ここに至る過程を素描しておきましょう。
シリア化学兵器使用に関する安保理の採決は以下の通りでした。https://www.jiji.com/jc/article?k=2018041100200&g=intシリア化学兵器で機能
不全=米ロ対立で3決議案否決-国連安保理
【ニューヨーク時事】シリアの首都ダマスカス近郊、東グータ地区ドゥーマでの化学兵器使用疑惑をめぐり、国連安全保障理事会は10日、加害者を特定する独立調査団設置を決める米国作成の決議案を採決したが、シリア・アサド政権の後ろ盾ロシアが拒否権を行使し、否決された。この後、ロシア作成の2決議案も採択に必要な支持が得られず、廃案になった。
アサド政権の関与を主張する米国と、ロシアの対立で責任追及に向けた措置を打ち出せない安保理の機能不全が再び浮き彫りになった。
国際社会が一致して対応できない中で、トランプ米政権がシリア攻撃に踏み切ることに対する懸念が強まっている。
米国案は12カ国が賛成し、ロシアとボリビアが反対、中国は棄権した。シリア内戦をめぐるロシアの拒否権行使は12回目。一方、ロシア作成の独立調査団新設決議案は、採択に必要な9カ国の支持を得られず否決。賛成は中国など6カ国、反対は米英など7カ国、棄権は2カ国だった。
メデイア好みの「機能不全」というよりは、拒否権制度というものは、もともと大国間の紛争に国連は関与しないためにあるのですから、制度機能そのものです。
拒否権行使すれば国連としての関与はできない=その先は国連が関与しないので土俵外でルールなき戦いを勝手にやって下さいという方式です。
弱小国にとっては強国の横暴を訴えるためには国連のお墨付きが必要ですが、ロシアより何倍も強い米国が国連のお墨付きがなくとも「自分独自に空爆してもロシアが歯向かえないだろう」という読みで、大義を求めて安保理にかけているに過ぎない場合に「賛成12対反対2棄権は中国のみ」という状態であれば、ロシアが拒否権行使すればその結果どうなるかは明らかだったことです。
化学兵器使用論はフェイクだと主張しながら問答無用式の拒否権行使では、国際世論の支持を受けるのは無理がある・・米英仏は国際世論を味方に つけたことになります。
その上で米英仏の強硬論を批判しても始まらない・・・その先は強硬論同士の衝突・・どちらが戦端を開く勇気があるかにかかっていたのです。
ロシア軍をまともに攻撃するのではなく、ロシアが応援しているシリア空爆程度では、ロシアから先に米軍に攻撃を仕掛ける勇気などあるわけがないという私の読みと同じで米英仏国は空爆実施したのでしょう。
米英仏はロシアが怖いから安保理に掛けたのではなく、国際世論対策の手順として現地調査案をしたのに拒否権行使してくれたからタイミング良しと空爆に踏みきっただけのことです。
拒否権行使が却って空爆の時期を早めた事になりますが、ロシアは米国がロシア軍を怖くて米英仏が空爆実行できないと誤解していたのでしょうか?
ロシアは自国存亡の危機でもないことで、米軍に戦いを自分から挑むはずがない・・無謀な挑戦をできるはずがない・1962年のケネデイ対フルシチョフのキューバ危機で証明されている通りです。
その後相次いだイスラエルとアラブ諸国との間で連続した第何次戦争でも、その後のフォークランド紛争の時でもイスラエルや英国をソ連は脅迫することができませんでした。
その後ソ連崩壊→ロシアの国力減退・軍事能力低下が明らかですから、ロシアが米国の軍事力行使に対して、自分が直接の標的にもなっていないのに、米軍の行動を妨害するためにあえてちょっかいを出す能力があるとは到底思えません。
メデイアはシリア駐留ロシア軍に被害が出ると本当の戦争に発展すると頻りに騒いでいましたが、米軍の行動に当つる危機感を煽って実力行使を辞めさせる方向・「シリア国民が化学兵器の犠牲になっても主権の問題だから放置せよ」という結果?に向けてブレーキをかけたい特定の傾向がアリアリです。
今朝の日経新聞はロシアによる空爆非難決議案について、安保理事15カ国中、中国とボリビアしか賛成がなかったのは当然のような書き方でしたが、たまたま事務所へ行く途中の電車で、座席に放置されていた朝日新聞をちらっと見ると米英仏が空爆正当化という見出しでいかにも不当なイメージの表現が踊っていました。
仕事が終わって自宅に帰ってから朝日新聞ニュースを見ると以下の通りです。
(この部分は夜の書き足しです。)
https://www.asahi.com/articles/ASL4G7W43L4GUHBI044.html
朝日新聞が入手した決議案によると、主権国家への攻撃に「深刻な懸念」を示した上で、「米国とその同盟国に即座に侵略を止め、更なる武力行使を自制するよう求める」としていた。
しかし、採決の結果、賛成はロシアと中国、ボリビアの3カ国にとどまり、採択に必要な9票に届かず廃案になった。反対は8カ国、棄権は4カ国だった。
ロシアの主張ばかりで、「しかし・・」と残念そうな書き方です。
朝日(読者)の好きな綺麗事ばかりでは、正義が行われなくなるのをどうするかの視点がありません。
March 17, 2018,にゲリラや犯罪者が私有地を自由に横切って逃げているときに、警察官が私有地に入れないのでぐるっと遠回りしていると逃してしまうという矛盾を書きましたが、この1週間ほどの間にその事例が報道されています。
瀬戸内海の小島で刑務作業中に逃走した受刑者の捜索で、過疎地のために空き家が多すぎて、逃走者が空き家に潜んでいてもその家主の同意がないと勝手に入れない・遠隔地に出たままの持ち主を探して連絡を取っているうちに逃げられてしまうので捜索逮捕に苦労しているという報道です。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180414/k10011403211000.html
愛媛県今治市の刑務所から男の受刑者が逃走してから14日で7日目となり、男が潜伏していると見られる広島県尾道市の島では、予定されていたイベントが中止になるなどの影響も出ています。警察は引き続き1200人態勢で捜索を続けています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180413/k10011401031000.html?utm_int=detail_contents_news-related_002
島には空き家が1000軒以上ありますが、所有者などの許可が必要なため捜索は難航し、これまでに有力な手がかりは見つかっていないということです。
主権は必要ですが、政府が自国民相手に化学兵器使用しても政府の勝手と言えるのかともっと高い視点からの対策が必要ということです。
家庭内に警察がむやみに介入すべきではないですが、家庭内暴力が行き過ぎれば刑事事件として介入できるようになってきましたが、物ごとにはもっと大所高所からの視点が必要でしょう。