大手の場合本社ビル清掃などは外注でしょうから、もしかするとシステムエンジニア−など陳腐化の早いプロを派遣や非正規に頼っていることが多いかも知れません。
高級技術者は、終身雇用・出世期待よりは腕一本で行きたい・・腕に自信のある人=プロは終身的保障がない分時給が正規職より高い方を選ぶ傾向があります。
メデイアの世界でも、これを狙ってフリーライターやフリージャーナリストになる人が多いことから見ても、大手の非正規は正規より「格上」と言うことがあります。
大手の非正規の正規化は待遇改善になるよりは、解雇が利かない・終身雇用化する程度・・もしかすると社会硬直化を進めることになるかも知れません。
フランスが経済低迷・失業率の高止まりで苦しんでいるのは、長い社会党政権時代を経て労働者保護が進み過ぎて解雇困難→企業がリスク回避のために新事業開拓=新規採用に及び腰になっている結果によると言われています。
国民・若者が解雇され難い大手や公務員志向ばかりになるとイノベーションが起き難くなります。
前オランド政権の経済政策は文政権の公約に似ていて、(トランプ公約も同じですが・・)工場の海外展開・既存工場閉鎖による失業をなくすためには閉鎖に対する政府権限強化策で対応するのが中心・・1昨年あたりから政府保有株式の議決権を2倍にする法施行がありました。http://www.nikkei.com/article/DGXKZO86759970U5A510C1EA1000/心配なフランス「2倍議決権」2015/5/14付
「株主の権利をめぐるフランスの新法が波紋を広げている。当該企業の株式を2年以上保有している株主に2倍の議決権を付与するのが骨子だ。表向きの理由は長期の視点に基づく経営を促すことだが、実際には仏政府などの発言力が強まりすぎて、健全な企業統治が損なわれる懸念がある。
新たな法律は通称「フロランジュ法」と呼ばれ、鉄鋼大手の欧アルセロール・ミタルが2012年に仏北東部フロランジュの製鉄所の閉鎖を決めたことに端を発する。この決定に世論が激しく反発し、仏政府も介入した。」
「その後、企業が工場を閉める前に売却先を探すことを義務づける法律づくりが進み、その中にもうひとつの目玉として2倍議決権の規定も盛り込まれた。」
「今回のフランスの動きは利点よりもマイナスが大きいのではないか。議決権の2倍化で権限が増大する大株主のひとつが仏政府だ。例えば自動車大手のルノーは仏政府の議決権が17%から28%に増える見通し。経営者のなかには、経営に対する政府の介入が強まらないか懸念する向きもある。航空大手のエールフランスKLMについても、仏政府は株式買い増しに乗り出した。」
これによるとルノーが日産の株式を保有していることによって、日産の海外展開にまで仏政府が口出し・・拒否権行使出来るのか?と言うことで、日本でも大騒ぎしたばかりですが、経済原理を無視した短絡的政策ばかりでは余計企業が萎縮してしまいます。
素人向けには海外工場移転を抑制するために・・「工場閉鎖を認めない」と言えば(トランプ大統領も同じで)・・短期的には強権政治が成り立ちますし、選挙民向けには結果を端的に明示し易いですが、こんな無茶は長く続きません。
鳩山民主党が「少なくとも県外へ」と言うスローガンで選挙に買ったのとの同じで、その道筋がない・・結果だけ宣伝するパフォーマンスでしかありません。
マクロン氏はこのような政策に訣別する新鮮味の訴えで大躍進したのです。
韓国でも途中解雇のあるサムスンなどよりも公務員志向でこのために浪人してでも予備校に通う状態をこの後で紹介しますが、現代労組の横暴が知れ渡っていますが、韓国の企業間格差は正規雇用に関する解雇規制の強さ・・大手正規になれば地上の楽園を謳歌出来るし、入れなければ人間扱いされない社会意識とも関係があります。
オランド政権でマクロン氏が解雇規制緩和を主張していたのにオランド大統領が労組の圧力に屈してしまった→これに不満を抱いたマクロン氏が下野して大統領選に出馬して大勝した経緯が重要です。
日経新聞昨日の夕刊によると見出しでは「2大政党歴史的大敗」と言う宣伝ですが、内容を見ると選挙前の第1党社会党系284人が44人に大激減に対して第2党だった共和党が199から137ですから共和党の減少率はそれほどではありません。
大手にもいろんな非正規がいるとしても全体の5%の人に対する人件費アップが仮に2割上がっても労働分配率が少し上がる程度ですが、それでも総人件費が上がります。
その分下請けに対する発注代金が下がるリスクが起きて来ます。
これでは却って弱者イジメになってしまう・やり易い大手から始めるのは、格差を是正する効果がない可能性があります。
言わばパフォーマンスに過ぎず大手財閥系と中小零細の格差が大き過ぎることに対する社会不満に対する解決になっていません。
非正規のうち中小以下で働く者が95%を占める・・5%しか大手や公社で働いていないのですから、95%の非正規労働者の待遇を良くするには、中小の採算性を上げるしか方法はありません。
ところで中小の取引条件を改善しないままで非正規職員を強制的に正規転換したらどうなるか・・待遇改善になるでしょうか?
倒産スレスレの中小零細がこれ以上労働側取り分を増やせない・・結果的に中小の労働分配分を元非正規と平等分配する・既存正規社員の給与を削減するしかないのでしょうか?
末端サービス業では、個人経営者が健康を害するほど負担をしていることが多いものです。
日本のコンビニ経営者で言えば、時間給の上がる深夜を経営者家族が担当し、昼間をバイトやパートに頼っていることが多いと言われていました。
この結果末端店舗経営者夫婦・家族が健康を害する悲劇が一般化していましたが、この結果チエーン化が進むと、今度は「名ばかり」店長化が進みます。
「名ばかり店長」に過重労働のしわ寄せが行くようになったので、マクドナルドの店長事件(残残業手当のいらない管理職か?)の判例が出た背景です。
中小零細の賃金低下は、中小経営者自身の経営不振が背景にあります。
強制的に非正規を禁止した場合、中小労働者を等しく貧しくするしかないのでは、大手との格差拡大に不満のある庶民の怒りに対する何ら解決にもなりません。
結果的に大企業の下請け発注金額をアップさせるしかないので、文政権がここまで踏み込めるかどうかが彼の評価を分けます。
短絡的に命令しても経済活動と言うものは簡単には動きませんので、したたかな仕掛けが必要です。
ところで、最低賃金について6月17日に紹介したとおり、日本の全国平均823円と書いているのですが、全国平均をどう言う計算で出したかが不明です。(私が知らないだけですが)
仮に地方市町村ごとの?数字を合計して平均化した場合で考えると、たとえば非正規雇用者が万単位でいる大都市の900円台と1〜2人しかいない過疎地市町村・・概ね労賃も安くなります・700円と足して2で割ると社会の実態が出ません。
マスメデイアはアベノミクスによって、如何に賃金が上がっていないか、低いかを強調するために全国平均を発表する傾向があります。
正確には全国ではなく、「全労働者」平均にすべきでしょう。
大都市の5万人の労働者平均が900円台で過疎地の一人が700円台の場合、市町村数で割れば、(900+700)÷2=800円台平均になりますが、全労働者平均にすれば900円台の人5万人に700円台の人が一人ですから平均値はほぼ5万分の1しか変わりません。