EU(ドイツ)と中国の関係1

16年9月の中国杭州でのG20の記念撮影では、オバマが端っこに追いやられ、習近平の右隣がドイツのメルケル首相、左隣がトルコのエルドアン大統領だったことについて、中国が外交儀礼を守れない礼儀知らずのイメージで報道されていましたが、そうとばかり言い切れません。
この原稿は16年9月G20の頃に書いておいたものですが、奇しくも17年7月7日のドイツG20では、メルケルが隣に習近平氏とし、トランプ大統領を端っこに立たせたことを紹介したばかりです。
16年の返礼だったのでしょうか?
ドイツが中国に優遇されているのは(対日戦勝記念式典参加で厚遇されたパク前大統同様に気持ちが落ちつかなかったでしょうが・・)中国に肩入れし過ぎて今更引くに引けない立場を表しています。
(フォルクスワーゲンもEUを除けば中国で多く売れているだけです)中国としては、日米を敵に回している結果、今後唯一の技術導入国としてドイツを重宝したい関係を表しています。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ28HWY_Y6A720C1EA2000/

世界自動車大手の2016年1~6月期販売実績が28日、出そろった。2年連続の首位となった独フォルクスワーゲン(VW)は511万6800台と前年同期比1.5%伸ばした。排ガス不正問題が懸念材料となっているが、中国での拡大など需要の底堅さを示した。
世界最大市場となった中国での事業展開が差を生んだ要因の一つとなっている。景気対策の小型車減税の恩恵を受けトップ3社は販売を大きく伸ばし、増加率は トヨタが15.5%と最大だった。だが中国で先行するVWやGMの事業規模はトヨタの3倍強に達し、追い風もより大きくなった。」
上記によればトヨタの方が増加率が高くてもワーゲンの方が先行している関係で中国での存在が3倍も大きい・・その分中国に気を使う関係です。
両者の世界での年間販売数はほぼ同数ですから、トヨタにとって中国販売が世界販売の1割とすればワーゲンにとって3割,トヨタが2割とすればワーゲンにとっては6割と言う巨大な関係です。
この原稿の基本は16年7月16〜17日頃に書いていたものですが、同月18日日経朝刊4pを見ると、2015年ワーゲンの世界販売が1005万台で、内訳が、EU349万台、中国376万台となっています。
本拠地のEUよりも中国での販売の方が多い状態になっています。
上記記事によれば、燃費不正問題の世界的な逆風に対して「VWに助け舟を出したのは中国。現地で不正があまり話題にならなかった」となっています。
情報規制の厳しい中国で政府支援を受けるかどうかは大きな違いです。
燃費不正事件が報道されず、中国で伸びたことで打撃を防げたイメージの記事です。
人権や国際商慣習破りをどこかの首脳が批判するとすぐにその国の企業が狙い撃ち摘発や不正キャンペインが起きるのが中国のやり方です。
(数年前にマクドナルドが狙い撃ちされて以来業績低迷に陥っていました・・日本ではこの1年余りで急速に持ち直しましたが・・。)
消費者にとって、大関心のある燃費不正に対する中国の報道規制はVWに対する望外な援助になったでしょう。
報道規制どころか、ワーゲン救済を狙った特定車種向けの補助金政策で・・この逆張りを受けている(・・韓国系企業の電池使用を補助金対象から外していると言う噂)のが、ミサイル防衛用のサード配置で中国の逆鱗に触れた韓国現代自動車で、惨憺たる業績になっています。
http://www.recordchina.co.jp/a130248.html
「2016年3月1日、韓国の現代自動車と傘下の起亜自動車の中国での販売が急減していることについて、中国市場の変化に対応できなかったためとの分析が出ている。中国・環球網が伝えた。
韓国・聯合ニュースによると、現代・起亜の1月の中国販売台数は12万4495台で、前年同月に比べ約21.9%減少した。現代が7万5236台 で27.2%減、起亜は4万9259台で12.2%減だった。現代・起亜の中国市場シェアは6.1%と、2007年以来8年ぶりに最低水準となった。」
この記事を書いていた1昨年から2年近くもたってしまったので、その後の動きを紹介しておきましょう。
https://www.marklines.com/ja/statistics/flash_sales/salesfig_china_2017
国別ブランド乗用車販売シェア(工場出荷台数) (*)

2017年12月 2017年1-12月累計
台数
(万台)
シェア(%) 前年
同月比(%)
台数
(万台)
シェア(%) 前年
同期比(%)
民族系 129.36 48.75 3.41 1,087.23 43.98 3.26
日系 37.66 14.19 -3.46 420.49 17.01 10.90
独系 40.12 15.12 5.97 484.97 19.62 7.52
米国系 33.15 12.49 1.50 303.95 12.30 2.53
韓国系 17.52 6.60 -21.36 114.46 4.63 -36.13
仏系 5.60 2.11 -35.41 45.58 1.84 -29.22

