メデイアはきちんとした調査を!

以上見てきたように日経新聞報道による最高益と手元資比率の関係は、どの対象を調べた数字か不明なので合理的比較をできないようになっています。
11月25日の記事では、最初の方に「日本経済新聞社の調査では企業の17年度設備投資額は前年度比13、6%増と4年ぶりに2桁になる見通しだ」というだけで、この調査がだいぶ後に書いてある「積み上がったのが手元資金だ。直近で過去最高の117兆円と00年に比べて8割増えた。」という手元資金の数字根拠にもかぶるのかすらはっきりしません。
仮にかぶるとしてもどこの業界発表の数字を集計したのですらなく自社で独自?「調査」したというのですが、そもそも何を調査したのかすら書いていません。
日本企業全部または上場企業だけか、従業員何百人以上の企業または資本金何十億以上全部調査したのか、回答率何%か回答しない企業をどのように推定したかという方法などすべて闇の中です。
私の意見では、手元資金の大まかな第一次基準は月商規模によるべきで、投資計画中で資金蓄積中などは個別事情によるというものですが、第一次的妥当性を見るために月商と比較しようとしても、日経新聞社調査によるというだけで調査対象を書いていないので比較対象すべき企業群が不明です。
「直近で積み上がった手元資金は117兆円だ。」の手元資金が上場企業全部ならば、上場業全部の月商合計が必要ですし、日本企業全部ならば、日本企業全部の月商が必要です。
あるいは業界別の聞き取りによるというのならば、業界平均の月商が必要でしょうし資本金何億円以上の企業集計かもしれません。
数字根拠を出さない報道の仕方は、その数字が正しいかどうかのチェック不能にするばかりか、その数字を前提としたその先の議論の材料にもできない点で、第三者参加による合理的議論の積み上げに寄与しない不毛な報道の仕方であるように思われます。
そもそも第三者との合理的議論の高まりを期待していない・・議論に自信がない報道だからデータ出所をださないのでしょうか?
思想表現の自由は、思想市場で合理的議論対象にできてこそ必要で有用なものです。
ムードを煽るだけの言論に有用性があるのでしょうか?
個々人にとっては、合理的な調査をする時間も能力もないので「何かおかしい」というだけでも表現の自由が必要ですが、マスメデイアが根拠を合理的に示さずにムードだけけ煽るのは危険です。
ところで、仮に日本企業が必要以上の手元資金を保有しているとしても、メデイアはこの主張を繰り返すことによって何を実現したいのか連載意図が不明です。
その主張によって日本経済をどのようにすべきだという目的があるのでしょうか?
メデイアが何の政治経済効果を求めて「企業が儲けを溜め込んでいて投資に振り向けない」と批判するシリーズを組むのでしょうか?
韓国では内部留保課税実行で雇用促進を狙ったものの配当が増えるだけで終わっていることを11月19日に紹介しましたが、韓国と日本とでは経済活動の実情が違っています。
韓国では大卒や若者の就職率が低く、失業率の高さが危機的状況にあることが知られていますが、日本では求人が求職を超えていて人手不足のため受注に対応し切れない・・事業規模縮を縮小するしかないほど・たとえば宅配大手のヤマトでは配達回数を減らすために指定時間枠を減らすしか無くなっているのがその象徴で、就職難で困っている韓国とは実態が違っています。
http://www.kuronekoyamato.co.jp/ytc/info/info_170317.html

配達時間帯の指定枠の変更(平成29年6月中)
(1)「12時から14時」の時間帯指定を廃止します。
(2)「20時から21時」の時間帯指定を廃止し、「19時から21時」の時間帯指定を新設します。

今朝の日経新聞朝刊2ページには大きな見出しで「外食無休もう限界」という記事が出ています。
無休前提の外食業界も人手不足に勝てないので(交代勤務要員の手当てがつかない)徐々に深夜終日営業を切り上げていましたが、ついに無休営業をやめて休業日を設けるところが出てきたということです。
他方韓国では大変な雇用状況が以下の通り報道されています。
https://ameblo.jp/katsumatahisayoshi/entry-12329294824.html

2017-11-21 05:00:00
韓国、「身勝手」日本と同盟組まぬが「大学生就職」宜しく!?
韓国の就職状況は惨憺たるものだ。『中央日報』(11月2日付)は、その実態を次のように報じた。
「11月1日、韓国経済研究院によると、日本の8月求人倍数は1.52で、2015年1月(1.15)に比べて0.37ポイント上がった。就職希望者100人が就職できる雇用が152という意味で、52の雇用は労働者を求めても得られない状況だ。韓国は同期間の求人倍数が0.68から0.62にむしろ後退した。就職希望者100人が62の雇用をめぐって競争しているという意味だ。日本や米国はここ2年間、雇用環境が急速に改善されている一方、韓国の雇用事情は依然として停滞しているためと分析される。日本はアベノミクスのおかげで恩恵を受けている。
・・・・
1)「韓国外交部の趙顯(チョ・ヒョン)第2次官が11月13日、東京で日本政財界の要人と会い、韓日関係改善に対する韓国政府側の意志を伝えた。韓国外交部は『趙次官は日本経済団体および政府関係者の面談時、韓日関係改善に向けた韓国政府の意志を伝えた』と明らかにした。また『韓国人材の日本企業就職増大の必要性を強調した』とし、『日本側もその必要性に共感し、今後、双方の緊密な協議を通じて、日本企業が希望する韓国人材に対する情報提供、韓国学生の日本留学の増大および現地就職支援など協力方案をより具体化していくことで一致した』と伝えた」
このパラグラフを読むと、外務次官の訪日目的は就職依頼である。その前段に、日韓関係改善とあるが、主題は就職依頼だ。
・・・・
(2)「韓国人材の日本企業就職増大のための具体案として、趙次官は韓日大学間の相互単位認定制度の拡大を通じて、韓国の大学3年生が日本の大学4年生の課程履修後に現地で卒業および就職する案を積極的に推進することにした。また、日本の法務省や厚生労働省ともこの方案を進めていくための協力方案を協議していくことにしたと外交部は伝えた」

韓国学生の日本での就職促進で、具体案も持参していた。早手回しである。韓国の大学3年生が、日本の大学4年生に編入して卒業させ、日本で就職するという案である。数年前から韓国の就職難によって、日本の大学へ留学するケースが増えていた。日本語もその間に上達するメリットがあるというのだ。ただ、4年生からの日本留学案は、いかにも「羊頭狗肉」の感じだ。日本の大学を卒業するから日本人並みに扱って、就職させてくれというに等しい話である。」

この結果韓国は反日感情を一方で煽りながら同時に外交当局が韓国若者の就職を日本公式にお願いして来ている身勝手さを上記で書いています。
今の日本では、仕事(受注しても)が(人手不足で)間に合わないので投資を先送りしてほしい(オリンピック後に先送りしているプロジェエクト)分野がいっぱいあります。
一時の好景気よりも、長く続いた方が国民にとってもよいでしょう。
人手不足で各種プロジェクトを先送りする必要に迫られている我が国で、内部留保や手元資金過大をイメージアップし投資不足を強調する必要性がわかりません。
論理的でないのを知っているからこそ、非合理なイメージ報道しかないのかな?と思えますが・・。
韓国では国内投資不足を背景に内部留保課税を実行したものの一時的に配当が増えただけで雇用創出に結びつかなかったことを11月19日に紹介しましたが、日本では同じ問題・・失業で若者が溢れているどころか、逆に人で不足で事業縮小ているところが出ている始末です。
日経新聞の連載は日本の実情を地道に観察した結果の問題点指摘ではなく、韓国の緊急テーマを無批判に日本にそのまま持ち込んでいるのではないかの疑問があります。
アメリカで格差社会反対がブームになると日本中のメデイアがこれを煽っていましたが、日本社会に関係が薄いのですぐにしぼみましたが・・、主体性がなさ過ぎるように見えます。
朝日新聞のの慰安婦報道もそうでしたが、客観事実調査能力がないのではないでしょうか?

