https://zuuonline.com/archives/135606 2017/01/12
中国から1兆ドルが逃げていた
中国のなりふり構わぬ「資本流出規制」17年震源地の恐れあり
2005年切り上げ以来の上げ幅
1月5日のブルームバーグニュースによると、5日の香港市場で元は現地時間午後2時53分現在、前日比1%高で、この2日間の上昇率は2.3%に達し、2010年からのデータでは2営業日として最大の上げを記録した。同日、香港短期金融市場では翌日物金利が一時、過去最高の100%超えまで上昇する。
・・規制は企業だけでなく個人にも本格的に乗り出したようだ。6日付の日経新聞朝刊によると、中国人民銀行は大手銀行に対し、個人の外貨両替取引について報告を求めるよう要請。今年からは外貨購入を希望する個人に対しては銀行窓口で「海外で不動産や証券、保険を購入してはならない」と明記された申請書の提出も義務付けたという。
それにしても、なぜ企業だけでなく個人の外貨両替行動にまで触手を伸ばすのか。それは、元安予想の進行により歯止めがかからなくなっていた海外への資本流出をなんとかしたかったからだ。ブルームバーグの集計によると2015年の流出額は過去最悪の1兆ドル(約121兆円)と前年の7倍以上にも達した。2016年1~11月にはさらに7600億ドルが流出。2016年11月末で中国の外貨準備高は3兆516億ドル(348兆円)で、ピーク時(2014年)の4兆ドルより1兆ドル近くも減ったことになる。
原因は中国人民銀行が2015年8月に突然、元切り下げに踏み切り、世界には不信感が広まったことにある。これを受けて中国内では、元安への不安から元をドルに両替する人が増えた。銀行窓口では「ドルがない」と、数千ドル規模の両替が断られるようになり、不安はさらに高まった。
富裕層はさまざまな手段で資金を海外に逃がそうと画策。外貨両替制限は年間5万ドルだが、外貨建て保険ならそれには該当しないし、ビットコインなら1日の送金上限は200ビットコインで約15万ドルにもなる。地下銀行の利用もあるし、札束をスーツケースに入れて運び出すという最終手段もある。こんなふうに、ありとあらゆる抜け道を探すようになった。
2017年に入ると、先述の外貨両替枠が更新される。ヘッジファンドなど海外投機筋は、「更新された瞬間に一気に両替に走り、中国からの資金流出が加速して元安が進行する」とみて、元売りを膨らませていた。」
上記のとおり昨年末頃から、銀行窓口では僅か数千ドルの両替資金さえ用意出来ない・・事実上ドルの取り付け騒ぎが起きていたことが分ります。
中国人民は人民元の価値(自国政府)を信用していないことが分ります。
紙幣の価値は金の裏付けによるではなく、発行体の信用次第であることを2017/01/17「観念論の弊3(財政赤字論)」とMay 2, 2017「税収弾性値3(国債の合理性)に書きました。
上記のとおり中国人の大好きな「お金に関する」虚々実々の駆け引きが繰り広げられていますが、年末に突如としての数百%と言う超短期金利の引き上げや正月明けの政府の外貨両替誓約書要求などの奇策は一瞬的には政府の一本勝ち状態で外貨減少が一旦止まりました。
1月末には3兆ドルを割りましたが、2月末には3兆ドルを回復しただけではなく3〜4月末も微増と報道されています。
「上に政策あれば下に対策あり」の民族性・・お互い(信用出来ない)騙しあいの社会ですから、直ぐにもその抜け穴探しが工夫される筈ですが・・抜け穴ですから直ぐに公的認知される筈がないので直ぐには表面化しません。
紙幣をスーツケースに隠して持ち出す場合には国外でドル交換するので政府の外貨準備は減らないでしょうが、人民元(ヤミ)相場に影響します。
人民が我先に外貨交換に走る・・外貨減少が起きる基本は政府の経済運営に対する人民の信頼喪失があるのですから、人民の政府に対する信頼回復よりも奇策連発・・お互い奇策の攻防・・人民はあの手この手の抜け穴探しの工夫をするしかありません。
一方で中国国内では外に出られなくなった資金を利用したバブル狂奔状態ですが、これも政府・社会に対する相互信頼がないことが原因・・人民は外に資金を逃がせないならば刹那的に儲けられるときに儲けておこうと言う方向へ走るしかないことをあらわしています。
値下がりする紙幣をドルに替えられないならば、値下がりしないものに変えて手持ち紙幣量を増やしておこうとするのはドル交換に走るのと心理構造が同じです。
バブルとは何か?
不動産関連が一般的にバブルになり易いのは供給が限定されている上に誰(素人)でも参入し易い点があるからですが、追加供給が困難な点を利用した値上がり現象である点は、ベネズエラのハイパーインフレと同じです。
ハイパーインフレの場合は、生活必需品の絶対的不足であり供給が増えない限り収まることはない・・誰かが買い占めて儲けているような規模ではないので、値上がりによって得する人は殆ど誰もいないのに対して、バブルの場合には、値上がり期待に便乗して自分も儲けようとする投機現象に過ぎない・・必需品の絶対的なク不足が起きていないので当局が(金融規制だけで)規制する気になれば、パタリと止まってしまう性質があり、あるいは、実需との乖離が一線を越えれば物理的に収まる・・「ある日熱が冷めればおしまいになる」と言う点が大きな違いでしょうか?
民族社会のメリットで見れば、国民が地道に創意工夫してより良いもの作るために(数年以上かかる技術革新に)投資するのではなく、土地や商品の転がし・超短期の転売利益だけが目的とするものがバブル現象ですから、そこからは何も生み出しません。
国民全部がこういうことだけ・・投機・・転売利益獲得に血道を上げる社会ってエネルギーの無駄遣い・・元々精神が歪んでいるとしか言いようがありません。
まじめに努力することが報われない社会構造になっているからでしょう。
5月6日日経朝刊1面には「中国バブル再び」の大見出しで「資本規制・マネー氾濫」の副題で中国のマンションバブルの様相が大きく写真入りで出ています。
中国人民の外貨交換要求を制限するための奇策の数々に加えて人民元相場地合を良くするために昨年末からの米国金利上げに追随しての金融引き締めも行なっています。
その結果、年末年始から金利上昇局面が始まったので(過剰流動性を背景にした商品相場はこれからとしても)マンション相場は終わりそうな流れに入っていることをApril 26, 2017「新興国の限界(民度)3」に書きました。
日経の記事はまだまだマンションバブル真っ最中のイメージ報道ですから、私の上記意見からすればこれからのような書き方には疑問がありますが、内容を見ると上海では年収の20倍超になっているなど限界が来ているイメージを書いているようです。
20倍超とは、特定高額物件のことではなく平均販売価格がそうなっている・・日本で言えば年収500万の人のうち何人が1億のマンション相場について行けるか・・仮に2〜3人しか買えないとすれば、残りはどうなるか?と言うことです。
合理的に考えれば、価格上昇は限界・・早めに売り抜けようとする方向・・バブル崩壊になります。
これの目くらまし?のために5月8日に紹介した北京近くの雄安新区の新都市建設構想が打ち出されたのでしょう。
他方で、卸売物価は1〜3月期前年比7、4%上昇と商品相場バブルの徴候をそれとなく書いています。
人民元相場維持のためには金利はアメリカの金利上げに追随するしかないとしても、人民元紙幣はいくらでも刷れるので国内マネー供給を拡大・・過剰流動性によって、国内景気・・バブルを維持出来る・・するしかないと言うのが中国政府の計画でしょう。