原発停止と(代替エネルギーの現状)3

科学技術の遅れとも言えないし、遅れ程度ならば追いつけないものでもないのに日本のソーラシステムが、西欧に比べて何故割高(約2倍)なのか謎ですが、ちょっと前に風力発電について書きましたが、地形上の問題かもしれません。
http://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/saiene/saienecost.html
日欧の太陽光発電(非住宅)システム費用比較

太陽光発電(非住宅)システム費用について、日本(2016年)は28.9万円/kWであり、欧州(2014年)の15.5万円/kWと比べて、2倍近くの差があります。

年々安くなる世界の再エネ

世界的には、再エネルギーの発電コストの低減化は年々進んでいます。場合によっては、他の発電方法で発電された電力と比較しても、コスト面で競争力のある電源となり始めています。

太陽光発電と風力発電のコストの推移

(円/kWh)

太陽光発電のコスト

(円/kWh)世界的に、太陽光発電のコストの低減化は年々進んでいます。

風力発電のコスト

世界的に、風力発電のコストも低減化は年々進んでいます。

世界でもっとも安値の再エネ電力はいくらでしょうか。
それは、2016年のアラブ首長国連邦(UAE)における太陽光発電の入札案件で、入札価格は2.42セント/kWh、日本円で1kWhあたり3円ほどです。
なぜここまでコストを低減できたのでしょうか。
それにはさまざまな要因があると考えられますが、大きくは以下の2つの要因が低コストにつながったのではないかと推定されます。日照に恵まれた土地柄であるものの、それを差し引いても、日本と比べてかなりの安値といえそうです。
① 118万kWという大規模事業であったため資材の大量調達ができたこと、また単価が低い労働力を利用できたことから、資本費が日本の3分の1程度に
② 日照時間が長く、設備利用率が日本の1.5倍以上に
欧州における再エネの中心は風力発電であることも特筆すべきポイントです。ドイツでは発電電力量のうち9.2%、スペインでは19.2%を占めています。最近は洋上風力発電が盛んで、コストについても、2015年には13.72円/kWhだった入札価格が2017年には7.91円/kWhになるなど、急激に下落しています。
デンマークやオランダでは、洋上風力発電の設置に必要な環境アセスメントや地元との調整を政府が主導するなど、事業者の開発リスクを低減させる取り組みを進めており、これがコスト低減に寄与しているようです。

上記のような資源エネルギー庁の記事を見ると、技術革新でどうなるという要素が低い・逆に技術革新が進み人件費がアップし土地評価が上がるほどコストパフォーマンスが悪くなりそうです。

 

 