手元資金と日本経済

大手企業の(連結決算)利益は世界中で稼いだ利益ですから国内売り上げだけではありませんので、最高益だろうが利益に比例して国内投資する訳ではありません。
国内の儲け中心で最高益になっている大手企業は皆無に近いでしょう。
仮に国内だけで7%の利益とした場合を仮定すると、1%しか投資が増えないならば、残り6%はどうなった?ということですが、そもそも単年度利益が出てすぐに新規投資する企業の方が稀でしょう。
今朝の日経新聞4Pには宇宙監視部隊(宇宙ゴミの浮遊状態の監視)を創設すると出ていましたが、読んでみるとこれから機器の準備の他に今後アメリカ基地で訓練を受けるなどを経て制度発足は22年度からということらしいです。
こういう制度構想を構築すること自体に数年の根回し・政治力が必要でいよいよ受け入れてくれるようになってからでも、人材育成や機器整備システム構築などで22年までかかるようです。
身近な機器の補修と違い社運をかけるようなあらたな方向性に投資するには、数年以上かけて温めてきた企画(新分野の場合内部人材が手薄なので人材養成から始まります・・業務提携するには相手との信頼関係構築等の準備が必要です)があってあるチャンスを機会に始まるものですから、1期や2期の利益だけですぐに新規投資・決定実行までできる企業などほとんどないといってもいいでしょう。
そもそも世界的規模の企業で、その年度の儲け(トヨタの18年3月期末予想を23日に引用紹介しましたが、半年前の売り上げ伸び率予想だけでその期中に大規模な投資計画をつくるだけでも拙速すぎるのにその計画に基づいて工場用地を選定しかつ地主等との買収交渉して契約を済ませて、その後地元政府への許認可申請など済ませて、さらに工事を済ませて支払いまで終わり、手元資金に残っていない状態にしてしまうなど想定不能です)でその年度内に投資するのは物理的に無理があります。
機動的投資が可能なように、あらかじめ広めに工場用地を取得しておいて新規事業やラインは既存工場敷地内に立ち上げる事例が多いですが、それにしても旧設備と同じラインの増設ではあまり意味がないので、第1期工事後に発展した新技術を盛り込んだ新たなラインとなれば、どの程度盛り込むかなどのすり合わせも必要です。
美容院、レストランのような簡単な新規投資でも、半年や1年顧客の入りが良いからといってその年の儲けの何倍もの新規投資・・すぐに支店出店まではしない・ある程度好調が続いてから決断するのが普通です。
この客の入りは本ものか、この好調がどのくらい続くかの判断を経て(円安景気がいつまで続くか、原油安がいつまで続くかなど)出店や増産投資を考えるのが普通です。
大手企業の生産力増強投資の場合には、諸外国での立地が多くなっている関係でもっと複雑なプロセス・時間が必須です。
まして資金力の問題では全額借金では怖い(リスクが大きすぎる)ので、ある程度利益が溜まってから考えるのが普通です。
最高益と投資の状況については、25日の「最高益の実相」の欄で「じわり動く現金の山」という表題で個別企業の動きが出ていますが、最高益なのに投資が少ないというイメージで書く以上は、投資額と利益率との比較が論理的ですが、これをしないでいきなり下記の通りの総資産増加率との比較になっています。
26日紹介したように「積み上がったのが手元資金だ・・・00年度に比べて8割増えた。総資産の増加率(4割)より大きい。」というのですが、2期連続の最高益なのに投資がその割に少ないというイメージ主張をするならば、7%の利益率と資産額がどういう関係にあるのかを書くべきでしょう。
企業は資産規模の競争をしているのではなく、稼ぐ力の競争をしているのですから資産規模伸び率と比較しても意味がありません。
レストランやホテル・デパートなどが巨大施設を構えて1割くらいしか客がいない・ガラガラでも施設の大きさだけ自慢するのではなく、10人程の客が入る店でも利益率をあげる経営者の方が優秀です。
中国やロシアが未だに領域の広さを重視していること自体が、数世紀遅れの価値観にこだわっていることが分かり、ひいては国民意識がそうである以上は国内政治手法もこれに連動しているのでしょう。
先進国では、小規模のコンビニや居酒屋があちこちにフランチャイズやチエーン店化して盛況している理由です。
過去約25年間産業界はバブル崩壊後の贅肉削ぎ落とし→資産の圧縮・筋肉質の経営プラス(リーマンショック級の大変動に耐えるための)自己資本比率アップに苦労してきたのですから、日経新聞がバブル崩壊前の資産と手元資金を比較して批判して(論理的でないことを自覚しているからか括弧書きで書いているだけなのか?)いるようなイメージ主張するのは無理があります。
上記の通り企業高収益が2期も続くと積極投資に踏み切りたいと思っても、それには長期的傾向を見極める下調べ等の準備が必要です。
ベトナムやカンボジアに工場進出するかどうかも1〜2ヶ月の思いつきで実行できることではありません。
もともとの関心である手元資金(決済用資金)が、過大かどうかを新聞がシリーズで主張する以上は、判断根拠・基礎的資料として少なくとも総売上の資料提示してそれとの比較が最低必要です。
その上で個別事情のチェックに入るべきでしょう。
そこでネット検索してしてみたところ、データが13年分と古い(なぜか近年のデータ検索がでない)ですが、以下の通りです。
ikkei.com/article/DGXNASFS2900I_Z20C13A1EB2000/2017年11月25日(土)

