弁護士会強制加入と地域独占打破

弁護士会が受け入れ拒否した場合、実慾で修習生を受入れないことが何らかの法令違反になるかどうか・・・実際にそこまで行くと収拾のつかない亀裂になってしまいますので、疑問を持っても法的決着をつける動きにならない・円満解決の道を探る動きになるのでしょう。
法曹三者の場合、信頼関係がないと実務運用に支障が出るので沖縄知事のようなことは出来ません。
(本当はトランプであれ、韓国であれ積み重ねて来た合意を目先の利益のために一方的に破棄するとそのときには不利な契約破棄は有利でしょうが長期的にはその後遺症に苦しむことになるのが普通です・・翁長知事は日本国全全体と沖縄との関係にしこりが残る・・長期的信頼関係重視のニッポン民族気質から考えれない行動ですので敢えて外国勢力のためにそれを狙っているかの疑いを抱く人が増える原因です)
政府としては750人に増やすとき以来(250人増やすのに3年ほどの時間を掛けています)全て手順を踏んで日弁連と真摯に協議し同意を得てやって来た・・執行部の同意だけではなく、弁護士会臨時総会決議を待って進めて来た経緯があります。
責任は当時これを受入れた日弁連執行部にある・・そのとき弁護士大増員の旗ふりをして来た中坊元会長が厳しい批判対象になっています・・。
大増員の間違いが明らかになって来たとは言え、日弁連の意向を尊重して協議を経て来た重みを守るべき・・方向性修正するには2015年5月に1500人と決めた場合と同じような有識者会議の議を経る・・会議進行を早める努力をする必要があるとしても・・と言うのが政府の基本姿勢でしょう。
当面の解決は別としても昨日紹介したように5年も前から法学部希望者段階から縮小している現実・・法律家全体の地盤低下が進んでいる現状を見れば、結果的に1500人規模のままでは国家体制が持たない・・さらなる削減方向へ進めるしかないと思われます。
この意味では、千葉県会長の投げかけたインパクトは(そのまま直ぐに実現が出来ないとしても)政治的に時宜を得たものとなる可能性があります。
(内部的には執行部経験者を中心に対外意見表明ルール・慣行違反と言う批判の声が大きく内部で意見が割れていますが・それと対外インパクトの大きさは別でしょう。)
日弁連も過去の経緯を踏まえると、更なる削減方向へ修正するしかないにしても段階を踏むべしと言う原則論になり、・・千葉県の要求の方向性で努力すると回答すれば千葉県も矛を収められます。
その場合、今年9月発表の合格者数が実際にどの程度減ったかが重要ですが、前年とほぼ変わらず→ほぼ同数の配属が来た段階で千葉県の主柱によれば、日弁連全体で1000人以上の受入れ拒否すべきだと言う主張になりそうですが、その主張に日弁連が乗れないときにどうするかです。
千葉だけでも拒否シテこれに合わせて(合格者がほぼ変わらないのに千葉県への配属だけへらす?)他所に回すとした場合、千葉の「我がまま?」で済むのか?他所の県からも同様の主張が出たらどうするかと言う問題もあるので、日弁連対千葉県だけの協議での落としどころが微妙です。
この話し合いがつかず、千葉県に従来通り多くの修習生を配置して来たときに、千葉県弁護士会がその内1定数だけ拒否する・・(あいうえお順に何名までなど機械的?)しかないのでしょうか?
