中朝・修正装置なしの体制5(脱北者)

今では、小金がなくとも、先進国へ行く片道のお金さえあれば、若者であれば現場労働など3K職場を嫌わなければ、いくらでも外国人向けの職のある時代ですから、出国後の生活不安は昔ほどではありません。
移動コストが安くなった現在国民を大事にしない政府になると、政権に結びついて利権のある人以外の裕福な、有能な国民から順に逃げていくし最下層労働者も少しでも労賃の良い国に逃げていきます。
こうしてみると取り立てた能力のない事務系中間層(国内でも転職能力の最も低いグループです)が逃げ遅れる印象です。
明治以降、(戦後高度成長期も同じですが)地主層子弟が、(太宰など)東京の大学に学び、一方で小脳自作農の次三男や貧農層から工場労働者や商店の小僧として農村を出て都会人になっていったのと似ています。
今や世界中で出国の自由があるのが原則ですが、これを制限する国は国民のための政治をする気持ちがないかあるいは、大事にする気持ちはあるがうまくいっていない自覚がある国だけでしょう。
将軍様の統治権世襲維持が第一で内政が酷すぎる自覚のある北朝鮮では人民に逃げられる危機感が強いので、国外脱出を厳しく制限している結果、いわゆる脱北者が生まれるのです。
規制のない国外脱出でも流れ着いた先での生活手段確保の予定・展望のないリスクの高い行為ですが、脱北者の場合見つかれば銃撃される危険を冒して国境の川を泳いで渡るなどするのですから、さらにリスクの高い行為です。
脱出成功してもその先での生活補償がありません。
女性の場合ほとんどが売春婦になるしか生き残れない実態のようです。
北朝鮮の国外脱出の現状です。
女性の人身売買の実態は悲惨ですが、引用しませんのでご自分で読んでください。
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-46914958

脱北するも人身売買で性労働に、女性2人が助け出されるまで
2019年01月30日
ウォン・スミン、BBC韓国語編集長
・・北朝鮮では、政府の許可なく国を離れることは違法だ。それでも、大勢が命を賭けて脱北しようとする。
南側の韓国には安全な避難施設があるが、国境地帯は厳重な軍備が敷かれ、あちこちに地雷が埋まっている。韓国へ直接逃げるのはほぼ不可能だ。
そのため、多くの脱北者は中国国境を目指して北へ向かう。
しかし中国では脱北者は「違法移民」と見なされ、当局に見つかれば送還される。ひとたび送還されれば、脱北者は「祖国への反逆」の罪で拷問され、投獄される。
1990年代の「苦難の行軍」と呼ばれた飢きんの間に、多くの国民が脱北した。この飢きんでは少なくとも100万人が犠牲となった。
しかし2011年に金正恩(キム・ジョンウン)氏が最高指導者に就いて以降、脱北者の数は年々減り、当時の半分以下となった。
国境警備の強化に加え、ブローカーたちが値段を釣り上げたことが、減少の原因だという。
本日現在の脱北者に関するウイキペデイアによると以下の通りです。
中国東北部に潜伏する脱北者は、30万人〜40万人と見積もられている。2009年の中国への脱北者は2万5千人〜3万人。4割は中国にとどまるが、6割はベトナムやモンゴルなどの第三国に渡り、うち女性の大半は売春婦になる。人身売買に関する2009年の米国務省報告書によると、脱北者の8割が人身売買の犠牲になり、大半が売春させられたり中国人の妻となる。妻が不要になった夫が別の男性に転売する事例も起きている。脱北を商売にする仲介業者は少なくとも150人ほど存在しており、ほとんどが朝鮮族とされる
中国政府は脱北者を難民(保護を義務づけられる)とは認定せず、不法入国者としている。本来は国連の難民条約33条には、「難民を迫害の待つ国に送還してはならない」という規定があるが、中国は「中朝間に難民問題は存在しない」、「経済難から国境を越えたごく少数の朝鮮の不法越境者がいる」という立場である。これは長年の友好国である北朝鮮との関係も考慮した措置である。
中国警察に摘発された脱北者は北朝鮮へ強制送還されている。北朝鮮では許可のない出国は厳しく禁じられており、強制送還された人々は死刑を含む厳しい処罰を課せられる。拷問など非人道的行為が数多く伝えられており、脱北者を強制送還する中国政府に対して国際社会から厳しい非難が寄せられているが、中国政府は脱北者に対する姿勢を改めていない。難民と認定して脱北者が急増すると中国東北部に混乱が生じかねないことと、北朝鮮の体制を揺るがしかねないためである。

中国が脱北者送還に協力しているのは中国も近い将来国外移住禁止強化(米ソ冷戦時代の東側諸国では国外移住禁止が原則でしたから、ソ連とは独自路線主張の中国の場合(制度的には北朝鮮同様であるが開放政策以降、出国許可の運用を緩くしているだけかもしれません)に転じた時のために「お互い協力し合いましょう」という実績作りが本音でしょうか。
韓国の場合も、兵役義務を果たしていないものには、国籍離脱の自由を認めない法律があると(真偽不明ですが)聞きます。
子供の頃から日本にいる在日は当然徴兵されていないので、結果的に国籍離脱をできない・・子供の頃から日本にいる在日に、ある日韓国から徴兵招集命令が来ると韓国へ行って兵役に服さねばならないという説明です。
これでは韓国が日本攻撃要員として在日を仕立てると、日本国内の在日がある日突如韓国兵として、日本攻撃・テロを始めるのか?
在日は危なくて仕方ないというイメージ主張がされていました。
要はそんなに日本が嫌いなら出て行ってくれという主張の一環です。
国籍離脱の自由が憲法に明記されている日本でも、合理的範囲の離脱条件を付することは憲法上可能でしょう。
いろんな組織脱退の場合、会費未納その他の義務を果たしてからの脱退を認めるのと同じで「国民の重要な義務である兵役の義務を果たしてからにしろ」という条件づけは不合理とは言えないでしょう。
組織秩序違反行為で懲罰対象になっている最中に任意脱退や退職申し出があってもその審理期間中の脱退や辞職を認めないのが一般的です。
このように国籍離脱に条件があること自体は先進国でもありうることでしょう。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC