アメリカの交渉術はオバマやヒラリー氏自身が弁護士であったこともあって,弁護士的思考方法と最近言われるようになりましたが,たまたまクリントン元大統領やオバマ大統領あるいはヒラリー氏が弁護士だったに過ぎず,社会の思考レベルが元々2項対立・単線思考の文化を背景に政治家が行動している社会を表しているに過ぎません。
単線切り分け社会を背景に生まれて来る政治家は弁護士でなくとも似たような思考しか出来ないのだと思われます。
アメリカは弁護士・訴訟社会と言われますが,何でも訴訟で白黒つける社会はその前提として,社会が単線・2項対立,白か黒か,敵か味方か中立か、程度の単純色分け社会しか理解出来ない・民度が生み出した交通整理方式かも知れません。
4〜5年前までのマスコミ論調・・アメリカや中国の戦略性に見習うべきだと言うのが普通でしたが,日本から見れば見え透いた戦略で馬鹿げたレベルに過ぎません。
欧米かぶれの文化人やマスコミは二項対立的戦略が格好いいと日本の戦略性のなさを嘆く声ばかりでしたが,あまりにも単純過ぎるのでマスコミ連動の野党は単細胞レベルからしか支持を受けられないジリ貧政党になっているのです。
ちなみに我々弁護業務は原告と被告,検察官と被告人と言う一対1の対立構造を前提に交渉するのが原則で例外的に多数関係者がいるだけです。
(集団訴訟も結局は一対一の構造に還元されて行きます)
すなわち弁護士・・法律家は一対一の交渉に関するプロですが,100〜数百の利害をつかねて行く交渉のプロではありません。
アメリカ社会はこの方法に優れている(・この程度の切り分けで社会が成り立っている程度のレベル?)だけあって、何でも二国間交渉に持ち込もうとしているのですが,国際政治は,AB間の決めごとがCGE〜Nにも影響を及ぼすので,単純ではありません。
中東の入り組んだ利害関係を見てもアメリカ式単純交渉術では国際政治を切り回すには限界にぶちあたっているのに,国際レベルについて行けないアメリカ人民とトランプ氏がこれに「逆切れ」を起こしているに過ぎません。
今回のトランプ現象は一面から見れば,複雑系処理に付いて行けない単線系アメリカ人がヒステリー・カンシャクを起こしたに過ぎないのですが,そのまま「どうせ俺たちは無茶しか出来なんだ」と突っ走るかどうかによって・・何しろ図体が大きいので誰も止めようがない・・世界の幸不幸が決まって行きます。
トランプ氏が第2次世界大戦前のロ−ズベルトのように無茶をやり過ぎないようにアメリカ人民・ピープルがコントロール出来るか否かに今後の世界政治はかかっています。
ヤクザが暴れても局地的でしかも,警察が来れば収まりますが,・・・アメリが無茶をやれば止められるクニがありません。。
この無茶を言いたい放題、やりたい放題した結果第3次世界大戦になると本当に世界がホロンでしまうリスクがあります。
アメリカが道理に基づく政治を出来れば,小手先のことを何をしようとも結局・・長期的には道徳律のしっかりしたクニ・・複雑系処理に優れた方に女神が微笑むでしょう。
中国、ロシア、トルコ等の地域大国が,その地域内で無茶をやりたがっている背景は,彼らを支持する民度レベルにかかっています。
我が国を含めて単純仕分け・・2項対立を煽る風潮批判をMay 5, 2016,「政府と国民5(2項対立3)まで書いて来ました。
日本では、この種単純煽り系のスローガンに面と向かって反対はしないが国民は滅多について行かない・・実態はそんな単純なものではない・・複雑と思っているので選挙になると,左翼系が大量動員した・・国民の声を無視するなと威張っている割に選挙結果は穏当です。
サイレントマジョリテイーの重要性については、October 31, 2015,「サイレントマジョリティ22(運動不参加者の心理2)」まで連載していて、その後Apr 24, 2016「サイレントマジョリティ23(保育所設置反対運動)」Apr 28, 2016「サイレントマジョリティー24(国民総意)」まで連載途中でしたが,その内再開します。
アメリカでは,肝腎のサイレンとマジョリテイーの方が単純なようですから,始末が悪い・・衆愚政治に堕することになります。
日本は民度が高いのに野党が単純思考過ぎて健全な野党が育たないで困っているし、アメリカの場合には、指導者とピープルの民度差が大き過ぎる問題です。
今回のトランプ旋風はピープルが成熟して国民に変身した結果なのか?
