最低賃金制度(非正規)

大手の場合本社ビル清掃などは外注でしょうから、もしかするとシステムエンジニア−など陳腐化の早いプロを派遣や非正規に頼っていることが多いかも知れません。
高級技術者は、終身雇用・出世期待よりは腕一本で行きたい・・腕に自信のある人=プロは終身的保障がない分時給が正規職より高い方を選ぶ傾向があります。
メデイアの世界でも、これを狙ってフリーライターやフリージャーナリストになる人が多いことから見ても、大手の非正規は正規より「格上」と言うことがあります。
大手の非正規の正規化は待遇改善になるよりは、解雇が利かない・終身雇用化する程度・・もしかすると社会硬直化を進めることになるかも知れません。
フランスが経済低迷・失業率の高止まりで苦しんでいるのは、長い社会党政権時代を経て労働者保護が進み過ぎて解雇困難→企業がリスク回避のために新事業開拓=新規採用に及び腰になっている結果によると言われています。
国民・若者が解雇され難い大手や公務員志向ばかりになるとイノベーションが起き難くなります。
前オランド政権の経済政策は文政権の公約に似ていて、(トランプ公約も同じですが・・)工場の海外展開・既存工場閉鎖による失業をなくすためには閉鎖に対する政府権限強化策で対応するのが中心・・1昨年あたりから政府保有株式の議決権を2倍にする法施行がありました。http://www.nikkei.com/article/DGXKZO86759970U5A510C1EA1000/心配なフランス「2倍議決権」2015/5/14付
「株主の権利をめぐるフランスの新法が波紋を広げている。当該企業の株式を2年以上保有している株主に2倍の議決権を付与するのが骨子だ。表向きの理由は長期の視点に基づく経営を促すことだが、実際には仏政府などの発言力が強まりすぎて、健全な企業統治が損なわれる懸念がある。
 新たな法律は通称「フロランジュ法」と呼ばれ、鉄鋼大手の欧アルセロール・ミタルが2012年に仏北東部フロランジュの製鉄所の閉鎖を決めたことに端を発する。この決定に世論が激しく反発し、仏政府も介入した。」
「その後、企業が工場を閉める前に売却先を探すことを義務づける法律づくりが進み、その中にもうひとつの目玉として2倍議決権の規定も盛り込まれた。」
「今回のフランスの動きは利点よりもマイナスが大きいのではないか。議決権の2倍化で権限が増大する大株主のひとつが仏政府だ。例えば自動車大手のルノーは仏政府の議決権が17%から28%に増える見通し。経営者のなかには、経営に対する政府の介入が強まらないか懸念する向きもある。航空大手のエールフランスKLMについても、仏政府は株式買い増しに乗り出した。」
これによるとルノーが日産の株式を保有していることによって、日産の海外展開にまで仏政府が口出し・・拒否権行使出来るのか?と言うことで、日本でも大騒ぎしたばかりですが、経済原理を無視した短絡的政策ばかりでは余計企業が萎縮してしまいます。
素人向けには海外工場移転を抑制するために・・「工場閉鎖を認めない」と言えば(トランプ大統領も同じで)・・短期的には強権政治が成り立ちますし、選挙民向けには結果を端的に明示し易いですが、こんな無茶は長く続きません。
鳩山民主党が「少なくとも県外へ」と言うスローガンで選挙に買ったのとの同じで、その道筋がない・・結果だけ宣伝するパフォーマンスでしかありません。
マクロン氏はこのような政策に訣別する新鮮味の訴えで大躍進したのです。
韓国でも途中解雇のあるサムスンなどよりも公務員志向でこのために浪人してでも予備校に通う状態をこの後で紹介しますが、現代労組の横暴が知れ渡っていますが、韓国の企業間格差は正規雇用に関する解雇規制の強さ・・大手正規になれば地上の楽園を謳歌出来るし、入れなければ人間扱いされない社会意識とも関係があります。
オランド政権でマクロン氏が解雇規制緩和を主張していたのにオランド大統領が労組の圧力に屈してしまった→これに不満を抱いたマクロン氏が下野して大統領選に出馬して大勝した経緯が重要です。
日経新聞昨日の夕刊によると見出しでは「2大政党歴史的大敗」と言う宣伝ですが、内容を見ると選挙前の第1党社会党系284人が44人に大激減に対して第2党だった共和党が199から137ですから共和党の減少率はそれほどではありません。
大手にもいろんな非正規がいるとしても全体の5%の人に対する人件費アップが仮に2割上がっても労働分配率が少し上がる程度ですが、それでも総人件費が上がります。
その分下請けに対する発注代金が下がるリスクが起きて来ます。
これでは却って弱者イジメになってしまう・やり易い大手から始めるのは、格差を是正する効果がない可能性があります。
言わばパフォーマンスに過ぎず大手財閥系と中小零細の格差が大き過ぎることに対する社会不満に対する解決になっていません。
非正規のうち中小以下で働く者が95%を占める・・5%しか大手や公社で働いていないのですから、95%の非正規労働者の待遇を良くするには、中小の採算性を上げるしか方法はありません。
ところで中小の取引条件を改善しないままで非正規職員を強制的に正規転換したらどうなるか・・待遇改善になるでしょうか?
倒産スレスレの中小零細がこれ以上労働側取り分を増やせない・・結果的に中小の労働分配分を元非正規と平等分配する・既存正規社員の給与を削減するしかないのでしょうか?
末端サービス業では、個人経営者が健康を害するほど負担をしていることが多いものです。
日本のコンビニ経営者で言えば、時間給の上がる深夜を経営者家族が担当し、昼間をバイトやパートに頼っていることが多いと言われていました。
この結果末端店舗経営者夫婦・家族が健康を害する悲劇が一般化していましたが、この結果チエーン化が進むと、今度は「名ばかり」店長化が進みます。
「名ばかり店長」に過重労働のしわ寄せが行くようになったので、マクドナルドの店長事件(残残業手当のいらない管理職か?)の判例が出た背景です。
中小零細の賃金低下は、中小経営者自身の経営不振が背景にあります。
強制的に非正規を禁止した場合、中小労働者を等しく貧しくするしかないのでは、大手との格差拡大に不満のある庶民の怒りに対する何ら解決にもなりません。
結果的に大企業の下請け発注金額をアップさせるしかないので、文政権がここまで踏み込めるかどうかが彼の評価を分けます。
短絡的に命令しても経済活動と言うものは簡単には動きませんので、したたかな仕掛けが必要です。
ところで、最低賃金について6月17日に紹介したとおり、日本の全国平均823円と書いているのですが、全国平均をどう言う計算で出したかが不明です。(私が知らないだけですが)
仮に地方市町村ごとの?数字を合計して平均化した場合で考えると、たとえば非正規雇用者が万単位でいる大都市の900円台と1〜2人しかいない過疎地市町村・・概ね労賃も安くなります・700円と足して2で割ると社会の実態が出ません。
マスメデイアはアベノミクスによって、如何に賃金が上がっていないか、低いかを強調するために全国平均を発表する傾向があります。
正確には全国ではなく、「全労働者」平均にすべきでしょう。
大都市の5万人の労働者平均が900円台で過疎地の一人が700円台の場合、市町村数で割れば、(900+700)÷2=800円台平均になりますが、全労働者平均にすれば900円台の人5万人に700円台の人が一人ですから平均値はほぼ5万分の1しか変わりません。

韓国文大統領の雇用政策1(革新政党の短絡性)

文大統領の選挙公約・主張を見ると、革新系と言うのは経済原理が分らない・・(凡人に分らない深い戦略がある可能性がるのですが、それは結果を見て分ることです)強制力で何でも出来ると思っている傾向があるような印象を受けます。
我が国でもそう言う体質の集まりが、民主党とか民主主義政党を名乗り、民主主義や人権を守れと政府批判するのですから滑稽です。
特定秘密保護法や共謀罪法などに対する各種反対論は、民主化されていないロシアや中国社会を前提にした議論です。
民進党や日弁連の主張は、非民主社会・・中国で言えば処罰法すらなくとも秘密裏に香港の店主が共産党◯◯に拉致されてしまう社会を前提にしているかのように見えます。
こう言う社会では、処罰法さえ不要ですから、謀議だけで処罰するのは簡単でしょうが・日本の場合法治国家ですから、「テロ行為」の謀議立証が必要です。
疑いだけ・恣意的検挙すら出来ません。
常識のある民主主義社会の場合、先ず法適用を明らかにする必要があるので、証拠もないのに検挙出来ない・・裁判所も令状を出さないし公判になっても安易に証拠認定出来る筈がないと言う意見を書いて来ました・・。
共謀を認定するには周辺間接証拠の積み重ねが必須ですから、酒屋で冗談を言ったくらいで検挙されることはありえないことも数年前に書いたことがあります。
学者文化人メデイアが自己主張の正当性を裏付けるための常套手段である「国際基準」・先進国の意見を開陳するのが好きですが、彼らの意見によれば既に共謀罪関係法による不都合な事件が多数起きている筈なのにこれが一切公表されないのは、世界中に存在する共謀罪関係法による不都合が滅多に起きていないことを裏付けます。
