ロシアや中国がアメリカのヘゲモニーを堂々と争う状態になってきたのに対して、アメリカは、どうすることも出来ない状態が続いています。
アメリカの威信ががた落ちになって来ると最近では近代以降長年欧米に忠実だった地域大国トルコまでもがアメリカのヘゲモニーに挑戦するかのようにロシアに急速接近し、シリア内戦ではアメリカの言うとおりしない・更には国内人権弾圧批判に対しても欧米の批判を受け付けなくなっています。
元凶は中国の人権侵害や国際ルール無視を欧米が(巨大市場に目がくらむ一方で対日牽制もあって)大目に見て来た(裏からみればすり寄って来た)ことで北朝鮮が図に乗るし、その他中小国も便乗・・図に乗って来たと言うべきでしょうか?
ロシアのクリミヤ併合も中国と組めば(原油等の資源も買って貰える→その分中国のロシアに対する貸しが出来て中国の立場が大きくなる)それほどの孤立はないと言う読みがあってのことです。
フィリッピンの新大統領の傍若無人ぶりもイザとなれば中国と組む選択肢があってのことと思われます・・フィリッピン完勝の国際司法裁判所判決が出たばかりで日米が判決を守れとASEAN首脳会議で力説しているのに被害国の同大統領は中国に対して何の要求発言もしませんでした。
日米の主張・・国際秩序尊重の主張は穴の空いている風船を膨らませるような結果になってしまいました。
アジアではフィリッピンのような小国大統領でさえ、欧米の国内人権批判に開き直るどころか、ASEAN首脳会談時でのオバマ大統領と会談予定直前にオバマ氏に対する侮辱発言までする始末です。
この発言に対し、オバマ氏が「溜まらず?」首脳会談予定を取り消す異例の事態になりました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160906-00000024-jij_afp-int
AFP=時事 9月6日(火)14時31分配信
「ドゥテルテ大統領は5日、タガログ語で「売春婦の息子」を意味する言葉を用いてオバマ大統領を罵倒していた。
両大統領は6日午後に米比首脳会談を予定していたが、5日のドゥテルテ大統領の発言後、米国側が会談を取りやめている。」
アメリカの権威失墜状態は大国中国+北朝鮮→ロシア→トルコ→フィリッピンへと、螺旋状に進み始めています。
さしあたりごろつき集団化に打つ手がない状態が始まっているとも言えますが、アメリカの権威低下傾向に嫌気をさしてトランプ氏のように「世界秩序など関係ない」と言い出せば18〜19世紀の弱肉強食時代が再開されます。
腕力はあるが総合力の劣る中国とロシアは、「腕力優先→道義や民の福利はその範囲で守れば良い」と言う前近代的国際秩序が居心地が良いのでしょう。
「俺には俺のルールがある」とローマ法王と絶縁してイギリス国教会を作ったイギリスのヘンリイ8世の支配程度が似合っている国の方が多いような気がします。
フィリッピンでは麻薬撲滅などの分野では、欧米的民主的手続など言ってられない状態にあることも分ります。
綺麗な本社ビル・宮廷内では、背広や礼装が似合うでしょうが、作業現場で背広が似合わないのと同じで,ルールもTPOが求められます。
中小国が何故腕力基準が第一で道義は二の次の国になびくかについて、国益よりは自己保身・・目先利益誘導(賄賂攻勢)に弱い指導者が多いと言う意見もありますが、それよりは、上記のとおり国情に合わない基準を押しつけられる問題点の方が大きいように見えます。
田沼清治の後を継いだ松平定信の政治を批判した
「白河の 清きに魚も 住みかねて もとの濁れる 田沼恋しき」
で知られるように、物事には場面ごとのルールが必要でしょう。
アメリカで銃の所持規制出来ないのは,国民底辺層のレベルがまだその段階にあるコトを表しています。
またデュープロセス重視の連邦最高裁判所判例の結果、法的手続に乗れば、完全な人権が保障される代わりに、現場射殺が横行している現実をこれまで何回も書いてきました。
これの二重基準をフィッリピン大統領が公式に奨励し,今まで2000人殺したとか自慢していることをアメリカやフランンスでは、実際に現場で(こっそり)行なっていることです。
こっそりとやっている結果、黒人中心に射殺対象になっていることが黒人の不満・・この数年黒人射殺事件の度に暴動発生に繋がり、問題点として浮かび上がっています。
フィリッピンの場合目の前で漁場を武力で中国にとられている状態で中国には何も言わない・・そんなことよりも人権侵害批判を言うオバマに悪態をつく指導者が生まれています。
トルコはEUに加盟したいがために欧米基準に合わせて死刑廃止していましたが、欧米のヘゲモニーが揺らいだこの機会にエルドアン政権が死刑復活を言い出しました。
欧米は国際ルールの主導権だけが守れれば良かったのに内政にまで口出しし過ぎて命取りになった印象です。
領土の一部をとられてもその部分だけですが、内政全部に口出しされる害・・イラクのフセイン大統領あるいはリビヤのカダフイ大統領殺害・によるその後の大混乱・シリアへの内政干渉による収拾のつかない混迷はその代表例です・・の方が大きいと言うのが今の方向性でしょう。
国民は独裁でも前の安定していた統治の方が何倍も良かったと言うのが普通の考えでしょうう。
独裁で良いかどの程度までの独裁権限まで許容するかはその国民が考えることであって、アメリカや西欧が口出しすべきことではありません。