原発停止と(代替エネルギーの現状)2

そもそも代替エネルギー政策がうまくいっているか否か将来像のあり方を、裁判所が決めることではなく選挙・民意で決めることですから訴訟の争点にならないのは当たり前ですが・・。
要するに、民意を受けた政治が決めることです。
民主党政権の野田内閣が30年台という10年間の幅を持った閣議決定したことを紹介しましたが、これを「30年まで」と短縮して終わりを決めようとして昨年春ころに蓮舫執行部が民主党内で了承を得られなかったことがあります。
野田内閣当時の想定よりも「10年も早く代替エネルギー政策が進んだから」と言うのなら合理的ですが、根拠なく「今度選挙対策でこう言おう」というパフォーマンス狙いでは困ります。
日本は公害発生に触発されて結果的に公害防止技術が先行し、石油ショック→省エネ技術によって日本経済が世界で先行できたように、仮に再生エネ転換が進んで行った場合、日本がどういうメリットがあるかの将来展望・・どういう影響を及ぼすかの視点が重要です。
(公害の防除技術のように新規産業が育つならば良いですが・原発その他の多様なエネルギー源がある中でどの分野を伸ばしていくのが日本人の個性や風土に適しているか、国際競争に有理化など総合判断で選択していくべきです。
太陽光発電の場合、関連製品ではすでに成熟産業化→中国が巨大資本を投入して既に量産体制を確立している中国の独壇場ですから、この分野を伸ばしても日本企業が中国の及ばない高度技術で勝負できる段階が過ぎています。
量産技術確立後の家電製品等の商品ではいくら工夫しても意味がない・早くその分野から撤退して後進国に譲るしかないのが現在のシステムです。
原発事故後の新エネルギー源として量産技術の確立した分野を伸ばすのでは、人件費の安い中国等の新興・後進国の追い上げに負ける一方でしょう。
それでも他の電源より安いならば仕方ないですが、年間(ということは毎年のことですから、10年で何十兆の補助金です)何兆円も補助金をつぎ込んでまで国外企業の誘致に骨折るようなものではないでしょう。
ソーラーパネル製造でいえば中国からの安値輸入が席巻して国内産業発展どころか壊滅させてしまうのを放置して電源的には原発の穴埋めになっている・・だから原発停止させても大丈夫という説明では困ります。
日本は明治維新時の開国によって先進技術を自分のものにする能力があったので独立を守れたのですがその能力なく、単に消費するにとどまった国は国内産業が廃れて皆植民地化されていきました。
インドのイギリス植民地化の原因は、当時インド綿製品が東南アジア地域の支配商品であったのに、産業革命によって生産合理化に成功したイギリス製品進出によって、文字通り「死屍累々」白骨街道と言われる状態になった結果でした。
この辺は川勝平太氏の著書の受け売りで15年ほど前に書いたことがあります。
「どんどん高額補助金を出してそのお金でどんなに中国からの輸入が増えてもかまわない、結果国内産業は壊滅しても構わない・・電気の供給さえあればいいじゃやないか」というのでは無責任です。
他にも選択肢があるか否か、ここは身長ん原発は本当に今日明日にもやめなければいけないほど危険かどうか?日本の得意分野を伸ばす方向で新電源開発の工夫すべきでしょう。
・・アジア諸国の地場産業・インドの繊維産業が死滅し植民地化していったことの繰り返し?のように日本政府の年間2兆円以上もの補助金で中国製のパネル、モジュール、セル等が席巻してしまう政策をそのまま進めて良いかの総合判断をすべきです。
自由な競争に負けるのは仕方がないというのも一理があるように見えますが、他のエネルギーとの自由競争で勝てないから、国家として年間2兆円以上も補助金を出す(その他市町村ごとの補助金や工場等の立地優遇策もある・・農地転用の特例もあったような記憶です)のですから、太陽光発電業界が自由競争で勝っているのでありません。
そしてその業界内競争では中国製が市場支配力を持っているのですから、中国企業へ補助金を出しているような結果です。
国内産業保護のために関税政策があるように・・この後に紹介するようにトランプ政権は太陽光発電でセーフガードを発動しています・・日本の場合輸入制限の逆張り・・補助金を与えて輸入拡大を図るとは「奇怪」な政策です。
比喩的に言えば、大型乗用車を国内で作っていない・アメリカだけのときに、大型車だけ一台500万円の補助金を出すような政策の結果、中小型専門の国産車の売れ行きが3割減った場合、アメ車が自由競争の結果シェアーを伸ばしたというでしょうか?
中国製だけの補助金ではないですが、結果的に果実(国民の税金)が中国にわたる仕組みになっているとはおかしな政策でした。
インドがイギリスの紡績業に負けて植民地化したと言っても、イギリス製紡績品の輸入に補助金を出して輸入していたわけではありません。
太陽光発電設備に対して民主党政権が決めた補助金を見ておきましょう。

再生可能エネルギーを全量固定価格で買い取る FIT が民主党政権(現・民進党)で始まり、国民の負担が年々上昇していると NHK がついに報じました。
導入当初から予見されていたことですが、ようやく取り上げたと言えるでしょう。
年間2兆円が電気代として上乗せされていることが現状であり、将来的にはさらに負担が増すことが確定的なのです。
5年前の7月1日、太陽光発電など再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度が始まってから、私たち電気の利用者が負担するようになりました。
再生可能エネルギーを普及させようと始まったこの制度。国は、電力会社に太陽光などで発電した電気をすべて買い取るよう義務づけました。その代わり、買い取り価格の一部を月々の電気料金に上乗せすることを認めました。」

上記文脈言えば2兆円は電気料金に転嫁した分だけのようですが、「買い取り価格の一部を月々の電気料金に上乗せ」と書いているので100%料金転嫁を認めた訳ではないので、電力会社の自己負担分がこれではわかりません。
例えば30%の価格転嫁を認めているとした場合に、30%が2兆円というのであれば、電力業界の負担分7割が電力業界の財務悪化、配当や設備投資や賃金抑制その他で結果的に国内負担になるので、その3、3倍の7兆円前後になります。
一部というだけでは、業界への転嫁比率がわかりませんが、転嫁比率によって国民負担額が大幅に変わります。
ですから上記「2兆円」全体の何%か内容精査しないと意味不明ですが、最低2兆円の負担がはっきりしてきたということです。
そこで資源エネルギー庁のデータに入ってみますと以下の通りでした。
http://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/saiene/saienecost.html

コストの高さは、国民負担に影響を与えます。FITによる買取費用の一部は、賦課金というかたちで国民が広く負担していますが、2017年度の買取費用は約2兆7000億円、賦課金は約2兆1000億円となっています。
エネルギーミックスが想定する2030年の再エネ買い取り費用は、3兆7000億円から4兆円です。
再エネのコストをできるだけ低減させ、国民の負担を抑制しつつ、再エネ普及を図る取り組みが必要となっています。

17年に消費者の負担する電気料金アップは2兆1000億ですが、全体の賦課金は2兆7000億円と分かりました。
これがどんどん増えていく計画で30年の買取費用は約4兆円が予定されています。
ということは20年から30年の10年間合計で30兆円分を負担することになります。
10年間で30兆円もの負担増が妥当かどうかでしょう。

原油相場上昇と再稼働の必要性?(代替エネルギーの現状)1

15年以降の国際収支・・14年4兆円弱の経常収支黒字から15年にはひと桁違いの16兆5000億円の黒字復活は、この危急存亡の直前に14年夏ころからの原油相場下落を起爆剤にして急速に救われたことになります。
福島原発事故も、首都を巻き込んでもおかしくないほどの大事故に発展する事故でしたが、(これを見込んでドイツは大使館の臨時移転をしました)吉田所長らの決死の奮闘により首の皮一枚で大惨事を免れ、経済面で見れば日本も恒常的赤字国転落か?瀬戸際で助かった天佑でした。
(個々人は一人残らず、電力節約に努めましたし、供給側では省エネ技術革新に取り組み、被災工場やプライチエーンの必死の復旧努力により一日も早い生産再開・これが一方で輸出激減を抑え、石炭火力の復旧による原油輸入を一滴でも減らす努力・文字通り不眠不休で日夜励みました)
単に天佑を祈っていたのではなく、国民一丸となって頑張ったことに対する神の恩寵です。
https://eneken.ieej.or.jp/data/5474.pdfによると発電電力→消費量は以下の通りです。
震災以後3カ年の火力発電投入燃料推移
計量分析ユニット需給分析・予測グループ 研究員吉岡 孝之

電気事業者の発電電力量2は2010年度比で震災直後の2011年度に7%減、2012
年度に10%減、2013年度も10%減となった。
・・・・節電努力等の継続もありさらに大幅に増加することはなかった。

二度にわたる蒙古襲来時と同じで、天佑を待っていて天佑があったのではなく、供給側も消費側も国民一人残らず持ち場持ち場で国のために必死になって持ち応えているうちに
「神の嘉するところとなって」
原油情勢が好転したものです。
14年の原油相場下落によって日本は一息つけましたが、1昨年から原油相場の反騰により風向きが変わってきました。
http://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/bunseki/pdf/h18/h4a0606j5.pdf
【我が国の原油輸入と対中東貿易】