あるいは先進国ではこんな危険な法制度がないと言うならば、そう言う法制度のない国を上げれば良いのですが一切上げません。
特定秘密保護法など世界中でどこにでもある筈の法制度の場合、架空の心配論は意味がない・・日弁連や法学者が反対論を展開する以上はプロらしく先進諸国の運用の実例を紹介すべきと書いて来ましたが、現在に至るまで単に「危険」と言うばかりで未だに実証論文を見たことがありません。
もしかしたら論文があるかも知れませんが、あるならば日弁連会内の委員会ニュースその他の媒体でその紹介を何故しないのか疑問です。
見ているといつ院内集会を開催し何人の議員が参加したとか、盛況であったとか危険性を訴えた・・政権の横暴とか充分な理解を得られていないと言うたぐいのものばかり目立ちます。
国民の充分な理解を得られないのは、反対する具体性がないからです。
主張に具体性がない上に中国等の人権侵害には南濃も示さないのが普通ですので仕方なしに勘ぐるしかないのですが、冗談めかして言えば危険があるとしたら民進党が政権を取り、中国共産党のような恐怖政治を始めて裁判所を恐怖支配しているときだけのことでしょう。
中韓の主張を見ると自分が悪どいことをする習慣を前提で日本がこういうことをした「筈』と歴史をでっち上げることの繰り返しですが、民進党や日弁連は日頃から何かと裁判に訴えることが多いのですが、本音では裁判所など権力さえ取ればどうにでもなると言う意識を持っている人が多いのでしょうか?
日本の民主党政権同様に権力さえ持てば何でも出来ると思って社会原理を無視していると、文政権は直ぐに行き詰まる可能性があります。
社会原理とは、「少なくとも県外へ」の例で言えば、秀才が学んだ民主的・法的手続さえ尽くせば良いのではなく、社会生活上必要な原理=相手のある行為を進めるときに必要な配慮でしょう。
韓国の文大統領は就任後大統領の職責の重み・・社会を相手にしていることを実感してどこまで現実的になれるかですが・・。
文新政権の政策に関する日経新聞ニュースです。http://www.nikkei.com/article/DGXKASGM12H6P_S7A510C1FF8000/
2017/5/13付
文政権「非正規ゼロに」 まず公共部門、民間波及狙う
企業当惑、人件費増も
「文氏は大統領選の公約順位の最初に「雇用拡大」を掲げて当選した。「民間任せでは雇用は増えない」と公共部門で81万人の雇用を創出すると宣言した。仁川空港公社の訪問は政策実現に向けた第一歩といえる。」
「朴槿恵(パク・クネ)前政権は、解雇条件の緩和や非正規職の雇用期間延長など、労働の柔軟性を高めることで企業が人を採用しやすい環境をつくることに主眼を置いてきた。文政権はこうした民間主導の政策を否定し、政府主導の労働政策を打ち出した。」
「文氏は12日、仁川国際空港公社を訪問し、「任期内に公共部門の非正規職ゼロ時代を開く」と宣言。政府や公共機関に対し、下半期までに非正規職の実態を調査して問題解消のロードマップを作成するよう指示した。
 同公社の職員は1400人だが、第2ターミナルが開業する今秋には協力会社を含め約1万人が非正規職として働く。保安検査なども含め業務の8割以上が外部委託で、文氏はかねて正規職への転換を主張してきた。文氏の発言を受け、同公社の鄭日永(チョン・イルヨン)社長は「間接雇用の非正規職を含め、1万人を正規職に転換する」と応じた。」
民間就職は成功しても直ぐに解雇されるリスクが高く、そんなリスクのない公務員人気が高まって公務員向け就職予備校がにぎわっている・・成功率が30人に一人〜800人に一人と言う受験地獄が報道されていますが、「それなら公務員採用枠を増やして解決してやる」と言う選挙公約でした。
経済原理を無視して公務員だけ81万も増やして(・・イキナリ増やして何をさせるのか?・・財政はどうなるのか?)その先どうするかの展望が見えません。
その上で公社に対する正規化の大号令です。
6月14日に紹介したとおり、大手の非正規は元々中小企業で働く正規職よりも待遇が良いのです。
