プロの判断と司法審査(伊方原発)1

昨日から書いてきたように一定の危険・可能性がある前提での漸次縮小が国民総意とすれば、可能性があるだけで停止を命じたとすれば司法権の乱用になります。
NHKニュースのまとめ方が正しいとすれば専門家で構成される委員会審査結果を素人の司法権が否定するもののようですが、その否定根拠がどうなっているのか具体的記述次第です。
まとめ方によっては誤報道の恐れがあるので、NHKが独自にまとめるのでなく、ニュースの方法としては、「停止仮処分が出た」程度の客観的事実報道にとどめ、解釈にわたる部分は解説・・NHKの意見として分けて書くべきでしょう。
裁判所の重要判断の場合決定要旨など文書配布が行われるのが一般的ですから、・・要旨が仮に10pあってもPDF等でそのまま配信公開が簡単ですので、NHKの解説・決定の読み方が正しいかどうかは読者の判断に委ねるべきではないでしょうか?
決定書が公開されていないのですが、昨日紹介したニュース記事では、NHKが鉤括弧付きで出している部分は決定書自体の引用でしょうから、この限度で推論が可能です。
「地震を引き起こす活断層がある可能性を否定できない」という文言を見ると可能性が否定できないだけで停止を命じることが許されるかの議論となります。
危険性には抽象的県と具体的危険の二種類がありますが、決定では「具体的な危険があるとして、」と具体的危険があると認定したとも紹介しています。
この紹介によれば、原発事故以降にできた新ルールは具体的危険があるかないかで停止するか否かの結論が決まることになっているように理解できます。
そうとすれば、具体的危険が認定されたので停止決定されたというニュースは、一見決定理由を紹介しているように見えて結論の言い換え・同義反復に過ぎないことになります。
新ルールは「具体的危険があれば運転を認めない」となっていたとすれば、規制委員会の運転開始判定は具体的危険がないとしていたはずですから、国民が知りたい点は、なぜ今回結論が変わったかの点でしょうから、具体的危険があると判定したというだけでは決定理由の紹介になっていないことになります。
新ルールで、「活断層から何キロ以内は具体的危険があることにする」と、画一的に決まっている場合そのルールを紹介し「活断層からの距離測定方法にこういうミスがあった」と指摘すれば済むことです。
2〜3キロの幅の誤差範囲は慎重審査という場合には、プロの経験的裁量の幅が広がり、プロの直感的判断を否定するのは司法権の行き過ぎとなります。
どういう場合に具体的危険があると言えるかの認定ルールが定まっていると仮定した場合・・例えば「活断層から何キロ以内」というルールが設定されていてそれに該当するのに〇〇の計測ミスで3キロあるとしていたのが2キロしかなかったというならそのルールと計測ミスの内容を紹介すればスッキリしますが、これらの説明がないので上記決定がどういう理由で規制委員会と結論が違ったの不明のままです。
ただし、続けて決定理由として「四国電力は十分な調査をせず、原子力規制委員会が問題ないと判断した過程には誤りや欠落があったと言わざるをえない」と指摘しました。
と引用しています。
ここで根拠を具体的に書いたつもりでしょうが、「十分な調査をしない」というだけでは、何をすれば「十分」なのか水掛け論的紹介にとどまっています。
一見決定根拠を書いているように見えるものの論証過程を省略しているので「結果」部分の引用に過ぎず、どういう論証がおこなわれた結果「十分な調査していない」と判断したのか、どういう「判断過程に誤りや欠落があった」かの事実紹介・掘り下げがありません。
「十分な調査していない」という根拠説明も、規制委調査が十分でなく裁判所決定の方が正しいという自己撞着の説明にすぎず、国民が知りたいのはどちらが十分でない調査をしたかの具体的根拠です。
いわゆる説明責任の問題ですが、一人二人のプロでなくプロ集団の決めた調査方法が、十分でないというにはそれを主張する方が言いっ放しでなくどこがおかしいかの説明責任があるというべきでしょう。
裁判所はその説明を書いていると思われますが、論証過程の短文要約は無理があるのでNHKはそのままの引用にとどめたのでしょうが、それでは決定根拠不明のままです。
決定には当然図面等利用の詳細検証過程が書かれているでしょうが、 NHKはこれの要約報道は要約ミス等のリスクがあると謙虚に考えて抑制したのであれば、ネット配信の場合紙幅制限がないので裁判所配布の決定要旨をそのままPDFで添付し、関心のある読者に直接読むチャンスを与えて自由な解釈に委ねるべきでしょう。
従来国民は難しいことは理解できないからと言う尊大な立場で事実そのものを報道しないで報道機関の解釈を事実のように報道する傾向が強すぎたのを、意見部分を抑制するようになっただけでも一歩前進です。
従来法律専門家しか判決や決定書書にあたれない状態でメデイアが一方的解説をする・素人は黙ってついてくれば良いというイメージでしたが、数ヶ月〜6ヶ月後に専門雑誌に印刷されて見られるよになって専門家が見れば約半年以上前の報道機関報道は判決内容を正確に伝えていなかったとしても、(日付や氏名などはすぐ訂正されますが)要約トーンが微妙にズレている程度では「人の噂も75日」でそのままでしたので世論に与える影響は甚大でした。
結論あるいは結論とほぼ同レベルの「言い換え根拠」紹介だけでは消化不良の感じを受けるひとが増えてきます。
例えば日経新聞朝刊最終裏面に何年か前から連載されている美術〇〇10選かな?例えばこの約1週間の連載は装束面からの、国宝級絵画の紹介ですが、聖徳太子像や伝頼朝像などを装束面からの掘り下げがあって面白く楽しみにしています。
このようにいろんな説のあることはすでに知っている読者にとってはその次の段階・どういう根拠でどういう違いがあるのかというところまで知りたい読者が増えています。
土曜の文化欄の連載これまでいろんな人が登場しましたが、本郷新氏や今は出久根氏かな?違った角度の堀下げが面白いのでこれも大いに楽しみにしています。
報道系の人も、読者レベルに合わせてもう一歩掘り下げた報道すべき時代が来ているし、PDF等でこれに応じられるようになっているのですから、適応すべきでしょう。

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