2013/1/29付
日本企業の売上高、全産業で1302兆円 経済センサス・活動調査
経済産業省・総務省は29日、2012年の「経済センサス・活動調査」を発表した。企業活動の国勢調査と位置付ける新しい統計で、今回初めて各企業の業績を集計した。全産業の売上高は1302兆2523億円、粗利益に近い「付加価値額」は242兆6658億円になった。岩手、宮城、福島の被災3県では震災後1割前後の事業所が減ったこともわかった。

大震災直後の12年でも1300兆円・月商で言えば約110兆円ですから、決済用資金としてはその1〜2倍が必要です。
今は5年経過で好業績=決済用資金も膨張しているはずです。
日経新聞の書いている117兆円はもしかして全企業の売り上げではなく、上場企業だけのデータ(それも東証一部だけかどうかも書いていません)を書いているようにも思いますが、はっきりしないので何と何を比較して良いのかすらわかりません。
仮に117兆円とすると手元資金としては月商の1〜2ヶ月前後が必要とする会計原則と大幅な乖離がないように見えます。
ただし、上場企業全部か東証1部だけかすらはっきり記憶しませんが、総売上が700兆円前後とどこかで見たように記憶していますが(今すぐにはデータ根拠を示せません)そうとすれば月商平均約60兆円・その1〜2ヶ月分の決済資金準備プラス増産投資や企業買収あるいは資本参加のための資金需要や納税、配当資金等々がこれにプラスされると)とすれば大方整合しています。
まして上記「金融経済用語」説明のようにリーマンショック以降危機管理コストとして手元流動性を手厚くする傾向・金融機関等の自己資本比率アップ強制の世界的傾向とも合致しています。
イザという時のためにどの程度自己資本を手厚くしておくべきかは、各企業の独自判断で良いのであって、それを批判するのは、個別事情分析のアナリスト意見に市場がどのように反応するかに委ねるべきです。