後進国の方が女性が出世し易いのは厳しい階級社会の場合、男女差よりも階級差の方がはるかに大きいからと言う面があります。
韓国の場合大手か中小かの格差が大幅であって、大手に勤める場合、非正規職でも中小の正規よりも格が上という社会になっているからでしょう。
韓国では今でも武士である限り下っ端でも商人に威張れる社会の延長と思えば良いでしょう。
長かったヤンパン支配に対する憧れ・・学卒=旧ヤンパン・エリートであると言う精神構造が基礎にあって、社会全体の学卒需要無視で)大学進学率が上がってしまった基礎原因です。
学卒者が大手が必要とする量をはるかに越えている結果、当然受皿がない・・それでも現場労働に就くのを潔しとしない精神構造が邪魔をして、行き場のない不満が渦巻いていると言われます。
中国の場合蟻族が有名ですが、そう言うことをするほどのしたたかさがないのでしょう。
中小の経営者や正規職員より、待遇の良い大手に準じる公社の非正規を正規にしても、強い者の待遇がより良くなるだけです。
大手で働く非正規は全非正規労働者の5%しかいないので、大手で働く非正規を全員を正規にした場合でも、大手にとって5%のインパクトでしかありません。

韓国マンション相場(最低賃金比較)

韓国の場合、周知のとおり財閥とその他との格差が圧倒的ですから、金融資産を単純に人口で割る平均値では、一般大衆の平均値を表していません。
このようにしてみると、韓国マンション平均価格が6000万円になったと言うニュースの重み・・平均値と言うことは普通の人が買える価格であるべきですが、日本的感覚・・金融慣行を前提にすれば、普通の人が買える訳がない価格になっている状態です。
この機会に日韓の最低賃金も比較しておきましょう。
日本の平成28年の最低賃金はhttp://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/
によると東京圏で約900円台近辺で全国平均823円です。http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2015/0723/shiryo_03.pdf
内閣府によれば、
○ 最低賃金程度の時給で働く労働者は300~500万人程度(*)
。最低賃金を引き上げる場合、最低賃金程度の時給で働く労働者の所得を引き上げるとともに、働者全体の賃金の底上げにも効果 。
(*)最低賃金+20円以下の時給で働く労働者は340万人程度、最低賃金+40円以下の時給で働く労働者は510万人程度(2014年度推計)
他方、韓国では、http://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2016/11/korea_01.htm独立行政法人労働政策研究・研修機構l2015年のデータによれば、
「最低賃金(時間当たり5580ウォン)未満で働く労働者は222万人に上り、全労働者の11.5%を占める」
公式最低賃金比で言えば日本900弱対558です。
最低賃金未満で働く人が11、5%もあると言うのでは、最低賃金比で最底辺労働者の平均水準の比較をすることが出来ませんが、最低賃金比で見ても900対558の比率になります。
違法行為の摘発は難しいにも関わらず11、5%も違法賃金があると言うことは、実際にはその何倍もあると見て良いでしょう・・。
韓国では実際には最低賃金を守っていないし、日本の300〜500マンの数字は、最低賃金+40円以下で働く人の数字ですから、日韓の実質的最底辺労働者の収入格差はもっとあると見るべきです。
咲いて賃金以下で働いている数字が11、5%もあると言うことは、外資や大手は最低賃金を守るしかないが、中小はお目こぼしの社会・・中国が汚職処罰や環境規制は先進国並みと威張っても厳しく取り締まって外資を不利にしているだけですから、北京の空を見れば結果が違うのと同じです。
どこの国でも現場裁量による幅があるのですが・明白な2重3重基準になる社会は法治国家とは言えない・・後進国と言うことでしょうか?