今でもガバメントの対象であって,政治の主役になれないままか?が今後の政治の動きで分ります。
地域大国の為政者の乱暴な言動は・個人の資質と言うよりもこれを求める自国民族レベルがまだまだ複雑系処理向きではない・地域大国らしく威張り散らしたいのにこれがが出来ないストレス・・民族願望を背景にしている点がほぼ共通です。
アメリカ「人民」の多くも実は民度は似たようなものですから、これに親近感を抱いているのをトランプ氏は煽って当選したと見える点がこの先政治を危険な方向へ導く可能性が高めます。
(ピープルの多くは、お金持ちになって高級料理店に行くようになると窮屈で困っているようなもので,大声しゃべりまくりたい本能・・内心あまり格好付けないでやりたい放題やりたいと言う本音が出て来たのです)
大人のちゃぶ台返しは、子供がダダをこねているのに似ていますが,廻りはその場の儀式等を滞りなく済ますために一応宥めますが,原始的本能をその都度爆発させていて中長期的にうまくやれるかは別問題です。
却って信用をなくすのが普通の結果です。
信用を得るには時間がかかるし,得ても失ってもすぐには効果が分りませんが,長期的に利いて来る・・逆から言えばすぐに回復不可能ですから,日本では誰もが信用を大事にしているし,礼儀作法を重視するのです。
ヤクザがスゴメばその場では何か恐喝・・利益が出ますが、長期的には敬遠されてしまい結果的に貧しい生活しか出来ていません。
ルーズベルトも関税等の報復合戦では収拾がつかなくなっていて、局面打開のために対日戦に訴えたがっていてあの手この手で日本を追い込むとともに国内世論工作して遂に日本をその餌食にするのに成功したと言うシナリオ理解が今では通説ではないでしょうか。
私の頃には,学校ではアメリカはルーズベルトのTVA計画を中心とするニューデイール政策成功によって不況脱出に成功したと習いましたが,実際には対日戦突入成功によって戦時景気・漸く不況から脱出出来たことが分って来ました。
社会党の土井党首が「ダメなものはダメ!」と言って一世を風靡したことがありますがこのような単純思考で物事・複雑な政治が片付く訳がない・・日本の成熟した民度から言ってふしぎです。
実現不能な鳩山氏の「少なくとも県外へ」のスローガンと同じですが,こんな単純スローガンで政治が動くなど不思議ですが、もしかしたら、マスコミの応援で一世を風靡しただけだったかも知れません。
このスローガンは1998年の参議院選挙のときですが,僅か3年後の91年地方選挙では議席を激減させて土井氏は党首辞任になっています。
奇しくも2009年から2012年まで政権を担当した民主党政権と期間的にはほぼ同じです。
http://www.huffingtonpost.jp/2014/09/28/doi-takako-passed-away_n_5894892.htmからの引用です。
「消費税導入への反発や、宇野宗佑首相の女性問題などを追い風に、「だめなものはだめ」「やるっきゃない」などの言葉で自民党への攻勢を強めた。女性候補を大量擁立して1989年7月の東京都議選で議席3倍増、同月の参院選では改選議席を倍増させて自民党を上回るなど大勝し「マドンナブーム」や「おたかさんフィーバー」と呼ばれた。
1990年2月の衆院総選挙でも「おたかさんブーム」は、社会党は改選を51議席上回る136議席を得たが、自民党も275議席を獲得して安定多数を維持した。しかし1991年4月の統一地方選では、道府県議の当選者数が過去最低となり、東京都知事選の推薦候補が4位と大敗。責任を取って、翌月に辞任した。」
上記を見ると90年選挙ではマスコミのフィーバーにも関わらず自民党よりも概ね他の野党の議席を食っただけだったことが分ります。
(この結果、不満を持った野党共闘が崩壊したことが都知事選等の大敗北→辞任に繋がります)
単純スローガンは複雑な説明よりは単純結論を求める低レベル庶民には分りよいのでマスコミがこれを煽ると票を得るには便利ですが、実際政治は複雑な要因で決まりますので,単純なスローガンとおりに政治をやれないのがほぼ100%です。
・・その結果庶民の失望感(騙されたと言う反感)から次の選挙では概ね大敗になるのが普通です。
単純スローガンは言わば麻薬のようなもので,一時的に馬鹿力を発揮しますが,長く政治をする政党が使ってはならない禁じ手です。
上記のとおり土井社会党はその後急速に支持を失い,党自体がなくなってしまいましたし,鳩山民主党政権もすっかり信用をなくして次の選挙で大敗し今では党名すら維持出来なくなって,今夏民進党に党名を変えました。