世界的な需要の拡大を背景として、ここ数年間、原油価格は高騰を続けている。
昨年後半、米国で発生した大型ハリケーンの影響もあり、さらなる上昇となった原油価格は、今年に入って一時的に落ち着きをみせたものの、産油国の政情不安などから再び上昇の兆しを強めている。
15年末には約 32 ドル/バレルであったWTI原油先物価格(期近物)は、16年末には約 43 ドル/バレル、17年末には約 59 ドル/バレルに達し、18年4月には 70ドル/バレルを超える値を付けるにいたった(第II-3-8図)。
消費する原油のほとんど全てを輸入に頼る我が国にとって、原油価格の高騰は看過できない問題であり、今後もその動向には引き続き注視が必要である。
原油の輸入金額が増加している最大の要因は輸入単価が上昇しているためである。
国際市場での価格の高騰を受けて、日本への輸入単価も15年末の約 30 ドル/バレル
から17年末には 60 ドル/バレル近くにまで上昇している(第II-3-10図)。実際、原油の輸入金額の伸びを要因分解すると、16年半ば以降、前年同月比で二桁以上の伸びを示しているが、輸入数量の寄与分は小さく、ほとんどが輸入単価上昇による寄与であることがわかる(第II-3-11図)。原油の輸入金額は、我が国の貿易収支に匹敵する水準まで増加しており、黒字額を大きく押し下げる要因となっている(第II-3-12図)。
中東からの輸入金額の総計をみると、17年には約9兆7,000億円と10年間で3倍程度にまで拡大している。輸入金額の8割以上は原油で占められており、原油以外の鉱物資源の輸入金額も増加しているものの、原油の輸入金額の伸び幅が大きく、輸入金額に占める割合は上昇傾向にある(第II-3-15図)。

以上文中引用の各図省略

上記の通り、原油相場の持ち直しにより、昨年では、原油輸入額だけで日本の貿易収支黒字に匹敵する数字に戻っている・原発事故直後と似た関係に戻っています。
脱原発に踏み切るための代替電力の研究開発進捗を総合的に見るには、原油相場が重要です。
代替エネルギー予定増加が予定の半分しか進んでいなくとも、原油が半値になれば、原油依存度が2割上がっても痛みをある程度吸収できますが、逆に相場が2倍になると原油依存度を半分に減らさないとやっていけない計算です。
たまたま、14年からの原油相場半値前後への下落と石炭火力増加によって、日本経済は首の皮一枚でつながっていたに過ぎませんから、原油相場が持ち直してきた以上代替エネルギーがどうなったかは重要です。
海渡氏が今まで何とかなったというだけの根拠で即時全面停止を求めているとすれば、(そんな無責任主張とは思われませんが・・)困ります。
ちなみにコスト関係は21日に紹介した通りですが、再生エネルギーの場合、立地環境が限定される上に安定供給ができないのでその面でも難があります。
もしもこれまで綱渡り運営で何とかなってきたからそのツナ渡りを今後もやれば良いと言うならば、おかしなな意見ですが、余裕電力がなくて大きな事故が起きたらどうするか?一定の安全保障のためには一定の余裕がいるのではないか?国家運営として許されることなのかの詰めた議論が見当たりません。
事故直後の原発事故による電力不足の急場を凌げたのはもともと安定供給用に余剰電力を確保していた石油火力発電があったから休止中の(余剰・最大ピーク用の温存設備)石油火力を一斉稼働できた・・だから直後には原油輸入が106%も伸びたことによります。
ただ、フル稼働状態でいつまでも続くわけがありません・・急場は不眠不休で働けますが、いつかまとまった休憩が必要なように発電設備も交代用の設備を使い切って何年も(小刻み回収・・騙しだまし使い続けるわけにはいきません。
石炭火力は機動的運用になじまないのでもともとほぼ100%稼働状態で、しかも被災した石炭火力があったので、すぐには石炭輸入増にはなりませんでしたが、被災後2〜3年で石油火力よりもコストの安い石炭火力の復旧が終わり新増設も進んでいるようです。
http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/shoene_shinene/sho_ene/karyoku/pdf/h29_01_04_00.pdf

