以下は、サムスン研究論文一部引用です。
https://www.ide.go.jp/library/Japanese/Publish/Periodicals/Ajia/pdf/2006_03/01.pdf
韓国半導体産業の技術発展――三星電子の要素技術開発の事例を通じて――吉 岡 英 美
・・・三星電子は,DRAMの次世代製品開発(注2)の側面でも,16M(メガ=100万)世代で先行する日本企業に追いつき,1992年に開発に成功した64M世代以降,開発を先導する立場に立つようになった。
・・・微細化の過程では,前世代の技術では対応できない限界にぶつかることが常であり,これをどのように克服するかが開発課題になる。
既存の技術の応用で対応できなければ,新しい技術を創出してそれを装置化することが必要になるが,後述するように,製造装置に体化される新技術のアイデアは基本的には半導体企業(以下,デバイス企業)の側から発せられ,半導体製造装置企業(以下,装置企業)から出されることはない
・・・・韓国において「組立型技術」の高度化と世界市場での急速なキャッチアップが実現し韓国半導体産業の技術発展したのはなぜだろうか。
加工プログラムを製造技術の要と見れば,NC工作機の製造技術の主な担い手はオペレータであるのに対し,半導体ではプロセス・エンジニアが製造技術を担っている・・・製造装置に体化される新技術のアイデアを検討する「技術ニーズの検討」を行うのは,これまでのところ,デバイス企業のプロセス・エンジニアに限られるという点である。
他のデバイス企業が開発に関わった既存の製造装置を導入して,装置企業が推奨するプロセスとレシピを採用し,自前で調達するのがオペレータだけであれば,そのデバイス企業は「組立型技術」しか保有していないといえる。しかし,「プロセス開発」や「レシピ開発」に自社のプロセス・エンジニアが積極的に関与していれば「加工型技術」を保有しているものと捉えることができ,また「技術ニーズの検討」と「原理実験」まで行っているのであれば,そのデバイス企業は新技術を自ら創出する能力を持っていると評価することができるだろう。
とのことで一般に言われている中韓等の新興国による「技術ただ乗り論」(ただし私の勝手な命名で上記論者がそのように言ってるわけではありません)をサムスンのDRM進化に関しては否定しています。
誤解のないようにさらにいうと、上記論文はサムスンのしかも特定DRM技術進化に関しての分析であって、韓国のその他製造業・・造船や製鉄あるいは車等々現在失速中の製造業いっぱんに関しては以下に紹介する服部論文が当たっている可能性があります。
上記論文で前提として紹介されている私の命名するただ乗り論は以下の通り要約されています。
韓国の工業化の構造を技術的側面から捉えようとした服部によれば,韓国において技術の先端化が可能になったのは,機械類の「マイクロエレクトロニクス化や「メカトロニクス」化によって,製品の生産に必要な技術・熟練のかなりの程度が機械設備のプログラムに代替されたため,その製品を生産する企業の側に技術蓄積や熟練形成がそれほど必要とされなくなったことが背景にあるという。すなわち,技術・熟練が蓄積されていなかった韓国企業でも,資金を動員して「ME」化された最新型の機械設備を先進国から輸入することで,当該産業に参入し急成長することができたのである[Hattori 1999;服 部 2001b]服 部は,このような産業発展のパターンを「技術・熟練節約的発展」と名付け,韓国ではその成長の過程で技術・技能的な蓄積がないがしろにされてきたことを指摘している。以上の議論は,後発の韓国企業が生産のための中間財や資本財を韓国国内で調達することができず,そのうえ生産に必要な技術的基盤がなかった状態にもかかわらず,その製品の生産を開始し世界市場で急速なキャッチアップを果たすことができた要因として説得力をもつ。
以上の通りですが、私の誤解に基づいて間違った引用をしている場合もあり得るので、詳しくは上記に入って直接確認ください。
サムスン自身が日米半導体交渉の結果、日本が技術革新意欲を失ったチャンスを生かし日本のベテラン技術者を技術顧問として招聘して手厚い指導を受けて自社技術にしていったのですから、政治の追い風を生かすかどうかは、長期的には企業の実力次第ということです。
日本のネットでは、欧米の反日攻勢に便乗してサムスンや韓国は「うまいことした」だけという一面的見方が主流ですが、上記によれば16メガバイト以降はサムスン独自の研究開発によるようです。
次の工夫ができるようになるまで日本技術者の努力・協力があったことは確かでしょう。
ただしこの成功は一般製造業と違って半導体・DRM産業の特殊性による(NCの例を引いて書いている箇所をちょっと引用しましたのでお読みください)ところがあるという分析ですので、サムスンがその他の半導体製造でもうまく対応できるかは別問題です。
6月1日に紹介したように、今後の半導体需要は非メモリ分野らしいですが、サムスンはこの分野ではほんの4%前後しかシェアーを持っていない・あまり得意ではないことがわかります。
サムスンが他のメモリ分野でも自前開発できる技術を持てるようになるかは、(今度は日本技術者の協力は考えにくいので)韓国人の総合民度によるでしょう。
日米半導体交渉妥結後も米国の脅威になるのは日本しかないという意味で、欧米によるジャパンパッシングは引き続き、いわゆる失われた20年と揶揄されていたのですが、リーマンショック頃から中国の台頭が目覚ましくなったので、米国は今度は対中パッシングの策を練り始めたようです。
昨日書いたようにアメリカはいつも腕力に任せて一方的強迫ばかりですから、日本に限らず世界中で恨みを買っていて敵を作って来たように見えます。
アメリカ式国際政治スタイルの延長で?新たな標的に対するために今度は手のひら返しで日本を大事な同盟国扱いに豹変したので韓国は戸惑っているでしょうが、プラザ合意以降約30年も欧米による日本叩きの潮流に安心して国内反日教育してきた手前、国民向けにどうやって方向転換して良いかわからない状態に見えます。
前朴大統領は前大統領(李明博)の始めた反日運動を継承するしない立場でしたから、就任当初から慰安婦騒動をさらに一歩進めたものの従来の日本政府と違って、安倍政権は安易な謝罪をせずに頑強にこれを拒否して来たので勝手が違ってしまい、しかも米政府の応援がいつの間にか消えてしまったのでやむなく日韓合意に応じました。
これが国民の怒りを買ったらしくあえなく失脚してしまい、このエネルギーを受けて文在寅大統領が政権獲得出来たのですから、彼が政権につくと日韓合意の骨抜きその他何か反日的行為をしないとおさまりのつかない状態+反米鮮明化するしかない状態で政権が始まりました。
文政権がアメリカの思惑無視で慰安婦問題の蒸し返し・徴用工問題の政治問題化とアメリカの意向をはみ出した南北和解に突き進むようになっている基礎状況というべきでしょう。