内務留保の重要性と流動資金の関係4

経営者にとってはいざという時のための必要資金と思っていても、プロから見たら心配しすぎ・もっと少なくて良いという場合もあるでしょうが、(金融機関との間でいざという時には、例えば即時に500億円まで融資を受けられる融資枠契約をしておけば保証料だけ支払えばすみます・・こういう工夫の余地)こういうことはアナリスト等の個別分析が有効な分野であって、一般論で煽ることではありません。
個別企業分析能力のない一般エコノミストがアナリスト意見・市場の声(株価反映)を踏まえないで単に最高益に対するやっかみ的連載を繰り返すのは困りものです。
産業界は最高益更新に湧いているが庶民には関係がないという型通りのやっかみ報道に見えます。
長期好景気と言っても庶民には「実感がない」という根拠なき断定報道も同根です。
仮に一般論であるならば、日本の企業全体の総売り上げの推移と手元資金との比率変化を論じるべきですが、全体の売り上げがどうなっているかの比較記事を見たことがありません。
産業規模が大きくなれば絶対額が増えるのは当たり前ですから絶対額だけを煽っても意味がありません。
1昨日(土曜日)はせっかくの好天に誘われて佐倉の川村美術館に出かけてお気に入りのな庭園を見ながらゆっくり食事をして帰ってきたので、夜帰ってから新聞をちらっと見て驚き、今日もこの追加意見に追われていますがまだ昨日からまともに新聞を読んでいませんので読み間違いがあるかもしれません。
テレビ局のサンゴ礁に関するヤラセが大問題になりましたが、テレビ局がサンゴ礁についてどういう意見を発表しようと勝手としても(中立性違反の問題は別として)が、前提事実にやらせ・虚偽または誤りがあるのではまともな意見とは言えないでしょう。
私のように趣味で書いている個人のブログでも前提事実の記憶についてはうろ覚えなので大方自信がないと毎回のように断りながら書いていましたが、最近簡単にネット検索できるようになったので前提事実についてはできるだけ(その分煩雑になっていますが・・)引用する(・引用文を信用するかは引用先次第・読者におまかせする)ようにしています。
紙媒体の新聞の場合、そのままコピーできないので、文字をそのまま打ち直していますが・今回あまりにも数字が違いすぎるので引用ミスをしたかな?と心配してまだ捨てていない21日の新聞を読み返してみましたが、「日本企業が持っている現預金は200兆円あまりになっている。」とはっきり書かれていました。
日経新聞では「手元資金と現預金の意味を交換して表現すべし」という内規があるとした場合、記事中に「当社では、『現預金とは一般にいう手元資金』のことであり、『手元資金とは現預金』のことです」という説明が必要ではないでしょうか?
新聞・マスメデイアは社会の公器かフェイクニュース元か?
日本では朝日新聞の慰安婦報道以来・・・トランプ大統領のフェイクニュースの批判+ロシアによるメデイア操作疑惑もあって、大手メデイアの信用力はガタ落ちですが、このような唯我独尊的熟語悪用がまかり通ると、トランプ氏の意見の肩を持つ人が増えてくるでしょう。
ところで、25日朝刊では、「直近で」と一応根拠らしいものを示していますが、「直近」というだけで何のデータによるのか?かつ何月何日付けデータを根拠にしているのか不明です。
11月21〜22日に私が、たとえば手元資金必要額は原則として・売り上げ規模規模拡大や新規投資など資金を必要とする個別事情チェックした上での批判でないと合理的でないと書きました。
好業績が続くと増産投資を計画をするのが普通ですが、設備投資資金の蓄積や、納税資金や配当資金需要などの例外を見る必要がありますが、これも結局は月商規模に関連します。
こうした(私の意見など問題にしていないでしょうが、他に批判があったのでしょう?)批判に対応するためにか?26日に紹介した通り総資産が4割しか増えていないのに手元資金が8割増えているのが如何にも良くないかのような書き方になっています。
いかにも反論のように見えて実は比較対象が違う(・手元資金の必要額は資産と比較する意味がない)ので何の反論にもなっていません。
日々・毎月の決済資金の必要性は、資産規模に比例するのではなく売り上げ規模等を大きな要素にして(好業績が続くと増産投資を計画する企業が多い→2〜3期分の税引き配当後利益を蓄積して不足を社債等の発行で賄うなど)出入り資金必要性に比例すると書いてきたのであって、資産規模には直接の比例関係がありません。
百億円の不動産等の資産を有する人と10億円しか資産のない人が同じく月商1000万の飲食店を経営している場合、(新規出店資金需要や食中毒事故による特別損失出費等の予定がない場合)必要な手元資金は資産の多寡に比例せずに売り上げ規模に比例する(10億の資産しかない人も必要な手元資金は同じ)ことは明らかでしょう。
この数十年のトレンドは持たざる経営・できるだけリースその他資産規模圧縮・身軽経営・外注・アウトソーシング経営が合理的とされてきたので、企業は売り上げ規模拡大に比例して資産を増やさなくなってます。
売上でさえ規模拡大やシェア拡大を目指さずに、利益率を重視するようになっています。
個人も車など保有よりは必要に応じてレンタルやシェアーするなどのトレンドになっている現状を無視する変な比較をしていることになります。
25日掲載記事は好業績に関わらず投資しないで内部留保が溜まっている・これを投資に振り向けるべく・・内部留保課税を直接言わないものの相応の政治圧力が必要というイメージ論旨が満載です。
最高益なのに(内部留保していて)投資がその割合に少ないというイメージ論旨ですので、日本企業の最高益の実態がどのくらいになっているかについて日経新聞24日朝刊第一面掲載の「最高益の実相」を見てみると、以下の通りです。

「18年3月期の純利益は2期連続で過去最高の見通し」「7%の壁ー上場企業の売り上げ高経常利益率は、今期バブル崩壊後初めて7%の壁を突破する」「企業が稼ぐ力を高めた要因は3つある。
1つは金融危機後事業の選択と集中を加速したことだ。」
「ソニーは、・・競争の激しい分野一方で量を追わない・得意分野に集中する戦略に転換したのが奏功する」

