世界的減税潮流の基礎→小さな政府へ4

人口が半分でも3分の1でも各人が4〜5倍高度な演芸・風景などを楽しみ、着たり食べている国民であれば、人口が少なくとも結果的に消費力が大きいのですから低額消費人口ばかり増やすのが能ではありません。
演芸やスポーツ、絵画・料理全ての分野で、下手なものを半値〜3分の1〜10分の1の値段で見るよりは、より良い物に2〜3〜5倍払える社会の方が、より良い物が育ちます。
良いもの(サービスを含めて)が売れる・・評価される社会であれば、それを輸出用にも出来ますが、後記のとおりフードスタンプ食品など安物ばかり楽しんでいるのでは、これを「アメリカで何千万人が食べている」とか「着ている」と言われても?世界の人が買いたがりません。
うまいものを食べ、良い絵を見るのが技術向上に役立つかと言われると、うまいもの食べるのがスキならば良い料理人・絵描きになれる保障はありませんが、良い物を作れば高評価を受ける社会でこそ向上意欲が出て、より良い社会になって行く原動力になります。
国内市場レベルが輸出競争力を決めて行くのですから、内需拡大・贅沢は国際収支を悪化させてしまうのでないかと言う恐怖心は間違っています。
資金不足国・・新興国の多くがそうですが・・の場合、先に贅沢していてはつぶれてしまいますので、先ずはすぐに金になる方法・・先進国の物理的?模倣から入るしかないのは当然です。
労働者の子供個々人で見ればうまいものを食べて礼儀作法を学んでもそれを活かせる保障がないから投資効率が悪過ぎます・・育ちに応じた仕事に就く訓練をした方が合理的です。
今の日本はギリギリに働いてすぐにお金が欲しいような貧しい国ではなく世界一の債権国ですから、国民にゆとりを持たせて生活レベルを上げて、高級食材・デザイン、生活モデルそのものを輸出出来るようにして行くのが正しい選択です。
良いものかどうかより腹一杯にしたい・・先ずは明日食べるお金を稼がないと生きて行けないような新興国の真似をいつまでもしているのは恥ずかしいことです。
琳派で有名な酒井抱一を見ていると、(私は審美眼が弱いので、美術展に行くと主催者の意図しない変な発想に取り憑かれるのが困ったものです・・)彼が育った時代にはまだ名門武家の出身者として「絵を描くのが楽しみ」などと言う軟弱な?生き方は批判の対象だったでしょう。
ところが、代々大老になる家柄・酒井雅楽頭家としては高度な政治には武力腕力よりは人脈形成が重要になっていましたが、酒井抱一が長じて名をなす時代には平和な時代が定着して消費・贈答文化が発達して来ていたので、「絵師」として名をなした弟「抱一」の絵画は格好の引き出物として、重用されたに違いありません。
文化が発達するとトラック1台の小麦・ジャガイモよりは高度美術品の方が価値のある時代になります・・高度美術品や高価な果物や高級食品を作るにはこれを喜ぶ消費者が必要です。
人口統計をみて労働人口が減っている→移民が必要と短絡的に騒ぐのは、環境変化に対応していくニッポン民族の能力を知らない外国基準の主張です。
アメリカや西欧は環境変化に対して底辺労働(多くは若年)の移民を多く入れて中国の低賃金に対抗し、国内市場.消費力を上げるにも人口増がてっとり早いと言う安易な対応をしてきました。
・・日本の場合人口が同じ〜少し減っても消費のレベルアップ対応で国内消費(金額)を増やす方向ですが、日本の学者は欧米の対応が何でも正しいと宗教的に信じている立場ですからこれを参考にして「同じようにやれ」と主張しているのです。
欧米では、移民を入れて生産年齢人口を1割増やすことにより1割成長を図る..底辺層でも何でも人を増やすことによって、比喩的に言えばフードスタンプ用の最低食品や安い衣料などの国内消費が人口比例で増えるでしょうが、これでは新環境に適応していることにはなりません。
移民を増やしていく対応では、国民レベルが下がる傾向になるのが普通です。
※同じ知能レベルの移民であっても言葉や習慣の違いによる壁があるので、彼らに対する教育費が何倍もかかるしその割に教育効果が上がりません・・まして底辺層から入って来ると国民平均レベルがなお下がってしまいます。
そのうえ、先進国国民は過去の蓄積分配の恩恵で現役国民の能力以上の(金融資本蓄積のみならず文化基盤の厚みその他)良い思いをしています・・この分配量が一人当たり減って行く関係・・希薄化という点では民族・道徳意識の希薄化が重要です・・これらを2016/07/17「アメリカ式移民モデルの破綻4」のシリーズで書いてきました。
日本が移民による人口増を拒み、国民レベル引き上げに努力して来たことこそが、石油ショック・レアアース禁輸対応同様に正しいことです。
移民受け入れを拒否して来たのが文化人?には不満でしょうが、国民のレベルアップ努力の結果、労働人口減にも拘らずGDPを減らさず、円相場がプラザ合意後240円になり今は100円前後(昨日の新聞では99、何円)ですから、国際収支黒字が毎年10兆円前後で同じとしてもドル相場にすれば、バブル崩壊後だけで見ても失われた20年どころか飛躍的成長を遂げていた・・これがジリジリと円の評価を挙げて来た原因です。
このコラムで繰り返し書いていますが、我が国の生活水準はこの20年で2倍前後上がっています・・。
過去20年あまりの実質的成功の原因が、政府の成長投資が成功していることによるのか、元々の国民レベルが高い上に豊かな生活を保障したことが新たな視点需要を提供して新たな輸出産業を捲まず撓まず育てているのかの見極めが重要です。
世の中はオセロゲームのようには行かないので多分双方の視点が必要でしょうが、そうとすれば従来型投資資金比重を徐々に減らして生活水準向上方向へ資金シフトして行く必要があります。

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