原発全面停止により高コストの石油石炭燃料に切り替えた前後の国際収支がどうであったかについて、財務省の日本の国際収支(2003年までカット)では以下の通りです。
https://www.mof.go.jp/international_policy/reference/balance_of_payments/bpnet.htm
単位億円
注 左から経常収支 貿易/サービス収支 貿易収支の順です・稲垣
2004C.Y. | 196,941 | 101,961 | 144,235 | 577,036 | 432,801 | -42,274 | 103,488 | -8,509 |
2005C.Y. | 187,277 | 76,930 | 117,712 | 630,094 | 512,382 | -40,782 | 118,503 | -8,157 |
2006C.Y. | 203,307 | 73,460 | 110,701 | 720,268 | 609,567 | -37,241 | 142,277 | -12,429 |
2007C.Y. | 249,490 | 98,253 | 141,873 | 800,236 | 658,364 | -43,620 | 164,818 | -13,581 |
2008C.Y. | 148,786 | 18,899 | 58,031 | 776,111 | 718,081 | -39,131 | 143,402 | -13,515 |
2009C.Y. | 135,925 | 21,249 | 53,876 | 511,216 | 457,340 | -32,627 | 126,312 | -11,635 |
2010C.Y. | 193,828 | 68,571 | 95,160 | 643,914 | 548,754 | -26,588 | 136,173 | -10,917 |
2011C.Y. | 104,013 | -31,101 | -3,302 | 629,653 | 632,955 | -27,799 | 146,210 | -11,096 |
2012C.Y. | 47,640 | -80,829 | -42,719 | 619,568 | 662,287 | -38,110 | 139,914 | -11,445 |
2013C.Y. | 44,566 | -122,521 | -87,734 | 678,290 | 766,024 | -34,786 | 176,978 | -9,892 |
2014C.Y. | 39,215 | -134,988 | -104,653 | 740,747 | 845,400 | -30,335 | 194,148 | -19,945 |
2015C.Y. | 165,194 | -28,169 | -8,862 | 752,742 | 761,604 | -19,307 | 213,032 | -19,669 |
2016C.Y. | 210,615 | 43,888 | 55,176 | 690,927 | 635,751 | -11,288 | 188,183 | -21,456 |
2017C.Y. | 219,514 | 42,297 | 49,554 | 772,855 | 723,301 | -7,257 | 198,374 | -21,157 |
リーマンショック前には概ね経常収支黒字が20兆円前後、前年07年では14兆円あまりの貿易黒字で経常収支は25兆近くもあったのですが、リーマンショック後の09年には、貿易収支が5兆3,876億円、経常収支が13兆5,925億円まで急減し、以後徐々に復調して10年には貿易収支9兆5,160億円/経常収支が19兆3,828億年になってリーマンショック前に回復する直前の大地震でした。
10年の貿易収支9兆5,160億円→11年-3,302ですから、約9兆8000億円の減少でしかないようですが、原油輸入が増えるまでには、追加購入注文から船積→日本到達までのタイムラグがあるので、8〜9月頃から到着(財務省統計は通関統計でしょう)とすれば最後の4ヶ月前後の輸入増加分となります。
2012年は原発停止後マル1年間の統計ですが、12年は、4兆2700億以上の貿易赤字(10年比14兆円弱の悪化)・経常収支では4兆7,640億円(10年比約15兆円の減少)になりました。
10年貿易収支9兆5,160億円→13年は-8兆7,734の貿易赤字ですから10年比18兆円以上の減少です。
14年は-10兆4,653億の赤字ですから10年比約20兆円余の収入減少です。
原発停止による原油等追加調達量は12年も13年も14年もマル1年間で同じ筈ですが、13年にさらに貿易赤字幅が拡大したのはエネルギーコストアップ=各種産業の基礎コストアップによって、国際競争力が大幅低下したことによる可能性がありますがこれはこの後で書きます。
10年には回復基調・上り坂にあったのですから、11年以降本当はもっと黒字が増えるべき時に逆にこれだけ減ったと見るべきでしょうが・・これが原発全面停止による1年あたり収入減の実態でしょう。
昨日仮定数字としてキリの良い10兆円としましたが、原油輸入の増加による支出増加だけではなく輸出業界全体のコストアップによる競争力低下の結果、14年には何と20兆円もの貿易収支悪化が生じています。
貿易赤字が縮小(14年10兆4653億赤字→15年には8862億・10分の1以下に急減)したのは14年央から原油相場下落の恩恵効果の出た15年に入ってからです。
原発事故時に、原油や石炭の輸入数量急拡大によって、高度成長期以降初めて経験する巨額貿易赤字化が突然始まり、これが半永久的に続くと日本経済はどうなるか?
日本人は青くなりましたが、もちろんこれを大喜びする国も人もいます。
プラザ合意以降欧米包囲網作り→米国による日本叩きによって失われた10年とか20年というキャッチフレーズが世界で流布していましたが、内実をみれば日本は形を変えて、経常収支で毎年20兆円前後をシコシコと稼いでいました。
これを米国は許せないから世界中で日本叩き・中韓はこれに便乗して慰安婦騒動反日暴動など仕掛けてきたのが対中韓紛争の構図です。
この辺は、失われた20年論に対する反論として10年ほど前に連載しましたが、この日本の誇る経常収支黒字が震災前までの平均約20兆円から、急減して14年には何と4兆円弱・・首の皮1枚となるまで下がってきたことが分かります。
14年には月別データで見ると単月で経常収支の赤字になる時も出てきていましたが、1年間合計で何とか黒字に終わったという薄氷の年でした。
これは、円高あるいは消費地生産の国際動向に合わせた日本企業の海外進出→国内空洞化の複合的結果も左右しています。
現地生産あるいは、中国〜ベトナム等の低賃金を求めて工場が次々と移転していく時代・・・プラザ合意以降でいえば、韓国、 台湾進出の第一段階が終わってタイ等の東南アジア進出〜中国進出するようになると、韓台が中国現地生産では日本との競合企業になり、次の低賃金国ベトナム等へ移動すると今度は中国現地資本も競合企業になるなど、どんどん日本の優位性が失われていきます。
これに対する適応のための踊り場と重なった点も留意する必要がありますが、結果として(国内生産を縮小して現地生産に切り替えている以上は貿易赤字は仕方がない、その代わり現地生産による儲けの還流=所得収支黒字で穴埋めして行くという考えの否定につながる)経常収支でさえも赤字まで来たのは正月早々(14年1月は1兆4000億以上の経常収支赤字)の衝撃でした。