チャイナプラスワンが始まり、人海戦術的工場生産パターンの威力がなくなると、労働力はいくらでも送り出せると豪語していた余剰人員の宝庫であった大都市周辺〜奥地に至る農民工供給地域の就職難・失業増加はどうなっているのかが気になるところです。
新規雇用がないどころか一旦就職していた農民工の帰郷が増えている姿・・・北京か上海郊外か忘れましたが、農民工の多く住む貧困地域のバラック街が突然ブルドーザーで押しつぶされて住む場所のなくなった農民工家族の呆然とした模様が時々ネット報道されていましたが、報道規制の結果最近は報道できないのかもしれません。
念のため検索して見ると中国ではすぐ削除されているようですが、日本のネットでは残っていたようです。
http://www.alertchina.com/archives/5729944.html
2017年12月15日
北京で出稼ぎ者らの強制退去再開、市トップの辞任要求も
北京市朝陽区十八里店郷地区で13日未明、バラックが焼けて住民14人が死傷したことで、同市大興区で同日午後、当局が再び強制的な違法建築撤去と、住民の出稼ぎ労働者らの追い出しを始めた。暴力的な手法に批判が高まっており、清華大、北京大、中国人民大など名門大の教授と市民84人が連名で北京市トップの蔡奇・共産党書記の辞任を求める書簡を交流サイト(SNS)に掲載したが、直ちに削除された。米政府系放送局ラジオ・フリー・アジア(RFA)が14日伝えた。
北京市大興区西紅門鎮で11月18日に違法建築のアパートが焼け、27人が死傷した。当局はまもなく違法建築の撤去と、「低レベル人口」と呼ばれる住民の強制退去を始めたが、「人権侵害」として抗議活動などが起き、市民からも批判の声が挙がったため、作業が一時沈静化していた。
しかし、再び暴力的な強制退去が始まったことで、市民の批判が再燃。大学教授ら84人が公開書簡を発表し、共産党と大衆の関係を悪化させたなどとして、蔡書記の辞任を求めた。
上記は必ずしも失業者群のバラックではないようですが、北京等では農民工は「低レベル人口」と呼ばれる厄介者になっているようです。
大都会に何十万人もまとまって失業者〜準失業者がいると政治不穏の温床になるので強制帰郷政策なのでしょうが、・・大量失業の受け皿になっている農村地域の疲弊こそ中国政治の不安定要因というべきでしょう。
失業帰村者を抱え込むと地方政府の財政が持たなくなるので不満吸収のために地方政府による土地供給の独占→土地バブル演出→潤沢な売却金収入の錬金術を繰り広げてきたようにも見えますが、毎年一定率の価格アップによる演出は、そのうち年収倍率の関係で購入資力の限界を超えるので、そのごまかしも限界がきたようです。
地方政府の債務(融資平台・地方政府傘下の投資会社)を中央政府は保証しないという原則・・地方に負債を押しつけているので中央政府の財政赤字は少ないというのが公式説明でしたが、昨年あたりから地方政府債務救済を実施しているという情報がかけ巡っていました。
一方で連鎖デフォルトが起きないように国有企業等の債務の資本化政策も大々的に実行されています。
債権を資本に名称変更しても金融界にとっては、回収できない点は同じですから焦げ付き債権を焦げ付きと表示しない一種の粉飾を国家規模で行なっているようなものです。
この点は15〜16年の上海株暴落に対して株式売買規制をしたのと同じ手法です。https://nikkeiyosoku.com/crash/shanghai/中国株暴落の歴史
過去、中国株の暴落は、2007年~2008年の世界同時金融危機を除くと、2015年6月のチャイナショック、2016年1月の大暴落の2つでしょう。
2015年6月12日から始まった株価の大暴落。約1か月の間、上海証券取引所のA株が下落しました。 上海総合指数は、約1か月で5166.35から3507.19まで下落して、約32%もの下落幅を記録しています。
中国政府の対策
最初、当局は空売りを規制し、大手の投信と年金基金に株価の購入を迫り、株を購入するための基金も設立しました。 更に、持ち株比率5%を超える株主の株の売買禁止と1300社における株式の取引停止など対策を打ち出しましたが、下落を止める効果はあまりありませんでした。
株式売却禁止すれば株価が下がりませんので、そんな株式でも帳簿上では売却禁止前の相場での資産価値があるでしょうが、換金したい人にとってはゼロと同じです。
先祖代々の土地や家宝のようにお金に変えたくない資産もありますが、(美術品の場合保有して日々堪能できるだけでも価値がありますが、株式の場合これを眺めることに価値はありません)上場株式の特徴はいつでも市場で換金できるところに本質があるのですから、売却禁止したのでは、国家権力によって株式としての価値ゼロを強制しているようなものです。
自由主義国ではないから、権力で商品価値を強制できるという本質・・どう猛な牙をむいたということでしょうか?
ロボット導入に舵を切った中国経済に戻しますと、新興国と低賃金競争しているのでは、将来がないのでローエンド製品中心の社会構造をセカンド〜ハイエンド製造社会へ構造改革していく決意が習近平の中国2025計画なのでしょうが、ロボット導入さえすれば良いわけではないでしょう。
人間の方がすぐにハイテクを駆使できるヒトばかりに変化(多分世代交代がないと)できないので、ついていけない余剰人員が溢れ出る社会危機が起きてきます。
日本でも昭和恐慌時に帰郷する農村出身者が増えて地方が疲弊し、これを背景に青年将校の決起につながったことが知られています。
中国企業自体も利を求めて東南アジア等に工場進出するようになっているので、国内現場労働系労働者に関しては急速に人員不要化・雇用減が進んでいます。
これを緩和するためのインフラ投資(現場労働需要が生じます)でしょうが、需要無視で鉄鋼その他生産設備増強しては赤字輸出で世界秩序を撹乱し、利用者のない鉄道建設等では赤字が膨らみこれらも限界がきているイメージでした。
この先送りのためかに国外での不要不急なインフラ工事押し売り推進=一帯一路計画+資金不足補填のAIIB設立だったでしょうが、砂漠地帯の中央アジアその他で需要のないインフラ工事をしても、そのコスト=中国に対する返済不能債務拡大ですから国際批判を受けるようになって八方塞がりです。