中国やりくりの限界(税収弾性値1)3

http://ameblo.jp/katsumatahisayoshi/entry-12242018733.html
2017-01-29 05:00:00
中国、「民間債務」対GDP比で170%「突出する危険性」
「日本、EU、中国の民間債務は2008年まで、対GDP比で100%ラインにきれいに並んでいた。米国は、手厚い内部留保があるゆえに民間債務の対GDP比は、60~70%の中に収まっている。問題は、2009年以降の中国だけが、対GDP比の民間債務額が急ピッチで増え続け、2016年には170%にも達した。この現実を頭に入れて置いて欲しいのだ。」
上記意見は、中国以外は今もキレイに100%で並んでいる前提でしょうが、諸外国では今も債務率が100%近辺で安定しているのかを書いていません。
ただし、29日に紹介したグラフによると中国の債務伸び率が半端でないことが確かです。
リーマンショック以降先進諸外国では異次元金融緩和が一般的であって、日本でもどこでも大量のマネーサプライが続いている以上は、その分債務も膨張していないかの疑問です。
例えば、住宅ローン金利が1%下がれば、借入額をその分増やしても毎月支払が同じになるので借入限度額・債務額が増えます。
この結果韓国では急激に個人債務が膨張してしまっていることが話題になっています。
リーマンショック以降「異次元緩和」が行なわれているのが普通ですから、中国だけ08年以前と比較するのでは、読んでいる方が混乱します。
ただし、日本では個人金融資産が巨大ですので、金利を下げた程度で借りたい人が増えません。
先進国で金融緩和をしても自国内企業や国民が殆ど利用していないで、(円キャリー取引で)低金利を利用して資金不足の新興国が利用しているだけ・せっかく大量供給した資金が海外・新興国に流出しているのかも知れません。
日米欧の低金利政策が新興国の資金需要を満たしていただけ・だからこそ米国金利上げが新興国・・特に中国への打撃となるテーマで持ちきりになっているのでしょう。
この後税収弾性値でも書きますが、GDPその他の指標は一定方向の議論や疑いを抱くとっかかりになるだけであって、そこから結論を導くとなれば、いろんな指標を組わせた意見でないとまともな議論になりません。
国力競争ではGDPが重要でしょうが、(中国は19世紀型・・粗鋼生産量や造船量にこだわって来た時代錯誤制を以前書きました)生活水準指標としてはGDPよりは別の指標の総合化が必要です。
無理な内需振興・・無駄な建設工事等の結果GDPだけ上がっても、税収がこれに比例して上がって行きませんから、経済効率無視の投資か否かの指標としては税収弾性値も目印の1つになるでしょう。
上記ブログの紹介では、中国の場合、税収弾性値が極端に下がり続けているらしいのです。
中国がリーマンショック後税収弾性値が下がっているのはGDPアップと言ってもゴーストタウンを作るような無駄な投資をしている証拠だと言う意見の補強に使われています。
「16年の中国財政の歳入増が、前年比わずか4.5%増であったのだ。税収の伸びが名目経済成長率の8.0%を下回る状態になっている。ついに、「税収増加率は、年々続く縮小傾向から脱却できなかった」(『人民網』1月24日付)と実態を吐露するに至っている。税収の弾性値という尺度がある。名目GDPが1増えれば、税収がどれだけ増えるかである。長期的な税収弾性値は1.1とされるが、中国はすでに、0.56にまで低下している。ゾンビ企業の多発で経済が空洞化している証拠だ。「腐ったリンゴ」そのものである。」
税収弾性値が平均して1、1であると言う図表か何かで見た記憶がありますが、ちょっと見たときの印象ではこう言う平均化が可能と言う程度の説明であったように見えます。
中国の肩を持つ訳ではないですが、公平に見ると過去一定期間の平均から外れると異常とする断定論は一面的です。
中国の場合にも前提となる社会状況変化があるのですから、(非衛生・生活習慣が汚いことで有名な中国でさえ公害垂れ流しのマイナスや衛生意識向上・生活水準向上があるに違いない・・量より質に入って来た変化をどう見るかです)社会状況が変わった指標としてみることが可能ですが、この種の衛生基準アップなどの)投資は次年度以降の生産性向上に結びつかないのが普通・・非効率投資ですが、これを無駄な投資(誰も使わない鉄道建設やビルを建てるような投資)とごっちゃにした議論は無理があると言うことです。
民需不足の場合に財政出動でインフラ投資すると、(不景気対策の公共投資は・需要がないのに無理して投資するのですから)投資効率が下がるのはどこのクニでも同じです・・。
日本の場合もバブル崩壊後の需要穴埋めのための財政出動・・公共投資の投資乗数が1割っていることを長年言われて来ました・。
社会でも個人でも豊かになれば目先のお金儲けに繋がることばかりではなく、その他の(効率の悪い文化・各地の美術・音楽ホール)出費をする余地が出るのは当たり前・・この段階になるとGDPアップ率が下がるのは当然です。
我が家でも数十年前から、収入に繋がらないことに支出する・・いろんなことをするようになっているのですが、日本のGDP成長率が下がっているのも、このような社会の豊かさに関係にあるのであって、目先金儲け(人よりより一杯多くのビールを飲みたいレベル)に燃えている新興国と「アップ率を競う」前提のエコノミストの議論の建て方・日本のGDPアップ率が見劣りすると頻りに言うこと自体が無意味です。
生活水準が上がると建物建築意欲を卒業して自宅の庭で花を植えたり美術品など購入し音楽を楽しむなど消費動向が変わりますので、その前の生活スタイルを基準に消費が減ったから生活が貧しいか?と議論しても意味がありません。
クルマで峠を越えるのに3〜4時間かかっていた場所で、トンネル開通で20分で山の向こうに行ける・・この種投資の場合翌年にはGDPが上がり投資高率が高いのですが、既存道路のアスファルトのレベルアップ、縁石をより見栄えの良い良質のタイルにしたり道路脇にツツジなどの植え込みをするレベルアップ投資では、翌年以降のGDPが上がりません。
中国がGDP6、何%成長の割に税収があがっていないと言うだけでは、その公表がインチキか、仮に数値が正しいとすれば、投資効率の悪い投資(空きビルを建てたか、または公害防止投資が嵩んだのか、縁石を綺麗にするなどのレベルアップ投資か不明)が多かったことが分るだけです。
批判するならば投資効率が下がった内訳の分析(公害防止や衛生基準アップ投資や市街地の美観アップなどの投資と投機による不要な原材料在庫アップまたはゴーストタウン投資の)こそが重要です。
GDPは、19世紀以降の建艦競争時代に継戦能力の指標としてGDP・生産力が重視されていたに過ぎず、未だにこれを金科玉条のように重視することが間違っている・・国民の豊かさアップとはイコールではありません。
日米安保で見れば分るように日本の継戦能力は、粗鋼生産力や造船量だけではどうにもならない・・米国による高度兵器供給網維持にあるのであって、自力継戦能力は大したものではありません。
大災害が起きるといつも問題になるように、民間企業もサプライチェーンが世界中に広がっているのであって、トヨタでもどこでも自企業内で完結出来ていません。

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