看板だけ希望の党で代表もそのままにしておいて内部を牛耳る民進党の戦略はいわば保守票を護憲派支持かのようにすり替える(ズルすぎる)妙薬です。
10月31日に書いたように民進党と組むことによって(組むだけでなく乗っ取られそうなことか3ら)、反民進党(保守系)票が脱兎のごとく逃げる効果・「国民を馬鹿にしてはいけない」ことを読み誤ったと思われます。
小池氏が民進党の看板(娘?)になってしまう・・民進党による「希望の党」乗っ取り計画があまりにも見え透いていたので小池氏の支持層であった保守系浮動票が早速逃げ始めました。
選挙までの期間が短いから「ごまかしが効く」と想定したのでしょうが、この程度の「見え透いた戦略」は誰でも想定がつくことです。
都知事選以来小池氏を応援していた人々にとっては、政権取りのためには左翼とも組む小池氏の心変わり・内部での風向きが変わったこと(協力の必要な民進出身者細野氏らの厚遇・発言力アップ)を肌で感じていたでしょうから、彼らのマイナス拡散力もバカになりません。
メデイア界では「排除の論理」が一気に支持を失った原因と最大限批判していましたが、それを前面に打ち出さざるを得なくなったほど小池氏自身が政権取り・権力欲実現のためには反安保・違憲論者の支持を得る方向へウイングを広げたことに対する都知事選で支持に回った浮動層に対するショックの方が先に進んでいたのです。
小池氏は、元々の政治スタイルからして無用になった(希望の党立ち上げ後必要な資源は、全国展開に必要な資金力・立候補のタマと組織力です)内部の保守系支持者の使い捨てを気にしなかったでしょうが、これが思わぬ波及・・肝心の浮動票の離反が始まっていたのです。
小池氏としては希望の党が安倍政権を脅かし連立相手にしてもらうには、大量立候補者と資金力が必須でしたが、あくまで保守系に軸足を置いて国政(連立)に参加したいのであって、非武装平和論の左翼系のスターになるつもりはなかったでしょう。
しかし大量立候補者を手早く集めるためには、民進党のコマを使うしかないとすれば、選挙後党内多数派を占める彼らの発言力に影響されるしかないジレンマです。
文字通り魂を敵に売ってでも権力欲の赴くままに突き進むか、ここはじっと我慢・都政で実績を積みながら数年かけて地道に勢力を広げるかの思案どころであったはずです。
小池氏はここで、政治家として必須の魂を売ってしまったのを身近にいた支持者に見抜かれてしまったのだと思われます。
希望の党のフィーバー原動力であった保守系浮動票の大方が、「この人は天下国家のために動く政治家ではなく、我欲だけで動いているのだ」と見抜いてしまい潮が引くように逃げ始めました。
浮動票に逃げられたのでは、浮動票による底上げ期待の民進党員にとっては希望の党に合流する意味がないし・・小池氏にとっても民進党支持者しか投票してくれないのでは立候補者を全国で立てる意味がない・・無意味な旗揚げだったことになり場合によっては政治生命を失いかねない事態になってきました。
メデイアは反安保思想が主流ですから、つい数ヶ月前まで安保法制違憲主張をしていた民進党議員が安保法制強化を主張してきた希望の党への合流させてもらうために節を曲げて安保法制/憲法改正賛成に署名する姿を想定して節操のなさを嘆いていましたが、実は民進党支持者も保守系浮動層も、誓約書などに重きを置かずその後の党内勢力関係に重きを置いていたことが選挙結果でわかります。
選挙結果を見るとhttp://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201710/CK2017102302000252.htmlによると以下の通りです。
希望、東京で1勝22敗 選挙区 自民、首都圏も堅調
小池百合子東京都知事が率いる希望の党は三都県の三議席にとどまり、お膝元の都内は一勝二十二敗だった。
希望は八十選挙区に候補者を立てたが、半数以上が新人で苦戦。都内は前職長島昭久氏(東京21区)が議席を得たが、小池氏側近の前職若狭勝氏(東京10区)は選挙区は届かなかった。
小池氏のお膝元である都内たった一人の当選者は元民進党の有力者長嶋氏ですから、彼ならば無所属でも当選した可能性が高かったでしょう。
この結果によれば、小池フィーバーによる当選者ゼロで元々の民進党支持者の固い票で当選しただけという印象ですから、これでは保守系政党と言える実質がありません。
メデイアは「排除の論理を引き出された失敗が大敗の原因である」とあたかも左翼系の票が逃げてしまったかのように今も吹聴していますが、流れは逆でしょう。
民進党支持者の方が選挙後どうなるかよく知っていて当面表向き安保法制賛成と書いても一時的でしかない・・党内多数を握ればなし崩し的に元民進党系の意見になって行くに違いないと読んでいてトクな取引と考えて長島氏支持を変えなかった様子が見えますし、同様に選挙後乗っ取られるのがわかっている保守系の票がほぼ100%逃げてしまった結果が見えます。
メデイアの宣伝とは違い、排除の論理強調によって左翼系の票が逃げたのではなく、排除の論理強調にもかかわらず排除の論理強調にもかかわらず保守系浮動層の引き止めができなかったのが真相でしょうし、元々の民進党支持層もそれぞれ合流の結果がもたらす実態をよく見ていたのです。
小池氏は政権取りの我欲に負けて民進党の人材と資金力・そして連合の運動員提供の甘言に頼ってしまった・・魂を売ったのですから「いいとこ取り」できない失うべきものを失ったのはあたりまえです。
ただしそこはプロですから、合流発表直後から始まった浮動票離反の風を感じた小池氏も前原氏も焦ったものと思われます。
この焦りが両者会談直後の安保法制・憲法改正賛成とこれに応じる誓約書提出要求・応じない民進党議員の合流拒否・・「排除論理」を強調して表明せざるを得なくなった・・このくらいはっきり言わないと逃げ始めた動きを止められない・・焦りが背景・真相でしょう。
排除発言は小池氏と前原会談直後の記者団に対する表明が最初のようですから、十分な擦り合わせの結果であったと思われます。
このあと希望の党の重鎮になっていたこの夏ころに離党していた民進党の細野豪志だったか(受け入れリスト作り担当?)が、すかさず「三権の長経験者には少なくともご遠慮いただきたい」ような発言をしています。
実力者がいっぱい入ってくると元民主党系同士でも大先輩に主導権を奪われるのを嫌ったからでしょう。