が一般化してきました。
被雇用者保護の必要性という意味では、オーバドクターも研究所の守衛も土工も共通性があることから生まれた熟語でしょうか?

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