我が国の電源構成の推移
総発電電力量

 
2030年度

出典:資源エネルギー庁 総合エネルギー統計等 11

ぜかグラフ画像の転写がうまくいきませんので、総発電量の数字だけ転記すると以下の通りで、石油ショック時に「ほぼ100輸入に頼る日本経済はおしまいか」と大騒ぎになった石油ショック時と同様に国を挙げて省エネに邁進している実態が見えます。

10年→11408億kwh

13年→10584億kwh

15年→10181億kwh

電源構成比の変化は以下の通りです。

      電源種別    原子力        石油     石炭     LNG    再生

10年      → 25%            10%    26%    29%   10%

13年         → 0                17%    31%    41%   11%

15年(足元)     → 0                12%    22%    40%   15%

 

 

脱原発と貿易赤字3

中韓による追い上げ解決策として日本企業自体が現地生産からも卒業して組み立て型・最終製品から脱却してBtoB戦略への移行が徐々に始まったのですが、その大規模移行期が重なって、日本経済が踊り場に差し掛かっていたなどの総合的影響もあるでしょう。
(もともと韓、台湾〜タイなど東南アジア〜中国への生産基地移転でも、日本から中高度部品輸出が行われていて、その経験があったのを正面から進むべき方向性として認識するようになったにすぎません。)
国際収支という外形を見ると日本は縮小一方になってしまったように見えていたが、内実では震災被害克服・復旧だけでなく同時に、(工場や商店が被災して建て直すのにお金がかかりその間生産販売が止まりますが、その機会に内部仕様を変えるのが普通です)最終製品からの脱却も進めていたのを中韓は気がつかずに日本はダメだと思い込んでトドメをすべく反日運動に精出していたことになります。
外形上の黒字縮小どころか総合収支赤字転落が目前に迫り、この傾向が続くと15年以降どうなるかという不安の年でしたが、安倍政権成立後の異次元金融緩和による円安効果と、産業界の構造改革(BtoBへのシフト)の成果+14年夏ころからの原油相場下落によって国際収支が急回復できました。
貿易赤字が縮小(14年10兆4653億赤字→15年には8862億・10分の1以下に急減)したのは14年央から原油相場下落の恩恵効果の出た15年に入ってからです。
14年の月別データで見ると単月で経常収支の赤字になる時も出てきていましたが、1年間合計で何とか黒字に終わったという薄氷の年でした。
以下歴年別ではなく、月別の統計を財務省の国際収支月別統計(季節調整済み)から、14~16年分の引用します。
貿易赤字が13年秋から増勢を強め毎月8800〜9億超えの赤字が定着し、14年1月と3月にはいずれも1兆5000億円超えの赤字になっていましたが、14年9月頃から赤字縮小を始めます。
BtoBシフトや石油系火力よりコストの安い石炭火力新設等の影響が徐々に出て次第に貿易赤字縮小が進み14年夏ころからの原油相場急落の影響が15年に入ってはっきりと出てきたことがわかります。
https://www.mof.go.jp/international_policy/reference/balance_of_payments/bpnet.htm

単位億円

注  左から経常収支 貿易/サービス収支 貿易収支の順です・稲垣
経常収支  貿易/サービス収支 貿易収支

 