経常益更新・最高益の原因として日本業が無駄な資産を削ぎ落とした筋肉質経営に努力した結果、そこへ好景気と重なり好循環になってようやく平均利益率7%超えも視野にはいってきたという趣旨ですし、これが日本全体の常識的理解でしょう。
バブル期以来の好業績といっても7%を超える程度ですが、ここでの関心は投資が7%の高収益と比例しているかの比較でしょう。
さらに企業投資は国際化しているので、国内投資が国際連結利益アップと関連するわけではありませんから、企業の内部留保(最近では手元資金)がが多すぎるもっと投資しろと騒いでも国内に投資する保証はありません。
アメリカで車の販売が伸びればアメリカ等での増産投資が増えるのが普通ですし、中国やベトナムタイ等でコンビニが儲ければ現地出店が加速するのであって、国内出店投資が増える関係ではありません。
国際連結の利益率と国内投資額を比較するのは非合理であることは、子供でもわかる論理です。

内務留保の重要性と流動資金の関係3(メデイアと用語統一必要性)

昨日紹介した解説でも「手元資金」には「流動性の高い資金の総称」とあって現預金に限らないことが示され、短期有価証券を含むことが多いとなっています。
そもそも言葉の意味から考えても「現預金」の表現は現金と預金等の個別分類を表していますし、手元資金とか決済用資金・流動性資金等の使用目的による表現よりは範囲が狭いことが明らかで、下位概念の現預金の方が手元資金よりも多いとは(経済知識のない私のようなものでも)常識的に想定できません。
手元資金等はすぐに現預金化できる資産を含む=手元資金の方が現預金よりも多いことが経済用語としても明らかですが、日経新聞記事ではなぜ逆転した書き方になっているのか不思議ですが、私のような素人が食事や仕事に出る合間にちょっと読む程度の人間には思いがけない深い意味がこめられていのかもしれません。
仮に日経新聞で論説を書く人の経済用語理解が間違っているとした場合、日経新聞の21日記事と25日記事両方とも間違っていることってあるの?という疑問です。
仮に別の人が書いているとすれば2人とも逆に理解していることになるほか、両記事ともに内容からして情報収集して歩く新米記者が書ける執筆ではなく、ベテランのエコノミストによるものと思われますが、プロが2人も揃って経済用語の基礎知識を間違って逆に書くようなことがあるのでしょうか?
仮に執筆者が同じとしても・校正等の事務局が充実しているはずの大手新聞社の語句チェックが機能せずに2回も通っていることになりますが、(現預金が200兆円で手元資金117兆円と出れば普通は?おかしいぞ!と気がつくものです)2回目の記事では1回目と大幅な数字違いがあるのでこの時点で「どうして大きな数字違いがあるのか?」に気がついて見直せば、どちらかが間違っていることがすぐ分かる筈ですが、2回ともスルーしているとすれば関連部局のチェック能力に疑いが起きます。
事務局能力の名誉のために邪推?すると関連部局ではわかっていたが、世論誘導のために?意図的にスルーさせて逆の意味で書く必要があると判断したのでしょうか?
もしも世間常識と違う意味で熟語を意図的に使う場合には、誤解を招かないように「ここではこういう意味で書いています」と「断り書き」を入れるのが公平な立場でしょう。
ちなみに資金滞留批判のトーンは21日の「大機小機」に続いて24日の日経新聞の第1面に「最高益の実相」欄として大きく出ていて(1面の左約半分の大きさ)その続きで今問題にしている25日3pの記事になっていることがわかります。
今朝の日経第一面では「利益剰余金56%が最高」の大見出しでいかにも巨大な剰余金を溜め込んでいるかのようなイメージ強調の連載は終わっていません。
内容を見ると、設備投資の動きが紹介されていますが、以下の通りあくまで部分の紹介で全体の動きを期待するかのような書きぶりです。

「スバルの・・社長は・・・『次元が変わる技術進化に備えこれまでできなかった設備投資や研究開発を増やす』と話す。溜め込んだお金をどう使うか一層のの説明を求められる」