あるいは後進国は、民度レベル上無理な基準なのに形だけ先進国基準を導入するものの、現場では民度レベルで無理があるので、先ずは大手や外資だけ厳しくして中小零細はついて行けない実態に合わせてお目こぼしするしかないと言うことでしょう。
日本は古代に中国の都城概念を導入しながら、(商業都市国家が起源の中国と日本社会の成り立ちと違う面もあって)羅城「門」だけ作って城壁を作らずお茶を濁したのと同じです。
韓国では、最低賃金未満の雇用が11、5%もあると言うことは、同国の最低賃金制度は(日本との比較のために?)対外的格好付けのために、経済実態に合わない程高くした結果、経済実態がついて行けていないことを表しています。
法で決めた最低賃金以下でも働くしかない・・要は職場がないこと・・就職難に原因があります。
市場原理で決まって行くしかない賃金相場を法で決めるのは無理がある・・当たり前の結果です。
最低賃金以下ならば職場があると言うことは、市場原理をいじるのではなく、経済システムに問題があることを表しています。
安倍政権のように雇用を増やして需給バランスを改善して行き、結果的に賃金水準を上げて行くのが王道でしょう。
市場原理無視で大統領の命令一下「非正規を減らし賃金格差を縮小しろ」と言っても出来る訳がありません。
韓国の場合、大手財閥が利益を全部取ってしまい、下請けが食うや食わずの経済構造とすれば・・構造を改造をしないで末端の値決めだけ強制しても無理があるでしょう。
韓国経済が対外的に貿易収支黒字で成り立っているのに、国民には最低賃金を払えない・払うと中小企業が成り立たないと言うことは、いわゆる出血輸出の構造です。
サムスンや現代自動車等の財閥系大手も利益がなくて、下請けにこれ以上高い代金を払うと赤字になると言うならば分りますが・・。
下請け従業員が生活出来るようなマトモな賃金を払えないような原価割れ発注を繰り返しているのは、大手自身が下請けにきちんと生活出来るようにすると国際競争に負けると言うならば、国を挙げての出血輸出・ダンピング輸出の問題ですし、大手の利益取り分が大き過ぎて下請けに払う分が減っているならば、優越的地位利用の不公正取引の問題です。
日本と韓国では法制度が違うでしょうが、独禁政策は先進国では概ね共通・・似たような条文がある筈ですが、この活用がされていない・・回避されていることになります。
日本の独禁法を見ておきましょう。
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)(定義)第二条
(1)〜(8)省略
(9)この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
一〜四省略
五 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること。
イ 省略
ロ 不当な対価をもつて取引すること。
韓国歴代政権が財閥の横暴に切り込めない・・独禁法適用を回避して政府がやっているフリ・・パフォーマンスをするために?最低賃金だけ上げても末端では守る体力がない・・これが韓国民の悲惨な状況を拡大させている原因です。
今回当選した文大統領は下請けイジメをやめさせないで(そのままで)、非正規雇用をなくすと言う末端から強制して行く構えのようです。
しかし今でも中小零細企業は大企業による不採算発注の圧力で息も絶え絶えで経営者や家族労働の手取りを削り人件費を削るしかないのに、この構造を無視して「非正規を正規にしろ」と強制して解決出来るのでしょうか?
ある新機軸の商売が始まる多くの場合、既存規制が邪魔していることが多いので、政府がこの解禁で後押しする場合には、やりたい人が一杯いる場合に(民泊のように)その分野の新産業の活気が出ますが、産業界がやる気がないのに政府が特定新産業を推進しようとしてもうまく行きません。
「馬を水飲み場に連れて行けるが水をのませることは出来ない」と言われる所以です。

マンション価格と平均収入1・・バブル3

13日に紹介した記事・・(マンション平均価格が)下半期中に6億ウォンを超えるとみられる」→韓国のマンション平均価格が日本円で約6000万円の意味するところを見て行きましょう。
日本では6000万のマンションを平均的サラーリ−マンでは買えません・(家族構成にもよりますが親の援助や相続財産等をつぎ込まない一般的家族構成の場合、)年収2千万円以上の高額所得世帯に限定される高嶺の花です。
以下のスレがあります。
http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2012/0213/483164.htm              
6千万円台のマンション(戸建て)に住む人って?
