消費力アップと消費税増税論の矛盾3

8月14日の日経新聞朝刊1面には戦時公債が紙くずになった例を書いて危機感を煽っていますし、3pにも、GDP比250%にもなっているのは先進国では日本だけだと書いています。
敗戦後の超インフレは、戦争中対外貯金がないまま無制限に公債を発行していたので・・敗戦=対外開放の結果、言わば円が大暴落した結果による・・・ソ連崩壊時のソ連の混乱同様であって、これを資本・通貨取引を自由化している今の日本に当てはめるのは、事例の違うものを、あたかも同じであるかのような報道・・虚偽報道に類するものです。
世界最大の純債権国になっている今の日本を戦前の貧困時代に当てはめて不安を煽るのは一種の虚偽誘導です。
何回も書いているように債務国が消費拡大したら破綻が待っていますが、豊かな国はこの際貯蓄を崩してでも消費拡大し、国民の生活水準を上げる努力すべきです。
ましてこの20年間日本は国際収支黒字の連続・対外純債権を増やし続けているのですからこの増加ペースを落とす程度で良いのです。
これまで書いているように純債権国である限りコップの中の嵐・・お父さんが10〜20億円の預金のある息子に生活費負担させないで毎月20万円借り続けて親の年収以上の債務になっている・・借金を息子に残すのかと騒いでいるようなものでマンガチックです。
一家のトータル収入・貯蓄が債務を上回っていれば将来何の心配もありません。
10億の金融資産のある人が今株を売るのは損だと考えて、金融資産をそのままにして1億借金してある企業に出資した場合、その債務が年収の2倍であろうと3倍になろうと支払力に関係がないことが明らかです。
マスコミは意味のないことを比較対象に持ち出して頻りに大変なことになると主張しています。
紙幣大量印刷の結果円が暴落すれば債務国の場合返済資金がなくて困りますが、債権国の場合対外資産評価が円の下がる率に比例して上がるので、日本人・・日本企業にとっては大儲けするだけで損しません。
借金の額が単独で意味あるのでなく、バランスシート上どう言う関係にあるかで判断すべきは企業会計の常識です。
国債を日銀が何%引き受けているかではなく、心配するべき基準は国際収支の推移・・対外純資産がどうなるかの問題です。
この種の議論は何回も書いてきました。
デフォルトリスクは国債保有率やGDP比率に関係がなく対外純債権の有無にかかわるとしても、東証の株式保有比率に占める公的資金の比率がドンドン上がって行くとどうなるでしょうか?
日銀や年金資金・・公的資金による買い受けが増えて行き究極のパターン・・99%占有率になると株式市場はどうなるのでしょうか?
株式は債務ではないので、国債のような支払能力は問題になりません・・そんなことよりは、投資のリターン予想・・収益予想に基づく合理的相場ではないとなれば、民間投資家は怖くて寄り付かない・・民間からの資金流入が細ってしまった場合に経済活動がどうなるかの問題です。
政府や偉い経済学者に言わせれば、
「民間投資など当てにならない・・頭の良い自分たちが将来性のある分野に選別投資するから心配するな」
と言う立場で税で強制的に資金を吸い上げては、彼らの考える成長株に投資している意味では一貫している・・大した自信家です。
しかし、将来思想が変わるかも知れませんが、今のところ「レッセフェール」の方が正しいと言うのが真理ですから、彼らのよって立つ信条がレッセフェールよりも正しいと信じる所以を力説してもらう必要があります。
現在の普遍的真理によれば、優秀な学者や官僚が投資先を選別することが続くと大方失敗する・・国民資産を毀損する比率が高い・・損する可能性が高いでしょう。
バブル崩壊以降「エリートに資金の使い方を任せろ」と言う信条による政府・マスコミ誘導の結果、ドンドン政府が資金を使って来た結果、政府資金が底をついて来たのでその穴うめが迫られたのが、この10〜20年ほどの財政赤字論です。
タマタマ財政の壁に直面したならば、この機会に立ち止まって旧来政策(官僚が有望な産業を見極めて応援するのが正しいのか?)の見直しをする良いチャンスとすべきではないでしょうか?
赤字(資金不足)だと大騒ぎしていながら、逆に政府の投資を増やしたいのが今の政治風潮です・・安倍政権の参院選挙後の補正予算案を見れば、一部消費拡大のための商品券配布を強調していますが大筋は輸出用の港湾整備その他インフラ整備や助成金拡大などの政府役割増大を目指していることが明らかです。
http://mainichi.jp/articles/20160602/k00/00m/020/064000c
第2次補正予算案
今秋最大10兆円 商品券発行も
・・主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で合意した「政策総動員」の一環で、足踏みが続く国内景気をテコ入れする狙い・・・
ネット検索ではこの程度しか出ませんが、今朝の日経新聞朝刊7pの「インフレで財政を救えるか」の欄の中には28兆円と出ています。
まだ国会が開かれていないので、憶測記事段階と思われます。
ところで、これ以上に企業税や所得税を上げられない・・むしろ世界中で法人税や所得税の減税競争が始まっています。
それでも飽き足らない国際資本がタクスヘイブン利用になった(やり過ぎた)ので、我慢出来なくなって来た政府がこれを叩く動き(パナマ文書)が出て来ましたが、要点は減税に資本家が悪乗りし過ぎたと言うだけであって、減税傾向が止まる様子が見えません。
トランプ氏は法人税と所得税の大幅減税を公約にしていますし、これに引っ張られてヒラリー氏も減税公約を4〜5日前に発表しました。
減税論の行きつくところは小さな政府しか有りません。

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