と思わせぶりに書いています。
「思わせぶり」だけでカチッとした事実がないといえば、朝日新聞の記事の多くにその傾向が強くて歯ごたえがないので20年以上前に朝日新聞から日経新聞に変えて満足していたのですが、日経も最近ではムード報道中心になって来たのでしょうか?
事実の裏取り必要性といえば、最近では週刊文春の山尾志桜里氏の不倫騒動で見ても分かるように、(経済報道のように難しいことではなくスキャンダル的事実中心ですが・・)裏取り能力の高さに驚きます。
こうした手を変え品を変えての日経新聞報道の流れ(内部留保悪玉説の浸透努力?)を見ると、21日「大機小機」で小さく出して置いて(その間小刻みに何かを書いていたのかも知れませんが、私は気づきませんでした)24日は第1面大見出しと格上げして25日には3pで大きな記事にしてきた流れを見ると「大機小機」掲載時点から、社あげての目標設定によるシリーズ連載企画・・執筆者の個人プレーではなかったように見えます。
新聞社組織あげて(世論誘導したい)企画でありながら、この程度の基礎概念を押さえる必要性スラ認識できない組織レベルなの?という疑問です。
日経新聞の「経済欄はまるで議論の対象にならない・しっかりしているのは文化欄だけ」という口の悪い人の意見がネット上で流れていますが、以上を見ると驚くような低レベル組織になっているとの誹謗?もムベなるかな!という印象・誤解?(私の読み方が間違っているのかも知れませんが)を受けました。
もしも単語表記の単純ミス・現預金が117兆円で手元資金200兆円が正しいとすれば、(6ヶ月の誤差がありますが、10月末時点の現預金が私には不明なので)仮に同時期として計算すると200−118=82兆円が短期有価証券等保有であり、現預金ではなかったことになります。
世界企業で言えば、現預金は世界中に散らばった事業現場で日々支払いできる資金・現金払いの場合、預金払い戻し時間が必要ですが、大口支払いは振込等の操作で済むので時間誤差がほとんどありませんが、有価証券の場合どの銘柄をいくら売却して資金化するかの判断時間(売却優先順位を決めておくことでこの時間は短縮できます)が必要な他に売却指示後現金化できるまでの決済時間・・最短で5〜6日の誤差があります。
このために約1週間〜10日程度のタイムラグに耐えられる・+アフリカ現地で不足した場合に外貨両替して送金する時間差(為替リスクも考えある程度余裕を持った現地通貨保有)程度の現預金が現地出張所等に必要となっています。
短期処分可能な有価証券の利用とは、通常決済には十分であるが九州の震災等のような突発事態への二次的備えとして、預金よりマシな国債等への一時預けにしている数字が短期保有有価証券ですが、これは4〜5ヶ月先に予定されている大口決済資金(例えば配当までのプールとか工場用地取得契約や企業買収がまとまりそうな場合とか、本社ビル完成引渡し予定数ヶ月先にある)などがこの種の資金になってプールされます。
企業が必要もないのにゼロ金利下で不要な資金を現預金で持っていたくない点については意見相違がない(無駄に持っている方が良いという人は滅多にいない)のは明らかですから、新聞・言論機関が不要資金プールするのが合理的か否かを議論する必要はありません。
ある企業の保有資金が「過剰・無駄」かどうかこそが議論の対象ですが、それは個別企業の事情分析によるべきで抽象論で煽るのは間違いです。
希望の党の公約の一つ「不要不急のインフラ整備をやめる」という点についてこの後で書いて行く予定ですが、「不要不急の公共工事をした方が良い」という政党はありませんので「何が不要不急かの選択」を示さない公約ではどういう政治をする約束なのか意味不明なのと同様です。
外部から見て一見多すぎるように見える場合にも個別企業によっては相応の必要がある可能性がある・・
外部から見て一見多すぎるように見える場合にも個別企業によっては相応の必要がある可能性があります。
今朝の日経朝刊で紹介されていたスバルのように、この1〜2年好業績を背景に単なる増産投資ではなく、「次元が変わる技術進化に備えこれでまでできなかった設備投資や研究開発を増やす」ために準備している企業もあるのです。
・・本当に不要な資金なのか、近日中に大口決済が待っているか、配当支払い資金や設備投資計画の有無等の個別事情によりますから、個別企業の実情無視の日本全体の一般論に意味があるとは考えられません。