資料:中国汽車工業協会発表、各種報道より
(*)台数を修正いたしました。(2018年1月15日)

https://www.marklines.com/ja/statistics/flash_sales/salesfig_china_201811月の中国新車販売は前年同月比13.9%減の254.8万台
2018年11月、自動車生産・販売の前月比はいずれもやや増加し、前年同月比の減少幅は依然として顕著であった。1-11月の自動車生産・販売の前年同期比は引き続き減少し、減少幅は1-10月に比べて拡大している。

国別ブランド乗用車販売シェア(工場出荷台数)

2018年11月 2018年1-11月累計
台数
(万台)
シェア(%) 前年
同月比(%)
台数
(万台)
シェア(%) 前年
同期比(%)
民族系 90.99 41.86 -23.29 900.10 41.91 -6.03
日系 43.85 20.17 8.11 403.13 18.77 5.30
独系 46.36 21.33 0.32 463.90 21.60 4.28
米国系 21.37 9.83 -32.67 227.78 10.61 -15.89
韓国系 11.10 5.11 -23.40 102.03 4.75 5.25
仏系 1.69 0.78 -70.04 29.10 1.35 -27.21

資料:中国汽車工業協会発表、各種報道より

ついでに15年末のデータと18年11月の比較をして見ましょう。
15年末にはドイツ系シェアーが15,0%韓国系が8,11%だったのが18年11月ではそれぞれ、21,33と5、11%に変わっていて日系は17、4%が20、17%に変わっています。
中国としては、韓国が逆らうとこんな目にあうぞ!という見せしめのつもりでしょう。
国別ブランド乗用車販売シェア (工場出荷台数)

国別ブランド乗用車販売シェア(工場出荷台数)

2015年12月 2015年1-12月累計
台数
(万台)
シェア(%) 前年
同月比(%)
台数
(万台)
シェア(%) 前年
同期比(%)
民族系 103.64 42.4 21.6 873.76 41.3 15.3
日系 42.58 17.4 8.1 336.43 15.9 8.7
独系 36.70 15.0 24.6 399.82 18.9 1.5
米国系 31.22 12.8 16.7 259.57 12.3 2.8
韓国系 21.47 8.8 17.5 167.88 7.9 -4.9
仏系 7.72 3.2 19.1 72.93 3.5 0.3

資料:中国汽車工業協会発表、各種報道より

http://news.nicovideo.jp/watch/nw2783338
中国のロッテマートがウェブサイトを再開
・現在も中国のロッテマートは9割が閉店
・THAADを配置させたことにより中国からバッシング中国のロッテマートがウェブサイトを再開
http://www.sankei.com/premium/news/170204/prm1702040027-n1.html洋式便器までダメ…中国のしつこい韓国「報復」 ミサイル配備の嫌がらせ露骨に 「春節」商戦あがったり
中国の嫌がらせはロッテに対する外「何でもあり」になっていることが分かります。
対中蜜月のフォルクスワーゲンは逆に大幅な伸びで、EU域外・・中国以外では殆ど売れていない・・独裁者の恣意的な恩恵に頼らないと国際競争力がない・・こうなると麻薬漬けになったような弱みがあります。
ドイツが言うことを聞かないとすぐに韓国のようなひどい目にあいます。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFD30H0Q_Q7A130C1000000/
VW、中国市場で稼ぐ 販売比率は欧州並み4割に (2016/12/29 0:43)
16年末でも約4割が中国販売です。

高齢者は85歳から3(長期支配の弊害2)

社長の(違法不当な)独走牽制のためには、外部監査〜外部役員の必要性が言われますが、その機能をどうやって発揮するかの具体策が見えません。
外部役員「人物」を当てるしかないのですが、独走したい社長に限って、煙たい人物排除に動く本質があるので、現役の社長会長の関与しない選任システムに変えて行くしないでしょう。
長い人類の知恵では、何期か前のトップ経験者・長老・元老システム・今風に言えば顧問団に期待が集まる以です。
寸秒を惜しみ世界中を駆け巡ってがスピーチしなければならない超繁忙社長を務める体力知力がないとしても、じっくり世の中を見ている時間のある何代か前の社長経験者の意見は相応の重みがあるでしょう。
世界企業クラスの社長経験者であれば、他社の事業に精通していなくとも長期支配のマイナスが出てくるようになれば直感的にわかる面があるでしょう。
年齢だけではなく、長期政権に必然的に生じる歪みを是正する方法がない・・一定のシステムが根付けばそれをかいくぐる裏技も発達しますので、大統領任期制のように、能力如何に関わらず一定期間で自動的に失職する絶対的任期制がスッキリしてわかりよい制度でしょう。
中国やロシアトルコ等民主的制度不十分な国で任期に代わるチェックシステムをつくらないまま任期制撤廃をすること自体が、自己独裁政権の長期化を狙った制度改悪と受け取られます。
我々弁護士会の場合には、会長や副会長を2期も続けてやっていると事務所維持できないので2期続けてやりたい人は滅多に出ませんが、(特に日弁連副会長は各地の選出なので、企業役員のように社長指名によらないので会長の意のままに動く人材ではありません)企業等では社長が取締役候補を事実上指名するのが慣例になっているなど独裁的執行体制になっているのが普通です。
これでは法の予定する取締役会の監視機能が事実上形骸化するのは当然です。
総理の指名する閣僚に総理の監視役を期待しているようなものです。
商法266の3(会社法になってからは429条に条文移動しています)の以下の最高裁判例以来各種判例が蓄積されてきました。
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52058

昭和46(オ)673
事件名 損害賠償請求
裁判年月日 昭和48年5月22日
法廷名 最高裁判所第三小法廷

株式会社の取締役会は会社の業務執行につき監査する地位にあるから、取締役会を構成する取締役は、会社に対し、取締役会に上程された事柄についてだけ監視するにとどまらず、代表取締役の業務執行一般につき、これを監視し、必要があれば、取締役会を自ら招集し、あるいは招集することを求め、取締役会を通じて業務執行が適正に行なわれるようにする職務を有するものと解すべきである。

会社法 (平成十七年法律第八十六号)

第四百二十九条 役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
2 次の各号に掲げる者が、当該各号に定める行為をしたときも、前項と同様とする。ただし、その者が当該行為をすることについて注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。
一 取締役及び執行役 次に掲げる行為
以下省略

上記判例の結果、何かと言うと取締役の責任追及訴訟が頻発するようになっており、「事実上社長は命令に歯向かえない」という取締役の抗弁を許しません。
「取締役になる以上は職を賭しても社長提案に問題があれば非を鳴らし拒絶すべき」という「きれいごと」正義論で押しきれられていました。
しかし、古来から処罰覚悟で君主に諫言できた忠臣が何人いるでしょうか?
万に一つくらいしか例がないから歴史に残っているのではないでしょうか?

左遷至藍關示姪孫湘
唐 韓愈

一封朝奏九重天
夕貶潮州路八千
欲爲聖明除弊事
肯將衰朽惜殘年。
以下省略

https://kanbun.info/syubu/sasen.html解説です。

元和十四(819)年、唐の憲宗は仏教を厚く信し仏骨を宮中に迎えて三日間の供養をした。韓愈は「仏骨を論ずる表」(論仏骨表)を憲宗に奉って諫言した。その結果、憲宗の怒りを買い、潮州(広東省)刺史に左遷された。

朝に諫言して夕べには左遷されたが、「あえて残りわずかな命を惜まんや!という強りですが・・。
閣僚の場合には自己の政治地盤が別にあるので、石破氏のように自ら入閣要請を拒否したり閣外に去る選択肢もありますが、サラリーマン取締役には固有の地盤がないのでそのような選択肢すらありません。
このように取締役の監視機能には実効性がない実態があるので、外部監査や社外取締役制度が普及して来たのでしょう。
企業活動は一定方向へ舵を切った以上は邁進する必要あり、異論を主張できない雰囲気自体を否定できないので、取締役とはいえ実質は執行役員の機能しか果たせていない現状(江戸時代の番頭の機能)肯定した上で、社外ご意見番の創設になったのでしょう。
戦前の内閣制度は総理に指名罷免権がなかったので閣内不一致を批判されても手の打ちようがなく、軍部の横暴を許したこと・・弱体化の原因になった反省で戦後憲法では、総理の指名・罷免権による内閣一体化を図った閣議決定に署名しない権利→総理は罷免で対抗する・これをしない以上は連帯責任です。
(閣僚は閣議が自己の信念に反すれば署名拒否して閣僚罷免されても地盤があるので政治家の地位を失いません・信念によって行動し地元で総理の方針に反した正当性を訴えて支持を得れば良いことです・・これをしないで署名した以上は連帯責任を免れません)
総理権限強化の代わりに総理自身の選任罷免権は枢密院・天皇による「大命降下」でなく、民意代表の議会が握る・・純粋な議院内閣制になりました。

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