弁護士会に限らず職能団体では、いわゆる第三者委員会委員のように特定事件が起きている最中に事態打開のために渦中の経営陣から声がかかるのと違い、(たとえば加盟企業社長が業界内役職など大して重要視していないのと同様)現執行部に迎合する余地がもともと低いと思われます。
プロゴルファーの事例を昨日紹介しましたが、我々弁護士会の場合も、組織維持が目的の懲戒制度ですから、問題を起こした個々の弁護士・身内に甘い処分では組織・弁護士に対する社会の信用を維持出来ませんので、勢い身内に厳しい処分になりガチです。
権力の介入による懲戒事件の場合には、権力に屈するわけにはいきません(そのための自治制度です)が、権力闘争と関係のない弁護士業務のあり方が顧客〜消費者から訴えられている場合、(正式統計数字を知りませんが、体感的にこれが懲戒事例の99、99%と思われます)身内をかばうための運用では何のための懲戒制度か分かりません。
各種組織内の懲戒委員は、自己組織を愛して自分の組織の信用・・一般構成員の地位を守る職務であって、個々の不祥事をした会員を守るための制度ではないことをしっかりわきまえて判断すべき立場です。
ただ、内部にいると社会が期待する水準変化に疎くなるリスクがあるので、懲戒・懲罰内部に第三者を抱え込むのは良いことです。
平成のはじめ頃に綱紀委員をしていた頃には、どちらかといえば外部委員の方が「このくらい許された行為ではないか」という意見が甘く弁護士委員の意見の方が厳しい意見でした。
・・(外部の人は「弁護士ってそんな程度じゃないの!」と低く見ているのかな?と危惧していましたが・・)
数十年経過して最近社会の弁護士に対する評価期待感が高まっているのか?懲戒委員会では外部委員も遠慮なく厳しい意見を言うようになっているような印象ですが、その方が社会の弁護士に対する見方が参考になってありがたいことです。
弁護士会の懲戒委員には、現職の裁判官検察官各1名のほか、大学教授などの学識経験者が2名入ることになっています。
判事検事の場合には出身官庁の推薦でそのまま選任される仕組みで、弁護士会に都合の良い人ばかり選ぶ仕組みではありません。
この点も企業が問題が起きてから、渦中にある現執行部が「気心の通じた?人」を選任する一般の第三者委員会とは質が違っています。
アメリカの特別検察官制度は、渦中の大統領が特別検察官選任に直接関与しない点では日本の第三者委員会とはまるで違うイメージで紹介されています。
https://kotobank.jp/word/%E7%B1%B3%E5%9B%BD%E3%81%AE%E7%89%B9%E5%88%A5%E6%A4%9C%E5%AF%9F%E5%AE%98-1817357
朝日新聞掲載「キーワード」の解説
米国の特別検察官
ニクソン元大統領が1974年に辞任に追い込まれた「ウォーターゲート事件」をきっかけに、大統領や政府高官を捜査、訴追するために設けられた。78年に施行された「特別検察官法」に基づいて裁判所が任命する制度だったが、「権限が強大だ」とする議会の批判で99年に失効。現行では司法省が任命するが、独立性の高い立場で捜査に当たる。 これまで中央情報局(CIA)工作員の身元情報漏洩(ろうえい)事件や、クリントン元大統領に関わる「ホワイトウォーター疑惑」、同氏の不倫疑惑などが捜査の対象となった。
(2017-05-18 朝日新聞 夕刊 1総合)
ちなみに司法省が一般検察官任命と特別に委嘱出来るというだけでは、何が「特別」か意味不明ですが、http://www.canon-igs.org/column/security/20170531_4352.htmlによれば以下の通りです。
2017.05.31
特別検察官、何が特別なのか
産経新聞【宮家邦彦のWorld Watch】(2017年5月25日)に掲載
「特別検察官は…大統領にも解任できない」。19日付某有力紙1面トップ記事の冒頭部分がこれだ。
「何だって?」、読んだ筆者はのけ反った。それだけではない。他紙には「米『政権VS司法』鮮明」「捜査の予算は無制限」なる解説もあった。
字数制限の中、急いで書いた記事なのだろう。武士の情けで実名は控えるが、それにしても、なぜこんな基本的事実誤認が生じるのか。
トランプ氏のロシアゲート報道は今後も続く。今回は「特別検察官」の論点を整理したい。
そもそもこの官職、英語名だけでも3種類ある。
(1)special prosecutor
(2)independent counsel
(3)special counsel
(1)は文字通り「特別検察官」。1875年にグラント大統領が某スキャンダル捜査のため任命したのが最初だ。この官職名は1983年まで使われたが、78年に議会が法制化するまでは司法省内部規則などに基づき任命されていた。
(2)は「検察官」なる用語をあえて避けた「独立顧問」だ。ウォーターゲート事件を踏まえ、78年にそれまでの特別検察官の地位を法律で定める「政府内倫理法」が時限立法で制定され、83~99年にはこう呼ばれていた。
(3)は現行の官職で司法省の「特別顧問」。99年の政府内倫理法失効後、連邦規則28章600条に基づき司法長官が米政府外から弁護士を任命して設置できる常勤職だ。
(4)これとは別に1924年、上下両院特別決議に基づき、クーリッジ大統領が「特別顧問」を任命した例がある。
日本語ではこれらをまとめて「特別検察官」と呼ぶが、いずれも利益相反等機微な事件を政治とは一定程度独立した立場から捜査・訴追する権限が付与される点は共通だ。
現在の「特別顧問」は司法省内の一ポストにすぎず、広義の行政機関の一部だ。他の連邦検事と同様の捜査・検察権限は保障されるが、任命権者はあくまで長官。その独立性に法的保障はないだろう。されば大統領が長官に罷免を命じることも可能。少なくとも現状は「政権VS司法」ではない。
「連邦規則」とは議会が作る法律の枠内で行政機関が定める規則集であり、日本の省令集に相当する。独立性を確保するため「特別顧問」には別途予算が付くが、当然その額は司法省予算の枠内だ。
日本では特別検察官を大統領弾劾と絡めて報じるケースが多い。しかし、米国では特別検察官制度と弾劾手続きは連動しない。「特別顧問」が任命されれば直ちに弾劾に進むというわけではないのだ。
司法副長官がその直接監督者であることから、司法副長官に対するトランプ大統領の(解任)圧力が時どき報道される所以です。