内務留保の重要性と流動資金の関係2

内務留保の重要性と流動資金の関係2

11月22日に日経新聞21日大機小機掲載の「現預金200兆円あまり」の記事についてその数字が正しい前提で「200兆円もあるからいかにも無駄に保有しているかのように・・ひいては内部留保課税が正しいかのようなイメージを振りまくのは不合理な意見であるという意見を22〜23日に連載して一旦終わりにしていました。
ところが驚いたことに、17年11月25日の日経朝刊3P「最高益の実相」欄には、「投資抑制で山に積み上がった手元資金だ。直近で過去最高の117兆円と00年度に比べて8割増えた。総資産の増加率(4割)より多い)」と書いています。
24日から日本の雇用形態がどうなっていくべきかのテーマで連載中ですが、ここで大きな数字の違いが昨日の新聞で出てきたので内部留保→流動性資金について改めて見直す必要を感じたので本日は流動性資金等について急遽再論・追記の割り込みをすることにしました。
25日の記事も21日の記事同様で、企業がせっかくの好業績によって得た資金を再投資しないで死蔵しているのでもっと投資させるべき・・そのためには内部留保課税で事実上投資を誘導する方向性を議論すべきだというイメージ植え付け方向では同じですが、日経新聞が11月21日に「日本企業の現預金200兆円あまり」と書き、その4日後に手元資金が過去最高の117兆円と、約半分あまりの数字に引き下げて議論を進めていることの違和感です。
大きな数字変化の意味はなんでしょうか?
手元資金と現預金の表現差にどのような違いがあるのでしょうか?
https://www.ifinance.ne.jp/glossary/account/acc210.htmlによると以下の通りです。

金融経済用語
手元資金は、貸借対照表の現預金(現金、預金)と短期保有の有価証券を合わせたものをいいます。これは、企業が比較的自由に使える資産と位置づけられ、その額が有利子負債を上回っている場合を「実質無借金」と言い、そのような状況の企業を「実質無借金企業」と言います。
・・・・・・
※2008年-2009年の金融危機では、日本の企業は資金調達が難しくなった経験から、手元資金の重要性を認識させられ、その後、自己防衛として手元資金を積み上げるようになった。

上記によると11月21日の大機小機記載の「現預金」の単語と25日記載の「手元資金」との違いは企業保有の短期有価証券等を含めるかどうかの違いらしいです。
そうとすると、もしもこの間の基礎数字の激変がない限り・・あるいは同時期であれば手元資金の方が、現預金合計よりも大きいはずです。
16年度末(3月末?)からわずか(直近とは10月末?)6〜7ヶ月経過で現預金だけではなく、好業績発表の続いている経済状況下で有価証券保有を含めても4割も減ったとは想定できません。
しかも同記事には「過去最高」とも書いていますので、その間に減ったとは考えられないのでどちらかが間違っていることになりそうです。
21〜23日に書いていた時には新聞記事の事実記載についてはこれを信用して200兆円が正しい前提で「意見」相違を書いていたのですが、同一新聞社の記事にこれほど矛盾がある?大幅に違っていると議論の前提である200兆円の数字が誤りなのか、それとも「現預金」の熟語表記があやまりなのかを明らかにする必要があります。
そこで前提数字自体を見てみる必要を感じて検索してみると以下の資料が出てきました。http://www.murc.jp/thinktank/economy/overall/japan_reg/watch_1703.pdfによると以下の通りです。
三菱UFJリサーチ&コンサルテイング2017年3月17日

上記は出所も計算方法も明記していて信用性の高そうなものですが、これによると16年度末200兆円という数字自体は大方あっていてこれを現預金ではなく手元流動資金と分類していますが、21日新聞記事では、この数字を「現預金」と表記したことが間違っていた可能性があります。
不思議なことに25日記事では手元資金が117兆円という表示ですが、これは逆に現預金のこととすれば上記グラフと辻褄が合いますが、25日の記事で用語訂正のつもりであれば、25日記事で「現預金117兆円」とすべきだったように思えます。
そうすれば「あゝ21日の現預金の表示が間違っていたと気づいたのかな?」と素直に理解可能ですが、25日表記が逆に「手元資金117兆円」(双方の用語利用が正しいものとして理解するには、「手元資金の方が現預金より少ない」と読まないと混乱します)と書いているのが不思議です。
上記金融経済用語の解説が間違っているのでしょうか?
念のために別の用語解説ものぞいて見ました。
https://kotobank.jp/word/%E6%89%8B%E5%85%83%E8%B3%87%E9%87%91-668563

デジタル大辞泉の解説
てもと‐しきん【手元資金】
代金の支払いなどにいつでも使用できる、流動性の高い資金の総称。現金や普通預金が代表的だが、満期が3か月以内の有価証券・定期預金等を加える場合もある。手元資金を潤沢に保有することで不測の事態に対処しやすくなるが、利子がほぼ付かないため、必要以上の確保は資金効率の面で望ましくないとされる。

上記によっても手元資金の方が現預金よりよりも大きいことが明らかで、日経新聞が独自の用語利用していることがわかります。

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