フラット化対応5(品質競争の重要性)

商店が一杯あって買い物に自由に出掛けられるのと他人を自宅に泊めてやらねばならないこととは別問題・・貿易拡大・物品流通拡大・人の移動拡大と移民自由化とは別問題でしょう。
国際流動化時代を生き抜くには長期的には民族レベルの底上げこそが重要であって、たとえば平均レベルが60点台にあれば60ポイントの賃金を払っても国際競争力があり、ひいては80点台の人との収入さが僅かに20ポイントしかない・・格差縮小可能です。
格差縮小するには末端労働者の能力を無視して賃金をあげれば良いのではなく、(経済原理無視で賃上げすれば、東南アジアに工場が逃げられた中国のようになるだけです)能力差を縮小する努力こそが求められます。
移民・・多くは後進国から入るので工員の品質が落ちます・・民族レベルが劣化すれば・未熟練者・貧困層が増える一方で,他方で金融のプロなど高額所得者を誘致(シンガポールなどが有名ですが・・ロンドンもその1例です)するので、格差拡大が余計進んで行きます。
イギリスの国民投票結果から見ても金融関連で潤うロンドン周辺では残留支持が多く、元々の製造業地域では離脱派が多いと言う地域分布から見ても明らかです。
シンガポールのような都市国家であれば金融特化してもその周辺で恩恵を受ける比率も高いのですが、(ロンドン独立論は冗談のようでいて、実は経済合理性のある意見です)一定規模以上の国家の場合、資源・金融や知財特化では国民全般の底上げには無理があります。
農業社会から工業国への以降は筋肉労働の必要性などから移行が簡単でしたが、それまでの製造関連従事者が金融や知財・サービス業にイキナリ特化出来る訳がないし,世代交代後はサービス業その他に適応出来るとしても元製造業が吸収していた多数従事者がいりません。
1回の金融取引が10億円から200億になってもキーボードを叩く手間は同じ・・一人でやれます。
サービス業従事自社は、スターバックスやコンビニ・スーパー店員を見ても明らかなように非正規中心・・格差拡大・・末端が増える一方になります。
製造業が国際的賃金平準化に負けないためには品質競争=従事者のレベルアップすべきであって、これを怠って低賃金競争に参加するために底辺労働力補充を低賃金=低労働能力者である移民流入に頼るのは、仕入れ品の値下げ圧力や人件費を削る=品質を落とす・・単純値下げ競争に入ったのと同じです。
移民導入策は、手間暇のかかる商品品質アップ・・労働者レベルアップ努力による新興国との品質格差競争を諦め、賃下げ競争参加策(職人のスキルアップを諦めて1流仕入れ先から2流仕入れ先への変更・レストランで言えば1流料理人から3流料理人への変更)による低コスト化を採用したことになります。
仕入れコストや人件費を下げれば、有能な人材が集まらなくなる→労働者や職人の能力低下が進むのは明らかですから、結果的に全般的低賃金化が進みます。
経営者利益維持のための低賃金化進行+経営利益維持策→格差拡大ですから、移民導入で新興国との値下げ競争参加→低賃金化による国民へのしわ寄せしてきたことに対して欧米諸国の労働者が遂に怒り出したことになります。
欧米労働者自身がスキルアップの努力しないで3K職場に就職したがらないで移民に仕事を奪われているのは自業自得ですが、経営側が賃下げ競争モードに入っていて個々の労働者の向上意欲を阻害して来たことも原因です。
アメリカでは反ウオール街・・格差拡大反対・・これを突き詰めて行くとその原因になっている移民政策の間違い…アメリカやイギリスの移民反対〜西欧の難民拒否等が正面テーマになって来たのはキツネに化かされた人が正気を取り戻した状態であり、論理的であり感情論ではありません。
ただ国民・労働者が移民反対を言う以上は、3Kはイヤだと言うのでは一貫しませんし新興国並みの低賃金で働くか、先進国だからと高い賃金を要求するならば新興国労働者と品質競争に勝つために自助努力を出来るかどうかにかかっています。
ただ移民を排斥・追い出したからと言って、人件費が上がる訳ではない・・品質競争のないまま賃銀だけ上げれば、新興国との競争に負けます・・ことを繰り返し書いてきました・・要はレベルアップ努力出来るかの民度の問題です。
数年前から仏独で民族主義主張が増えて来たし、アメリカでトランプ現象・今回のイギリスのEU離脱国民投票・・全て、移民を入れる値下げ競争では疲弊するばかり・・国民が耐えられなくなって来た現実が表面化して来た「裸の王様」が寒くて震え出した状態です。
企業の値下げ競争は製造工程変革によるコスト下げをしないで仕入れ価格引き下げや人件費引き下げによる場合、従業員や納入業者の疲弊→民族劣化進行しかありません・・値下げ競争に入った多くの企業・商店は早晩行き詰まるのが普通です。
本来の競争に勝ち抜くためには、品質で勝つしかない・・民族劣化を如何にとどめるか・・民族水準点を引き上げることこそが国際競争に勝ち抜く本質です。
民族、環境のレベルアップを考えるには、高給レストランやホテルに浮浪者が出入りしていたのではいくら従業員教育しても、ホテルやレストランのグレードが下がるのは避けられません。
日本は移民を入れる値下げ競争に参加せずに品質競争で勝負する・BtoB・・高度部品製造に舵を切って努力し・・農業でも量ではなくうまいものを少量作るパターンを追及して来た結果、今や成果が出始めていることは周知のとおりです。
構成員レベルの底上げ作業は大変な事業ですが、優秀な人材を誘致し、低レベル構成員を弾き出せば簡単に平均レベルが上がりますので、移民排斥論も自己努力を怠る考えである点は移民導入論の裏返しの議論です。
資源に頼ったり個人で言えば、親戚関係・コネ賄賂利用・・国際政治力を利用してFTAその他有利な地位を築くなどの外部環境に頼るのでは真の解決は出来ません。
日本の場合には折角自己努力による民度アップに取り組んでいるのですからこれ以上移民が増えて平均点を下げないように努力し、他方で国民レベル向上策の更なる努力こそが重要であると正面から認識して行くべきです。
西欧やアメリカはこの困難なテーマに取り組むの怠って移民導入による安易に(人件費の)値下げ競争をして来たツケが回って来たのです。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC