非正規雇用が世界的に急激に広がった原因・・社会の需要とこれによって引き起こされた社会矛盾の解決・・労働の細分化による人間性喪失・・様々な懸案解決に必要な線引き・基準として何が有用か、待遇改善を急ぐべき基準で考えれば、正規と非正規の区別基準は自ずから明らかです。
私の法的アプローチでは、期間が来ても更新が原則か否か・終身的かどうかで社会の基本システムに違いが出るのであって、1週間とか1ヶ月の労働時間だけで区別して保護すべきかどうかを決めるのは、ほとんど意味がないように思えます。
仮に2〜3ヶ月間でも期間満了で自動的に雇用が終わる関係では、労働者の生活が安定しないことは同じですし、企業もすぐにやめていく予定の労働者の技能アップや健康管理に関心が低くなるし同僚間でも親しくする気持ちが起きにくいでしょう。
非正規雇用増加が社会問題になっている理由は、雇用条件劣悪・技術訓練のチャンスがない結果最低収入から抜け出せない・・年齢上昇しても収入が増えない結果、(年齢に比例して昇級する年功性社会を前提にすればの話です)結婚できないし子供を育てられないなど・社会の持続性に問題が起きているからです。
従来型年功(終身雇用的)モデル社会が崩壊しつつあると言えます。
この大規模な変化を放置できなくなって社会問題になり、問題解決のために統計等の必要性が出ているのですから、この問題意識によって非正規雇用とは何かの分類すべきでしょう。
非正規雇用が広がった原因を見ると根本は解雇制限による企業の機動性が失われたことによるのですから、この例外にあたる雇用形式か否かで分類すべきです。
非正規が急増した背景は、雇用調整ができない不都合解決の必要に迫られて発達したものですが、・・短期・臨時的雇用付随的要素として熟練不要=低賃金化できる・・短期入れ替えが多い面から(手作業時代に始まっているので)源泉徴収等の煩雑さを免除していることから、保険年金制度からの除外・・企業負担がないなど雇用者側にとって、コストメリットが大きかった点が特徴です。
勘ぐれば、非正規雇用を増やすための一種の優遇策だったことになります。
本来国際競争が激烈になって、技術陳腐化・サイクルが早まったことへの対応力強化目的だけで見れば、解雇規制柔軟化に対応できる「期間の定めのある契約」(解雇規制除外雇用の拡大)だけで良いはずでそれ以上の付随的マイナス処遇は不要のはずす。
労働者からいえば、上記付随的要素は不必要・不合理な差別ですからIT化進展によって事務作業の煩雑さが解消されればこの種の差別がなくなるべきです。
IT化の進展に合わせて、源泉徴収、保険、年金等の履歴作成や給与天引き等の事務作業が容易になっているのですから、いつまでも短期労働者からの各種天引き事務が煩雑だという理由で各種天引きシステムに加入させない差別は無くしていくべきです。
この数年政府がいわゆる非正規職種への公的保険・年金加入を認める方向へ舵を切っているのは、合理的方向性というべきでしょう。
このように見ていくと各種保険等に加入できるかどうかは正規非正規の派生した結果に過ぎないから、これらの有無で分類するのではなく、本質的理由・・解雇規制が及ぶかどうか・及ぼすべきかどうかで分類すべきです。
例えば週30時間以内の労働であろうと何十年も勤続した人を合理的根拠なく雇い止めにするのは解雇権の乱用になるべきであって、非正規に分類されているか否かは関係がありません。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/
厚労省 改正労働契約法のポイント
有期労働契約(※)の反復更新の下で生じる雇止めに対する不安を解消し、働く方が安心して働き続けることができるようにするため、労働契約法が改正され、有期労働契約の適正な利用のためのルールが整備されました。
※有期労働契約・・・1年契約、6か月契約など契約期間の定めのある労働契約のことをいいます。
有期労働契約であれば、パート、アルバイト、契約社員、嘱託など職場での呼称にかかわらず、対象となります。
「労働契約法の一部を改正する法律」が平成24年8月10日に公布されました。今回の改正では、有期労働契約について、下記の3つのルールを規定しています。
1 無期労働契約への転換
有期労働契約とは、1年契約、6か月契約など期間の定めのある労働契約のことをいいます。
パート、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託など職場での呼称にかかわらず、有期労働契約で働く人であれば、新しいルールの対象となります。
無期労働契約への転換
有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるルールです。
II 雇止め法理」の法定化
最高裁判例で確立した「雇止め法理」が、そのままの内容で法律に規定されました。
一定の場合には、使用者による雇止めが認められないことになるルールです。
III 不合理な労働条件の禁止
有期契約労働者と無期契約労働者との間で、期間の定めがあることによる不合理な労働
条件の相違を設けることを禁止するルールです。
上記の通り判例では契約期間の長短は一つの要素ではあるものの、契約の実質・実態から見て、雇い止めがないものと期待されている就労形態かどうかで解雇の正当事由を見ています。
期間制限がなければ終身雇用的になりやすいし、(後で労働法の判例を紹介しますが、半年でも1年でも期間の長短はそれほど意味がありません・正当事由がないと簡単に雇い止めしにくい判例が定着しているからです)希望の党が定義していないものの同党いう「正社員」という呼称にも近いか?という印象でした。
小池氏は流行語であるダイバーシテイ化を強調しながら、他方で正社員就労支援というのですから何を考えているのか?流行語を追いかけているだけではなかったかとの疑問が生じます。
非正規雇用者の生活を何とかしたいならば、非正規雇用の待遇改善の主張・・解雇規制や社内教育の需実・各種社会保障制度の見直し・職業訓練のあり方等々について与党との違いを示すことではないでしょうか。
ところで継続的契約関係では、3年続けば5年続くと思うし10年続けば20年続くような期待が相互に生まれるのが人情です。
ただこれも生活維持に必須の関係でこそ永続性が(法的保護)期待されるのであって、友達や趣味その他稽古事ではいつの間にか疎遠になって行くのを誰も不思議に思いません。
生活維持必須性に基礎をおく関係については、永続性(生活基盤保障・弱者保護)重視のために判例では継続関係断ち切りには慎重な方向で解釈運用されてきました。
長期関係を打ち切るには打ち切らざるを得ないような「正当事由が必要」という法理論が判例上いろんな分野で徐々に形成されてきたのは社会的必要性があったからです。
ところが、弱者救済の精神で始まった正当事由を要求する判例がかたまってくると今度は社会の硬直化を招く弊害の方が目立ってきました。
このような硬直的な制度構築が日本社会の隅々にまでいきわたってくると硬直化を避けるための国民の知恵というか、労働分野では非正規が増えてきたのではないかの視点で書いています。
これらの判例法にはそれなりの合理性があったのですが、まず借地法借家法で見ると高度成長に伴う都市の拡大その他の社会変化に対応できない・硬直化を招く弊害が目立ってきました。