外貨準備とスワップ2

私が日頃から書いているように中国が外資導入で成り立っていることは明らかで、(外貨準備の実質がない?)外資が中国の健康診断なしでも、闇雲に投資してきたのは中国の成長期待によるもの(20代の若者を雇用すればすぐ働けるのが普通)です。
この期待が薄れてくるにつれて体温計等のデータが外資にとっても欲しくなる状態になってきている・体温計や脈拍数、各種健康診断結果の公開を拒否したままでは、不安に感じる外資が増えつつあるのを無視できないでしょう。
5月13日の日経新聞朝刊6pに「中国マネーの巨象と虚像」という大きな見出しで、国際収支が怪しいというイメージ程度?記事が出てきました。
15年以降の国際収支発表によれば誤差脱漏が2000億ドルもあることを指摘しています。
項目記載であればその項目の動き等をある程度チェックできますが、項目不明なのでいわばブラックBOX化=チェック拒否です。
不明金が毎年二千億ドルもある・・企業でいえば収支不明金(収入源不明)が2000億ドルもある会計帳簿であったということです。
もともと項目別の数字自体が怪しいというのがもっぱらの噂の上に、もともとブラックボックスになっている数字が年間2000億ドルあるのでは、4〜5年の累積で約1兆ドルの誤差です。
中国贔屓が強いと言われる日経も国民関心を無視できなくなったのでしょう。
韓国経済に戻りますと韓国その他新興国の場合、内部の経理処理の透明性が低いのですが、その代わり自由化に踏み切った国では市場の反乱というか、投機筋の売り浴びせと隣り合わせのリスクがあります。
突如の大暴落が恐ければ日常的に透明な会計処理をしていればいいのですが、それはしたくないが暴落は嫌という得手勝手な論理です。
(エンロンだって粉飾に手を染めていなければ、いきなりの大規模倒産にならずに早めに修正できたでしょうし、仮に方向転換失敗しても小型倒産で済んだでしょう)
長期支配体制を確立していた独裁者がある日突然暴動の嵐が起きて一族皆殺しになることが多いのですが、これが嫌ならば国民支持が日々反映されるようにして選挙で負ければ退陣するシステムにしておけば大きなリスクを免れられるのと同じです。
大型スワップ協定を完成させて、経済データ不透明性行き過ぎに対する市場の反乱・通貨の売り浴びせをできなくすれば、市場是正機能が働きにくくなります。
デモが起きたら、必ずデモ隊の数倍のカウンターデモ動員協力システムを作ったようなものです。
デモの場合カウンターデモの方が多くても、正規のデモ参加者に損がありません・・規模が大きくて目立てば目立っただけメリットがあるでしょうが、投機筋の通貨売り浴びせの場合、買い支え筋に負けるとつぎ込んだ巨額資金が全部パーになるリスクがあります。
(普通は空売りですので、仕手戦に負ける・・想定通り下がらないと大変です)
デモ参加しただけで臓器的摘出されるのと同じ制度が為替市場にできたと言えるでしょうか?
市場の反乱は独裁国家で大暴動がいきなり広がるのと同様に急激ですが、ダムの決壊になる前に、経済指標公開によって徐々に投資家が手を引いていく結果、徐々に株価や為替が下がっていく方が合理的です。
自国通貨大暴落・・例えば(ベネズエラのように)自国通貨が5〜10割一挙に下がると輸入物価が5〜10割上がって国民生活が大変なことになりますが、数年かけて1〜2割の下落=輸入物価同率アップの場合、その間の輸出競争優位に立てた貿易上の利益の方が大きいので国民は不満を持ちません。
数年かけてじりじり下がる場合、その間の貿易上の利益の還元・・給与や残業が増える私企業も売り上げ増があるので、仕入れ代金や負債返済額アップにも耐えられます。
コントロールされた自国通貨安のメリットが大きいのでどこの国でも緩やかな通貨安誘導の誘惑があります。
中国も韓国も日本の円高逆利用の為替操作して輸出を伸ばしてきたと一般に言われますが、かといって行きすぎた大暴落は困るという実はきわどい線を歩んでいます。
こんな都合の良い際どい線を歩めたのは、韓国の場合日本による巨額スワップ保証があったから・・中国の場合、発展可能性がまだ高いという大方の想定に乗っていたからと言われています。
韓国の場合、スワップ保証がなくなるとうっかり為替操作・意図的にいじると下落が止まらなくなり本当の暴落の引き金になる危険を犯しかねないリスク隣り合わせになります。
そこで昨年秋には不景気下なのに利上げをせざるを得なかったのは、さらに景気を冷やす痛みを我慢してでも暴落リスクよりは良いという選択に至ったからのようです。
11日に紹介した日経の再紹介(引用部分は少し違います。)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38387840Q8A131C1FF8000/

韓国の外貨準備高は10月末時点で4000億ドル(約45兆円)と潤沢だ。ウォン相場も安定している。ただ、韓国当局は1997年のアジア通貨危機の際、資本流出で国際通貨基金(IMF)への支援要請を強いられたため、米韓の金利差には敏感になっている。
米国の9月の利上げ以降、外国人による韓国への証券投資は2カ月連続で純流出となった。10月は42億7000万ドル(約4840億円)の純流出。新興国株の世界的な調整の一環とみられるが、韓国銀関係者は「米国との金利差拡大の影響がないとはいえない」とみる。
利上げは減速感が強まる韓国の景気には重荷だ。統計庁が同日発表した10月の景気動向指数(15年=100、速報値)は、景気の現状を示す一致指数が98.4と、前月比で0.2ポイント低下した。マイナスは7カ月連続だ。利上げは景気をさらに冷え込ませるおそれがあり、30日の金融通貨委員会では2人の委員が金利の据え置きを主張した。

とあるようにマイナス傾向を強めつつある状況下での近来上げによって、さらなるマイナスになっても苦しいだけでなんとか乗り越えられるが、いきなりが暴落が始まったら取り返しがつかないから・・という意見が大勢を占めたということらしいです。
この辺の内情をhttps://shinjukuacc.com/20181123-01/は以下のように引用しています。

ハンギョレ新聞によると、韓国銀行の関係者は
「金利引き上げが景気に良くないとしても、0.25%の利上げが沈滞を招きはしない反面、外国人資本の流出は万が一起きれば深刻な問題になる」

と述べているようです。

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