昨日見た久保庭眞彰氏論文では、ロシアの対外強硬姿勢は苦し紛れの真逆で2000年代に入ってからの油価高騰によって、ソ連時代の債務を返し国内再構築や軍の近代化(サイバー攻撃能力が飛躍的にアップしているのはその象徴?)が進み余力が出たことによるという趣旨のようです。
そう言われれば、その間のGDPが約2倍になっているということは国力2倍ですから、ソ連崩壊後失っていた自身を取り戻したい気持ちもわかります。
もともと西欧と仲良くやる予定ならば、ウクライナ侵攻もクリミヤ併合などを起こす必要がなかった・・もともと関係悪化を承知の行動だったという意見のようです。
ロシアはソ連崩壊後の混乱を収拾しようやく体力がついたので、民主化や人権重視方向にかじを切るのではなくその自信が強権支配や周辺侵攻.旧ソ連圏諸侯の盟主としての地位復活方向へとなったという解釈のようです。
言われてみると、中国も同様で豊かになれば欧米型人道主義・穏健な話し合い解決社会になるという期待が外れ、逆に中華の栄光復活を唱え内政的には強権支配補強・対外的には膨張主義満足のために豊かさを餌・・周辺国への開発資金の大判振る舞いをして浸透していく方向へ突き進んでいます。
豊かになった分を国民配分しないでで国民が納得するのか?いうことですが、10の儲けのうち1〜2割しか国民分配しなくとも解放前に比べれば国民は豊かになったことを実感できるのでしょうし、残り資金を権力周辺支持基盤に手厚く配り、国民監視のためや周辺国威嚇の軍事費に使っても国威発揚・・ロシアがソ連崩壊の惨めな記憶払拭に必死なのと同様に中国はアヘン戦争以来の屈辱の歴史を挽回するためにお金を使う事には国民同意があると言えます。
先進自由主義諸国では、分配が足りないという絶えざる批判にさらされているので労働分配率が上がる一方で、メデイアの煽る要求に応えるための各種施策・保育所増設・職業訓練など資金需要が増える一方ですが、他方で増税拒否キャンペインですから、概ね財政赤字に困る社会ですが、強権支配社会ではそのような不満を煽る仕組みがないので分配の不公平について権力者は気にする必要がほとんどありません。
民主国家でメデイアが国民不満を煽るのを前提に、メデイアの自由がない中露も同じ結果になると考えるのは間違っています。
全体成長を引き下げても、平等が主眼である筈の共産主義国家で極端な内部格差が当然視されているのは、パラドックスですが、そんな事は気にしない掛け声だけの主義主張の象徴です。
「共産主義・計画経済→国家意思貫徹=独裁政治必須社会のように見えますが、ロシア革命後約100年の歴史を結果から見れば、「共産主義だから自由のない強権政治になる」というよりは「強権政治をしたいがために共産主義が便利だからイデオロギーを借用して来た」だけのように見えます。
上記久保庭論文の意見は一般と違った角度からの分析で個別事象については傾聴に値しますが、グラフを見るとGDP成長率も少ししか下がっていませんが、原油価格が半分になってGDP・すなわち国力も半分になったというのが、一般的理解ではないでしょうか?
こうなると専門家の作ったグラフなのに昨日まで紹介した意見や明日紹介するグラフと違いすぎてどちらを信用して良いのか分からなくなります。
そこで上記著者が何となく偏ったロシアひいき専門家の疑いがありそうなので経歴を見ておきました。
久保庭氏の論説がネット評論家の元外交官馬淵氏のように何があっても「ロシア良い式」の意見開陳者の経済学者版かな?と見えるので、その故郷・出自を探ってみました。
http://www.ier.hit-u.ac.jp/~kuboniwa/about.html
久保庭 眞彰自己紹介
1972年
横浜国立大学経済学部卒
博士(経済学,第166号) 一橋大学
名誉博士(Dr.h.c.) ロシア科学アカデミー中央数理経済研究所
1987年
ソ連科学アカデミー中央数理経済研究所客員研究員
1990-91年
カリフォルニア大学バークレー校・ハーバード大学客員研究員
2005-2006年
レオンチェフセンター客員研究員
http://www.ier.hit-u.ac.jp/~kuboniwa/about.htmlによる自己紹介です。
研究歴
大学院時代は、ソビエト数理経済学の理論的調査や分権的最適計画メカニズムに関する数理経済学的研究を行いました。
一橋大学着任後は、時代の変化と研究リソース環境の変化に対応して、理論的最適化モデルの性能を計算機シミュレーションによって確かめる作業や、産業連関表を利用したソ連・東欧の静学的・動学的多部門実証分析を行うことに重点を移しました。
ソ連崩壊後から現在にいたるまで、市場経済への移行に直目して、
(1) ロシアや新興国諸国の経済成長と国際石油価格・交易条件・交易利得・エネルギー効率の変動の関係についての現代的時系列解析、
(2) 産業連関表等を利用した新生ロシアや中央アジアの経済・産業構造分析、
(3) 新興国とBRICsの比較経済研究、
(4) ロシアの財政連邦主義や金融・証券制度に関する統計的・制度的分析、
(5) EU・アジア・BRICs国際産業連関表を利用した各国間経済リンケージの分析、
(6) ロシア・中国・中央アジアの鉱工業生産、GDPの歴史的遡及統計推計、
(7) 環境経済
に関する教育・研究を試みております。
その他海外歴がありますが、レオンチェフセンターレオンチェフセンター自体が、「レオンチェフが幼少期から大学卒業まで(1906~1925年)を過ごした故郷サンクト・ペテルスブルグ(旧ペトログラード・レニングラード)に,改革派の拠点の1つとして1991年に設立された研究機関・・)学問の故郷・郷愁が旧ソ連圏にあるような印象です。