ここまで行くと拒否された修習生は行くところがなくなり混乱する・・政府としては、何らかの法的措置を検討することになり兼ねません。
強制加入と自治の関係に戻りますと、千葉県弁護士会で言えば、私たち同期入会員でちょうど百人を突破したところでした。
法務省の統計によれば弁護士法施行時の1950年にはその約半分でしたから、権力に対抗するための弁護士活動をするには、地域で団結していないと弁護士の権力に対抗する弁護活動が制約・・守れなかったでしょう。
ところが、今ではどんなに小さな県でも会員が百人前後に達していますし、千葉県でさえも今や800人近い大人数を擁しています。
東京では1つの事務所で数百人を擁する事務所まである時代ですから、都道府県で1つの単位会(東京だけ現在3単位会ですが)しか認めない合理性がありません。
権力と戦うためにはある程度の応援・団結が必要なことは確かですが、交通通信の発達した現在都府県単位でなければならない必然性はありません。
ちょっとした事件で全国的な大弁護団が結成されることが珍しくない時代・・単位会で個別事件の応援団を結成する応援する必要がない時代です。
そもそも団結の必要性ならば、一定人数以上の会員があればどこにでも設立出来るようにすべきですし、交通・通信の発達している現在では地域で縛る必要もないでしょう。
同一地域内・隣接都府県で数百人規模の単位界が入り乱れていたならば、思想や意見が合わないときには単位会を変えても事務所を移転する必要がありません・・現に東京3会はそうなっています。
顧客・消費者にとっても同一地域内に思想行動様式の違う単位会がいくつもあれば、サービスの違いを比べれば良いので却って独占の弊害を防げます。
品質競争は懲戒で脅すよりは、利用者・国民の選択に任せるのが妥当です。
こう言う時代になると戦後弁護士数が少ないときに無理矢理に一致団結の必要から始まった地域独占制度や弱者保護のためのクォーター制のような優遇策が今でも必要かの疑問となります。
一定地域内事務所設置義務の根拠は、日常的移動範囲を超えた地域に複数事務所を持つと名義貸し・非弁活動の恩賞になる弊害がありましたが、今は弁護士数が多いのでそう言う弊害もほぼなくなって来ました。
核弁護士会で非弁チェック体制整備が進んでいる結果、戦後直ぐとは格段に違っています。
規制も社会の変化に合わせて行くべきです。
強制加入制度を直ぐにやめられないとしても道府県に単位会が1つと言う地域独占をやめるだけでも、多くの問題が解決するように思われます。
地域にいくつも単位会があって、例えば隣接都道府県のどこにでも加入出来る・・スキな会を選べれば、政治活動が許されるかどうかの議論の必要性が殆どなくなります。
弁護士会の政治活動が問題になっているのは、会員の政治信条反する行動が許されるかの問題ですから、11日紹介した高裁判決の結果、日弁連が何をしても良いかのような解釈をして、それぞれの単位会がどのような意見発表し運動しようとも、その主義主張に共鳴した人の集まり・自由に脱退出来るならば勝手です。
人口百万以下の小規模県では従来どおり1県に1つしか出来ないとしても隣接県に登録出来るようなれば大分緩和されます。
(隣接だけではなく関東や近畿で言えば地域内のどこに本拠のある単位会に入ってもいいなど・・)
顧客も通勤等の関係で自宅近くよりは隣接都府県の勤務先近くの弁護士に頼むことが多いのが実態です。
千葉県の住民の約半分以上は通勤の都合で都内の弁護士を依頼しているとおもわれます。
強制加入・施設に入った客が外に出て食べるには不便・・逃げられない・公的施設内等にある飲食施設が最初は独占の利益を受けますが、その内総じてサービスが低下し閑古鳥が鳴いていることが多いのと同じで・県単位で縛ることはないでしょう。
世の中で共産主義や社会党支持者が数%〜5%前後しかないのに、弁護士会構成員だけ百%の支持者であると言うのは会の政治意思の表現としては無理があります。
野党好きの人が多い傾向があるとしても6対4とか7対3ならばまだしも全員の名で野党系主張の政策に支持表明をしているのでは、却って内部実態に合っていないことが推測されます。
無理をしていると囚われの客・会員が逃げようともがき出すと、弁護士自治が内部から崩壊します。
ところで、日弁連や単位会が近年政治色を何故露骨に強化し始めたのでしょうか?
私が若手で公害対策委員だったときの経験では、はっきり共産党員を名乗る委員長であっても「そこまで書くのは弁護士会としては無理・個人的に運動するならば別だが・・」と言うような抑制する意見が普通でした。