平成26年 1月 2014 Jan -14,561 -28,131 -24,241 54,742 78,983 -3,889 14,892 -1,322
  2月   Feb 7,409 -7,323 -5,761 59,331 65,093 -1,562 15,947 -1,215
  3月   Mar 2,445 -12,484 -11,934 64,900 76,834 -550 19,135 -4,206
  4月   Apr 3,554 -14,286 -7,992 59,764 67,756 -6,293 19,917 -2,077
  5月   May 6,936 -7,321 -7,052 57,093 64,146 -269 16,344 -2,088
  6月   Jun -1,934 -7,669 -5,542 61,090 66,632 -2,127 6,231 -496
  7月   Jul 5,482 -13,202 -8,661 62,570 71,231 -4,541 20,182 -1,498
  8月   Aug 4,039 -11,193 -8,557 56,526 65,083 -2,636 16,731 -1,498
  9月   Sep 10,086 -9,081 -7,192 64,777 71,969 -1,889 20,659 -1,493
  10月   Oct 8,607 -9,716 -7,643 65,762 73,405 -2,073 20,336 -2,013
  11月   Nov 4,524 -7,346 -6,318 63,248 69,566 -1,028 12,904 -1,034
  12月   Dec 2,628 -7,237 -3,759 70,944 74,703 -3,478 10,870 -1,005
平成27年 1月 2015 Jan 930 -12,643 -8,833 63,257 72,090 -3,810 14,315 -743
  2月   Feb 14,660 -2,465 -1,317 60,049 61,366 -1,148 18,802 -1,677
  3月   Mar 27,519 8,042 6,478 71,324 64,846 1,564 23,197 -3,719
  4月   Apr 13,718 -6,893 -1,495 62,345 63,840 -5,398 22,665 -2,055
  5月   May 18,814 -48 -564 57,375 57,939 516 20,795 -1,933
  6月   Jun 6,587 -954 1,007 64,759 63,752 -1,961 7,865 -324
  7月   Jul 18,483 -3,346 -1,235 65,657 66,892 -2,111 23,158 -1,329
  8月   Aug 16,581 -3,617 -3,558 58,687 62,245 -59 21,538 -1,339
  9月   Sep 14,847 -39 503 63,752 63,250 -542 17,309 -2,424
  10月   Oct 14,019 -2,163 1,810 63,477 61,667 -3,973 17,681 -1,499
  11月   Nov 10,759 -3,154 -3,273 59,439 62,712 119 15,798 -1,885
  12月   Dec 8,277 -889 1,616 62,621 61,005 -2,505 9,908 -743

 

 

脱原発と貿易赤字2

原発全面停止により高コストの石油石炭燃料に切り替えた前後の国際収支がどうであったかについて、財務省の日本の国際収支(2003年までカット)では以下の通りです。
https://www.mof.go.jp/international_policy/reference/balance_of_payments/bpnet.htm
単位億円
注  左から経常収支 貿易/サービス収支 貿易収支の順です・稲垣

2004C.Y. 196,941 101,961 144,235 577,036 432,801 -42,274 103,488 -8,509
2005C.Y. 187,277 76,930 117,712 630,094 512,382 -40,782 118,503 -8,157
2006C.Y. 203,307 73,460 110,701 720,268 609,567 -37,241 142,277 -12,429
2007C.Y. 249,490 98,253 141,873 800,236 658,364 -43,620 164,818 -13,581
2008C.Y. 148,786 18,899 58,031 776,111 718,081 -39,131 143,402 -13,515
2009C.Y. 135,925 21,249 53,876 511,216 457,340 -32,627 126,312 -11,635
2010C.Y. 193,828 68,571 95,160 643,914 548,754 -26,588 136,173 -10,917
2011C.Y. 104,013 -31,101 -3,302 629,653 632,955 -27,799 146,210 -11,096
2012C.Y. 47,640 -80,829 -42,719 619,568 662,287 -38,110 139,914 -11,445
2013C.Y. 44,566 -122,521 -87,734 678,290 766,024 -34,786 176,978 -9,892
2014C.Y. 39,215 -134,988 -104,653 740,747 845,400 -30,335 194,148 -19,945
2015C.Y. 165,194 -28,169 -8,862 752,742 761,604 -19,307 213,032 -19,669
2016C.Y. 210,615 43,888 55,176 690,927 635,751 -11,288 188,183 -21,456
2017C.Y. 219,514 42,297 49,554 772,855 723,301 -7,257 198,374 -21,157

