対外強行発言と損失1

アメリカの国際交渉が思うように行かないのは,第二次政界大戦後世界覇者になった地位に応じた政治をするべき能力・背景の民度が低い付いて行けないことによりますが、民度の低い国民を背景とする政府は地位相応の能力がついていない結果道理に基づく交渉ではいつも言い負かされる方に回るのが許せない・・オバマが無能だと批判して溜飲を下げている状態です。
民度が低くて正義の基準がはっきりしなくても圧倒的強者であるときには何とかなっていましたが・相対的強者の地位になってくるとうまく行きません。
実は今でも一対一であれば圧倒的強者ですが、中東、ロシア、中国、その他「全方位的に)全世界的紛争に関わると比喩的に言えば中露に対して3~5対1の比率であっても勢力分散によって大幅に交渉力が低下して行きますので、強引な主張が通り難くなります。
全方位・同時多発的対処は不利なので,オバマは成長地域であるアジアに集中して、ここの権益だけでも日本との協調で守ろうと決めたと思われます。
このように決めた以上は、アジア以外では思うようにいかなくとも捨てた場所だと割り切るしかありませんが、思い切れない非合理意識(・・中東その他地域では利害関係者も一杯出来ています)が国民不満になっているようです。
政府も企業同様にの選択集中判断が求められているのですが、トランプ氏が政権担当になった場合これを承継できるかヒステリーを起こして世界中から手を引くことになるかです。
最近のトランプ氏の発言は上記アジア重視政策の基本になるtpp反対を昨日あたりヘースブックで明示したことから見て、アジア全域でのヘゲモニー確保も諦めて個別交渉で自国有利に展開したいという戦略のように見えます。
多角交渉の場合,上記のとおり一対一ならば圧倒的発言力の筈が10カ国相手だと勢力分散されて無茶が言い難くなります。
そこで一対一の個別交渉を強国が望むのですが,多角交渉の場合自分勝手な主張は誰が指導者になっても紳士的対外交渉をするしかなくなる、自分勝手な主張がうまく行く訳がない・・そこでTPP構想は本来アメリカ主導で始めたものでありながら,トランプ氏は「俺ならうまくやる」とは言わずに、過去の経緯や合意〜約束事を一切認めない・・ちゃぶ台返しをやると言う宣言を始めたのです。
何沙諸島問題でも中国は個別交渉を要求していて「関係ない国は口を出すな」明白に主張しているように、強国が一対一で小国を圧迫する意図が露骨です。
強迫に屈しない手強い相手には・・一方的に課徴金をかけるなど・・ルールによる交渉でなく腕力背景の交渉をする態度・・言いたい放題です。
戦後70掛けて作り上げて来た世界秩序をちゃぶ台返し的に全部認めないとなれば,世界は大混乱ですからこんな無茶が貫徹出来る筈がないですが、当初は個別ルール無視・違反から始めるのでしょう。
ヤクザは一時的に無茶出来ますが、長期的には無理が出るのとおなじですが、民度の低いアメリカ人がこれに「格好いい!』喝采している構図に見えます。
ところで選挙でのスローガンは分り良く単純ですが、実務となれば仮に選挙で圧勝しても風景が違って来ます。
喩えば、排ガス規制や耐震基準を変えるにしても、新規製品から適用するのが普通で過去にさかのぼって適用するのは余程の違法行為以外には無理があります。
移民追い出し・・新参古参の区別もスロ−ガン的には簡単ですが、既得権擁護のための移民排斥?にも入国後数世代経過、20〜10〜5年経過、数年経過など、なだらかなグラヂュエーションがありますから、どこで切るかは難しい・・切り分ける年次によって支持基盤の離反が起きます。
トランプ氏支持者には,居住歴の長いヒスパニック系が結構多いと言う解説が選挙前にあったことを紹介しましたが,トランプ氏は最近「犯罪歴のある不法移民だけ」と言い出しました。
現実政治とはこう言うものですから、トランプ氏が仮に選挙で圧勝したとしても(総取り制度をうまく利用しただけで獲得票数はヒラリー氏より少ないと言われています)統治権を握ると国内でさえも無理は出来ません。
まして対外政策は、相手があって国際情勢を背景に・・比喩的に言えば100の諸要素の組み合わせによる損得を計算して・・ギリギリの交渉で決まって来た経過があるので、国内で圧倒的支持を受けた政策は,逆にそれに縛られる・・政策自由度が低いことになるマイナスでしかありません。
実行出来ないとそれを支持した数に比例して「国内支持率を失うので協力して欲しい」と言う対外泣き言の範疇であって、アメリカと言えども外国に対する強制力はありません。
有無を言わせぬ課徴金等で無理を通せばそのしっぺ返しが必ず起きて来ますので,(22日書いたように国内物価上昇によって国民不利益に直結する外,)どんな小さなクニでもそれなりの対応(報復)が必ずありますし,長期的にアメリカとの約束は信用出来ないと言う評価が出来あがる不利益が生じます。
中国が投資した国外企業に対する商業ルールに反するいろんな嫌がらせをすると,カントリーリスクの高さを嫌がる国外からの次の優良投資減少リスクにあっています。
焦点が変なものを売りつければ客が泣き寝入りしても,その代わりそのお店に行かなくなるのと同じです。
中期的影響が大きいので強国と言えどもそれほどの無茶は出来ないので,内々の泣き言を言って無理を通して貰うには、国民に見えないところで何かを譲るしかないのが原則です。
現実的でない対外スローガンを実現しようとする場合、対外交渉は軍事力に訴えない限り勇ましいことを行って来た手前妥協すると国内的に政権が持たないので表向き強行突破しかない・・裏で相手国に大幅譲歩するしかない・・あまり実益のない成果を求めるために実質的国益の大幅売り渡し外交に陥ります。
中韓両国の首脳は「大言壮語」するのが普通ですが、外交では相手の了解がいる・・相手のメンツを潰すマイナスを補ってあまりある実益提供を内々にするしかない・・売国的外交に陥っているのが普通です。
習近平の英国訪問では、強引・非礼の限りを尽くして子供染みた優越感に浸ったようですが、その裏で経済合理性のない各種投資約束があった・・このため英国は仕方なしに応じた?と思われていることは周知のとおりです。
尖閣諸島周辺示威行為や南沙諸島の埋め立て工事強行など見ても,国費浪費でしないのが明らかです。
鳩山内閣が「少なくとも県外へ」と言うスローガンで失敗したのは、アメリカが応じるようなメリット提案の根回しをしていなかったことと、そんな大規模な政策変更に見合うほどのメリットを裏でアメリカに与えるお土産提案が不可能だったからです。
佐藤内閣時の沖縄返還に際してもそれなりの密約があったと言われています。
成熟した民主国家においては、見返りにアメリカとの約束内容も公開して、それでも沖縄を返してもらった方が良いかを正々堂々と沖縄県民や国民合意を図るべきだったことになります。

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