ところが今では「弁護士会がそこまで言って良いの?」と言うような政治的露骨な意見表明が普通になって来ました。
憶測ですが背後で応援していたときには、自分から政治色を出す必要がなかったので鷹揚に構えていられたのですが、支持政党が衰退している・・国民が支持していないときに応援団が前面に出ることが多いのですが、却って政治色が目立ってきます。
応援団は応援に留まるべきで、選手に代わってグラウンドに出てプレーすべきではありません。
日教組その他政治色の強い労組から順に組織率が下がる一方になって久しい状態で、生き残っているのは強制加入の弁護士会だけ?なので余計ワル目立ちます。

資格制度の空洞化?3(修習受入れ拒否)

以下は法科大学院の人気下落に関するhttp://eic.obunsha.co.jp/viewpoint/201506viewpointからの引用です。
「法曹養成の中核的な教育機関として16年度に創設された法科大学院の27年度入試状況は、入学定員、志願者数、受験者数、合格者数、入学者数のいずれも過去最低を更新。受験者数は創設以来、初めて1万人を割り込む9,351人だった。募集停止が急増した27年度入試は、ピーク時の73%に当たる54校で実施され、入学定員充足率は約70%に改善された。」
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG11HC9_R10C16A5CR8000の引用です。
全体の志願者は制度導入の04年度の7万2800人をピークに減少が続いており、16年度は8274人まで落ち込み、前年度の1万370人を下回り、初めて1万人を割り込んだ。志願倍率(定員数に対する志願者数)は04年度は13倍だったが、16年度は3倍まで落ち込んだ。
・・・ 法科大学院はピーク時に74校あったが、16年3月末までに3校が廃止。28校が学生募集を停止したか今後の停止を決めている。」
上記は2年前の報道ですが、・・応募者が定員にも満たない状況になっていて、その後もいくつかの法科大学院が募集をやめたはずです。
こんな状況が続けば能力のあるものが応募する魅力を感じなくなくなっているのは当然ですが・・これでも「レベル維持出来ていると言い張るの?」と言う惨憺たる状況が外形的に証明されていると見るべきでしょう。
レベルが下がれば「自分でも受かるかな?」と応募者が一時増えますが、社会は厳しい・・その結果仕事がうまく行かなくなる・それを見た後続者が結果的にためらう・・応募者が減る・・そもそも従来の人材が敬遠し、従来とても合格出来そうになかった人しか応募しなくなる悪循環が始まりました。
エクスターンシップで事務所に来ていた大学院生が昨年の司法試験合格後進路相談に来ましたが、要は国家公務員試験にも合格したがどちらにしたら良いかの相談でした。
500人合格時代には想定すら出来なかったような迷い・公務員の方が良いのじゃないかの相談です。
裁判所検察庁が上澄み500人の上から順に採用するから、下の方のレベルがいくら下がっても良いと言う姿勢・・高みの見物を決め込んで来ましたが、受験生の人気・・市場評価が下がって上澄みのレベルが下がれば困って来ます・・。
ソモソモ合格者のトップクラスが、一般大学生の中程度のレベルに下がって来た場合を想定すれば・・・・。
こう言う人材が持ち上がって行き、将来最高裁判事、高裁判事になって、政府決定を覆すようなことがあっても世間が納得するでしょうか?
いろんな政策の方向性を決める場合でも、関連する最高裁判決が予定されている場合には判決を待って決めるようなことが多くあります。
裁判所の判決が憲法上行政判断に優越する・最終判断だと言っても、裏付ける裁判官のレベル次第・・信用が揺らぐと、・・信用だけでなく実際に変な判決が続くようになると社会全体が納得しない時代が来るのではないでしょうか?
さすがに政府や裁判所も焦って来たらしく、1昨年から1500人に減らし、修習生の給費制を昨年から復活が決まりましたが、(次期合格者から実施?)その程度では低レベル化の勢いは止まらない状況です。
自民党の緊急提言を読むと折角合格者を大幅増員したのに弁護士ばかり増えて裁判所の採用が何故増えないかの関連で、裁判所自身が採用に適した能力の修習生が不足しているから、裁判官採用を増やせないと言う実態が書かれています・・。
大幅増加によって弁護士人気にかげりが出た結果、元々の優秀な学生が応募しなくなってきた現状を表しています。
以下は法科大学院のレベル低下の前段階・・学部の現状です。
5年も前の記事ですが、http://diamond.jp/articles/-/27489?page=2によると以下のとおりです。
2012.11.7
「なんと東大法学部が初の定員割れ 法曹志望、公務員志望減少が影響か」
「東大法学部は、法曹志望者、公務員志望者が多いのは言うまでもない。授業もきびしく、履修者の4分の1が単位を落とす科目もある。法曹や公務員志望者ではない民間企業への就職志望者を下に見る風潮があるという。当初から民間企業に就職するつもりあれば、わざわざ授業が厳しい法学部に行かなくてもよいと考えても不思議はない。
 今や司法試験に合格しても、弁護士として就職するのは楽ではない。財政危機ゆえに公務員の人件費削減が声高に叫ばれ、いわゆるキャリア公務員の天下りに対する目は厳しくなっている。そうであれば、東大生であっても法曹や公務員志望が減るのは無理もない話だ。法学部の定員割れはそうした志向が端的に表れたケースと言えよう。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 竹田孝洋)」
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170402-00000006-nikkeisty-bus_allによれば16年度も同じ傾向が続いています。
「東大法学部」に異変、定員割れも! 「首席女子」も悩むキャリア形成、文系は…
東京大学法学部。スーパーエリート養成機関として君臨してきたが、東大文科1類から法学部に進学する際、2016年度に定員割れするなど異変が起きている。官僚や弁護士の人気が下がっているためだが、東大法復権の処方箋はあるのか。」
草野球・草相撲等の足腰に当たる大学法学部の人気が下がるところまで来るとかなり重症です。
平成26年の自民党の緊急提言を受けて27年5月に緊急に1500人の意見が出てそのまま1500人で止まっています。
自民党でさえもっと引き下げろと言う意見が出ていたのに・・。
この間にも志望者レベルダウンがドンドン進んで行きます。
千葉県弁護士会では何年か前から合格者を1000人に減らすべきと言う総会決議を出していますが、何故か日弁連の腰が重く動きそうもありません。
業を煮やした現執行部が、就任早々の今年4月4日にイキナリ日弁連に対して返答次第によっては、修習生受入れ制限するかどうかを総会にかけると言う申し入れを行ない、記者会見まで済ませました。
会内では、会内手順を踏まない抜き打ちの申し入れに千葉のトランプ版かと!てんやわんやの大騒ぎですが、(上記のとおり総会で議論すると言うだけですから、越権とは言い切れませんが・・)そこまでやらないければならないほど・事態が切迫して来たと言うことでしょう。
4月16日に弁護士法を紹介したように有資格者の登録申請に対して法律上登録拒否出来ないとしても、修習生受入れ拒否が出来るかどうかは法律上明文がない・・灰色ですからどうなるかです。
登録拒否出来るのは法定の事由があるときだけ・・と言うことは、資格を与える手続の一環である修習生受入れも拒否出来ない・・協力義務があると言う解釈論もありそうです。
合格者数を千人にしようが、1万人にしようが政府の専権事項であるとすれば、トップで数字を決めればこれに必要な手順に齟齬がないように、準備するのがピラミッド型行政組織の場合(日弁連・弁護士会は公法人ですが独立組織?)当然の職務になります。
他方これに反発して仮に日弁連が千人しか受入れないと言う実力行使に出た場合、弁護士会は独立組織ですから、政府には指揮命令・強制する方法がありません。
ただし強行突破すると法曹三者の信頼関係がガタガタになります。
・・これをとことん追及しているのが沖縄県知事です。

資格制度の空洞化?2(自民党緊急提言)

一定期間経過すれば、3年も4年も勉強している合格ラインスレスレの予備軍がいなくなって、試験が易しくなったから自分も受けようかと言う元々想定外だったレベルの新規参入者が中心になります。
私は昭和最後から平成始めの750人体制(結果的に丙案)になる議論最中に日弁連司法問題対策委員であったのでその最前線にいたのですが、その後法曹養成委員会という専門委員会が日弁連に出来て私は日弁連修習委員になった関係から結果を聞くだけの委員になったのですが、政府は増員の突破口が開いた勢いで?ドンドン合格者を増やして行き約2000人まで増やしてしまいました。
