輸出→現地進出→現地生産→利益還流2

(誰も支持しないかもしれませんが昨日書いた)私の考える独自の発展ステージ論によれば、貿易収支黒字に頼らなくなりつつある日本経済は発展ステージが上がっているので、めでたい事実ですが、これをいかにもマイナスイメージで報道するのが大手メデイアでした。
従来の報道では、まず貿易赤字になるとこれを大きなテーマで書いていて資金還流によって補填できる構造になっている事実を言い訳程度にちょこっと書いていることが多かったのですが、昨日引用記事ではいつの間にか、(私の20年来の意見同様に)主客逆転した書き方に変わってきました。
現地生産・消費地直近での生産は経済合理性がある上に、フードスタンプ配布のような貧困国援助よりも現地人も職につける・生活力向上メリットが大きいので、国内生産は国内消費に必要な限度に落ち着かせ、国内需要に必要な食料.資源等の輸入代金等は現地生産による収益で賄うのが国際正義上も合理的です。
その先に進むと、収益が外国に収奪される仕組みが不正義だという国際議論が起きてくるリスクを15年ほど前に国際平準化論シリーズで書いたことがありますが、ここでは省きます。
さらに海外生産が進むと日系企業の逆輸入が増えて、国内需要分も輸入に頼る・貿易赤字化進行となるのでしょう。
私の発展ステージ論によれば、輸出製品生産に必要なエルギーや完成品に組み込むための資源輸入が不要となり国内消費に必要な限度になって行きますから輸入額も減っていきます。
内需に必要な限度の国内生産になるので、GDPは輸出用国内生産が減るのでこの分だけGDPが縮小するし、労働力も生産用からサービス産業向けに変わっていきます。
女性の地位向上という理念や政治運動によるのではなく、業態変化が女性の地位向上に大きな影響を及ぼすでしょう。
個々人で見れば、衣食住の最低生活を満たすのに必死の時期には、まず空腹にならずに済む生活費を稼ぐのが最重要でこのお金を稼ぐ人の立場が強いでしょうが、一定水準を超えると室内のしつらえやおしゃれな生活を営む能力の必要性が高まります。
日本の場合、急激な国内生産縮小は国内雇用のミスマッチになるため輸出用生産を段階的に減らしていったので、所得収支と貿易黒字双方の巨額黒字蓄積・・年間約20兆円弱で約20年間推移してきました。
一方で上記の通り生活水準向上に向けて内需拡大にも努めてきた結果、GDPが減少するどころか、じわじわと上昇してきたのが現実です。
メデイアは日本のGDP前年比アップ率が諸外国より低率であることを大変なことのように喧伝し「失われた20年」とイメージ主張し、いかに中韓の成長力が高いか・・中国が日本を追い越したか韓国が追い上げているとかの報道に終始してきました。
私の発展ステージ論によれば、GDP競争の段階を日本は疾うに卒業しているのですから、こんな比較は意味がないことがわかるでしょう。
食事をするにも空腹を満たす目的9割と雰囲気を重視するのが9割では生産高では大きな違いがでてきます。
庭の草花の手入れに費やす時間は至福のときですが、GDP統計では大した貢献度がないのでしょう。
今でもガムシャラに働いて成功した人が成功者としてメデイアで賞賛されますが、国家全体としてはこういう人も必要ですが、その人の人生としての意味ではまた別でしょう。
カリスマ的経営者のいる会社では、創業者に畏敬の念を持ってみんな接するでしょうし、対面する人もすごいですね!と賞賛することはあっても「いい加減に家庭を大事にしたら!」と忠告する人はいなくなるのでしょう。
GE元会長が日経新聞に連載した「私の履歴書」ではGE会長としてカクカクたる成果をあげた彼が、その過程で成功にこだわる彼を見限って別れて行った元妻のことを切々と書いているくだりがあります。
原稿依頼した新聞社の方は、いかにして成功したかの履歴を書いて欲しくて執筆依頼しているのでこれを受けた以上、まさか仕事一筋で人生失敗したと書けないものの、老境に入った彼としては、暖かな家庭を失った悔悟の念・・自分の一生はなんであったのか?の気持ちが滲み出す文章です。
GE会長より小型ですが、家庭より仕事という考えで事業成功をした人が老境に入って孤独をかみしめるようになったのか?30年ほど前に別れた妻子に会いたいという人がいます。
妻子の方はそれぞれ現在落ち着いた生活をしているので、(昔流行した言葉ですが)プチブル的平和を楽しむ娘らにとっては、父親がどういう父親であったかが重要で現在事業で成功しているかどうかは関係ないようです。
父親の方は成功している姿を娘らに自慢したいし、娘らはそんなことに価値を置いていない・・このギャップをどうするかで悩むのが私の仕事です。
私も後期高齢者になったので、80歳前後で人生の整理・終活?をしたい人がこの数年私の周辺で増えてきました。
ある家庭で消費する量や品質がその家庭の豊かさであり、飲食店経営者が、飲食店で消費する食材の量を含めた消費量が近隣の一般家庭より多くとも自慢にならないでしょう。
25日に書いたステージ④ランクになった国は、輸出産業が大量仕入れ(輸入)大量輸出しているので見た目にはGDPが上昇しているのですが、外形的に大きく商品が動くだけで自家消費量は少ない・内実が乏しい状態です。
脱サラ.創業直後は睡眠を削り家庭をそっちのけで頑張る時期があってもいいでしょうが、ある程度成功すれば、家庭や文化面に時間をさくように物事にはライフサイクルがあります。
前年度比売り上げ増での競争・・GDP比でランク付けするのは同じステージ④にある国同士の将来性のランク付けとして機能するでしょうが、この段階を卒業して次のステージに移行している国と比較する指標ではありません。
大規模輸入して大量加工して大規模輸出する国は一見活気がありますが、物流センターのように物流がぐるぐる回っているだけで内実が貧しいステージにある・・中韓等の経済段階というべきでしょうか?
あるいはレストランに顧客用の立派なテーブルがいっぱいあって一般家庭のダイニングルームより立派でも、店主一家が裏手の薄くらい汚い部屋で食事している場合、どちらが豊かか?ということです。
生産業で言えば、工場兼自宅で千〜数千坪の大きな敷地内で生活している場合、一見大きな塀に囲まれた中の主人一家ですが、実際の居住空間が狭い上に工場内なので騒音振動臭気など環境が劣悪です。
工場の国外移転は、工場と自宅分離の国際版です。
ちょっと東京の地名を冠した企業名を思い出すだけでも、石川島播磨、東京電力、東芝、カネボウ(鐘ヶ淵紡績)など企業名でも分かるように東京都内に多くの工場が混在していました。
中央大学や教育大学その他大手大学の多くも学部別に郊外へ移転しましたが、いまでは逆に都心回帰を目指す方向になっています。
これらの工場や大学が各地に出て行くことによって、東京が衰退するどころか逆に発展する一方です。
東京と地方を比べて、東京には生産工場がほとんどない・もう東京はダメだと思う人は滅多にいないでしょう。
1000万の都市人口を養うにしても、国外収益等の送金で生活する先進国都会・特に東京は清潔です。
いわば、室内で石油等を燃やす暖房の代わりに、遠隔地の火力発電で都会はクリーンエネルギーによる冷暖房を満喫する関係です。
企業オーナーも主力工場を地方に移転させても、首脳部の自宅は高級住宅街のある東京や(元は船場・道修町発のオーナーの場合)芦屋等に移転するのが一般的歴史です。
本社の集中する丸の内などは工場騒音等もなく従業員もおしゃれな街で働けるので昔から人気エリアです。
英国は19世紀に世界の工場を引き受けて煙の都ロンドンになり、日本も一時高度成長期世界の工場化して公害に悩まされましたが、この数十年では輸出するよりは需要地・現地生産化して、先進国は内需分中心に国内生産するだけになりつつあります。
・・日本は資源を輸入に頼るしかないので、まだ自国内の必要物資を買うための代金捻出のために輸出していますが、(この数年では貿易収支はまだ原則的に黒字・たまに赤字になる程度)将来的には自国にない資源や食料等の国内消費に必要な資金は海外生産による利益配当や知財・技術料収入等で賄っていく方にシフトして行くのでしょう。
こういう時代に進んでいるのに国内生産量の増加率・GDP増減率で自慢しあっているのは、数十年遅れの価値基準で売り上げ自慢しているようなものです。
成金がいかに儲けたかを自慢し、下品な調度品を自慢し合っているような世界を、メデイアがいつまでも重視するのか不思議です。
企業は自国政府の保護(産業育成)を背景にして大きくなっている内弁慶ではなく、自国政府の後押しのない海外生産で利益を上げられてこそ世界でやっていける企業というべきです。
海外進出してうまくいかない企業しかない・・輸出で黒字を稼ぐしかない国って、実質競争力が弱くないですか?
韓国現代自動車は長年の自動車輸入規制によって、国内独占を利用して法外な?高価格で国民に売りその儲けを原資にして国外で安値販売しているパターンでした。
これは4〜5年前だったか?に米韓FTA協定によって米国製あれば高関税をかけられなくなったので、日系その他が米国生産車の投入が可能になりました。
米韓FTAによって現代自動車の国内利益が減少し、国外ダンピング輸出や現地進出原資がなくなるので、今後輸出や国外展開は苦しくなるだろうと当時言われていました。
ここ数年顕在化してきた現代自動車や韓国企業の苦境は、実はこの時に始まっているかもしれません。

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