2012年2月13日 13:55
「私は、というと夫の会社の社宅に家賃2万で横浜中心部に住んでいます。
食品メーカー、36歳で年収はもうすぐ1000万です。
近い将来4千万ちょっとくらいのマンションを購入予定です。
私の感覚ではうちが一番平均的かなと思います。」
親の援助相続財産が手に入った人その他家族構成で人それぞれでしょうが、平均で言えば、上記回答は配偶者の収入を書いていませんが(子供2人私立大学や私立高校へ入れるなどの負担のある人ない人)上記回答が普通の感覚でしょう。
韓国では「平均価格が6000万円」になっていると言うのですから、韓国の平均的サラリーマンの年収が2千万円前後になっていないと無理があります。
以下はhttp://heikinnenshu.jp/country/korea.htmlからの引用です。
「国税庁によると、給与労働者の平均年収は7680万ウォン(約580万円)程度です。
といっても、かなり格差があるようです。実質はもっと低いことが推測されます。
上記の年収は大手企業のみからの平均算出となるためです。
清掃関連会社勤務の方で月収が約7万です。
一方で銀行員の部長は年収が1億ウォン(約760万円)以上となります。
国税庁によると、高額所得者は19万6539人となります。上位の年収と下位の年収では、400万以上も差が出たそうです。」
上記のとおり平均と言ってもどの階層を取るかによって大きな格差があるのでいろんな指標を組合わせないと個々人の生活水準が分りませんが、銀行の部長クラスでやっと年収760万円と言うのです。
ただし、この数字は何年の統計による平均を書いていないので正確には不明(ただし円換算が今と違うので今の相場に計算し直す必要がありそう)ですが、この4〜5年程度では平均値が仮に数十万円アップしていても日本の相場と比較するのには大した差ではありません。
日本の銀行員の年収相場を見ておきましょう。http://nomad-salaryman.com/post-7293
三菱東京UFJ銀行の年収
   新卒15年目/課長:年収1200万円前後
▼目安年齢:37-40歳
  新卒20年目/次長:年収1400-1500万円
▼目安年齢:42-45歳
新卒20年目以降/部長:年収1500-1700万円
▼目安年齢:45-48歳
住友も同様ですが、住友の方が出世競争が厳しい(生き残り率が少ない?)らしいですが、私が職務上知っているおおよその相場観・・大手自動車メーカー部長クラスでも50台になると2000万近い年収の人がいますが、日本と韓国の給与相場格差はこんなもの・・約2倍です。
まして韓国では大手と中小の給与格差が半端ではないのですから、銀行で日本の半分の給与水準とすれば中小の給与格差は3分の1程度に開いている可能性があります。 
韓国では非正規と正規の格差が酷いと言われていますが、実は大手企業の非正規の方が中小の正社員より賃金水準が高い・・この後で紹介しますが、中小と大手の格差の方が大きいのが実態のようです。
現代自動車労組の横暴がニュースになっていますが、生産性を無視したた賃上げ要求貫徹は下請けにしわ寄せしているから成り立つのです。
大手企業が発注単価を叩けるだけ叩く・下請け・中小は採算ラインギリギリの悪条件を押し付けられ、倒産すれすれで働いている・・ひいては賃金も削れるだけ削るしかない→中小の労働者は生きて行くのがやっとのスレスレ状態・・奴隷労働状態になっています。
この格差が大きいからこそ、就職浪人してでも大手に就職したい若者心理が生まれ、サムスンなどに就職するための予備校が発達している社会になっているのです。
大手と中小の激しい格差を前提に日韓銀行員同士の給与格差を見れば、マンション平均価格6000万円の重み・・平均サラリーマンの購入レベルを超えている実態が明らかです。
部長クラスでも780万円しかない韓国で、マンションの平均販売価格6000万円になっているか・・ここまで何故上がってしまったかの疑問について明日以降考えてみます。
まして、賃金格差以外に個人金融資産の配当収益手取りでも日韓格差があります。
韓国と日本の一人当たり個人金融資産やGDPや最低賃金等で比較しておきます。
http://ecodb.net/ranking/imf_ngdpdpc.html世界ネタ帳によれば、「16年の韓国一人当たり27,538.81$で、日本は、38,917.29$」ですから約1、5倍です。
上記は名目値ですからインフレ調整による実質数値ではもっと開きます。
日本は、この外に純債権国として、所得収支黒字は巨大です。
韓国の2016の所得収支を見ておきましょう。http://japanese.yonhapnews.co.kr/economy/2017/02/03/0500000000AJP20170203001100882.HTML 聯合ニュースで見ると以下のとおりです。
「給与・賃金と投資に伴う利子や配当を差し引きした所得収支は14億6000万ドルの黒字だった。」
日本の16年の所得収支は昨年は前年比で円相場が上がった分手取りが減って2兆円も減っていますが、以下のとおり18兆円(・・約1700億ドル)・・韓国の100倍以上もあります。
今は国内生産GDPを人口で割っても本当の数字は出ません・・我々個人でも、海外債券を一杯買っている時代です。
これが国内市消費水準の底上げになっています。
http://www.mof.go.jp/international_policy/reference/balance_of_payments/preliminary/pg2016cy.htm
「第一次所得収支18兆1,360億円▲2兆5,166億円(黒字幅縮小)」
実質的には日本へ送金しないで海外滞留したままの収益が一杯ありますから、個々人の計算上の金融資産はもっと多くなっている筈です。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDC17H0N_X10C17A3EAF000/
家計金融資産、最高を更新 16年末1800兆円 2017/3/17 10:41
http://japanese.joins.com/article/072/221072.html
2016年09月26日14時32分
[ⓒ 中央日報日本語版]
「26日、ドイツの保険会社であるアリアンツグループが発表した「アリアンツ・グローバル・ウェルス・リポート」によると、・・日本は8万3888ユーロでアジア国家のうち1位で、全体調査対象国家53カ国のうち6位だった。日本人は韓国人に比べて約3.06倍の金融資産を保有しているといえる。」
上記のとおり日韓では賃金格差の外に金融資産による所得格差も加わります。
国によって格差が違うので金融資産を人口で割っても本当の生活水準は出ません。

李氏朝鮮時代の貨幣経済未発達と日本の土倉2

昨日の引用の続きです。
「李氏朝鮮後期の貨幣
1678年に許積・権大運などの建議によって戸曹・常平庁・賑恤庁・訓練都監に命じて常平通宝を鋳造するようにした。この貨幣は朝鮮末に新式貨幣が鋳造されるまでおよそ2世紀にわたって鋳造発行されたが、その間に鋳銭行政が紊乱したし、朝廷でも各官庁の財政窮乏を救済するために鋳造を許容したので、文武の各官庁でこれを鋳造した。
1866年に興宣大院君は景福宮改築のために当百銭を鋳造した。しかし当百銭は財政難を打開することができず、むしろ物価上昇と大院君の執権体制の危機をもたらした。結局1868年5月に崔益鉉の上疏で当百銭は通用が禁止された。1883年には開化政策に対する費用に充当する目的で当五銭を鋳造し、乱れた通貨政策を整備する目的で常設造弊機関である典圜局を設置した。しかし当五銭もまた名目貨幣価値が実際の流通価値より低かったし、物価も暴騰させた。そして1895年に当五銭もまた通用が禁止された。」
上記のとおり諸外国並みに貨幣発行を試みても社会実態が伴っていないのでその都度挫折していました。
貨幣がマトモニ利用されない社会・・現物しか信用出来ない社会では、紙幣など紙くず扱いでしかなかったでしょう。
1895年時点でさえも折角発行した貨幣を廃止するしかないような状態でしたから、紙幣発行などは夢のまた夢でした・・紙幣は日韓併合前に日本の第一銀行が進出して紙幣を発行したのが始まりです。
こうして見ると日韓併合前から事実上日本の制度がドンドン入っていたことが分ります。
このときからイキナリ近代的紙幣制度が入って行きます。
紙幣発行については以下のとおりです。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E7%B5%B1%E6%B2%BB%E6%99%82%E4%BB%A3%E3%81%AE%E6%9C%9D%E9%AE%AE#.E6.A6.82.E8.A6.81
「日韓併合以前から、日本の国立銀行である第一銀行韓国総支店が、朝鮮での通貨として1902年から第一銀行券を流通させていた。大韓帝国時代の1909年には第一銀行にかわって中央銀行の韓国銀行が設立され、のち1911年に朝鮮銀行となった」
昨日の引用に戻ります。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%8E%E6%B0%8F%E6%9C%9D%E9%AE%AE%E3%81%AE%E7%B5%8C%E6%B8%88
商業
李氏朝鮮の商業活動は日常生活の必需品を物々交換する程度の経済体制が中心で、広汎な貨幣経済の発達は限定的であった。民間では一般的に場市(市場)を通じて商業活動が行われた。場市は、普通5日ごとに1回ずつ開かれ、農民・漁夫たちが集まって来て品物を交換した。このように期日を定めて市場が開かれたのは、各地方の商業的な発達がなかったためだ。」
「市での取引は、主に生産者と消費者との直接的な接触で成り立ったが、負褓商などの行商人も重要な役目を引き受けていた。これらは、その地方の産物以外の商品を樽が無いので重い甕などに商品を入れ、車が無いため背負子で背負って、苦労して各場市を歩き回りながら売り、同業者たちは中世ヨーロッパのギルド的な性格の同業組合を成していた。」
開化期の経済
「このように前近代的な社会・経済的秩序の中で日朝修好条規(江華島条約)を締結して資本主義各国に門戸を開放しなければならなくなると、すぐに彼らの商品市場・原料供給地に転落することにより、今までの封建的な経済体制は崩壊し、続いて社会に大きな混乱が起きて、次第に植民地への道を踏み出すようになった。」
これを救ったのが日本でした・・もしも日本が介入しなかったら、欧米による東南アジア並みの完全植民地支配下に転落していたでしょう。
ちなみに日韓併合前の朝鮮の産業構造は以下のとおりでした。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E7%B5%B1%E6%B2%BB%E6%99%82%E4%BB%A3%E3%81%AE%E6%9C%9D%E9%AE%AE#.E6.A6.82.E8.A6.81
「ハーバード大学教授で朝鮮史が専門のカーター・J・エッカートは、研究の結果、李氏朝鮮時代の経済規模は同時代の日本や中国と比べて小さく、当時の商人と後の時代の資本家とのつながりがほとんど無いため、資本主義の萌芽が李氏朝鮮時代には存在せず、日韓併合による日本の政策によって生まれ、特に戦後の韓国の資本主義や工業化は、上記のような日本の朝鮮半島での近代化政策を模したものであると発表している」
上記長々と引用しましたが、李氏朝鮮時代には何らの経済発展もなく、むしろ当初よりも退化して行った歴史のように見えます。
秦帝国成立には、燕が進出しその後方支配地になっていたようですが、その燕が秦に滅ぼされ、漢王朝成立後はその直轄支配を受けた外、中国王朝が代わる都度次々と支配されていましたが、その後高句麗が成立しこれが元の支配下に入った後に李氏朝鮮が成立(1392年)以来、初めて(外部の直接支配を受けない)安定長期支配が始まりました。
この結果、外部刺激の極小化による退化が始まったようです。
子供の頃に遊んだ記憶では、磁石にくっついた釘が次の釘を吸い付ける力があるのを見ると自分で磁力を持ったかのように見えるのと同じで、元の本当の磁力のあるものがなくなるとたちまち磁力をなくして行く社会です。
昨日も書きましたが、自分固有の文化力がないので、いつも外部刺激に頼るしかない・・外部刺激がなくなると元の原始社会に戻るしかないので、いつも支配者が欲しい社会です。
戦後アメリカ支配下になると直ぐにキリスト教徒が爆発的に増える・・今でも英語学習が全盛で自国を棄ててアメリカ移住が最大の願望社会になっていますし・・新支配層にオモネて前支配層をあしざまに罵る社会で節操・信義と言うものが育っていません。
日本の場合、白村江の敗戦・大化の改新以来の鎖国化によって独自文化発展を見たのですが、朝鮮では逆の現象が起きたようです。
この退化し切ったときに西洋文化が怒濤のように押し寄せたので、ワケが分らなくなっていたと見るのが妥当でしょう。
平安時代には既に源平の組織化された武士団がいましたし、鎌倉末期の文永の役(1274年)、2度目の弘安の役(1281年)の蒙古襲来時には国をあげて戦うべき武士がいましたが、その武士すらもまだ生まれていない状態を想像して下さい・・。
高句麗は世界通商国家であるモンゴルに征服されていましたので、日本より早く貨幣が入っていた筈ですが、日本では貨幣が入るとこれを利用した土倉〜金融業として経験を積み、社会全体が信用取引社会に発展していったのに対して、朝鮮ではモンゴル支配から脱すると先祖帰りを始めて・・退化して行く一方だったことになります。
日本にはモンゴル撃退・外敵と戦うべき兵力があっただけではなく、実務に携わる合理的実務家が既にいろんな分野で生まれていたのに対して、朝鮮半島ではまだこう言う実務家が生まれていなかった点が大きな違いです・・。
この差が拡大する一方で朝鮮族は明治維新の開化時代を迎えたので、右往左往するばかりでマトモに欧米列強に対応することが出来なかったのです。

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