500人基準で言えば合格出来なかった筈の1500人が毎年多く合格しても裁判所や検察庁は弁護士が食えなくなれば任官希望者が増える・・上澄みの元々の500人から採用すれば良いので何ら心配がないと言うスタンスでした。
しかも従来基準で言えば到底合格出来なかった筈の人材がドンドン参入するようになる以上は、訓練期間を延ばすのが本来のスジですが、この大増員と平行して増員に対応する「指導教官が足りない施設が足りない」と言う理由で我々500人時代の研修期間2年を半分の1年に減らしてしまいました。
裁判所や検察庁は採用後内部研修するから、弁護士になる人材と一緒に2年も国費をかけられないと言う露骨な姿勢でした。
悪く言えば、弁護士の質劣化を露骨に狙っていたことになります。
毎年落第生が出るとその後の教官との会合で説明を聞く機会が日弁連修習委員会でありますが、裁判検察科目では滅多に落第が出ない・・弁護科目の落第が圧倒的でした。
我々の頃には、裁判科目が一番難しかったのに今何故弁護科目で多く落第が出るかの説明では、裁判検察では落第スレスレの人材を採用しないから劣等生がいくらいても「我関せず」の姿勢のようだと言うことでした。
その頃から、検察では修習に対する熱意が見られない・・オザナリ的印象が強く何でも見せる時代ではなくなっている印象です。
しかし、全体の魅力がなくなると優秀な学生まで他業界に流れる点を見逃していたようです。
研修所教官との会合ではいつも「合格水準を変えていない・・質は下がっていない」「修習期間が半分になった分・濃密な授業をやっている」と言うのが普通です。
合格者が500人から2000人になってしかも研修期間を半分にしても水準が変わらないと言うならば、昔よりも何倍も優秀な人材が多く集まるようにならないと数字が合いません。
合格者500人時代には、大学でトップクラスの誉れ高い人だけ(東大法学部卒でさえも現現役合格者が一握りの時代でした)が挑戦する超難関試験でした。
当時大学別に何人が現役と言う数字が新聞発表されていましたが今になると過去のデータがネットでは出て来ません。
その何倍も優秀な人材が、ソモソモどこにいたの?となりますし大学院に行けば6割が合格すると言うのが売り物の制度でしたから、論理が破綻しています。
更に需給を無視した大量供給をすれば、低価格競争・収入減→資格取得の魅力が減る→その方向からの応募者人材劣化が防げません。
従来99点取れるような秀才でないと合格出来なかったのが、60点くらいのレベルでも合格出来るとなれば一時的に参入者が増えますが、社会は甘くない・・相応の待遇になって来たと言うことです。
食材千円の料理を600円の食材に落として定価を変えなければ大もうけですが、客の方は2〜3回来れば最近味が変わったと来なくなります。
公式意見の矛盾は試験制度による面からと市場評価の2方面からのレベル劣化の現実を無視する裸の王様のような議論でしたが、大量供給が始まってからの合格者が実務につくようになって約10年以上経過すると、弁護士になっても食うや食わずの実態が広がってきました。
弁護士し某社はそれでも志が高いので、収入が減ってもサービス・・弱者によりそう姿勢をよりいっそう強めているのは大したもので、社会の評価が下がったとは思いませんが、他業界と比較シテ・・応募段階での人気が下がる一方です。
レベルダウン以前に職業としての魅力がなくなって来たので、前段階の大学院応募者が減って来て資格試験制度自体が成り立たなくなる?弊害が目前に迫って来ました。
4月14日に書いたように法律家の質は(ドローン1つ実験するにも法規制のクリアーが必要です)国際競争上重要な戦力ですから、自民党も無視出来なくなって来たらしく緊急提言が発表されました。
自民党の緊急提言の一部引用です。
http://www.moj.go.jp/content/000124826.pdf法曹人口・司法試験合格者数に関する緊急提言 平成26年4月9日
  自由民主党 政務調査会 司法制度調査会・法曹養成制度小委員会合同会議
1.はじめに
21世紀の国際社会において、わが国が自由・民主主義・基本的人権・法の支配といった基本的な価値に立脚し、存分にそのリーダーシップを発揮するためには、法の支配の貫徹を担う司法が力強くその役割を果たすことが不可欠である。また、複雑高度化し、多様化する国際社会において、わが国が本来の活力と国力を取り戻すためにも、個人や企業等の自由かつ創造的な活動を支える司法、法曹の力は極めて重要である。とりわけわが国が通商国家・科学技術立国としてグローバル社会を勝ち抜くため、内外のルール形成・運用の様々な場面で、法曹が先端的で高度な専門性を備えるプロフェッションとしてその役割を十分に果たすことが欠かせない。」
・・・司法制度改革のもと、平成16年、法科大学院を中核とする「プロセス」としての法曹養成制度がスタートした。しかしながら、近年、法曹となるまでの時間的・経済的負担感の増大、司法試験合格後の就職難等を背景とした法曹志望者(法科大学院受験者、同入学者等)の減少が続き、有為な人材が法曹を目指さないという深刻な状況が指摘されるに至った。」
「国際社会でリーダーシップを発揮し、本来の国力を取り戻すため、力強い司法・法曹の存在が不可欠であること、さらにはデフレ経済から脱却して経済活動が活性化し、国家として活力を取り戻す過程にある重要な時期にあることに鑑みれば、こうした状況はわが国にとって国家的な危機とすら言うべき事態である。」
2.当調査会での議論の状況
・・・その一方で、司法試験合格者のうち、上位合格者層と下位合格者層との間には歴然たる質の差が見られるという指摘があり、これを前提に合格者数は1000人以下を目安にすべきであり法曹需要を見極めるまでは当面500人以下とすべきとの意見、若者の法曹離れを直視しその根本対策として合格者数を1500人とすべきとの意見 があった。
全体としては現在の司法試験合格者数は、良質な法曹人材に対する実際の需要を大きく超えており、現状より削減すべきとの意見が少なくなかったことは重く受け止
める必要がある。・・」
3.法曹人口・司法修習等をめぐる状況についての認識
ク)司法試験合格者数が2000人に増加したにもかかわらず、判事補に適する質を
有する司法修習生が任官せず定員を満たさないと最高裁判所が自認するような
状況にありながら、司法修習における二回試験及び集合修習の修習生各人の成績分布の把握や分析、これに基づく司法修習委員会において十分になされていないこと」
4.緊急提言
・・・全体として法曹の質を維持することが困難な事情が生じているのが今の法曹を巡る現実である。・・・・下記に付言するような様々な取組みには時間を要するのでり、それまでの間は質を維持した人材の増加が見込めない状況の下、人為的に合格者数を増加させるべきではない。まずは平成28年までに1500人程度を目指すべきことを提言す
る。」
この緊急提言により、翌平成27年5月に1500人とする有識者会議の結論が出て現在に至っています。

資格制度の空洞化?1

先進国では今や食品に限らず衣類や旅行、医療その他全ての分野で、事前規制・最低基準さえ満たせば商売になる時代ではありません。
同じく弁護士が悪いことさえしなければ良いと言う時代ではありません。
弁護士業務も経済的に見れば商品供給の一種ですから、(飲食業で言えば中毒を起こさない・弁護士が悪いことをしない)最低基準を満たしている以上は、その先のサービスの善し悪しは消費者が選ぶべきであって、上からの懲戒・規制による品質保持は不可能です。
「懲戒制度で品質を保つ」のでは「能力が今一不足」と言うだけでは余程のミスをしない限り懲戒処分・・業界から弾けません。
実際に弁護士の「仕事ぶり」がこんなことで良いのかと言う不満・・懲戒申し立てが増えて来ている筈ですが・・・このテーマは市場淘汰向きで懲戒基準としてはなかなか難しいところがあります・・徐々に運用が広がって行くのでしょうが・・。
飲食業言えば「味が悪い」「サービスがつっけんどん」と保健所に苦情を言うようなイメージです。
ただし市町村などの窓口対応が、(国鉄民営化が切っ掛けだった?)数十年前に比べて劇的に変わりました。
裁判所でも、受付窓口(訟廷管理官・ベテランが対応する仕組みでしたが)で書類不備があるとフンゾり返った姿勢で座ったままポーンと投げ返して来たのを覚えていますが、今はそんなことはありません。
今では対応に問題がある苦情があっても、行政庁では懲戒対応ではなく内部注意・・教育する方向でしょう。
弁護士会では絶え間なく会内研修を実施しているのはこの流れに適応しています。
強制加入制度存続の根拠となっていた「懲戒出来ないと品質を守れない」と言う主張の基礎が今では殆どなくなっているのではないでしょうか?
消費者目線の審判・・市場退場を促す結果が出て来ればこれに従うべきですが、弁護士会にはそのシステムがありません。
せいぜい会費を高くして会費負担が気になるような弁護士の申請を事実上拒否する・・あるいは登録後市場退場を促されている苦しい弁護士が会費負担に耐えられないときには自発的登録抹消を誘導する程度しか出来ないことになります。
お金がないと弁護士を出来ないのかと言う批判が出そうですが、弁護士になるのにお金のない人が挑戦出来ないのと、弁護士になってから食えない弁護士・市場評価が低い弁護士を淘汰しないで放置するのとは次元が違います。
ところで、医師弁護士の資格規制が昔から厳しい・免許制だったのは、専門的過ぎて消費者による技術評価・事後淘汰が難しい・一方で能力のない者が行なうと被害が大き過ぎて後からの救済では間に合わない点にあります。
クルマの運転免許も歩行者や家屋にぶつかって来そう・・危なそうな運転のクルマが突進して来るのを避けられない・・選べないリスクがあります。
タクシー運転手の応対が悪い程度と事故をしょっ中起こすのでは意味が違います。
オンザジョブトレーニングが大量合格に踏み切るとき以来耳にタコができるほど言われるようになりました。
調理士、美容師・医師その他なんでも資格制度と言うものは、取得と同時に一人前という意味ではなく、実務をやりながら腕を上げて行き一人前になって行く素質を持っているかどうかの基準で決めるものです。
訓練しても無理・・その素質がないということで資格試験で落としていた人材を大量合格させて、今後は能力不足だから実務で訓練してくれと言うのは言語矛盾です。
私のように運動神経の鈍い男をプロ野球球団で採用して、いくら訓練してもどうにもならないでしょう。
物的商品でも・・たとえば当日の仕入れ食材の質が悪くても、職人の腕次第・工夫によって何とかなる場合もあります。
しかし、それは言わば客を前にしてその日何とかするために必死の誤摩化しが成功したに過ぎません。
弁護士や法律家・・あるいは学者や研究者芸術家の場合、人間の能力そのものにほぼ99%商品価値のあるので、指導教官が適当に誤摩化せば良いものではありません。
リーガルサービスでは、どんな教育をしても素質による限界が顕著で(人間の)仕入れ段階で勝負がついてしまう傾向があります。
このために訓練さえすれば、最低基準まで行くだろうと言う見極め・・資格試験があるのですから、その水準を保たないとその後の教育・訓練だけでは限界が大き過ぎます。
これが大量供給→資格要件(水準)緩和→レベル低下が始まった弊害の重要部分です。
約30年間500人以内で一定していた合格者数を、平成4〜5年頃に750人に増やすことから始めました。
この議論は平成元年頃からはじまり、その頃法曹養成委員会がまだなくて司法問題対策委員会が担当で私は日弁連委員になっていましたが、当時一般会員の間では追加合格になる250人って本来合格出来なかった人が入って来るの?と言う話題で持ち切りでした. ..。
従来の500人の半分もの新規参入で、当時の千葉県弁護士会会員200人を越える増加です。
理念的には「人みな平等」とは言いますが、実際には人間の能力は人によって限界がある・・司法試験の場合、合格ラインすれすれまで到達したが、その先何年やっても合格ラインを突破出来ない人が大量にいました。
あまり勉強しなかった子供が勉強する気になると、3〜40点平均から4〜50点平均までは大方の子が上がるが60〜70点まで行く子はホンの一握り、8〜90点には1%あるかないかとドンドン減って行きます。
誰でもどこかで限界に打ち当たるのが普通です。
この限界論の大枠の基準については法科大学院制度が出来たときの回数制限・・卒業後5年以内+3回で受験資格がなくなる制度設計が大方の認識を示しているでしょう。
3回制限すると受験控えが起きるので卒業後合計5年勉強してダメな人はやめて下さいと言う設計です。
国家間で言えば中進国の罠と言われる民度に応じた限界論であり、中進国になって10年で先進国入り出来なければ、見込みなしの世界評価基準があります。
韓国経済が今そのボーダーライン期間に入って焦っています。
従来不合格であった501番から750番までの成績の中から次年度に400〜300番に繰り上がれる人も何人かはいるでしょうから、(これが浪人を生み出すエネルギーです)この種の人にとっては時間さえあればもっと上に行く素質があったことになる・・このグル−プの人材を1年早く合格させてもその分多くの手間ひま掛けて訓練すれば一人前になれることになります。
法務省は詳細なデータを持っていて、大量合格→弁護士能力低下・・ひいては弁護士の社会的地位低下を危惧する日弁連に対して、(データ期間は忘れましたが例えば)過去何年間で500〜750番までで合格出来なかった受験生が1年後〜数年後に何%合格しているかと言うデータが配布された記憶があります。
この理屈でも合格者を750人に増やすと後10年浪人しても合格しなかった筈の残り150〜200人くらいが弁護士会に参入して来ることになります。
言わば(繰り上がり出来る比率を忘れましたので)比喩的に言えば、250人中50〜100人くらいはどうせ次年度または翌々年には合格する予定の人材が含まれているから素質的に問題がある訳ではないとした場合、その論で言っても仮に1年だけの増員政策・次年度500人に戻しても需要の先食いと同じで、翌年度には前年度の750番までの人が滞留していない・カラになっているので、751〜900番までの人が3〜400番あたりに入って来る理屈です。
まして750人合格枠を毎年継続して行くと、3年〜4年〜5年後にドンドン本来繰り上がるべき素質を持っていた人の比率が下がって行く上に3〜4年先に漸く合格出来る予定の人が入って来ても実務訓練に馴染むレベルに達しているの?と言う疑問もありました。
その内、元々何年浪人しても合格出来なかった程度の人の占める比率が99%まで高まって行かないか?などの疑問が尽きない騒ぎでした。

弁護士会の自治と強制加入制2

入り口・・・戦後弁護士自治を考えるときには、自治などうるさく言わない企業でも採用は自前でやっています・・弁護士になる資格試験も自前で行うべきであったでしょうが、これを怠り強制加入制度だけ?に関心があったように見えます。
採用試験を自前でやるには体制不備・能力がなかったからと思われますが、必要性の意識・心意気さえあれば大学等とタイアップすれば何とかなる点は政府と同じです。
裁判官・検事と同じ試験と言う格上げに魅力を感じたからでしょうか?
資格試験・司法試験→司法修習終了試験・・法曹資格付与までを政府が行う制度ですが、大卒が応募しても企業が雇用する義務がないように弁護士会加入を拒否出来る権利があれば問題がありません。
千葉県弁護士会では登録申請があると常議員会の議決を経て日弁連に進達する仕組みですが、常議員会が有資格者であっても会員数が多くなり過ぎるからと言う理由で拒否出来ないようです。
企業の新人採用のようになんら根拠なく今年は何人までと言う制限が出来れば常議員会で議論の余地がありますが・・何らの裁量権もなく資格の事実確認だけ・資格があれば拒否出来ないならば、何のための審議議事項になっているのか?実際事務局の事前チェックでクリアーしていると言う説明だけで、それ以上踏み込んだ議論は殆どありません。
資格の有無は重要事項だから慎重審議するために形式上常議員会審議事項にしたと言うことでしょうか?
4〜5年前に千葉県では登録するに推薦人が必要と言う会内ルールに反して推薦人不足だったか、なしの申請に対して受理するかどうか事務局で迷った事案がありました。
法律上の要件がある限り拒否出来ない・・応じなければ最後は裁判まで出来る仕組みが出来ています・・最後は裁判所が決めるのですから、自治と言っても実は尻抜けです。
一般のそば屋八百屋・・どこの企業でも、大学でも研究会でも旅行仲間でもどう言う基準で仲間に入れるか・・採用や仲間に加えるかどうかの基準造りはその組織の自由ですが、弁護士会だけは仲間に入って来るのを拒めない一般組織よりも自由がないのに自治があると自慢しているのですから奇妙です。
懲戒権があると言っても弁護士会に限らずどこの企業でも組織である限り、内部規律のための懲戒制度があります。
民間企業内の懲戒との違いは不満があれば裁判して無効確認や損害賠償を求められ点が一見違うようですが、弁護士会の懲戒制度も最終決定権がなく不満があれば最後は高裁に訴えることが出来るので、地裁から始まるか高裁から始まるか程度の違いでしかありません。
政府から直截懲戒されないと言う点が画期的?かも知れませんが、普通の民間企業でも政府がある企業の部長や課長を降格させろと直截命令する権利がない点は変わりません。
民間団体か行政部内の下位組織扱いかの違いです。
弁護士は、戦前まで民間との区別がはっきりしなかったかも知れませんが、今の時代で考えれば民間団体に違いないのですから行政が直截指揮命令出来ないのは当たり前です。
弁護士会が入会を自由に拒否出来ない根拠法を見ておきましょう。
弁護士法
(昭和二十四年六月十日法律第二百五号)
(登録又は登録換えの請求の進達の拒絶)
第十二条  弁護士会は、弁護士会の秩序若しくは信用を害するおそれがある者又は次に掲げる場合に該当し弁護士の職務を行わせることがその適正を欠くおそれがある者について、資格審査会の議決に基づき、登録又は登録換えの請求の進達を拒絶することができる。
一  心身に故障があるとき。
二  第七条第三号に当たる者が、除名、業務禁止、登録の抹消又は免職の処分を受けた日から三年を経過して請求したとき。
2  登録又は登録換えの請求前一年以内に当該弁護士会の地域内において常時勤務を要する公務員であつた者で、その地域内において弁護士の職務を行わせることが特にその適正を欠くおそれがあるものについてもまた前項と同様とする。
3  弁護士会は、前二項の規定により請求の進達を拒絶する場合には、登録又は登録換えを請求した者に、速やかに、その旨及びその理由を書面により通知しなければならない。
4  弁護士会が登録又は登録換えの請求の進達を求められた後三箇月を経てもなお日本弁護士連合会にその進達をしないときは、その登録又は登録換えの請求をした者は、その登録又は登録換えの請求の進達を拒絶されたものとみなし、審査請求をすることができる。
上記のとおり登録拒絶された者は審査請求出来る上に最後は高裁に訴え提起出来る仕組み=上記法定理由がない限り高裁で負ける仕組みですから、企業のように「今年はいらない」と断れません。
資格試験が一杯ありますが、大卒、運転免許、医師、鑑定士などなど・・・資格者全員を企業が雇用する義務はありませんが、強制加入制度になった以上は、有資格者の登録拒否は認められない・・全員加入を認めるべきと言う制度設計になってしまったように思われます。
強制加入制にこだわった結果、却って変な制度を引き込んでしまったのではないでしょうか?
給与を払うわけじゃない・会員にするだけだから良いでしょうと言うことですが、政府がスキなように弁護士を増やして行くとどうなるでしょうか?
政府が合格者数を決めてしまえる・一方的に粗製濫造・合格者を増加されても弁護士会はこれを防ぐスベがありません。
需要無視で無茶苦茶合格者を増やして試験レベルを下げれば、たちまちレベルが下がる上に過当競争になるので、イキオイ不祥事が増え・・弁護士に対する社会の信用が損なわれます。
そこまで行かなくとも、食えない噂が広まれば職業としての人気が下がる・・優秀な人材が応募しなくリスクがあります。
層なると弁護士が反権力の姿勢を維持出来るのでしょうか?
不祥事が起きれば懲戒処分すれば良いと言っても、不祥事が増え過ぎると全体の信用が落ちますし、(犯罪がいくら増えてもドシドシ処罰すれば良いと言うのでは、国民が不安なのと同じです)もっと言えば、違法行為すれすれを規制すれば足りる時代からよりよいサービス競争になって来ると懲戒制度だけでは、国民の期待する品質・・信頼を弁護士会は維持出来ません。
昨日紹介したように、弁護士自治のために弁護士の品質保持のための懲戒制度が必須と頑張ってそのためには全員加入していないと、懲戒の実が上がらないと言うことから、強制加入制度を要求したようですが、国民の信頼・需要は時代によって変わる・・悪いことさえしなければ良いのではなく、今では品質が重要です。
飲食業で言えば食うや食わずのときには、食中毒にさえならなければ良い・保健所の衛生検査・規制で良いのでしょうが、豊かになると食中毒を出さないのは最低レベルの基準であって、よりおいしいか・見た目や店内雰囲気やサービス満足度など多様な基準がより重要になりますが、この差は保健所規制・・強制に馴染みません。
飢えに苦しみ品質よりも量が重要なときに共産主義・規制主義が合理的だったかも知れませんが、よりおいしいものが欲しくなると自由主義社会の方が可能性があります。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC