米国の中国攻勢→ファーウエイ副会長逮捕の衝撃3

ところで、今や中国人民の多くが国際経済に深く大きく組込まれていますので、国際物流〜金融取引その他が全面ストップする緊急事態に於いて、その対策を放置して対日戦争などにかまけてしている場合か!と言う非難の方が大きくなるリスクが高まります。
12月15日の日経新聞朝刊12pでは、延滞カードローンが1兆4000億円になっていると紹介されています。
上記記事ではカードローンを使ってスマホ決済しているというイメージ解説ですが、住宅ローン延滞を先送りするためにカードローンに手を出す人が多かった日本でのサラ金事件全盛時の経験によると、住宅ローン延滞予備軍(不動産バブル破裂の兆候)でもあるかもしれません。
その他企業債務や、地方政府債務など大口は(統計が信用できないので)闇の中ですが、車の販売台数(これは以前書いたように外資との合弁が多い販売統計なので、誤魔化しが利かない)が今年は販売減少になっています。
https://www.marklines.com/ja/statistics/flash_sales/salesfig_china_2018

2018年11月 販売台数速報
11月の中国新車販売は前年同月比13.9%減の254.8万台
・中国汽車工業協会は11日、11月の中国の自動車生産・販売データを発表した。
・2018年11月、自動車生産・販売の前月比はいずれもやや増加し、前年同月比の減少幅は依然として顕著であった。1-11月の自動車生産・販売の前年同期比は引き続き減少し、減少幅は1-10月に比べて拡大している。

数日前の日経新聞には、トランプ氏による対中高関税により、衣料品製造注文がバングラデシュの工場に集中したので特需に沸いているという記事が出ています。
専門家?の意見の多くは、「関税を25%あげるとアメリカ人が高いものを買うことになり国民が損をするだけ」というのですが、ユニクロ等の世界企業は、アメリカ向け製品の縫製をバングラ等へ振り向けるのでアメリカ国民は25%高い製品を買うことにはなりません。
中国が困れば部品等輸出の日本企業が困るという宣伝がしきりに行われていますが、組立工場立地が新興国に流れるだけのことでそれほどのことはありません。
サプライチェーンが変わるまでの移行期間の問題ですが、25%にあげるのはだいぶ前から宣伝しているので消費者の駆け込み需要対応だけでなく、企業の生産地変更対応が進みます。
13日の日経新聞15pではサムスンの中国でのスマホの売れ行き不振で天津工場閉鎖の報道が出ていますが、内容を見るとサムスンの18年の世界生産の4割前後をすでにベトナムで製造していると書いています。
対中関税が高くなるという動きが出てから慌てて他国の土地買収や許認可交渉→進出するのではなく、すでに東南アジア等にある工場敷地内の増産余力内の増産(残業をふやすなど)やラインの追加投資すればいいだけですから、意外に素早く対応できる時代です。
サムスンの工場閉鎖報道を見ると反日暴動以来チャイナプラスワンの動きが、日本企業だけでなく世界規模で進んでいる実態がサムスン関連報道でもわかります。
東南アジアへシフトした分中国の衣料品工場に限らずアップル等組み立ての生産が減っているはず→そうした総合結果が、車等の国内消費減に現れているのです。
GDP統計だけ増えていると言っても、誰も信用しないでしょう。
以下の通り、勝又氏は卸売物価指数は信用性があると言うのですが、同氏https://ameblo.jp/katsumatahisayoshi/page-3.htmlによると以下の通りです

2018-12-11 05:00:00

中国、「景気変調」11月卸売物価上昇率はほぼ「2年前の水準」

『日本経済新聞 電子版』(12月9日付)は、「中国の卸売物価、11月2.7%上昇」と題する記事を掲載した。
(1)「中国国家統計局が9日発表した2018年11月の卸売物価指数(PPI)は前年同月比2.7%上昇した。上昇幅は前月(3.3%)より0.6ポイント縮小し、16年10月以来2年1カ月ぶり低水準になった。前月比でも0.2%下落と7カ月ぶりに下落に転じた。国際的な商品相場の下落が波及したほか、販売不振の自動車なども下落した」
(2)「PPIを業種別にみると、石油・天然ガス採掘や石油加工で上昇幅が大きく鈍った。原油の国際相場の下落を映した。自動車、製紙や非鉄金属は前年比で下落した。個人消費の低迷が物価にも及び始めた公算がある。中国のPPIは過剰生産能力が原因で12~16年まで前年比で下落しつづけた。中国政府が16年初めから、鉄鋼や石炭を中心に生産設備を強制的に廃棄したことで16年9月に前年比で上昇に転じ、それ以降はプラスを維持している」
PPIの値下がりは、企業の売上に反映してくる。輸出需要の低下が、PPIを押し下げている面もあろう。したがって、米中貿易戦争の激化が、与えている影響は広範囲にわたっている。ファーウェイ副会長逮捕で、中国が激昂して対抗する余力はないと見るべきだろう。

カード債務増加問題も重要ですが、ここでは反日暴動以来の日本企業の中国脱出・チャイナプラスワンの始まりで深圳などで大規模工場閉鎖の嵐が吹き荒れていたのに失業者がどうしたかのニュースはさっぱり流れてきませんが、労働者・消費者の懐が限界にきているのではないかの関心を書いています。
改革開放後の中国の急激な躍進は、低賃金労働者供給が無尽蔵にあるという点が強みでしたが、自信を持った?中国が急激に人件費引き上げたことと、反日暴動の結果政治リスクが高いこともわかったので、低賃金労働ならば政治リスクのないバングラ、ベトナムその他の新興国でも同じ・・という流れが反日暴動で勢いがついたので、中国が人海戦術による世界の工場を維持するのは無理になりました。
新興国東南アジアと競争するためには、中国政府は高付加価値化とロボット導入に切り替えるしかなくなり、この数年では日本製ロボット輸入が高水準で推移してきました。
バングラなどへのシフトで数万人単位で働く縫製工場などの閉鎖→失業増加にとどまらず、チャイナプラスワンの影響を受けないその他工場でも、(無人コンビニに象徴されるようにサービス業でも)ロボット化による労働者削減が急激に始まっています。
https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/jp180926.pdf

中国の「爆買い」で増加する日本の産業用ロボット輸出
1018年9月26日
2017年以降、日本の資本財出荷は輸出向けで大幅に増加している。品目別にみると、中国向けを中心に産業用ロボットの輸出が急増していることが主因

以上の記事に入るとグラフ等で詳細説明されていますが引用しませんので、関心のある方は直接お読みください。
こうなると反日暴動前の現場労働者の仕事先がどうなったかの関心です。
政府統計はあてにならないにしても(懐が苦しくなれば)現場の消費は落ち込むでしょう。

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