リーマンショック前には概ね経常収支黒字が20兆円前後、前年07年では14兆円あまりの貿易黒字で経常収支は25兆近くもあったのですが、リーマンショック後の09年には、貿易収支が5兆3,876億円、経常収支が13兆5,925億円まで急減し、以後徐々に復調して10年には貿易収支9兆5,160億円/経常収支が19兆3,828億年になってリーマンショック前に回復する直前の大地震でした。
10年の貿易収支9兆5,160億円→11年-3,302ですから、約9兆8000億円の減少でしかないようですが、原油輸入が増えるまでには、追加購入注文から船積→日本到達までのタイムラグがあるので、8〜9月頃から到着(財務省統計は通関統計でしょう)とすれば最後の4ヶ月前後の輸入増加分となります。
2012年は原発停止後マル1年間の統計ですが、12年は、4兆2700億以上の貿易赤字(10年比14兆円弱の悪化)・経常収支では4兆7,640億円(10年比約15兆円の減少)になりました。
10年貿易収支9兆5,160億円→13年は-8兆7,734の貿易赤字ですから10年比18兆円以上の減少です。
14年は-10兆4,653億の赤字ですから10年比約20兆円余の収入減少です。
原発停止による原油等追加調達量は12年も13年も14年もマル1年間で同じ筈ですが、13年にさらに貿易赤字幅が拡大したのはエネルギーコストアップ=各種産業の基礎コストアップによって、国際競争力が大幅低下したことによる可能性がありますがこれはこの後で書きます。
10年には回復基調・上り坂にあったのですから、11年以降本当はもっと黒字が増えるべき時に逆にこれだけ減ったと見るべきでしょうが・・これが原発全面停止による1年あたり収入減の実態でしょう。
昨日仮定数字としてキリの良い10兆円としましたが、原油輸入の増加による支出増加だけではなく輸出業界全体のコストアップによる競争力低下の結果、14年には何と20兆円もの貿易収支悪化が生じています。
貿易赤字が縮小(14年10兆4653億赤字→15年には8862億・10分の1以下に急減)したのは14年央から原油相場下落の恩恵効果の出た15年に入ってからです。
原発事故時に、原油や石炭の輸入数量急拡大によって、高度成長期以降初めて経験する巨額貿易赤字化が突然始まり、これが半永久的に続くと日本経済はどうなるか?
日本人は青くなりましたが、もちろんこれを大喜びする国も人もいます。
プラザ合意以降欧米包囲網作り→米国による日本叩きによって失われた10年とか20年というキャッチフレーズが世界で流布していましたが、内実をみれば日本は形を変えて、経常収支で毎年20兆円前後をシコシコと稼いでいました。
これを米国は許せないから世界中で日本叩き・中韓はこれに便乗して慰安婦騒動反日暴動など仕掛けてきたのが対中韓紛争の構図です。
この辺は、失われた20年論に対する反論として10年ほど前に連載しましたが、この日本の誇る経常収支黒字が震災前までの平均約20兆円から、急減して14年には何と4兆円弱・・首の皮1枚となるまで下がってきたことが分かります。
14年には月別データで見ると単月で経常収支の赤字になる時も出てきていましたが、1年間合計で何とか黒字に終わったという薄氷の年でした。
これは、円高あるいは消費地生産の国際動向に合わせた日本企業の海外進出→国内空洞化の複合的結果も左右しています。
現地生産あるいは、中国〜ベトナム等の低賃金を求めて工場が次々と移転していく時代・・・プラザ合意以降でいえば、韓国、 台湾進出の第一段階が終わってタイ等の東南アジア進出〜中国進出するようになると、韓台が中国現地生産では日本との競合企業になり、次の低賃金国ベトナム等へ移動すると今度は中国現地資本も競合企業になるなど、どんどん日本の優位性が失われていきます。
これに対する適応のための踊り場と重なった点も留意する必要がありますが、結果として(国内生産を縮小して現地生産に切り替えている以上は貿易赤字は仕方がない、その代わり現地生産による儲けの還流=所得収支黒字で穴埋めして行くという考えの否定につながる)経常収支でさえも赤字まで来たのは正月早々(14年1月は1兆4000億以上の経常収支赤字)の衝撃でした。

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