巨額収入層排撃の愚(海外収益の必須性)1

鄧小平が「クロ猫でもシロ猫でも稼ぐ猫は良い猫だ」と言ったと言われるのは,本質を突いています。
閉鎖社会では分配の論理が重要ですが,外から稼いで来る人を悪役に仕立てても解決になりません。
ジニ係数基準を騒ぐ人は,「等しく貧しい方が良い」と言うやっかみの論理支持者でしょうか?
  「貧しきを憂えず、等しからざるを憂う」
私の若い頃には,左翼系全盛時代でしたから上記のような標語が一般に流布していました・・。
こんな変な理屈で左翼文化人マスコミは,「格差があるよりは貧しい方がマシだ」とソ連の計画経済の失政による窮乏の進行を正当化していたのです。
政治的にしょっちゅう福祉の増大・・保育所の充実や生活保護費アップその他を主張しているのが彼らですが、その財源を誰が出すのでしょうか?
お金持ちの多い町あるいは大企業城下町・・他所で稼いだ金が入るので,(自分の町だけの売上に頼るスーパーよりも他府県全国展開で稼いだ儲けを本社所在地に還付している方が)中間層は納税負担が少ない割に立派なインフラが整備される恩恵を受けるのが普通です。
昔からウチの町は大手企業や金持ちが多いから市民税などが安い割に図書館等が整備され充実している・・とメリットを自慢する人が多かったのですが,最近ジニ係数で不満をあおる風潮では,こう言う町はジニ係数の大きな町として住み難い・・不満が大きくなっているのでしょうか?
やはり周辺にお金持ちが多い方が立派な図書館が整備され、公園整備や道路掃除も行き届き割安の美術館や公共機関を利用できる・得な感じをする方が自然ではないでしょうか?
格差がイヤだと言ってお金持ち・・せっかくお祭り等で大金を寄付してくれる人や多額納税者を追い出したり潰したりしてどうするつもりでしょうか?
日本でもかなりの人数が非課税階層ですが,それでも高度な社会保障・インフラを利用出来ているのは,高額所得者や海外からの収益を含めた企業利益の投入があるからです。
この流れを維持するには正当に税を納める愛国心・郷土愛が必要です。
この数年・タクスヘイブンが大きなテーマになって来たのは,こうした流れの帰結です。
還元してくれない資本家では意味がない・・国籍意識のないユダヤ系に対する批判が急速に盛り上がって来た根拠です。
グローバリズム反対と言うよりは、資本家の民族への還元意識厚薄の問題です。
我が国でこう言う反対論がそれほど盛り上がらないのは、日本企業は資本家のためではなく従業員のためにあると言う意識・・トヨタその他みんな民族意識が濃厚だからです。
日本企業は元々民を如何にして養うか発想から始まっているので、利益率・株主への還元・配当率の低さが欧米基準によって批判されてきました。
ただし、この20年ばかり、国際展開する関係で・例えばニューヨーク株式市場に上場するには、欧米基準を無視できないことや東証でも外国人投資家比率が上がってきたことからかなり配当率が上がっています・・国際社会の一員としてある程度の付き合いも必要ですから仕方がないと思いますが・・。
低所得者定義にはいろいろあると思いますが,非課税世帯数でサーチすると掲載年月が古いですが、以下のとおりです。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1286124377 2012/4/2314:58:05
現在、住民税非課税世帯が3100万人、年収200万以下のワーキングプア1100万人と合わせ4200万人と今後も増加する。 失業者150万人、生活保護者250万人。
基礎控除その他いろいろな条件があって,全部紹介すると複雑過ぎますが,上記集計数の根拠不明で信用性がはっきりしませんが、当時では約3100万世帯(1世帯平均2人としても人口の約半分?)も非課税だと言うのです。
納税している人でも、ホンの数万円など雀の涙程度しか納税していない人も多いでしょう。
保育所不足を非難する風潮が盛んですが、保育所で保育する幼児一人当たりに要する公的負担は半端ではありません。
利用者にも高額所得者がたまにはいるとしても、多分利用者の母親の平均給与の何倍ものコストがかかっているはずですし、納税額で比較したら、もしかしたら数百倍以上もかかっているかも知れません。
こうした経費・・児童手当や学校の維持経費,道路など補修負担をしているか?となりますが,給与所得者で言えば,課税対象の中間層の負担が増える一方になっているのは分りますが、中間層が減って非課税層が増えているのでそれだけでは到底足りません。
日本を含めて先進国は,資本所得・・主として海外利益送金がないと成り立たない社会になっていることが分ります。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL08H5H_Y7A200C1000000/
財務省が8日発表した2016年の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は20兆6496億円の黒字だった。原油安で貿易収支が大幅に黒字転換したことが寄与し、前年から4兆2370億円黒字幅を拡大した。
http://www.mof.go.jp/international_policy/reference/balance_of_payments/preliminary/pg2016cy.htmによれば、
「第一次所得収支:18兆1,360億円の黒字(前年比▲2兆5,166億円 黒字幅縮小)(うち再投資収益は3兆9,014億円の黒字)」
となっています。
日本の場合、上記のとおり約18兆円もの大金が毎年のように海外から収益として入っているのですからこの資金によって、補填されていることが分ります。
アメリカも世界からの資金還流で成り立っていますから、例えばアップル製品を国内工場で作れ・海外製品に45%関税をかければ、国民は中国やバングラデッシュ等で作ったものを利用する他国よりも割高なもの使うしかなくなり,国内消費激減・・生活水準がそれだけ下がり・・同時にアメリカ企業アップル等グローバル企業の利益・・アメリカ国内送金も急減します。
資本家の利益が税や寄付その他で国内還流してフードスタンプ配給資金や実際労働以上の高賃金や、公共インフラ資金にもなっているのですから,これをなくすとその分減った資金をどうするか?
やっかみによって、巨額所得者や、資本収益を敵視して追い出していくと、中高給与所得者の税を引き上げるしかなくなる・・これでは何とか生き残っている中間層が余計苦しくなります。
このやり方はトランプ氏の創意によるものではなく、フランスがフロマンまたはフロランジュ法とか言う法律を作って既にアルミタール鉄鋼の工場移転に対して政府が介入をしています。
「ルノーに対する政府介入権を日産に及ぼさない」と言う取り決めが昨年頃決着がついたのが記憶に新しいところです。
日産・ルノーへの介入問題についてはJune 20, 2017,「最低賃金制度(非正規)」のコラムで紹介しました。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC