アメリカンファーストと国際協調2

ちなみにPoliceの語源はギリシャ語のポリス(シティ)らしく、これは英語のポリテカル、ポリシーなどで知られるように、もともと日本語の「政治」を中核とする語源です。
オバマ発言の原文を知りませんが、仮に「ポリスをやれない」と言ったとしても日本語の警察官をやれないと翻訳するのは妥当かの疑問があります。
日本語の警察官は、政治思惑と無関係に(どころか政治的立場による一方に不公平な行動は許されていないでしょう)現状秩序維持機能にロボットのように特化した組織として教育され訓練された機関やその従事者を意味しています。
権力の犬と言って蔑む人もいますが、それは欧米の暗黒の歴史をなぞって言い募っているだけで実際に日本の歴史ではお巡りさんのイメージでわかるように身近な世話役です。
落し物を届けたり行先の道を聞いたり猿が出たと言っては追いかけますようなイメージではないでしょうか?
以上によればオバマが「世界のポリス」をやれないという意味は、政治目的実現のために軍を動かすことは出来ない・・「政治判断が間違っているといくら有能精強な軍を持っていても機能しないからやれない」というあたり前の原理を言ったに過ぎず、日本語の警察官役を果たせないという意味とはだいぶニュアンスが違うのではないでしょうか?
日本の警察は民事不介入といって、揉め事一方の肩を持てないし、要請されても中立行動・・「まあまあ実力行使はやめてください」と二人の間に入って暴力行為に発展しないように阻止する程度しか出来ません。
軍といっても災害出動のほか今ではいろんな機能があるので、一言で言えませんが世界の警察官と翻訳するのは国連平和維持軍程度の役割です。
アメリカがやってきたのは、米国益獲得のために一方当事者の肩を持つ軍事介入そのものですから、これをやめるというのを世界の警察官をやめると翻訳するのは誤訳でしょう。
ポリスをやれないという意味をもっと厳格定義して報道すべきように思えます。
常識的に言えば、他国間の紛争解決手段としての軍事力行使(による介入)は今後できないという程度の意味だった可能性があります。
以上は原文に当たっていないので私の憶測意見です。
我が国憲法でいうところの「国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」」はまさにこれをいうものでしょう。
政治力不足・正義に反している主張・マイナスの穴埋めの軍事力行使=不当攻撃には自衛する必要はあっても、自己の政治力.正義不足=不正義補完に使っても長い目で見れば意味がないということです。
「口論で負けているからと相手(妻)を殴っても本当の解決にならない」という意味であり、かといって殴られるのが怖いと不正義に従う義務もない(妻が夫の家庭内暴力に服従する義務はない・・違法攻撃には正当防衛権・・・自己防衛力がなければ警察の介入が必要ということです。

憲法
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

正当防衛・自衛力のない人のために警察の介入・110番で駆けつけた警察が、まず引き分けて暴力行為を停止させることから始めるのですが、これを国際紛争に応用しているのが国連平和維持軍ではないでしょうか?
自衛の範囲の議論をしていると横にそれて行くので、アメリカンファーストに戻ります。
自国に関係ないことには軍事介入しないと言っても、直接間接の区分け定義不明でどこまでが自国国益に直結するかの基準が不明です。
まして時間的限界・今後は介入しないというのか過去に約束して介入している分までいきなり撤退する・・約束を反故にして(遡及的に)やめるのかも不明です。
企業で言えば、今後この分野から事業縮小というのは勝手ですが、契約済で工事途中の現場まで放棄してしまうようになると契約違反です。
昨年12月19日トランプ氏がいきなりシリア撤兵を発表したので、マチス国防長官の辞職表明に発展しましたが、この発表で世界中の米同盟国ではトランプ氏に対する信用が一挙に冷めたものになりました。
1月8日頃のニュースではこの結果、(米国同盟国の動揺を受けて?)ボルトン大統領補佐官がトルコがクルド人を攻撃しない条件付きの撤退と言い始めたようですが・・当然トルコはこんな条件を受けられません。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190109/k10011771841000.html

米軍シリア撤退 “クルド人勢力の安全が条件”にトルコ反発
2019年1月9日 8時42分

米国にとって中東の勢力関係がどうなろうと巨大な国費や兵士の人身損傷を賄うメリットがないというのがトランプ氏の表向き(サウジ皇太子によるカショギ記者殺害事件収束に向けた裏取引という見方が一般的です)主張です。
中東戦略で協力関係にあったクルド族切り捨てに抗議辞任したマチス国防長官および旧来政治判断では、(同盟国をトルコへの生贄にして)置き去りして引き上げるのでは米国の信頼が地に堕ちるという批判が噴出しました。
(日本台湾なども米国は頼りになるのかの心配が吹き出します・悔しいけれども中国への保険もかけておく必要性のバランス論・・米国追従をほどほどに止める動きが加速します)
トランプ氏に言わせれば、今後国際関係関与を減らしていくと表明した以上は、同盟関係を縮小していくのは当たり前・・いつかは「2階に上がって梯子を外される」ことを覚悟すべきだということになるのでしょう。
だから一方で「米国ばかりに頼らずに自助努力せよ、自国防衛予算を増やすべき」だと言っているではないかということで一応一貫しています。
要は「世界の警察官も嫌、政治に関わるのも嫌、揉め事は自分たちで解決してくれ」というのですから分かり良いといえば分かり良い政治です。
「難しいことは分からないから・」と米国が他国と他国の国際紛争から手を引くのは高齢化したわれれ高齢者の身の引き方と同じで結構なことです。
当面自国利益を守るのに必要な限度で他国と関係するのが合理的だというのは一理あります。
ただ自国利益を守るためには、他国との協調が必須ですので、その塩梅をどうするかの基準が見えない点が不安視されているのです。
「泣いて馬謖を斬る」故事がありますが、組織リーダーには行動原理を部下に知らしめ自分が守ることが必須です。
このルールが見えない・・多くの人がトランプ氏の言動が行き当たりばったりで信用できないと思うようになるとアメリカの信用ががた落ちになり、結果的にアメリカの国益に反するようになります。

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